![]() | 無所属の時間で生きる (新潮文庫) |
クリエーター情報なし | |
新潮社 |
【一口紹介】
◆内容(「BOOK」データベースより)◆
どこにも関係のない、どこにも属さない一人の人間としての時間―それは、人間を人間としてよみがえらせ、より大きく育て上げる時間となるだろう。
「無所属の時間」を過ごすことで、どう生き直すかを問い続ける著者。
その厳しい批評眼と暖かい人生観は、さりげない日常の一つ一つの出来事にまで注がれている。
人と社会を見つめてきた作家の思いと言葉が凝縮された心に迫る随筆集。
【読んだ理由】
書名に惹かれて。
【印象に残った一行】
大手総合商社に三十六年勤務したある社員が、退職するに当たって配った挨拶文がある。
冒頭に私のことも書かれていて恐縮だが、ご紹介する。
「この日、この空、この私」
これは作家城山三郎が編んだ「男の生き方四十選」のはしがきの書き出しです。城山三郎はさらに筆をつないでこう言っています。
「自分だけの、自分なりに納得した人生---それ以上に望むところはないはずだ」と。
人生の持ち時間に大差はない。問題はいかに深く生きるか、である。深く生きた記憶をどれほど持ったかで、その人の人生は豊かなものにも、貧しいものにもなるし、深く生きるためには、ただ受け身なだけでなく、あえて挑むとか、打って出ることも、肝要となろう。
雨が多かろうが、少なかろうが、私は決めた道を歩いて行くしかない。
「行けど行けど一頭の牛に他ならず」
の耕衣句に励まされて。
それなら、一日に一つでも、爽快だ、愉快だと思えることがあれば、それで、「この日、この私は、生きた」と自ら慰めることができるのではないか。
つまり、これは私の造語なのだが、「一日一快」でよしと、よしとしなければ。
【コメント】
久し振りの城山三郎。彼の息遣いが聞こえてくるような随筆集だ。
近々に私もそうなるであろう「毎日が日曜日」を読んでみよう。