阿智胡地亭のShot日乗

日乗は日記。日々の生活と世間の事象記録や写真や書き物などなんでも。
  1942年生まれが東京都江戸川区から。

映画「海賊とよばれた男」を観ました。

2017年01月06日 | 音楽・絵画・映画・文芸
監督の山崎貴さんは13歳の時に信州松本の映画館で「スターウォーズ」を見てVFX(視覚効果)の世界に憧れたそうです。そしてその道に進みました。
 その山崎監督が脚本、監督、VFXを一人でやったこの映画は、原作は作家の百田尚樹ですが、映画は原作をヒントに紡いだ「脚本家が描くある九州男児の物語」が
スクリーン上に展開されます。監督自ら思い通りにVFXの技術を駆使した部分と、実写部分の統合に何の違和感も与えないのは映画『ALWAYS 三丁目の夕日』と同じです。

 映画のオープニングシーンは凄まじい。これほど米軍の焼夷弾が日本の民間人の住宅地を完璧に絨毯爆撃で襲い、民間人を殺戮していく場面を生々しく
描いた映画はなかったと思います。山崎監督は彼の持つ技術をここに結集しているなと思いました。このファーストシーンを見ることが出来ただけでも、
私は今回映画館に足を運んでよかったと思いました。
 山崎貴という日本人が持つ、戦争に負けた祖国、今も従属国状態の祖国への思いがこの映画から伝わってきます。彼の祖国愛が随所にほとばしるのがこの映画です。

関西出身の岡田准一と国村隼が対峙する場面が多く、国村隼の長年のファンにはとっては嬉しい映画ですし、門司で開業したから多くの登場人物が九州弁を使うのは、
九州若松の小学校時代に九州弁ばつこうとった阿智胡地亭には、なんがなし耳に心地のよか映画やったけんね。
 エピソード満載の原作から2時間25分の映画にまとめるコンテ作りはかなりしんどかったのではないかと、やや散漫さを映画の途中で感じましたが、
それは映画全体としては殆どキズにはならない仕上がりの、上質のエンターテイメント映画でした。
 山崎一家の吉岡秀隆、堤真一は勿論ですが最近は「深夜食堂」でいい味を出している小林薫も登場。今売りだしの西宮市出身芦屋南高校出の鈴木亮平やピエール瀧も
出てきて嬉しい限りでした。そして最初の妻の役を演じた「綾瀬はるか」が人間という存在が持つ一面の哀れさを見事に演じていました。
 映画館でのこの映画を鑑賞を皆さんにお勧めします。
 
 すべての映画は「映画の中の現実」という虚構で成り立っていることを観客が前提に見ればいいと、ある監督が言っていますが、映画にはそれを味わう楽しみがありますね。
公式サイト
キャスト
岡田准一  国岡鐡造
吉岡秀隆  東雲忠司
染谷将太  長谷部喜雄
鈴木亮平  武知甲太郎
野間口徹  柏井耕一
ピエール瀧 藤本壮平
須田邦裕
飯田基祐
小林隆
矢島健一
黒木華  小川初美
浅野和之
光石研  国岡万亀男
綾瀬はるか ユキ
堤真一  盛田辰郎
近藤正臣 木田章太郎
國村隼  鳥川卓巳
小林薫  甲賀治作

映画のモデルとなっているのは出光興産の創業者。
Wikipedia.
出光 佐三
生誕
1885年8月22日
福岡県宗像郡赤間村
死没
1981年3月7日(満95歳没)
出身校 神戸高等商業学校
(現・神戸大学経済学部)
職業  実業家
活動期間
1909年 - 1981年
肩書き
出光興産創業者
子供
長男:出光昭介(出光興産第5代社長)
親戚
弟:出光計助(出光興産第2代社長)
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映画「父と暮らせば」を観ました。   シリーズ黒木和雄監督の原爆三部作と遺作 その1

2017年01月06日 | 音楽・絵画・映画・文芸

父と暮らせば」
2005年1月31日 作成  発表時のタイトルは「宮沢りえと役者の力」

神戸朝日ビルデイングの地下にある映画館に「父と暮らせば」という映画を見に行きました。
今回見た映画の主演女優は宮沢りえでした。「たそがれ清兵衛」という映画を見てから、彼女はタレントではなく役者だと思うようになっていました。
そして今回「父と暮らせば」の彼女を見て、前よりもっと強く、この人は凄い役者になっていると思いました。
「たそがれ清兵衛」を見た後、彼女の事はそれまでは、芸能三面記事的なことしか知らなかったなあと思いました。
それはリエママと言われている母親のいうままに操られているタレントであるとか、何かのストレスで大痩せしたとかいうようなことです。
「たそがれ清兵衛」での彼女は役に成り切っていて、その役柄の人間そのものがスクリーン上で動いていました。

