日本男道記

ある日本男子の生き様

方丈記(十一):その所のさまをいはゞ

2024年04月30日 | 方丈記を読む


【原文】 
その所のさまをいはゞ、南にかけひあり、岩を立てて水をためたり。林の木近ければ、爪木を拾ふに乏しからず。名を音羽山といふ。まさきの蔓跡うづめり。谷しげゝれど、西はれたり。觀念のたよりなきにしもあらず。春は藤波を見る。紫雲のごとくして、西方ににほふ。夏は郭公をきく。語らふごとに、死出の山路を契る。秋は日ぐらしの聲耳に満てり。うつせみの世を悲しむかと聞ゆ。冬は雪をあはれぶ。積り消ゆるさま、罪障にたとへつべし。
若し念仏物うく、読経まめならぬ時は、みづから休み、みづからおこたる。さまたぐる人もなく、また恥づべき人もなし。ことさらに無言をせざれども、独り居れば、口業ををさめつべし。必ず禁戒を守るとしもなけくとも、境界なければ、何につけてかやぶらん。若し跡の白波に身をよする朝には、岡の屋に行きかふ船をながめて、滿沙彌が風情をぬすみ、もし桂の風、葉をならす夕には、潯陽の江を思ひやりて、源都督の行ひをならふ。若し余興あれば、しばしば松の響き秋風樂をたぐへ、水の音に流泉の曲をあやつる。藝はこれつたなけれども、人の耳をよろこばしめむとにはあらず。ひとり調べ、ひとり詠じて、みづから心をやしなふばかりなり。

【現代語訳
その場所の様子を言うと、南には懸樋があり、岩を組み立てて水をためている。林の木が近くにあるので、薪を拾うには便利だ。山の名を音羽山と言う。まさきの蔓が道を覆っている。谷は木々が繁っているが、西側は開けている。観念には都合がよいと言える。春は藤波を見る。紫雲がたなびくように、西の方向に咲き匂う。夏は杜鵑の声を聞く。それが鳴くごとに死出の山路を案内してくれるように願った。秋はヒグラシの声が耳に満ちる。その声はこの世を悲しんでいるように聞こえる。冬は雪を哀れむ。その積っては消え行くさまは、罪障の移り変わりにたとえるべきであろう。
もし念仏が面倒で、読経もままならぬ時は、自ら休み、自ら怠る。それを妨げる人もなく、また恥じるべき人もいない。ことさら口をきかないわけではないが、一人でいると、口の災いも逃れられるだろう。かならず戒律を守ろうとしないでも、破るべき境界がなければ、何につけて破ることがあろうか。もし、跡の白波に身を寄せる朝には、岡の屋に行き交う船を眺めては滿沙彌の風情を盗んで歌を読み、もし、桂の風が葉をならす夕には、潯陽の江を思い出しては、源都督の振舞を真似て琵琶を弾く。もし余興があれば、何度でも松の響きを秋風樂にたとえ、水の音にあわせて流泉の曲を弾く。一人調べ、一人詠じて、自ら心を養うばかりである

◆(現代語表記:ほうじょうき、歴史的仮名遣:はうぢやうき)は、賀茂県主氏出身の鴨長明による鎌倉時代の随筆[1]。日本中世文学の代表的な随筆とされ、『徒然草』兼好法師、『枕草子』清少納言とならぶ「古典日本三大随筆」に数えられる。

Daily Vocabulary(2024/04/30)

2024年04月30日 | Daily Vocabulary
32221.go to the hospital  ((緊急事態で)病院に行く )
Your ankle is so swollen. I think you broke it. You should go to the hospital and get it checked out. 
32222.go to the doctor  ((風邪などで)医者に診てもらう )
You've been sick for about a month now. Maybe you should go see a doctor. 
32223.omit((…を)(うっかりあるいは故意に)省く、省略する、抜かす、し落とす、怠る、なおざりにする )to not include someone or something, either deliberately or because you forget to do it 類義語 leave out 
Please don't omit any details, no matter how trivial they may seem. 
32224.save(手間を省く)friendly agreement and understanding between people → relationship 
 If I didn’t lend you any money, it would save you the hassle of paying me back. 
32225.unwind (寛がせる )to relax and stop feeling anxious 
He will slowly unwind from routine fatigue at the hot spring.