575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

妻いまも夫を恋してさくらんぼ   遅足

2018年06月15日 | Weblog
6月句会に出そうと用意していた句です。
この「妻」は立雄さんの奥様のことです。
十数年前に立雄さんのお宅に取材に訪れました。
その時の第一印象を句にしたものです。

お宅には油絵が所せましと置かれていました。
奥様は絵描きさんでした。
以来、年に一度は必ず展覧会の招待券を頂き、
作品を鑑賞させていただいてきました。

「いただいてきました」と過去形で書いたのは、
その奥様が突然、お亡くなりになったからです。
原因は心筋梗塞。本当に突然のことだったようです。

お通夜にうかがいました。紫陽花の花に囲まれた遺影。
祭壇のまえには数点の絵。その一枚は紫陽花の小品でした。

  妻いまも夫を愛して濃紫陽花  

こころからご冥福をお祈りします。 





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さくらんぼ  麗

2018年06月14日 | Weblog
梅雨の晴れ間の青空。
洗濯に掃除とやらなければいけないことはいっぱいあるのになぜか動きが鈍いです。

みなさん、さくらんぼの俳句はできましたか?私はかなり苦戦しました。
これは実際にさくらんぼを食べてないからなのか?
ちょっと高くてスーパーの果物売り場でも悩んだあげく素通りしてしまいます。
さくらんぼって一人で食べるより誰かと食べたいですよね。

母はさくらんぼが好きでした。
今は老健の規則が厳しくて、食べ物の差し入れが禁止されているので食べさせてあげられません。
そういえば、私の幼稚園の初めてのお弁当に缶詰の真っ赤なさくらんぼが入っていました。
遠足や運動会など特別な日のお弁当にも入っていました。


       さくらんぼ最後に食べるお弁当  麗

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いとしめば人形作りが魂を入れざりし春のひなを買ひ来ぬ  稲葉京子

2018年06月13日 | Weblog

最近、亡くなられた愛知県出身の歌人、稲葉京子さん。
名古屋市の文化のみち二葉館で、偲ぶ展示があり、先日行ってきました。
その時、気になった歌。第一歌集の代表歌です。

人形をつくる人は精魂込めてつくるわけですから、当然、人形に魂を入れます。
しかし作者は魂をいれないお雛様を買ったといいます。
上五の「いとしめば」は、人形をいとしめば、と読みますから、
矛盾した心をはらんだ不思議な不安定な感じのする歌です。

この歌について、先生に当たる春日井健さんの鑑賞がありました。

人形作りがあまりに愛しんだせいで、人形に魂を入れなかったというのだ。
人の手から手へ渡っていく人形は、よく出来ていればいるほど
さまざまな運命に弄ばれることになる。・・・
だから人形作りはあえて魂を入れなかった……と、稲葉さんは思う。
そう思いながら春の雛を買って帰る。そっと壊れやすいものを抱えるようにして。
しかしこれは本当のことではあるまい。人形作りはやはり人形に魂を入れたのだ。
どうしても欲しい人形を前にしてその命を統べることを怖れた彼女が勝手に呟いてみたまでだ。
ほとんど緊張状態にまで昂ぶって、ついにかりそめの夢を紡ぎだすほどにも
彼女の心は繊細である。

私がこの歌の中で気になった言葉に「買う」があります。
毎日、モノを買っています。この行為がなくては生活は成り立ちません。
買うのはモノを買うのであって、心を買うわけではありません。
人は買うことによって何かをモノを得、心を失っているのでは?
そんな生の矛盾を捉えた若い感性の歌かも・・・なんて、思ってもみました。

この展示は24日まで開かれています。遅足



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あじさいや水あおあおと原子炉に  遅足

2018年06月12日 | Weblog


梅雨の晴れ間の青空。あじさいの花がきれいです。
私は紫陽花は「あお」色が好きです。
不思議なことに、原子炉にあるあおい水を思い出しました。

あの不幸な事故以来、原子炉の資料映像がよく放映されました。
何時の間にか脳裏に刷り込まれていたのでしょう。

何一つ解決されないまま、事故発生当時と変わらぬ事態。
日日の生活に追われ、忘れている毎日です。
忘れてはならないと、無意識に警告するものがあるのでしょうか?

