孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ホルムズ海峡の波を鎮めて、変わるか?イラン・アメリカ関係

2008-01-09 15:42:21 | 国際情勢

(コカ・コーラを飲むイラン女性 “flickr”より By zoghal)

何かと政治的な対立が話題になるイランとアメリカですが、 「イラン人はもともと米国的なものが大好きだ」とも言われているようです。【1月4日 毎日】
確かにイラン革命前は中東でも最もアメリカ文化に慣れ親しんだ国でした。
ミニスカートや飲酒も許されており、その自由を懐かしむ空気も国民にはあるとか。
今でも衛星放送が黙認されており、人々はハリウッド映画や西洋音楽を楽しんでいるそうです。

アルコールが禁じられている現在はコーラがよく飲まれるそうですが、アメリカ文化を象徴するようなコカ・コーラとペプシ・コーラが経済制裁の縛りをアイルランド経由という手法でかいくぐり、イランで競争を繰り広げているそうです。
イスラム聖地の名前を冠した地場資本のザムザム・コーラというものがありますが、都市部ではアメリカのコーラがこのザムザムを追いやる勢いだそうです。
イラン政府はコカ・コーラ、ペプシ・コーラ更にはネスレの商品を、「シオニスト」が生産したとして大がかりな不買運動を展開したこともありますが、「米国産だから買うなと言えば余計に売れる」というのが実態のようです。

さて、ここのところホルムズ海峡の波が一段と高くなったようです。
ただ、この件に関しては、アメリカ側はブッシュ大統領が「挑発行為」として非難していますが、イラン側は「通常の任務」として静観する構えというのが、各メディアの報じるところです。
イラン政府のコントール下でなされたというより、最近のイラン・アメリカ関係の変化に反発する革命防衛隊内の一部強硬派のデモンストレーションのようにも見受けられます。
それにしても、世界経済及び日本経済にとっては全く迷惑な話で、“まかり間違って・・・”という事態もありえる危険な行為です。

昨年末の12月3日に米情報機関の機密報告書「国家情報評価(NIE)」が“イランが核兵器開発を2003年に停止した”と分析して脅威評価を劇的に転換したことを受けて、イラン・アメリカ関係には大きな変化が感じられます。
これまで「イランと米国は狭い一本道を互いに反対方向から猛スピードで車を走らせている。正面衝突を恐れてハンドルを切った方が負けだ」(イラン保守強硬派メディアグループを率いるシャリアトマダリ社長)という“チキンレース”を繰り広げてきましたが、アメリカ側が急ハンドルを切ったようにも見えます。

アメリカ側の背景にはいろいろ憶測がなされていますが、イラン強硬派の間には、対米強硬姿勢を貫いたことでアメリカ側の「危機回避」を導いたとの勝利感が拡がったようです。

ただ、対米強硬姿勢をリードしてきたアフマディネジャド大統領は、保守派内からも“いたずらに危険なゲームにイランを巻き込んでいる”という批判が強くなっていた事情もあってのことと思われますが、“勝利宣言”の一方で、「友情や協力、誠意を示すなら、イラン国民が良い友だということがわかるだろう」とも述べ、アメリカがイラン敵視政策を放棄すれば、すでに協議を続けているイラク情勢以外の問題についても対話に応じる用意があることも示唆しました。
これを機に軌道修正を図ろうとする意向が窺われます。

大統領の後ろ盾でもある最高指導者ハメネイ師は、従来からアフマディネジャド大統領の強硬路線には不満を持っていると伝えられていましたが、今月3日、米国との関係について「永遠に断たれるべきだとは言っていない。いつか関係を再開する時はイランの国民や国家にとって間違いなく有益になる」「私は米国との関係を承認する最初の人間になるだろう」と、明確に踏み込んだ発言をしています。

イランの外交攻勢も昨年末から目立ちます。
昨年12月、湾岸協力会議(GCC)の首脳会議にアハマディネジャド大統領はイラン首脳として初めて参加。
また、サウジアラビアのアブドラ国王の招きで聖地メッカも巡礼し、サウジとの関係改善を国際社会に印象づけました。
第一副首相のリビア訪問やロシアからの防空ミサイルシステム「S-300」購入の話もありました。(後者については、ロシアは否定しています。【12月28日 時事】)

イラン・アメリカ関係を軸にイランを取り巻く国際環境が大きく動くような気配も感じますが・・・どうでしょうか。
もともとイラン側には親米的な空気が潜在的に存在していますし、関係悪化に拍車をかけたブッシュ大統領の“悪の枢軸”発言も、“枢軸”という言葉に合わせてスピーチライターが数合わせのためにイランを加えたとも言われています。【1月5日 毎日】

イランの政治システムは、イスラムの影響は強いにしても、まがりなりにも“民主的”な選挙制度を基盤としたシステムであり、国民の政治的権利が十分と言いがたい中東各国の中ではむしろ西欧的システムに近いほうではないでしょうか。
イラン・アメリカ関係の修復を支える基盤はあるようにも思えます。

そんなイラン国会(定数290)の任期満了に伴う総選挙が3月14日に予定されています。
立候補者の登録受け付けが開始されたことも報じられています。
すべての立候補者は護憲評議会の承認を受ける必要がありますが、前回の選挙では、護憲評議会は約2000人の立候補者の申請を却下しました。
そのほとんどが改革派だったため、首都テヘランなどで穏健派支持者の投票率が低下し、改革派敗退の一因となりました。【1月6日 AFP】

最近の選挙ではアフマディネジャド大統領支持勢力の敗北、政敵である保守穏健派ラフサンジャニ師の勢力伸張が伝えられています。
大統領の対米関係の舵取り、保守派内部での反応、更には護憲評議会の改革派への対応などが注目されます。

コメント
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