日本男道記

ある日本男子の生き様

徒然草 第百六十八段

2022年09月06日 | 徒然草を読む


【原文】 
年老いたる人の、一事すぐれたる才のありて、「この人の後には、誰れにか問はん」など言はるゝは、老の方人かたうどにて、生けるも徒らならず。さはあれど、それも廃れたる所のなきは、一生、この事にて暮れにけりと、拙く見ゆ。「今は忘れにけり」と言ひてありなん。
大方は、知りたりとも、すゞろに言ひ散らすは、さばかりの才にはあらぬにやと聞え、おのづから誤りもありぬべし。「さだかにも辨へ知らず」など言ひたるは、なほ、まことに、道の主とも覚えぬべし。まして、知らぬ事、したり顔に、おとなしく、もどきぬべくもあらぬ人の言ひ聞かするを、「さもあらず」と思ひながら聞きゐたる、いとわびし。 

【現代語訳】  
一芸に秀でた老人がいて、「この人が死んだら、この事を誰に聞いたらよいものか」と、言われるまでになれば、年寄り冥利に尽き、生きてきた甲斐もある。しかし、才能を持て余し続けたとしたら、一生を芸に費やしたようで、みみっちくも感じる。隠居して「呆けてしまった」と、とぼけていればよい。
おおよそ、詳しく知る事でも、ベラベラと言い散らせば小者にしか見えず、時には間違えることもあるだろう。「詳しくは知らないのです」とか何とか謙虚に言っておけば本物らしく、その道のオーソリティにも思われるはずだ。ところが、何も知らないくせに、得意顔で出鱈目を話す人もいる。老人が言うことだけに誰も反撃できず、聞く人が、「嘘をつけ」と思いながらも耐えているのには、恐怖すら覚える。

◆鎌倉末期の随筆。吉田兼好著。上下2巻,244段からなる。1317年(文保1)から1331年(元弘1)の間に成立したか。その間,幾つかのまとまった段が少しずつ執筆され,それが編集されて現在見るような形態になったと考えられる。それらを通じて一貫した筋はなく,連歌的ともいうべき配列方法がとられている。形式は《枕草子》を模倣しているが,内容は,作者の見聞談,感想,実用知識,有職の心得など多彩であり,仏教の厭世思想を根底にもち,人生論的色彩を濃くしている。

Daily Vocabulary(2022/09/06)

2022年09月06日 | Daily Vocabulary
29231.close to one’s heart  (大事に思っていること  )
I always keep family close to my heart.  
29232.give ~ the green light  (〜を承認する / 〜に許可を与える  )
Our affiliate company hasn't given us the green light yet. 
29233.give the go-ahead (〜を許可する / 〜にゴーサインを出す  )feeling or showing a lot of interest and excitement about something
He is very enthusiastic about the new project and is working harder than anyone else in the team.
29234.tell the difference (between A & B)  ((AとBの)違いが分かる  )
Can you tell the difference between cheap sake and expensive sake
29235.same difference (大して変わらない )spoken used to say that different actions, behaviour etc have the same result or effect
"Salada" "salad" same difference. You know what I mean.