孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  農民工の民族大移動

2008-01-23 16:14:09 | 世相
中国全国人民代表大会(全人代)の代表に、農村からの出稼ぎ労働者“農民工”として初めて33歳の女性が選ばれたそうです。
昨年3月の全人代で農民工を代表として選出することが規定され、今回の広東省の女性はその第1号。
3月5日に開幕する次期全人代に向けて今後、全国各地で農民工代表が誕生する予定だそうです。

四川省から広東省に出稼ぎに来て、現在は工場の品質管理部門で副主任を務めている女性だそうですが、間違いなく優秀でまじめな方なのでしょう。
中国の驚異的な経済発展を底辺で支えているのが、膨大な人数の農民工です。
必ずしも未だその境遇は十分ではないと言われていますが、そんな農民工に少しでも政治の光があたるのであれば、どのように選出されるのかはわかりませんが、それはそれで結構なことだと思います。

中国は丁度、春節(旧正月)の休暇(2月6日~12日)を前に、農民工のような地方からの出稼ぎ者が故郷に帰省する“民族大移動”が始まる時期です。 
“【千変上海】前田徹 さまよえる民工たち”(1月22日 産経)に、上海のそんな農民工の姿が描かれています。

この時期上海で移動する人の数は約600万人。
駅では切符を求めて2日2晩並ぶ人も。

“夫婦連れは三峡ダム近くの湖北省宜昌出身。30代後半の2人は路上で野菜売りをして生計を立てている。上海に来て5年。故郷に3人の子供を残し、両親に世話を任せている。「とにかく稼がないとね。休んだことなど一度もない。春節だけが唯一の楽しみだ」 ”
上海の復旦大学などが行った調査によると、4人に1人の給与が未払いで、55%以上の民工たちの休暇は月2日未満。ほとんどの場合、差別的扱いに苦悩している。そして67・1%の民工が5年以内に出稼ぎ場所を変える漂流労働者になっているそうです。

同様のレポートを、以前NHKのTV番組で観た記憶があります。
“上海巨大バスターミナル”というドキュメンタリーで、春節の時期、長距離バスがひっきりなしに発着する上海のバスターミナルの表情を追った番組で、非常に秀逸でした。

久しぶりに故郷に帰れることで幾分上気したような出稼ぎ労働者達が描かれています。
バスは身動きするのも苦労するような2段ベッドのかたち、そこで横になって1500kmぐらいを1昼夜かけて走ります。
料金は平均すると月の収入の半分ぐらいと決して安くありませんが、鉄道よりも割安で、なにより中国全土を網の目のようにカバーしています。

バスに乗り遅れ、それでも高価なチケットをもう1回買って故郷を目指す者
字が読めず、どのバスにどうやって乗っていいかわからず座り込み泣き崩れる女性
見かねて、その女性を手助けしてチケットを買ってやる男性
雇い主から給料を払ってもらえないという男性、それでも帰省のバス代だけは出してくれたとか
遅れるバスの穴埋めに臨時バスをチャーターして、バスの運行をやりくりする男性
窓口の対応が悪いと殺気立つ客

ターミナルに来る途中、路上で1年間貯めたお金を強盗に奪われた老人出稼ぎ者もいました。
レポーターとその老人の話を近くで聞いていたやはり床に座ってバスを待つ見ず知らずの若者が、黙って老人に飲み物とお菓子みたいなものを押しやります。
驚いた老人は遠慮しますが、若者は“いいから・・・”といった感じですすめます。
そんなシーンが印象的でした。

NHKの農民工を扱った番組では、“激流中国 富人と農民工”という番組もありました。
故郷に残した家族のため、体調が悪いのをこらえて力仕事に出る男性
いくら働いても故郷の娘の進学の費用が工面できない男性
結局子供を預けて妻も出稼ぎにでます
しかし、都会でも出稼ぎ者多く、仕事にはなかなかありつけません
その日も仕事がなかった夫を激しくなじる妻
いたたまれずに部屋を出る夫・・・

今日のニュースから
****「鳥の巣」での死亡事故隠ぺい問題、当局が調査に乗り出す****
北京五輪のメインスタジアム、北京国家体育場の建設現場で、少なくとも10人の作業員が事故死していた事実を当局が隠ぺいしていたとの報道について、中国当局は22日、この件に関し調査を行うと発表した。
中国の労働安全に関する統計によると、中国国内では炭鉱や工場、建設現場で毎年数万人が死亡しているという、驚くべき状況だという。一方、当局側は、数十か所に上る五輪関連施設の建設現場で死者が出ているという事実は、これまで認めていない。【1月23日 AFP】
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一方、北京市民の意識にかんするこんな調査も
*****北京市の民衆は幸福らしい・経済貿易大学調査*****
北京の経済貿易大学が《2007年の北京市社会生活指数体系》を発表した。
07年度、北京市都市部住民は自分の生活に対して比較的に満足していて、全体の幸福指数は72.44に達している。1万人を超える調査対象者のうち、6割近い住民は自分の生活は比較的幸せだと感じている。ただ、2%の人だけは自分がとても不幸だと感じているらしい。
北京の女性は男性に比べて、より“幸福”を感じている。62.6%の女性は幸福を感じているが、男性は51.9%だけにとどまっている。
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“北京都市部住民”に出稼ぎの農民工は含まれているのでしょうか?

コメント
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