孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

オバマ大統領 イスラエル訪問で和平交渉仕切り直しの姿勢見せるも、具体策提示なし

2013-03-23 22:25:06 | パレスチナ

(ベツレヘムの降誕教会前でオバマ大統領イスラエル訪問に抗議する人々 もちろん、パレスチナ住民の多くがこうした人々と同じ立場にある訳でもないでしょう。むしろ多くはオバマ大統領の指導力に期待しているのではないでしょうか。 “flickr”より By The Israel Project http://www.flickr.com/photos/theisraelproject/8576844243/in/photostream/

イスラエルとの関係修復をアピール
アメリカ・オバマ大統領は、20日には政権2期目で最初の外遊先としてイスラエルを、21日にはパレスチナを訪問して、約2年半中断している中東和平交渉の仲介者としてイスラエル・パレスチナとの信頼関係の再構築を図り、和平交渉の仕切り直しを目指す“姿勢”を見せています。実効性については懐疑的な見方が多いようですが。

アメリカが最大の後ろ盾となっているイスラエルとの関係は、核兵器開発が疑われるイラン核施設攻撃をイスラエルが主張していることや、パレスチナ占領地区への入植活動を続け和平交渉に消極的な方針を続けていることから、ぎくしゃくした状態が続いていました。オバマ・ネタニヤフ両氏の間には相当の不信感があるとも言われています。

このため今回イスラエル訪問では、ネタニヤフ首相らの出迎えを受けたオバマ大統領は「両国の同盟関係は永遠に不変だ」と述べ、また、ネタニヤフ首相との会談後の共同記者会見では、「ビビ(ネタニヤフ氏)の最も重要な仕事は、イスラエル国民の安全を守ることだ」と、イスラエルの自衛権を最大限に尊重する考えを示すとともに、ネタニヤフ氏に何度も愛称で呼びかけ個人的な親密ぶりも印象づけようとするなど、個々の問題での温度差はありながらも両国の関係修復をアピールすることに大きな配慮が示されました。

中東和平交渉については、“オバマ大統領は10年9月、和平交渉再開を仲介したが約1カ月で頓挫。11年5月、パレスチナ独立後のイスラエルとの国境は、67年の第3次中東戦争以前の境界線に基づくべきだとの考えを示したが、境界線を越えて多数の入植者を送り込んでいるイスラエルは激しく反発。オバマ・ネタニヤフ両政権の関係は冷却化している”【3月20日 毎日】という状況にあります。

【「平和は不可欠で、真の安全への唯一の道だ」】
今回の両首脳会談でも、“ネタニヤフ首相は「前提条件なしで交渉に応じる」と従来の主張を繰り返し、パレスチナ側が求める入植活動の停止には言及しなかった。オバマ大統領は「何が可能で、何が制約条件かを聞き、米国に何ができるかを考える」と述べるにとどまった。”【同上】と、具体的な進展はありませんでしたが、オバマ大統領はイスラエル市民に向けたスピーチで「平和は不可欠で、真の安全への唯一の道だ」と語っています。

****米大統領:「和平路線へ転換を」イスラエルで演説****
オバマ米大統領は21日夕方(日本時間同日深夜)、エルサレムの国際会議場でイスラエル市民約2000人を相手に約45分間演説した。大統領はイスラエルには「平和は不可欠で、真の安全への唯一の道だ」と述べ、自国の安全保障のためにパレスチナの独立承認に向けた和平交渉を再開するよう促した。

大統領はイスラエル国会での演説を見送り、市民向け演説にこだわった。イスラエル国民の間に和平を望む機運を広げ、対外強硬姿勢のネタニヤフ政権を動かすきっかけにする狙いがあったようだ。

大統領は「イスラエルがユダヤ人の民主国家として存続する唯一の道は、独立した伸び行くパレスチナを承認することだ」と明言。「国際社会の不満を考えれば、イスラエルは孤立に向かう流れを逆転させなければならない」と述べ、パレスチナとの平和共存を拒否すれば、いずれイスラエルが危機に直面すると警鐘を鳴らした。