原子炉の水は真水ですが、光っているようです。
光より速いものはないのですが、水のなかでは事情が変わるようです。
光はスピードが落ち、小さな小さな粒子が光を追い越してゆく。
その時発生する青い光。チェレンコフ光と呼ばれる光なんだそうです。

あの水をうつくしいと感ずるのは、魔性に魅入られてしまったのでしょうか?


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6月句会ちかづく   遅足

2018年06月11日 | Weblog
今回の題詠は「さくらんぼ」です。

さくらんぼといえば、この句を思い出します。

  国家よりワタクシ大事さくらんぼ  攝津幸彦

摂津さんの句は難しいのですが、これは分かりやすくて一度で覚えました。
これに良くにた短歌があります。道浦母都子さんの歌。

  <世界より私が大事>簡潔にただ率直に本音を言えば

両方とも、自分さえよければと、利己主義と誤解してしまいそうですが、
自分には何ができるかを問い直そうというものです。
それまでは天下国家や主義に殉ずることが美しく
個人のことがないがしろにされてきた時代に対する反省があっての句や歌です。

時代は移り、さくらんぼといえば「赤い宝石」と呼ばれるほど貴重品に。
なぜ、あんなに高価なのか?調べてみました。
花の咲く前から作業は始まるとのこと。まず、蕾を間引きます。
実がついたら、余計な実も摘み取ります。いずれも実を大きくするためです。
宝石のように赤くするために、色づくと、日光を十分当てるため、
邪魔になる小さな葉っぱを摘みます。大きな葉は残して。
みな大きくて色も良い、美味しいさくらんぼを作るためとのこと。
手間ひまがかかっているんですね。

我が庭の小さなさくらんぼ、味には値段ほどの差があるとは思えませんが。
句会にはどんなさくらんぼが登場するのでしょうね?楽しみです。
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老鶯として声の艶声の張  後藤比奈夫

2018年06月10日 | Weblog

奥さんから家の裏で鶯が鳴いていましたよ、と声。
耳が遠くなったせいか、聞こえませんでした。
「ホーホケキョ」と、上手に鳴いていたとのこと。
最近、裏のお宅が庭の木を伐ってしまいました。
もう来ないと思っていましたが、やってきたようです。

夏の鶯のことを、老鶯(ろうおう)と言い、季語にもなっています。
老鶯というと声も年老いた感じがしますが、元気な声で鳴いています。
鳴き方も春先のように不器用ではありません。
人間は吐く息によって声を出しますが、
鶯など鳥は息を吸いながら鳴くそうです。

繁殖期が過ぎても、夏の間は鳴くのはなぜでしょうね。
鳴いているのは、まだ相手が見つかっていないからでしょうか。
夏の間はホルモンの分泌が続くためでしょうか。

私は鶯も自分の声を楽しんでいるのではと考えています。
我が家に来た鶯も自慢の喉を聞かせたかったのでしょう。

  老鶯のおのれの喉をたのしめる  遅足
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蛇いちご神話の里にひと絶えて  遅足

2018年06月09日 | Weblog

等さん、静荷さん、私の3人で俳句の話を。
静荷さんの蛇苺の句が話題になりました。
句は食べたというもの。びっくりしました。
毒苺と教えられ、口にしたことはありません。

静荷さん、日課の散歩の途中で見つけました。
あまりに美味しそうだったので、初めて口にしたそうです。
インターネットで調べてみたら、毒はなく食べてみた人も。
味は美味しくないということです。

  蛇苺まことに赤き味したり

これは細見綾子の句

  そら豆はまことに青き味したり

を真似てつくったもの。
静荷さんの食べた蛇苺はどんな味だったのでしょうか?


