【まくら】
「厩火事」・「替り目」・「文七元結」・「粗忽の釘」・「堀の内」・「火焔太鼓」など、江戸の庶民生活を描いている落語の中では色々な夫婦が出てくるが、「三年目」という落語はだいぶ違った様相を呈している。
【あらすじ】
昔は亡くなると、親類縁者の方が集まって、仏様の髪に剃刀を当てたのだそうです。怪談話で幽霊が髪を振り乱して登場するのは、ですから、きちんと供養されていない証拠なのだそうです。
ともあれ。
仲のいい夫婦がおりました。夫は大変優しい人で、妻もやはりよく気のつく、かわいらしい方でした。ところが、奥様の方が、もともと体が弱かったと言うこともあって、はやり病にかかり倒れてしまいます。夫の寝ずの看病にもかかわらず、奥様はとうとう亡くなってしまいます。
亡くなる前に奥様は、少しやきもちの気持ちもあったのでしょう。夫に、あなたは大変優しくて素敵な人だから、きっと新しい奥様をもらわれることでしょう。それは仕方ないと思うのですが、それでもやっぱり新しい奥さんを可愛がられると思うと、心残りで……と言います。夫は、苦笑して、それならこうしましょうと妻と約束します。
夫が言うには、もし周囲からの勧めを断れきれず、結婚することになったら、新婚の夜に幽霊になって枕元に出てきなさい。あなたが幽霊だろうとなんだろうと、私の方は一向に構わないが、新しい妻とすれば、驚いて里に帰るだろう。そういうことが度重なれば、あそこの家には先妻の幽霊が出ると評判になって、嫁の来てがなくなる。これなら私も独身でいられるだろう?
妙な約束をしたものです。
さて、奥様が予想したとおり、奥様が亡くなると、やはり親戚のものが、はやく後妻をもてと男にけしかけます。男はとうとう断り切れず、結婚することになります。
新婚の晩。男としては、はやく先妻の幽霊が出てきてくれないかと思うのですが、結局その晩彼女は現れません。まぁ、十万億土も離れたところから来るんだから、1日ぐらい遅れることもあるわなぁと思って、次の夜も寝ずに待ちますが、やはり現れません。その次の日も、その次の日もと待ちますが、やはり一向に現れる気配もありません。
そうこうするうちに、3年の月日が経ち、子供もできます。そんなある夜、とうとう先妻の幽霊が現れます。
夫としては、ちょっと困るわけです。もちろん、先妻を今でも愛していますが、そうは言っても新しい妻をもらって3年も経てば、それはそれで情が移りますし、それになにより子供がいます。なんだって、今頃になって現れたんだいと、少々怒りながら幽霊にたずねます。
すると、先妻はもじもじしながら、
「だって、あなたに嫌われたらいやだから、髪が伸びるのを待ってたんだもん」
【オチ・サゲ】
途端落ち(噺の脈絡がその一言で結びつく落ち)
【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『親子は一世、夫婦は二世、主従は三世』(親子の関係はこの世だけ、夫婦の因縁は現世だけでなく来世にもつながり、主従の縁は過去にも来世にもつながる。主従関係はそれほど強い因縁である、ということ。続けて「間男はよせ」とも)
【この噺を得意とした落語家】
・六代目 三遊亭圓生
・十代目 金原亭馬生
・三代目 古今亭志ん朝
「厩火事」・「替り目」・「文七元結」・「粗忽の釘」・「堀の内」・「火焔太鼓」など、江戸の庶民生活を描いている落語の中では色々な夫婦が出てくるが、「三年目」という落語はだいぶ違った様相を呈している。
【あらすじ】
昔は亡くなると、親類縁者の方が集まって、仏様の髪に剃刀を当てたのだそうです。怪談話で幽霊が髪を振り乱して登場するのは、ですから、きちんと供養されていない証拠なのだそうです。
ともあれ。
仲のいい夫婦がおりました。夫は大変優しい人で、妻もやはりよく気のつく、かわいらしい方でした。ところが、奥様の方が、もともと体が弱かったと言うこともあって、はやり病にかかり倒れてしまいます。夫の寝ずの看病にもかかわらず、奥様はとうとう亡くなってしまいます。
亡くなる前に奥様は、少しやきもちの気持ちもあったのでしょう。夫に、あなたは大変優しくて素敵な人だから、きっと新しい奥様をもらわれることでしょう。それは仕方ないと思うのですが、それでもやっぱり新しい奥さんを可愛がられると思うと、心残りで……と言います。夫は、苦笑して、それならこうしましょうと妻と約束します。
夫が言うには、もし周囲からの勧めを断れきれず、結婚することになったら、新婚の夜に幽霊になって枕元に出てきなさい。あなたが幽霊だろうとなんだろうと、私の方は一向に構わないが、新しい妻とすれば、驚いて里に帰るだろう。そういうことが度重なれば、あそこの家には先妻の幽霊が出ると評判になって、嫁の来てがなくなる。これなら私も独身でいられるだろう?
妙な約束をしたものです。
さて、奥様が予想したとおり、奥様が亡くなると、やはり親戚のものが、はやく後妻をもてと男にけしかけます。男はとうとう断り切れず、結婚することになります。
新婚の晩。男としては、はやく先妻の幽霊が出てきてくれないかと思うのですが、結局その晩彼女は現れません。まぁ、十万億土も離れたところから来るんだから、1日ぐらい遅れることもあるわなぁと思って、次の夜も寝ずに待ちますが、やはり現れません。その次の日も、その次の日もと待ちますが、やはり一向に現れる気配もありません。
そうこうするうちに、3年の月日が経ち、子供もできます。そんなある夜、とうとう先妻の幽霊が現れます。
夫としては、ちょっと困るわけです。もちろん、先妻を今でも愛していますが、そうは言っても新しい妻をもらって3年も経てば、それはそれで情が移りますし、それになにより子供がいます。なんだって、今頃になって現れたんだいと、少々怒りながら幽霊にたずねます。
すると、先妻はもじもじしながら、
「だって、あなたに嫌われたらいやだから、髪が伸びるのを待ってたんだもん」
【オチ・サゲ】
途端落ち(噺の脈絡がその一言で結びつく落ち)
【噺の中の川柳・譬(たとえ)】
『親子は一世、夫婦は二世、主従は三世』(親子の関係はこの世だけ、夫婦の因縁は現世だけでなく来世にもつながり、主従の縁は過去にも来世にもつながる。主従関係はそれほど強い因縁である、ということ。続けて「間男はよせ」とも)
【この噺を得意とした落語家】
・六代目 三遊亭圓生
・十代目 金原亭馬生
・三代目 古今亭志ん朝