575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

烏 瓜               草女

2007年12月14日 | Weblog
 やっと文字を読めるようになった頃、絵本の中のカラスウリに出会った。
 絵本といっても色の着いているのが珍しかった戦後間もない頃のこと、鮮やかな朱色の絵に釘付けになった。
 豊田市が挙母町だった時代で周囲は田畑ばかりであったけれど、幼児が出歩くのは家の周りだけだったからカラスウリを見た事がなかった。以来カラスウリへの憧れは胸に宿り続けていた。
 三年前、仲間からカラスウリの種を貰った。調べてみると、地下に芋が出来てやっと結実しそれには三年かかるとある。
 花は二年目で開いた。そして今年6個の実が裏庭に燦然と輝いている。
 ウリ科カラスウリ属のつる性多年草。ウリ科でもヘチマやキュウリ等は雌雄同株であるがカラスウリは別株であることが多いので、実を着けさせるためには数本植えたほうがいい。
 また、別名をタマズサ(玉梓)という。縦に隆起した帯のある種子を結び文にたとえたものである。
 中村浩著「植物の名の由来」によれば「烏瓜」ではなく「唐朱瓜」ではないかとのこと。唐朱(からす)とは唐あたりから伝来した朱墨で辰砂とも呼ばれている。辰砂は塊状で産し、大きいものは鶏卵大で小さいものはザクロの種子の様だという。氏はこのことからカラスは「唐朱」であって「烏」ではないと主張されている。
 私もこの説にすっかり賛同している。カラスウリは不味いのか烏や他の鳥に食べられる事も無し、カラスノエンドウのように黒色になる事も無い。
 幼い日のあの絵本には朱赤色のウリの傍らに黒いカラスが描かれていたが・・・

 実も魅力的であるが、花が大変美しい。(写真参照)
 花弁のふちがレースのように細かく裂け垂れ下がる。日の暮れに咲き始め段々レースが垂れ下がり、開き切るのは真夜中。朝にはしぼんでしまうので、目にする機会は少ない。

  烏瓜故郷に疎くなりにけり        南谷南亭
  烏瓜すがるすべなく曳かれけり      山口青邨
  高懸りたるまま残り烏瓜         高濱年尾
コメント (1)
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