575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

定家葛           草女

2008年06月20日 | Weblog
 能の「定家」では藤原定家が式子内親王に恋をし、彼女の死後もまとわる。
 そして、定家葛となって絡みつくのである。藤原定家がどんな人物かは知らないが、テイカカズラはなかなかの植物である。
 キョウチクトウ科テイカカズラ属のつる性木本で、五から六月ごろ小さなクリーム色のプロペラのような花をたくさん付ける。
 最近、名古屋市では街路樹の間の植え込みによく使っている。家の近くのテイカカズラの花は終わったが、森ではまだ咲いている。花の形も面白いが良い香りもする。 初秋には長さ15cm~20㎝ほどの細長い実になる。実は袋状になっていてこの中に大きな冠毛と種子がびっしり入っていて、熟すると袋が裂けて種子が飛び出しゆっくり風に乗って気持ち良さそうに森の中を旅している。たくさんの花なのに袋果は少ないから確実に繁殖を遂げる術を持っているのである。
 定家は想いを遂げたというわけである。
 だからその季節になると、森の床にはテイカズラがいっぱいに生え出てくる。
 幼いテイカカスラの葉は小さく白い斑入りで可愛く、林床を埋め尽くし、何かよじ登るものを見つけると気根を出して這い登る。
 日光が当たるところまで這い出ると、葉は幼い頃の何十倍にもなり、可愛い斑紋も消え別物に変身する。宿り主の樹木に全く日光が当たらないほどに繁り幹もどんどん太くなる。
 墓がテイカカズラに見初められ覆い尽くされたら・・・墓主はさぞ迷惑するだろうし、玉の緒も切れること必定である。
  玉の緒よ絶えなば絶ええね ながらへば忍ぶる事のよはりもぞする
 この歌の作者とテイカカズラを結びつけた能の作者の目の付けどころに感心するとともに、定家もこの植物にふさわしい能力豊かで生命力にあふれた人物であったのだろう。
 
コメント (2)
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