日本男道記

ある日本男子の生き様

方丈記(九):すべてあられぬ世を念じ過ぐしつゝ

2024年04月16日 | 方丈記を読む


【原文】 
我が身、父方の祖母の家を伝へて、久しく彼の所に住む。其後縁欠け、身おとろへ、しのぶかたがたしげかりしかど、つひにあととむる事を得ず。三十餘りにして、更にわが心と一の庵をむすぶ。是をありしすまひにならぶるに、十分が一なり。居屋ばかりをかまへて、はかばかしくは屋を作るに及ばず。わづかに築地を築けりといへども、門を建つるたづきなし。竹を柱として、車を宿せり。雪降り風吹くごとに、あやふからずしもあらず。所、河原近ければ、水難も深く、白波のおそれも騒がし。
すべてあられぬ世を念じ過ぐしつゝ、心を悩ませることは、三十餘年なり。その間折々のたがひめ、おのづから短き運をさとりぬ。すなはち、五十の春をむかへて、家をいで世をそむけり。もとより妻子なければ、捨てがたきよすがもなし。身に官祿あらず、何につけてか執をとゞめむ。むなしく大原山の雲にふして、又五かへりの春秋をなん経にける。


【現代語訳
我が身は、父方の祖母の家を受け継いで、久しくその家に住んでいた。その後、親類の縁が切れてしまい、身も衰えたので、忘れえぬ思い出は多かったのだが、ついにその家にとどまることができなくなった。三十歳余りにして、自分の意のままにと、一つの庵を結んだ。これを前の家と比べると、十分の一の大きさである。住居だけを構えて、きちんとした屋敷を作るには至らなかった。わずかに築地を設けたといっても、門を建てる資力がない。竹を柱にして、車寄せとした。雪降り風が吹くたびに、壊れそうになる。場所は河原に近いので、水難も多く、盗賊の恐れもあった。
そうじて生きにくい世を耐え忍びつつ、心を悩ませること三十年あまり。その間、折りにつけて不如意に会い、自づから我が身の不運を悟った。そこで、五十の春を迎えたときに、出家して遁世した。もとより妻子がないので、捨てがたいよすがもない。官祿のない身にとって、この世に何の未練があろうか。むなしく大原山の雲に臥して、さらに五たびの春秋を経たのであった。 


◆(現代語表記:ほうじょうき、歴史的仮名遣:はうぢやうき)は、賀茂県主氏出身の鴨長明による鎌倉時代の随筆[1]。日本中世文学の代表的な随筆とされ、『徒然草』兼好法師、『枕草子』清少納言とならぶ「古典日本三大随筆」に数えられる。

Daily Vocabulary(2024/04/16)

2024年04月16日 | Daily Vocabulary
32156.much the same (ほぼ同じ )
These two wines taste much the same to me. I can’t tell the difference. 
32157.Let’s say  (例えば〜としましょう )
Let’s say you could live anywhere in the world for one year. Where would you choose? 
32158.take home (手取り)the amount of money that you receive from your job after taxes etc have been taken out 
After taxes and deductions, you typically take home about three grand. 
32159.break even (収支トントン)to neither make a profit nor lose money 
Business has been slow recently. I just hope we break even this month. 
32160.otherwise (そうしないと )used when saying what bad thing will happen if something is not done 
Make sure you wear sunscreen. Otherwise, you’ll get sunburned.