落語の国の精神分析 | |
クリエーター情報なし | |
みすず書房 |
◆内容紹介◆
「この本の主題は、ひとつは落語の根多である。
それは江戸から明治大正にかけての民衆の生みだしたフォークロアだと言ってよい。
無名の民衆が作り出し、楽しみ続けてきたものには、必ず無意識の力が動いている。
精神分析家として私は、それを読み解いてみたいと思った。
そしてもうひとつの主題は、落語家という人間の生き方だ。
落語家も精神分析家も単にひとつの職業にとどまらない、ひとつの生き方であるように思う。
落語家という、ひとりでこの世を相手にしている生き方と精神分析家には共通しているところがある。
それを前提に落語家として生きるとはどんなことなのか、そのことに少しでも迫りたいと思った」(「まえがき」より)
与太郎、若旦那、粗忽者… 落語の国の主人公たちは、なぜこんなにも生き生きとして懐かしいのか?
登場人物たちのキャラクターと病理の分析を軸に、古典落語の人間観と物語の力を解き明かす。
ひとり語りのパフォーミングアート・落語が生み出す笑いと共感のダイナミズムに迫り、落語家の孤独を考える。
著者はいう、屑屋の狂気も長兵衛の無私も佐平次の放縦も、私たちを励まし元気づける、いくぶん奇妙な「自我理想」なのだ、と。
観て、聴いて、演るほどまでに落語に魅せられてきた精神分析家による、渾身の落語評論。
巻末には立川談春師匠との対談「落語の国の国境をこえて」を収録。
◆著者について◆
ふじやま・なおき
1953年福岡県生まれ。幼少期を山口県の瀬戸内海岸で育つ。1978年東京大学医学部卒業。専攻、精神分析。
現在、上智大学総合人間科学部心理学科教授。東京神宮前にて精神分析家として個人開業http://fujiyamanaoki.com/。 国際精神分析学会(IPA)認定精神分析家。日本精神分析協会訓練分析家。
著書に『精神分析という営み〈正・続〉』『集中講義・精神分析〈上・下〉』『精神分析という語らい』(以上、岩崎学術出版社)など。
毎年5月と12月に「寝床落語会」http://www.geocities.jp/nedokorakugoにて落語口演。
【読んだ理由】
新聞の紹介記事を読んで。
【印象に残った一行】
立川談春
「兄弟子でこういうことを言った人がいる。談志や志ん朝が天才だと言うけど、そんな天才じゃねえ、、と。もし天才だと言うなら、あの人たちはひとつの噺を百回稽古する才能に恵まれたんだと。
百回稽古するということは、九十九回目が気にいらないから百回目をやるわけでしょう。修練ではないんですよ。ひとつの噺に九十九テーマが見つけられる。なるほどそれを天才といってるなら凄い
台詞だと思ったですけど」
【コメント】
落語を精神分析という道具をつかって料理した本であるが、著者が期待する「落語の持つ人間の自然への深いまなざし」は少し理解できたが、「精神分析という独特の人間の捉えかた」は浅学菲才の身には理解できなかった。