孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

カンボジア特別法廷  高齢化で被告死去や運営の資金不足の問題

2013-03-15 01:35:39 | 東南アジア
現在、ネパールを観光中です。昨日からはヒマラヤに近い観光都市ポカラに滞在しています。
今朝起きると、ホテルの部屋の窓に、大きなマチャプチャレの姿があり感激しました。

マチャプチャレは標高6993m、名前の由来は「魚の尾」。ポカラ市街からはマッターホルンのような尖った山容が望めますが、眺める方角を変えると、ふたつのピークが丁度魚の尾のように見えることからの名前です。
今日は、ノーダラからサランコットまでの10km程度を、現地ガイドと一緒に歩きました。

関係者の高齢化
今日、気になったニュースはカンボジア特別法廷に関するもの。

****イエン・サリ元副首相が死去=ポト派ナンバー3、裁判中―カンボジア****
カンボジア旧ポル・ポト派のイエン・サリ元副首相が14日、プノンペンの病院で死去した。87歳だった。ポト派による大量虐殺に関し、人道に対する罪などに問われていたが、特別法廷で行われていた元副首相の裁判は死去に伴い近く終結する。
心臓に持病があり、4日朝、体調不良を訴えて入院していた。

ポト派をめぐっては、最高指導者だったポル・ポト元首相は既に死去。ナンバー2のヌオン・チア元人民代表議会議長らの裁判が続いているが、関係者の高齢化が進んでいる。元副首相の死去により、自国民を大量虐殺した暗黒時代の真相解明はさらに遠のく恐れがある。
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被告の高齢化の問題はかねてから指摘されていたところですが、懸念が現実のものとなっています。
起訴されたポト派最高幹部である被告4名のうち、今回死去したイエン・サリ元副首相の妻イエン・チリト元社会問題相は、認知症で公判の維持が困難だとして、昨年9月、釈放されています。
残るのは、ナンバー2であったヌオン・チア元人民代表会議議長(86)、と、対外的な顔であったキュー・サムファン元幹部会議長(81)の2名です。

法廷職員の給与未払い
特別法廷は、被告の高齢化のほかに、運営のための資金不足という問題を抱えています。
日本はこれまでの費用の44%を負担してきています。

****虐殺糾明、資金難で危機 判事・職員300人、給与未払い ポル・ポト派特別法廷*****
カンボジアの旧ポル・ポト政権の国民大虐殺を裁く特別法廷で、運営資金が不足して昨年末から約300人の職員給与が未払いとなっている。
裁判が長期化し、国際社会の支援が枯渇しているためだ。審理にも影響が出始め、判決に真相究明を委ねる被害者たちは危機感を募らせている。

●長期化で支援枯渇
特別法廷が始まったのは2006年7月。国連とカンボジア政府の共同運営で、判事や職員は、国連側の百数十人とカンボジアの約300人からなる。給与は国連スタッフには国連が、カンボジア人には同国政府が支払う仕組みだ。
だが、カンボジア政府の負担分も、実際には大半が諸外国の支援でまかなわれている。法廷事務局の説明によると、今年は約930万ドル(約8億6千万円)が必要なのに、7割以上が不足。そのため給与が払えず、職員の契約更新もできない状態だ。未払いを不服として出勤しない職員も出始めているという。

日本は国連平和維持活動(PKO)に初めて自衛隊を派遣したのがカンボジアだった経緯もあって、当初から積極的に拠出を続け、最大の支援国となっている。これまでの拠出総額は計約7913万ドルで、全体の44%を占める。2番以下の豪州10%、米国7%、独6%と比べて突出している。

財政危機を乗り越えるには他国からの支援増が不可欠で、日本は関連の国際会議などで、東南アジア諸国連合(ASEAN)などに協力を呼びかけている。だが、当事国のカンボジアが約4%しか負担できていないことや、世界的な景気低迷の影響から、まとまった援助を新たに名乗り出る国は見当たらない。

日本は今後も支援する方針だが、当初3年で終結する見通しが、裁判の長期化で拠出が膨らんでいることや、日本に負担が集中している現状を疑問視する声は政府内にもある。
今年1月、現地の日本大使館は、同じく資金が不足しがちな国連側への支援として248万6千ドル(2億3千万円)の追加支援を表明したが、その際法廷に「公正、効率的、迅速な運用を」と運営の改善を促した。

●人員減で審理に遅れ
法廷は資金不足で書記官の数が減り、審理が週4回から3回に減ってさらに長期化するという悪循環に陥っている。元同法廷判事の野口元郎さんは「カンボジア政府と国連は、裁判の今後のあり方について真剣に検討すべき時期に来ている」と指摘している。

法廷の危機を、最も憂えているのは被害者や犠牲者の遺族だ。
ポル・ポト政権時代に祖父母や父、6人の兄弟を亡くしたシナさん(58)は「とても残念」と話す。
家族を失い、自分も一時刑務所に収容され、生きることがつらかった。特別法廷が始まって「新しい人生が生まれた」と思った。これで正義が証明される、もうひどい時代に戻らない、と希望を持てた。
処刑施設として知られる「S21収容所」に一時連行され拷問を受けた経験があるメットさん(55)も、「どうか支援を続けて欲しい」と訴える。
「次の世代で過ちが繰り返されないために、裁判は続けなければならない」【2012年2月15日 朝日】
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暗黒時代の真相解明
これまでも何度か取り上げたように、カンボジアのフン・セン首相は、自身がかつてはクメール・ルージュの一員だったこともあり、過去を蒸し返す特別法廷にはあまり積極的ではありません。資金難も首相のそうした姿勢の反映でしょう。

特別法廷の目的は被告らの責任を追及することより、強制労働、粛清によって病死、餓死を含め170万人以上が死亡するという惨劇が何故起こったのかという真相を明らかにすることでしょう。
誰が、どのような目的で命じたのか。膨大な犠牲者の発生を幹部はどのように考えていたのか・・・。

肩書き上は国家元首の立場にあったキュー・サムファン元幹部会議長には、政権内での大きな権限はなかったと見られています。
ポル・ポトに次ぐナンバー2であったヌオン・チア元人民代表会議議長の発言が注目されますが、特別法廷のあり方を批判して、独自の主張を続けています。

*****法廷は正義もたらさず 元ポト派ナンバー2が非難*****
カンボジアの旧ポル・ポト政権による大虐殺を裁く特別法廷で22日開かれた元最高幹部3被告の公判で、ナンバー2だったヌオン・チア元人民代表議会議長(85)が「この法廷は私に正義をもたらさない。事実のほんの一部しか取り上げないからだ」と特別法廷を強く非難した。

裁判は21日から本格審理入りし、22日は弁護側が冒頭陳述。ヌオン・チア被告は裁判が対象とするポル・ポト政権時代だけでなく、ポト派が倒した親米ロン・ノル政権時代や、ベトナムの侵攻によるポル・ポト政権崩壊以後にも目を向ける必要があると強調、ベトナムや米国に対する非難を2時間近くにわたり繰り返した。

首都からの住民強制移住については、首都の食料不足やベトナムのスパイを監視するためだと主張。貨幣廃止は外部の敵対勢力による買収の防止などが理由だったと述べた。【2011年11月22日 MSN産経】
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被告が2名に絞られたことで、裁判の迅速化、費用の節減につながる面もあるのでは。
最低限この2名の裁判をきちんとやりとげて、過去に一定のけじめをつけられることを願います。
コメント
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