孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国・習近平外交スタート  対ロシア、アフリカ、インド、北朝鮮など

2013-03-24 21:54:02 | 中国

(国民的歌手でもある彭麗媛氏(習近平夫人)へ花を贈るプーチン大統領 【澳門日報 3月24日】)

ロシア:利害関係は複雑に絡み“同床異夢”の状態
中国の習近平国家主席は22日、最高指導者として初の外遊でロシアを公式訪問し、プーチン大統領との会談やモスクワ国際関係大で講演などで、中ロの戦略的パートナー関係、「中ロ新時代」をアピールしました。

“中国国家主席の最初の公式訪問は今後の外交方針の優先度を示すとも言われ、2003年に胡錦濤氏が国家主席に就任した際も初外遊先はロシアだった。アジア太平洋地域などで世界の戦略環境が変化する中、習氏は改めて伝統的な「中ロ友好」関係を最重視した形だ。”【3月22日 時事】

****中国:米主導の世界秩序に対抗示す 習主席の訪露終了****
中国の習近平(しゅう・きんぺい)国家主席は24日午前(日本時間24日午後)、一連の訪露日程を終え、次の訪問国タンザニアに向け出発した。

首脳会談では、尖閣諸島の問題で対立する日本やアジア回帰を進める米国を念頭に、領土や主権など「核心的利益」で互いの立場を支持するとした共同声明を発表。中露が中心の上海協力機構や主要新興5カ国(BRICS)の役割強化も表明し、訪露を通じて米国主導の世界秩序に対抗していく外交的意思を打ち出した。

習氏は23日、モスクワ郊外でメドベージェフ首相とも会談。「(訪露の)成果は予想をはるかに上回る」と述べ、ロシア訪問は成功したと強調した。

習氏はその後、ロシア軍の作戦指揮センターを外国元首として初めて見学。見学はプーチン大統領の提案だと厚遇ぶりを明らかにした上で「両国の戦略的・政治的な信頼関係と軍事関係の強化を意味する」と述べた。米中に次ぐ軍事費3位のロシアとの連携強化を印象づけた形だ。

今回の目的の一つは、中国の新最高指導者として外交的メッセージを国際社会に示すことだった。モスクワ国際関係大での講演では「冷戦時代の対立は存在せず、一部の国が世界を支配することはできない。新しい国際関係を推進すべきだ」と述べ、米国に対抗して上海協力機構やBRICSなどの枠組みを推進する考えを示した。

一方、首脳会談だけでなく大学講演でも「第二次大戦の結果と戦後秩序を守るべきだ」と述べ、尖閣諸島を国有化した日本を歴史認識に絡めて暗に批判するなど、日本をけん制することに腐心した。

だが、共同声明に歴史認識への言及はなく、首脳会談後に会見したプーチン氏も領土問題に言及しなかった。ロシアメディアも大枠で合意した石油・ガスの中国供給の話が中心で、領土など「核心的利益」に触れた記事はほとんどなかった。

背景には、シベリアや極東開発に日本を組み入れるため北方領土問題は進展させたいロシアと、中国の思惑の違いがある。ロシアの外交評論家、タブロフスキー氏は「ロシアは政府レベルで日本の重要性を理解している。シベリアや極東に中国だけが進出するなら、我々は阻止する」と話した。【3月24日 毎日】
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中国側は尖閣諸島を巡る日本との対立や米国の「アジア回帰」政策を踏まえ、領土問題や安全保障問題でもロシアとの協調関係をアピールしようとする狙いがありましたが、ロシア側はこれまでと同じように領土や主権など「核心的利益」で互いの立場を支持するとした共同声明を発表する一方で、「同床異夢」とも表現されるように、中国の戦略に巻き込まれることへの警戒感や温度差も見られました。

****中露首脳会談 ロシア 「摩擦のタネ」深入りに警戒感****
プーチン大統領が「両国関係は歴史上、最も良好」と評せば、習近平国家主席が「最重要戦略パートナー」とうたう中露関係だが、両国の利害関係は複雑に絡み“同床異夢”の状態が目立ってきている。

プーチン政権は中央アジアに伸長する中国を警戒する一方、周辺国と軋轢(あつれき)を抱える中国の現状を冷静に分析。資源取引や米国への対抗など、部分的な協力深化にとどめ、国益維持のため中国を活用しようとしている。

