【内容(「BOOK」データベースより)】
憎む者は憎め。俺は俺の道を歩いてやる。徒士組の子に生まれた阿部小三郎は、幼少期に身分の差ゆえに受けた屈辱に深い憤りを覚え、人間として目覚める。その口惜しさをバネに文武に励み成長した小三郎は、名を三浦主水正と改め、藩中でも異例の抜擢を受ける。藩主・飛騨守昌治が計画した大堰堤工事の責任者として、主水正は様々な妨害にも屈せず完成を目指し邁進する。
【読んだ理由】
山本周五郎代表作品。
【最も印象に残った一行】
自分たちだけが特別ではない。どんな男と女でもそうであろうが、連れ添う者に身も心も任せ、安心して幸不幸をともにしようとする女の姿ほどいじらしく愛らしいものはない。この平凡な、わかりきったところから、男のもっとも男らしいはたらきが生まれるのだ。
【コメント】
最晩年の『ながい坂』は、人生の長い坂を一歩一歩登っていく主人公の姿に周五郎の理念の影を見出すことができる作品、といわれているが主人公の生きざまだけでなく、彼を取り巻くの周辺の人物の生きざまにも心打たれる。