吉永小百合という映画女優は随分息が長い女優さんですが、彼女はどんな役を演じても、スクリーンに映っているのはやはり吉永小百合です。
しかし宮沢りえはスクリーン上で宮沢りえではなく、その役柄の人でした。

「いい映画だったから、見て来たら」とあいかたから言われて、「父と暮らせば」という映画を殆ど予備知識がないままに見に行きました。
登場人物はたった3人で、父親役の原田芳雄とその娘の役の宮沢りえ、もう一人大学助手役の浅野忠信という俳優さんでした。
時代と場所の設定は昭和23年の広島市内です。映画の初めから終わりまで父娘のセリフは、全部広島弁と言うことは事前に聞いていました。
広島言葉も私が好きなことを知っているので、そのこともこの映画を薦めてくれた理由の一つのようでした。

 たった3年間広島で単身生活をしただけの私の耳ですから、判別能力は大したことはありませんが、私には役者の使う広島言葉は何の違和感もなく、
広島に生まれ育った人が終始喋っているように思えました。アクセントも、そしてセリフにはもっと重要だと思うリズムも完璧でした。
(最後に流れるクレジットロールで確認したら、広島方言指導になんと3人の人の名前が出ていました。監督がセリフ回しに完璧を期し、役者もそれに応えたなと思いました。)
ピカの爆風で倒れた屋根の下に父親が埋まり、猛火が迫る中、彼を必死で救おうとして逃げない20歳の娘を叱咤して、逃げさせた父親。
傷ついた父親を見殺しにして自分だけが助かったと自分を責め続ける娘。
「うちはしあわせになったらいけんのじゃ」と彼女のセリフにありました。
 そのシーンを見ると同時に、10年前に神戸のあちこちで同じような目にあった人が沢山いたことが頭に浮かびました。
元々がもう何度も上演された舞台劇の映画化であるということや、出演者がほぼ親子二人だけと言うこともあり、
セリフは一つ一つが長くて緊張感がありました。それを宮沢りえは美津江という役柄の人に成り切って喋りました。
スクリーンの上には美津江しかおらず、宮沢りえはどこにもいませんでした。
映画が始まってすぐに、私の前から俳優そのものは消えて、今このような人達が目の前にいると思って見ていました。
勿論プロデユーサーと監督がいなければ、また原作と脚本がなければ映画は出来ませんが、引き込まれる映画や舞台には
役者の力も本当に大きいと強く思いました。
広島で勤務していたある夏の暑い日に、たまたま通りかかったビルの壁に銅板がはめ込まれているのに気付き、何気なく読んだら、
「この場所の真上560mの高さで原子爆弾が炸裂しました」と書いてありました。思わず青い空を見上げました。
「その瞬間、爆心地の温度は太陽の表面温度6,000度の2倍の12、000度になりました」とも。
声高に言うこともなく、何も押し付けることもない。ただ自分と同じような人たちがあの瞬間まで生きていて死んだ、
そしてその経験を伝えずにまだ生きている人もいることを映像で伝える。映画というメデイアも凄いけど、
そのことを全身で伝えきる役者というのも凄い職業だなあ、そしてあの役柄になりきった宮沢りえという役者は、
どうやったらあんなことが出来るのだろうと思いました。 

 

父と暮せば  (引用元:シネ・ヌーヴォのサイトから)。

 

父と暮せば

2004年/衛星劇場+バンダイビジュアル+日本スカイウェイ+テレビ東京+メディアネット+葵プロモーション+パル企画/35ミリ/ビスタ/カラー/100分/企画:深田誠剛/製作:石川富康、川城和実、張江肇、金澤龍一郎、松本洋一、鈴木ワタル/監督:黒木和雄/原作:井上ひさし/脚本:黒木和雄、池田眞也/撮影監督:鈴木達夫/美術監督:木村威夫 /音楽:松村禎三/録音:久保田幸雄/照明:三上日出志/美術:安宅紀史/編集:奥原好幸/VFXプロデューサー:大屋哲男/助監督:水戸敏博 ■出演:宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信

♦『TOMORROW/明日』で長崎原爆をみつめた黒木が、広島原爆をテーマに描いた傑作。井上ひさしの傑作戯曲「父と暮せば」の映画化。広島の原爆投下から3年、生き残った後ろめたさから幸せになることを拒否し、苦悩の日々を送る主人公・美津江。そんな娘を案じ亡霊として舞い戻った父・竹造との、励まし、悲しみを乗り越え、未来に目を向けるまでの4日間を描いた感動作。『TOMORROW/明日』『美しい夏キリシマ』とともに「戦争レクイエム」三部作と評された。黒木自らが「原節子の再来だ!」と絶賛した娘・美津江を演じた宮沢りえが素晴らしい。

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