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夢に咲き夢をのこして額の花  遅足

2018年06月08日 | Weblog

夢とは不思議なものですね。
時々見るのが、仕事で致命的なミスをした夢。
なぜミスをしたのかは分からないのですが、
次々と予想できない事態が起きます。
登場する人物も毎回違います。
どうしようもない状態に追い詰められて・・・
目が覚める。
ああ、もう退職しているんだと、ホッとする。

もう過去のことなのに、いつも現在形なんです。
展開も予想定外。非論理的。
さらに不思議なのは登場人物がちゃんと分かっている。
相手の顔や姿が見えているわけでもないのに。
リアルで感情が支配する世界。

そういえば最近、この夢を見なくなりました。
残り少ない人生、その3分の1が睡眠と夢。
見るなら楽しい夢がいいのですが・・・

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ゲゲゲの人生展   麗

2018年06月07日 | Weblog
松坂屋美術館で開催中の「追悼水木しげる ゲゲゲの人生展」に行って来ました。
2015年に93歳で亡くなった水木しげるさん。
幼い頃は「ゲゲゲの鬼太郎」に登場する妖怪たちが怖くてあまり好きではありませんでした。
NHKの連ドラ「ゲゲゲの女房」で水木さんの人生を知り、南方で片腕を失ったこと。自分が生きて帰って来られたのは現地の人からバナナをもらって食べたから。。ということを知りました。

4年前、私も6時間にわたる手術を受けたあと、全く何も受けつけず苦しい4日目を迎えた時、なぜか水木しげるさんの言葉を思い出しました。「そうだ!生きるためには食べなくてはいけない」。

食欲はなかったけどがんばって食べました。すると、その日からめきめき元気を取り戻しました。
水木さん、本当にありがとうございました。

展覧会では水木さんの人生をくまなく振り返ることが出来ます。
漫画だけでなく油絵や手紙など貴重な直筆の世界。目に見えない世界を描き続けた水木さん。戦記物を描くとわけのわからない怒りが込み上げてしかたなかったそうです。それは戦死者の霊がそうさせたようです。
また、戦争の悲惨な体験から、戦後二十年くらいは他人に同情することができなかったとか。戦争で亡くなった人が一番かわいそうだと思っていたから。

悲惨な戦争を忘れないためにも自らの戦争体験を片腕一本で描き続けた水木さん。
今頃あの世で妖怪達と楽しく過ごしておられるでしょうか?
ご本人が気に入っていたという作品「総員玉砕せよ」(講談社文庫)を買って帰宅しました。

回顧展は6月10日まで開かれています。お時間あれば是非。



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家族待ち父渾身の胡瓜もみ  すみ

2018年06月06日 | Weblog

妻と娘はお出掛け。
帰りを待ちわびながら夕飯の一品になればと
父は一生懸命胡瓜もみを作っていました、と作者。

家庭のなかの一齣を掬い上げた一句です。
中七の「父渾身の」がとても良いと思います。
俳句に詠まなければ、見逃してしまいそうな些細な出来事。
それを日記のように記録するのも俳句の効用です。

上五の「家族待ち」がやや散文的です。
「家族待つ」と小さな切れを入れると良いかも知れません。
あるいは「妻を待つ」と少しフィクションの味付けも。

            

朝から雨。今日あたり東海地方も梅雨入りしそうです。
そういえば我が家のキュウリも一本、実りました。
なんにしましょう?(遅足)
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夏向きの頭に刈られ新僧侶  狗子

2018年06月05日 | Weblog

新しく僧侶になるために剃髪。まさに夏向きの頭になりました。
家がお寺で跡をつぐために僧侶になる人。
定年後に出家する人など、剃髪する動機はさまざま。
出家のための剃髪を、夏向きと捉えたところに俳諧味が。

