日本男道記

ある日本男子の生き様

徒然草 第百二十八段

2021年11月30日 | 徒然草を読む


【原文】  
雅房の大納言は、才賢く、よき人にて、大将にもなさばやと思しける比、院の近習なる人、「たゞ今、あさましき事を見侍りつ」と申されければ、「何事ぞ」と問はせ給ひけるに、「雅房卿、鷹に飼はんとて、生きたる犬の足を斬り侍りつるを、中墻の穴より見侍りつ」と申されけるに、うとましく、憎く思めして めして、日来の御気色も違ひ、昇進もし給はざりけり。さばかりの人、鷹を持れたりけるは思はずなれど、犬の足は跡なき事なり。虚言は不便なれども、かゝる事を聞かせ給ひて、憎ませ給ひける君の御心は、いと尊とき事なり。
大方、生ける物を殺し、傷いため、闘しめて、遊び楽しまん人は、畜生残害類たぐひなり。万の鳥ち獣、小さき虫までも、心をとめて有様を見るに、子を思ひ、親をなつかしくし、夫婦を伴ひ、嫉み、怒り、欲多く、身を愛し、命を惜しめること、偏へに愚痴なる故ゆゑに、人よりもまさりて甚し。彼に苦しみを与へ、命を奪はん事、いかでかいたましからざらん。
すべて、一切の有情を見て、慈悲の心なからんは、人倫にあらず。

【現代語訳】  
大納言雅房は博学で身分の高い人格者だったので、亀山法皇が「大将にでもさせてやろう」と思っていた矢先のことである。法皇の取り巻きが、「今、とんでもないものを見てしまいました」と報告した。法皇が「何を見たのだ?」と問い詰めると、「雅房の奴が鷹にエサをやるのだと、生きている犬の足を切断しているのを垣根の隙間から覗いてしまったのです」と答えた。法皇は気味悪さに嫌気がさした。そして、雅房の日頃の評判も失墜し、出世コースから弾き出されることになった。これほどの人格者が鷹をペットにしていたのは意外であるが、犬の足の話はデマだったそうだ。冤罪は気の毒であるが、この話を聞いて嫌気がさした法皇のハートは腐っていなかった。
どんな場合でも、動物を殺したり、いたぶったり、格闘させて喜んでいる輩は人間でなく、畜生がお互いに噛み殺し合っているのと同類だ。生きとし生けるもの全て、鳥や獣、虫けらまでも、よく観察してみると、子を想い、親を慕い、夫婦で寄り添い、嫉妬し合い、逆上し、欲張り、防衛本能が働いている健気な姿は、単純な脳味噌なだけに、人間よりもずっと素直である。そんな動物を、いたぶり殺しても平気だとすれば異常でしかない。
全ての心ある動物を見て優しい気持ちになれないとしたら、人間ではない 

◆鎌倉末期の随筆。吉田兼好著。上下2巻,244段からなる。1317年(文保1)から1331年(元弘1)の間に成立したか。その間,幾つかのまとまった段が少しずつ執筆され,それが編集されて現在見るような形態になったと考えられる。それらを通じて一貫した筋はなく,連歌的ともいうべき配列方法がとられている。形式は《枕草子》を模倣しているが,内容は,作者の見聞談,感想,実用知識,有職の心得など多彩であり,仏教の厭世思想を根底にもち,人生論的色彩を濃くしている。

Daily Vocabulary(2021/11/30)

2021年11月30日 | Daily Vocabulary
27836.grocery(食料品)food and other goods that are sold by a grocer or a supermarket
I’m going to stop by the grocery store on my way home. Do you need anything? 
27837.cut off(切り離す)to separate something by cutting it away from the main part/to stop the supply of something such as electricity, gas, water etc
Sorry about that. I got cut off. I have bad reception here. 
27838.heart-to-heart(腹を割って話す・本音を語る)a conversation in which two people say honestly and sincerely what they really feel about something
He had a heart-to-heart talk with his dad about his future. 
27839.man-to-man((男性同士)が腹を割って話す・本音を語る)f two men have a man-to-man talk, they discuss something in an honest direct way 
I talked with Steve man-to-man and cleared everything up. 
27840.on the fence(どっちつかず)to avoid saying which side of an argument you support or what your opinion is about a particular subject
 I'm still on the fence about it. But I'm leaning towards taking it. .