
(ケニア・ナイロビ 12月31日 “flickr”より By walrusflickr)
正月のカンボジア旅行から帰国して一番驚いたニュースがケニアでの混乱。
大勢が逃げ込んだ教会に弓や牛刀を手にした暴徒が火をつけて焼き殺す・・・
死者は全土で600人以上
難民は25万人
これはもう暴動以外の何ものでもありません。
年末の段階で与党国家統一党(PNU)の現職キバキ大統領と最大野党オレンジ民主運動(ODM)のオディンガ候補が接戦を演じており、ひょっとすると現職が敗れるかも・・・というニュースは見ていましたが、こんな事態になるとは。
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28日の段階では、オディンガ氏が大差でリードしていたが、その後、キバキ氏の得票が急増。現場の選管職員が「キバキ陣営の不正に加担させられた」と記者会見で告白したほか、両陣営が個別に会見を開いて「独自集計」を発表し「当選」を主張し合うなど作業は混乱を極めた。最終的には、選管が会見場から記者や野党関係者を排除し、密室からテレビ中継で結果を発表した。 同時に行われた議会選(定数224)で、与党「国民統一党」は40議席を下回る大敗を喫した。【12月31日 毎日】
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上記の記事を読むと「なんかあったのかな・・・」という感じもします。
それにしても、ここまでの暴動に発展するとは。
被害にあっているのはキバキ大統領の出身部族で最大部族のキクユ族ですが、エルドレットなど暴動被害が深刻なリフトバレー州はオディンガ氏が属する有力民族ルオではなく、モイ前大統領の出身民族カレンジンが大多数を占めているとか。
ウィキペディアによると、ケニアの部族構成はキクユ族が22%、ルヒヤ族(ルイヤ族)が14%、ルオ族が13%、カレンジン族が12%。ほかにマサイ族、サンブル族、トゥルカナ族、ソマリ族など。
特にキクユ族がマジョリティという訳ではなく、かなり分散しているようです。
「キバキはキクユばかり優遇してきた」という暴徒の発言も紹介されていますが、私はその実態についてはまったく知りません。

(ケニア・ナイロビ 一時「キバキ大統領が辞任する」という誤報が流れ、スラム“キベラ”周辺の道路は喜ぶオディンガ氏支持者で埋まりました。 “flickr”より By walrusflickr)
ケニアというと経済的にはキバキ大統領のもとで市場経済化を進め、アフリカのなかでは比較的順調な経済発展を実現している国というイメージを持っていました。
もちろん8月22日の大規模スラム“キベラ”を取り上げたときにも触れたように、市場経済化は一方で国内の格差を生みますので、その方針が本当に住民の生活向上につながるのかどうか、また、今回の暴動の背景にそのような不満が存在するのか・・・そのあたりも全くわかりません。
ケニアについては、順調な経済・観光ともうひとつ、相互扶助精神(誰かがお金が必要なとき、みんなで小額ずつ出し合ってこれを助けるような)とも言うべき“ハランベー”と呼ばれる習慣があることもよく紹介されています。
それだけに、今回の報道は“驚いた”という以上に“がっかりした”というのが正直な感想です。
一度も現地に行ったことすらない部外者には、現地の実情など知りえないのでしょう。
「幹線道路は西部リフトバレー州などを中心に暴徒化した群衆に封鎖され、トラック輸送が不可能な状態。世界食糧計画(WFP)によると、ケニアから近隣国のスーダン、ウガンダなどへ向けた人道支援のための食糧配達ができない。ケニアからのガソリン輸入に頼るルワンダ政府は3日、乗用車1台の1日の給油量を10リットルとする規制を発令した。」【1月4日 毎日】というように隣国にも大きな影響が出たようですが、今はどうなっているのでしょうか。
暴動のほうは一旦沈静化したようですが、キバキ大統領は8日新内閣の一部を発表、これに野党勢力は一斉に反発し、野党勢力の地盤である西部のキスムや首都ナイロビのスラム地区で暴動が再発しているとも報じられています。
アフリカ連合(AU)議長であるガーナのジョン・クフォー大統領が事態打開のための仲介を行うためにケニア入りし、9日にはオディンガ氏と会談。
オディンガ氏は危機打開策として、(1)暫定政府の樹立(2)昨年12月末の大統領選挙の再集計-などを挙げています。
【1月10日 時事】
そんなケニアの暴動に関連して興味深いニュースがふたつ。
ひとつは“呪い”の話。
***呪い恐れ盗品次々返却 店主の「祈るぞ」に動揺 ケニア****
混乱が続くケニア東部の町モンバサで、商品を略奪された店主が特別なイスラム教の祈りを唱えると公言したところ、呪いを恐れた暴徒が次々と盗品を返しに来る「事件」が起きている。
警察はその様子をやじ馬と一緒に眺めていたといい、逮捕する動きはない様子だという。 【1月9日 朝日】
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600人もの犠牲者を出している混乱状態に関して“興味深い”と言うと不謹慎極まりないのですが、やっぱり「へー・・・」と思ってしまいます。
もうひとつは、オディンガ氏が8日、複数の英メディアに「米大統領選の民主党有力候補、オバマ氏とは親類だ」と語っている件。【1月9日 産経】
オバマ氏の父親はオディンガ氏の母方のおじに当たるそうです。
もし本当なら、「アメリカ大統領を目指すんなら、今すぐケニアに行って親戚のオディンガ氏と話して、混乱解決に乗り出したら?」と言いたくなります。
まあ、まだ大統領になった訳でもありませんから、無理な注文でしょうが。
でも、もしここでポイントを稼げたら、ヒラリーの“涙”に勝てるかも・・・