心惹かれるのは中七下五の「昭和の夜は遠くなり」です。
「降る雪や明治は遠くなりにけり」を思い出します。
古き良き時代へのノスタルジー。
一つは「明治」そして今ひとつは「昭和」
昭和は「ALWAYS3丁目の夕日」に象徴される時代。
今の朝ドラの舞台、昭和30年代の日本でしょうか。
あの高度経済成長の時代を懐かしく振り返る。
何時の間にか、そんなところまできたしまったようです。
斎藤茂吉の歌を思いだしました。
死に近き母に添寝のしんしんと遠田のかはづ天に聞ゆる
命尽きようとしている母。その傍らで添い寝をしている男。
しんしんと夜も更け、遠くの田で盛んに鳴いている蛙の声。
母を遠い世界に誘っていく天からの声のように聞こえる。
この歌は昭和より前に詠まれたものです。
句に通じる懐かしさを感じさせるものがあります。
失ったものは意外に大きく大切なものだったのかもしれません。
夜が更けていきます。
孫たちには、どんな朝が待っているのでしょうか?(遅足)