575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

冥土かな闇に浮かびし山桜  殿

2019年05月12日 | Weblog

黎明の甲斐駒岳。幽明を隔てるような美しい山桜。
闇の中からふわりと浮かび上がります、と作者。

この句を読んだ時、思い出しました。
梶井基次郎の『桜の樹の下には』です。

桜の樹の下には屍体(したい)が埋まっている!
これは信じていいことなんだよ。
何故なぜって、桜の花があんなにも見事に咲くなんて
信じられないことじゃないか。
俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だった。
しかしいま、やっとわかるときが来た。
桜の樹の下には屍体が埋まっている。

この世とあの世とは、別々に存在するものですが、
どこかに通路があるようです。
究極の美は死の世界に通じている・・・。

句に従って読んでみましょう。
冥土かな。まず黄泉の国が提示されます。
切れ字の「かな」がありますから、ああ!ここは冥土なのだ!
その冥土の闇に浮かんでいたのは山桜。その美しさよ!

山桜が美しい幽霊のように感じられるのです。(遅足)

  


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする