575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

藪 紫              草女

2007年11月16日 | Weblog
 「藪紫」、紫式部と同じ仲間なのになんとも野暮な名前だ。
 庭や公園に植えられていてびっしり実をつけているものがムラサキシキブと呼ばれているが、植物学的にはコムラサキ(別名コシキブ)が正しい。
 ムラサキシキブは、今頃から多くの実を紫に着色させ名前に負けない美しい姿になる。葉が落ちて実だけ残っているのも風情がある。
 さてヤブムラサキの方は、木も実もムラサキシキブより一回り大きい。そして葉や葉柄などに細かい毛がびっしり生える。花や実がない時、葉に触ってみてビロードのような手触りならヤブムラサキだと判断できる。直径3~4mmほどの紫色の実を葉陰にひっそりと付けている様子は決して野暮ではない。
 これらの樹の仲間はクマツヅラ科ムラサキシキブ属で、学名をカリカルパ・ジャポニカという。ジャポニカとついているが、日本特産ではなく熱帯から温帯にかけて約140種が知られている。
 辻井達一著「続・日本の樹木」によれば、カリカルパはギリシャ語のカロス(美しい)+カルポス(実)の合成であり、英名もビューティ・ベリー、ドイツ名もシェーン・フルフトでどれも実の美しさに注目しての命名とのこと。
 しかし日本には千年も前に一人の才媛がいて、私たちはその人を紫式部と呼んでいる。彼女に因みムラサキシキブと命名された木。そして少し小さいものをコムラサキ、山地にひっそりと生えるのをヤブムラサキと名づけた。
 森でシキブ達に出会うと、紫式部や紫の上を連想する。
 和名には教養と情緒が漂う。

  山路来て藪紫に冬日かな      草女
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする