孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド沖合いの海賊誤認殺害事件で、イタリアが裁判中兵士を一方的に自国へ

2013-03-17 01:25:48 | 南アジア(インド)
現在、ネパールを観光旅行しています。
今日16日は、ポカラから首都カトマンズに戻ってきました。
安心して歩けたポカラ(停電の暗闇で、一雨降ったあとの水たまりだらけのグチャグチャになった道を歩くときは別ですが)に比べ、カトマンズでは前後左右から襲い掛かる車・バイクに気を使います。

【「イタリアはインドを『バナナ共和国』扱いしている」】
海賊警護の関係でインドとイタリアが揉めているそうです。
約1年前にインドの沖合いで、イタリア船籍タンカーを警護していたイタリア海兵隊兵士がインド人漁船員を海賊と誤って射殺した事件があったのですが、インドで裁判中のそのイタリア海兵隊兵士が選挙投票のためイタリアに一時帰国したままインドに戻ってこない・・・ということのようです。

****大使出国させるな」、保釈兵士逃亡でインド・イタリア間に確執****
インド内務省は15日、同国駐在のイタリア大使を出国させないよう、国内各地の空港当局に警戒態勢を命じた。殺人事件の被告として裁判にかけられていたイタリア人兵士2人が、保釈中にイタリアへ帰国したままインドへ戻っていない事態をめぐり、両国関係は今週に入って緊張の度合いを高めている。

インド内務省筋によると、同省は15日、出入国管理当局に対し、イタリアのダニエレ・マンチーニ駐インド大使を「無断で出国させないよう注意せよ」とファックスで通達した。インド最高裁判所が同日、この問題をめぐる次回審問が行われる18日までマンチーニ大使の出国を禁じる命令を出したことを受けた処置という。

■発端はタンカー護衛中の事件
事態の発端となったのは、昨年2月にイタリア海兵隊の兵士2人がインド沖で、インド人漁船員2人を射殺した事件。この海兵隊員らはイタリア船籍の石油タンカーを護衛中で、近づいてきた漁船を海賊と誤って撃ったと主張している。

事件の裁判は当初、インド・ケララ州の地方裁判所で始まったが、その後インド最高裁へ移され、特別法廷の設置が命じられた。しかし、マッシミリアーノ・ラトーレ被告とサルバトーレ・ジローネ被告の2人は、今年2月末に行われたイタリア総選挙で投票するため4週間の保釈を認められて帰国したまま、現在もインドへ戻っていない。

イタリア外務省は18日、両国間の「外交論争」を考慮し、保釈期間が過ぎても両被告はインドに戻らないと発表した。イタリア政府は、銃撃は国際水域でイタリア船籍の船舶をめぐって起きたものであり、海兵隊員2人はイタリアで裁かれるべきだと主張している。これに対しインドは、自国領海内で起きた殺人事件だと反論している。

■悪化する両国関係、「バナナ共和国扱い」の批判も
両国の関係は、イタリアの軍用ヘリコプター12機、総額7億4800万ドル(約720億円)規模をインドが購入する取引をめぐる汚職疑惑が持ち上がっていることでも悪化しており、インド政府は契約の破棄さえちらつかせている。

マンチーニ大使は12日、インド外務省に呼ばれ、海兵隊員2人の身柄を直ちにインド側に引き渡すようランジャン・マタイ外務次官から要請された。インド各紙の報道によれば、マンチーニ大使は最高裁で引き渡しを個人的に保証したため、2人が戻らなければ国外追放される可能性もある。

海兵隊員をインドへ戻さないというイタリア政府の発表に対しインドの主要野党、インド人民党(BJP)は、「イタリアはインドを『バナナ共和国』扱いしている」と強い非難を表明した。インド国内では政府の対応に怒りが広がっており、マンモハン・シン首相の人形を燃やすなど激しい抗議も起きている。

こうした強い反発を受け、普段は穏健なシン首相も13日、「(イタリアが)自分たちの約束を守らなければ、わが国とイタリアの関係に重大な結果を引き起こすだろう」と述べた。

インドは一歩も譲らず
マンチーニ大使は「両国はともに成熟した民主主義国であり、これらの困難を克服できると確信している」と述べているが、事件が起きたケララ州のオーメン・チャンディ州知事の「いかなる譲歩もあり得ない。海兵隊員たちはインドで裁判を受けるべきだ」という言葉がインド側の姿勢を代表している。

インドPTI通信によれば、チャンディ知事は「外交上の地位を利用して、相手の国の最高裁をだます国などあるものだろうか。イタリアがもしも約束を守れないならば、外交上の悲劇となるだろう」と非難している。【3月15日 AFP】
********************

イタリアは計器データをもとに公海上で起きたと主張、インドは領海、後に接続水域で起きたと主張しています。
イタリアとしては、事実関係をねじまげるインド側の対応にはつきあえない・・・というものでしょう。
どちらが真実なのかは、もちろんわかりません。
なお、事件当時の報道では、“海兵隊員らは警告射撃しかしていないと主張している”とも報じられていました。

そうした事実関係をめぐる争い以外に、イタリア側には軍としての作戦中の行為が刑事的に裁かれることへの抵抗・軍の論理もあるように思えます。
アメリカの無人機がパキスタン領内で行う爆撃で民間人犠牲者が多数でていることに関して、アメリカがこれを止む無しとして作戦を継続していることと似たような意識も感じます。
こうした事件の可能性があるからこそ、アメリカはアフガニスタン撤退後の残留部隊に関して刑事免責を求めているのでしょう。

インド側はこれまで、裁判中の2兵士にクリスマス休暇の一時帰国を認めるとか、最高裁に特別法廷を設けるなどのイタリア側に配所した対応も行っています。

相手国のナショナリズムによって自国民が不当に裁かれる・・・・というイタリア側の気持ちはわかりますが、記事を読んだ印象としては、裁判中の被告を一時帰国を認めた特別待遇を利用して勝手に自国にとどめてしまうというのは、国際信義を踏みにじる対応のように思えます。

裁判を継続すればインド側は有罪判決を譲らないでしょうが、これまでのインド側の配慮も考えると、インド国内で1,2年服役したのち身柄をイタリアに移すなどの外交的対応もあったのではないでしょうか。
「イタリアはインドを『バナナ共和国』扱いしている」と批判されてもやむを得ないようにも思えます。

それにしても、インド南部の沖合いで海兵隊警護が必要なほど海賊が横行しているのは知りませんでした。
はるかソマリアから出張してくる海賊がいるようです。2011年2月には、ムンバイ沖合いで28名のソマリア海賊が逮捕されています。
“インド沿岸警備局バサラ将官は同日、各国の商船に対して、海賊出没が懸念されるインド南西ケララ州沖の危険地域に近づかないよう呼びかけた。”【2011年2月11日 大紀元】

インド南部のケララ州はインド北部に比べるとはるかに穏やかな気風の地域ですが、かつての和寇と同様に、ソマリア出張組だけでなくインド国内の海賊もいるのではないでしょうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする