7月の12日、庭の草むしりをしていた。何気なく顔を上げると、見たことがない花が咲ている。高さ70cmくらいのマンリョウである。この木は6,7年前一人生えし、以来、毎年律儀に赤い実をつけているのに、花のことは考えたこともない。直径8mmくらいの白い花で5枚の花びらはくるりと反り返っている。目が釘付けになったのは、雄しべが槍先の形にとがりくっついている。たいへん可愛い花である。
マンリョウはヤブコウジ科ヤブコウジ属の常緑低木で関東以西の常緑樹林内に自生する。名前の良さと冬の赤い実の良さで庭樹にされたり、正月の飾りにされたりする。やはり実が鑑賞されている。ことろが、マンリョウの学名はArdisia.Crenataといい、これはギリシャ語の槍先と黄緑の花からきているそうだ。ギリシャの人は花に注目していたということ。さすが古代文明の国だと感心した。
3年前位まで、庭にマンリョウの一人生えが多くあり、草と一緒に抜いていたが、今は全く生えてこない。我が家から100m位離れたところに広い、150坪はあろかと思われる庭のある家があった。マンリョウの一人生えはそこから供給されていた。運んだのは、ヒヨドリだろう。ところが、その家の身寄りのない女主が遺書を残さないで
突然亡くなって土地は国庫のものとなり、現在は4軒の瀟洒な住宅になった。
忘れ形見となった我が家 のマンリョウよ、可愛い花に今まで気がつかないでわるかった、でも長生きしてね。
万両の秘かに咲きし夏木陰 ぐ
運ばれて万両の花咲きにけり