大統領は中東の民主化要求運動「アラブの春」を念頭に「より多くの政府が国民の意思を反映するようになれば、イスラエルが一握りの権威主義的指導者と手を結ぶ時代は終わる」と述べ、アラブ諸国民主化に対応した和平路線への転換をイスラエルに求めた。

また、イスラエル人のパレスチナ領への入植活動について「パレスチナ人が自らの土地を耕すことを妨害する権利はない」と批判。「あなたたちが望む変化を自らつくり出さなければならない」とネタニヤフ政権を和平に向けて動かすよう聴衆に促した。パレスチナ側には、国連での資格を「オブザーバー国家」に格上げするなどの一方的活動を自制することなどを求めた。

イランの核開発問題を巡っては、大統領は「強力で原則に基づく外交が、イランに核兵器保有を断念させる最善の方策だ」と述べ、20日のオバマ大統領との首脳会談後の記者会見で対イラン軍事攻撃の可能性をちらつかせたネタニヤフ首相をけん制した。

◇「希望が持てる」学生はおおむね歓迎
パレスチナとの和平に向け行動するよう、イスラエルの若者たちに呼びかけたオバマ米大統領の演説を、会場で聴いた学生たちは「希望が持てる」などとおおむね歓迎した。市民に直接働きかける大統領の狙いは一定の成果を得たと言えそうだ。【3月22日 毎日】
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イスラエルでは一定に好感、パレスチナでは失望・反発も
“演説では、ヘブライ語で「あなたたちは孤独ではない」と述べ、不安定化する中東での孤立を恐れるイスラエルへの米国の支援を強調し、イスラエル市民の心をつかんだ。大統領は、和平交渉再開の障害になっている入植活動を「非生産的だ」と非難し、「独立した存続可能なパレスチナ」を受け入れるよう求めたが、聴衆は拍手で応えた。”【3月22日 時事】とのことですが、パレスチナ側では「新しい提案はなかった」と失望も広がっているとも。
「オバマ氏はパレスチナ人を幻滅させた」(和平交渉担当者のナビール・シャス氏)と批判する向きもあります。

このところ平穏な状況が続いていたガザ地区からロケット弾2発が撃ち込まれ、オバマ大統領のイスラエル寄りの姿勢への反発とも見られています。

****イスラエル南部にロケット弾 オバマ大統領の訪問に反発か****
中東歴訪中のオバマ米大統領は21日、ヨルダン川西岸ラマラでパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談した。オバマ氏は、前日のイスラエルのネタニヤフ首相との会談と同様、頓挫している中東和平交渉の再開に向けた新提案は行わず、パレスチナ側の立場を確認する程度にとどまる見通し。ネタニヤフ氏との会談では、両国の強固な同盟関係を確認した。

一方、イスラエル南部では21日、イスラム原理主義組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ地区からのロケット弾2発が着弾した。負傷者はいなかった。
軍当局者は同国メディアに、オバマ氏訪問のタイミングを狙ったものだと指摘。ガザからのロケット弾攻撃は、昨年11月のイスラエルによるガザ大規模攻勢以降はほとんど起きていなかったが、オバマ氏が同国との関係強化を進めようとしていることに反発してのものである可能性がある。(後略)【3月22日 産経】
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交渉再開への努力を当事者に「丸投げ」】
和平交渉の仕切り直しを目指す“姿勢”を見せるオバマ大統領ですが、“具体策の提示はなく、交渉再開への努力を当事者に「丸投げ」した感が否めない”とも見られています。

****中東和平、見えぬ熱意 根幹の領土と治安「棚上げ」 オバマ米大統領のエルサレム演説****
オバマ米大統領が、政権2期目で最初の外遊先となったイスラエルで、停滞する中東和平交渉の仲介に再挑戦する意欲を示した。ただし、具体策の提示はなく、交渉再開への努力を当事者に「丸投げ」した感が否めない。