お坊さんは、なぜ頭を剃るのでしょうか?
人生は苦に満ちていますが、苦は「こだわり」から。
剃髪は「こだわり」を捨てたことを表すためとのこと。
それもまた「こだわり」では?ということでしょうか。
浄土真宗では、剃髪にこだわらず有髪の僧も。
なんだかヤヤコシイですね。

哲学者にして浄土真宗の僧、そして俳人の大峯あきらさん。
今年の1月に亡くなられましたが、こんな句を遺しています。

  虫の夜の星空に浮く地球かな

虫の夜の星空、といえば視点は地球上です。
それが星空に浮く地球と続き、視点が宇宙へと転換されています。
この転換が見事ですね。

ちなみに大峯さんは坊主頭ではありませんが、禿頭でした。(遅足)
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中日歌壇  快挙!!

2018年06月04日 | Weblog
今朝の中日新聞、中日歌壇に
島田修三選、小島ゆかり選 
そろって宗匠の短歌が掲載されました。

島田選

  天空にあまたの声の満つる夜耳のかたちの月がのぼりぬ

{評}雲が低いと、地上のざわめきや音声が空にこもる感じはするが
   ここは晴れた夜空。耳に似た三日月との連想で上三句が生まれたのだろう。
   天空に満ちる多くの声と巨大な耳。幻想的な味わいの一句。


小島選

  やせた影大地にのばし草を抜く背に太陽の視線をあびて

 {評}自分自身を励ますような歌だ。「太陽の視線」という言葉に力がある。


おめでとうございます!!さすがです!!!     郁
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夏の風邪同情引かぬ悪寒かな   すみ

2018年06月03日 | Weblog

暑い日があったと思ったら、急に寒い日が。
夏風邪をひいている人が結構多いようです。
作者もその一人。でも家族のだれからも同情されません。
ひとり悪寒に震えている姿を詠んだ句です。
  
たしかに夏風邪は冬とはちがって同情をひきませんね。
また、治りにくく、長引くと言います。
原因となるウイルスを退治する有効な薬がないため。
従って、安静を保ち、栄養と水分を補給、体力をつけて
ウイルスが排除されるのを待つだけとのこと。
すみさん、美味しいものを食べて、休養して下さい。

  夏風邪はなかなか老に重かりき  高浜虚子
  
あの虚子も夏風邪はこたえたようですね。(遅足)
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軒下の鉢植え野菜夏に入る  晴代

2018年06月02日 | Weblog

散歩していると、家の前に様々な鉢物が。
多くは花ですが、なかにはサボテンも。
数は少ないですが、野菜の鉢もあります。
100米ほど離れたお宅は毎年、野菜です。
今年もミニ・トマトときゅうりが黄色い花を。

軒下にも夏が来ているのですね。
こんな句を見つけました。

  鉢物のさっと水吸ふ雨水かな  佐藤一城

我が家の庭にもミニトマト、キュウリ、かぼちゃと
苗を植えました。
キュウリはさっそく虫に食われています。
トマトは今朝、最初の2つを収穫しました。(遅足)
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金看板幾世洗ひし夏嵐   結宇

2018年06月01日 | Weblog

金看板を辞書で引くと、①金文字を彫りこんだ看板。
②世間に対して誇示・宣伝する主義や主張など、とあります。

この句の場合は老舗の金看板でしょうね。
日本は老舗の多い国だそうですが、
三代以上続く老舗ともなれば、何回も嵐に遭遇していますね。
それを切り抜ける智恵と才覚あってこその金看板です。

夏嵐は、夏に吹く、やや強い南風あるいは東南の風。
よく似た季語に「青嵐」があります。
こちらは「青」が若々しさを連想させることから
句の内容にふさわしくないという判断があったと思います。

名古屋にも結構老舗の残っています。
お菓子屋さんで一番古いのは両口屋是清さん。
ついで川口屋さん、つくは祢屋さんで、いずれも江戸時代の創業。
私は川口屋さんのお菓子が好きです。

この句の老舗はどこでしょうね?
今日から6月。雨もあがって晴天です。
金看板は輝いていることでしょう。   遅足

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