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NHK朝ドラの主人公「繭子」像が三戸城址に建っていた。五月の連休だというのに
観光客は誰もいない。そんな寂しい佇まいの城址一角に変らぬ装いの『繭子』はいた。
繭子ひとり像:作家三浦哲郎の小説、昭和46年NHK朝ドラ人気ヒロインの繭子役の
山口果林の姿が銅像だ。此の除幕式には原作者の三浦哲郎は顔を出さなかった。
後日:三浦哲郎の「笹船日記」に、後に繭子の像について綴った文章が残されている。
『繭子よ。では、二十年後にまた逢おう。それまで私が生きていたら。おまえも
また、その日まで、たとえ緑青の瘡蓋に覆われ、枯木の杖にもたれても、ここ
にこうして立ちつづけているものなら、そのときこそ、繭子よ、私たちは心静
かに、若き日の夢のような受難について語ろう』
感想:作家三浦哲郎にとって予期しない高視聴率となった「繭子ひとり」は色んな意味
で思いもしない出来事だったかもしれない。しかしいつか作品から独り歩きし
たテレビの繭子(山口果林)にもしかしたら同志的感情を抱き始めたのかも知れない。
感慨:筆者が訪れたのはこの像が出来て44年後、三浦哲郎が二十年後にまた会おうと
いった倍の年月が経っているが・・・・繭子像は変わらぬ佇まいで歴史を観ている。