「和平は可能だ。できるんだ」。21日、エルサレムの会議場で演説したオバマ氏は強い口調で訴えた。さらに、イスラエルによるヨルダン川西岸占領の実態に苦言を呈し、パレスチナとの「2国家共存」による和平を実現して周辺との紛争をなくすことが、イスラエルに真の安全をもたらすと「助言」した。

だが、和平交渉の根幹である領土、治安の問題については「当面棚上げにしよう」と発言。具体的な仲介策には触れず「信頼を築くため、何ができるかを考えてほしい」と呼びかけるにとどまった。

オバマ氏は1期目の2009年6月、エジプトのカイロ大学で講演。イスラム世界との協調を訴え、パレスチナ国家樹立を明確にした。イスラエルには占領地への入植活動凍結などを迫り、一度は直接交渉を始動させた。しかし、交渉は間もなく暗礁に乗り上げた。

2期目のオバマ氏は、和平の機運づくりを優先させる。だが、当事者の意見の食い違いはすでに明白な上、イスラエルに圧力をかけられるのは米国しかない。オバマ氏が仲介努力を放棄したとの印象も拭えない。

オバマ政権は表向き、「この問題は、時間がたつほど解決は難しくなる」(米政府高官)として、パレスチナ和平の解決を急ぐ構えをみせる。中東問題に詳しいケリー国務長官を仲介の担当者と位置づけ、継続的に当事者との協議に当たらせる方針だ。だが、直接交渉再開や和平合意を目指す時期は示されていない。

オバマ氏は21日の演説で、「政治指導者は人々からの圧力がなければ、危険を冒そうとしない」とし、和平に動かない政治家を民意で動かすようイスラエルの人々に呼びかけた。18日に新政権を発足させたばかりのネタニヤフ首相が念頭にあるとみられる。

米国で中東和平への関与を促す「人々の圧力」は乏しい。ワシントン・ポスト紙が18日に発表した世論調査では、パレスチナ和平は当事者に任せ、米国は仲介をすべきでないという意見が、69%にのぼった。【3月23日 朝日】
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政権・世論ともに内向き姿勢が指摘されるアメリカですが、パレスチナ問題もそのひとつのようです。

和平交渉進展は期待できない第3次ネタニヤフ政権
なお、イスラエルでは連立交渉が難航していた第3次ネタニヤフ政権がオバマ大統領訪問直前に発足しましたが、入植活動推進派が要職を占めるなど、「丸投げ」されても和平交渉再開は難しい情勢です。

****イスラエル連立政権発足 右派勢力が要職占める 和平交渉再開は困難****
イスラエルのネタニヤフ首相が率いる新たな連立内閣が18日、国会の承認を受け発足した。ネタニヤフ氏としては、20日からのオバマ米大統領のイスラエル訪問を前に政権発足にこぎ着けた格好だ。
パレスチナとの和平推進を掲げる中道勢力が参加したものの、ヨルダン川西岸でのユダヤ人入植地建設推進派の右派勢力が要職を占めており、和平交渉再開は困難とみられる。

国会承認前の演説でネタニヤフ氏は、核兵器開発が疑われるイラン問題に全力を挙げる考えを強調、中東和平問題については、「真の平和と引き換えに譲歩の用意がある」と述べた。

新内閣には、和平推進派の中道新党「ハトヌア(運動)」のリブニ党首が法相に就任。第二党の中道「イェシュアティド(未来がある)」も財務相などのポストを獲得した。

ただ、国防相や内相などの主要ポストはネタニヤフ氏が党首を務めるリクードと「わが家イスラエル」の右派連合会派が押さえたほか、強硬な入植推進派の極右「ユダヤの家」も入植政策の要となる住宅相などとして入閣しており、和平交渉再開の障害となっている入植地建設はむしろ加速する可能性が高い。外相はネタニヤフ氏が兼務する。

イラン問題でネタニヤフ氏はこれまで、核開発阻止のためには単独攻撃も辞さない姿勢を示してきたが、ヤアロン新国防相は攻撃に慎重とされるだけに、今後、イスラエルの立場が変化するかが注目される。【3月20日 産経】
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