習主席の初訪問先がロシアになったことに、中国側ではその意義が強調されているが、ロシアの専門家の間では、中国への深入りリスクが強調されている。
昨年5月、大統領に就いたプーチン氏は初訪問先に中国を選ばず。「対米関係の先鋭化でロシアとの友好強化を急いでいる」(露有力誌ブラスチ)と習政権は心中を見透かされている。

中央アジアではインフラ整備などの大型援助で中国の影響力が高まり“脱ロシア”が進行。一方、露国営企業ガスプロムは、南シナ海で中国と領有権を争うベトナムと鉱区開発計画を進め、中国を刺激している。
プーチン氏が自ら認める中国との「摩擦のタネ」は極東アジアでバランスを欠く軍事面にも及んでおり昨年、露海軍は初めて、米海軍主導の環太平洋合同軍事演習「リムパック2012」に正式参加。増強する一方の中国軍を牽制(けんせい)した。

外交筋によれば、ロシアの対中警戒感は昨年から顕著になった。昨年10月にパトルシェフ露安全保障会議書記が来日し、日本と安保面での協力強化を約束したことに「中国高官は不快感を示した」という。ロシアは石油・天然ガス収入の低下を避けるため、供給を欧州からアジアに移そうとしている。資源開発が進む露極東地域での対中バランサーとして日本の役割は再認識され始めている。

国際平和財団カーネギー・モスクワセンターのトレーニン所長は「自国権益のための中国との関係の重要性をプーチン政権はよく理解している」とし、欧米との利害関係を調整する際の“カード”として「中国との関係を利用しようとするだろう」と述べている。【3月23日 産経】
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中国の国内総生産がロシアの約4倍、軍事費が約2倍と、国力差が一段と目立ってきているなかで、ストレートに中国との関係に深入りすることへの警戒感がロシア側にはあり、日本の存在も再認識されてきています。
安倍首相は大型連休中にロシアを公式訪問する予定になっていますので、北方領土問題の成果にあまりあせらず、ロシア側の日本への関心を更に引き出すような対応が期待されます。

【「中国とアフリカは一つの家族です」】
3日間のロシア公式訪問を終えた習近平国家主席はアフリカのタンザニアに向かいます。
中国の援助によって建設された最大都市ダルエスサラームの国際コンベンションセンターで演説し、中国のアフリカ重視の姿勢を訴えることが予定されています。
また、30日まで南アフリカ、コンゴ共和国も歴訪し、南アフリカのダーバンで26,27の両日に開かれる新興5カ国(BRICS)首脳会議に出席します。

****南アを染める中国色 巨大モール乱立・投資マネー流入 26日から新興5カ国首脳会議****
■習主席も初外遊で訪問
「中国とアフリカは一つの家族です」
初外遊に出発する直前、習主席はBRICSの記者らを招き、1960年代に中国の支援で建設が始まったタンザン鉄道の話を始めた。ザンビアとタンザニアの港とを結んだ約1850キロの鉄路。習氏はアフリカへの援助関係が中国がまだ貧しかった半世紀前から続くことを強調した。

中国の対アフリカ外交の力の入れようは際立つ。当初の狙いは、国際社会での自らの影響力の強化。やがて資源開発などの経済的な要素が強まっていった、とみられている。
歴代外相は91年から23年連続で、その年最初の訪問地にアフリカを選んできた。胡錦濤(フーチンタオ)氏も国家主席在任中の10年間に4度訪問。習氏も14日の就任直後にもかかわらず、ロシアの後、1週間をかけてタンザニア、南ア、コンゴ共和国を回る。

北京大学アフリカ研究センター主任の李安山教授が指摘するのは「アフリカへの恩」。71年、中国の国連加盟を問う決議で「賛成76票のうち26票がアフリカ票」だったという。中国は、日本の国連安保理常任理事国入りに賛成しないようにも求めてきた。

ただ、人道問題を抱えて先進諸国が進出に二の足を踏む国々に対する積極的な支援が、国際社会の批判を招いている側面もある。
11年には当時の胡主席が、推定30万人の犠牲者が出たとされるダルフール紛争で戦争犯罪に問われたスーダンのバシル大統領を北京に迎え、資源開発などでの協力強化を表明した。

道路や通信などのインフラ整備をめぐり、中国企業が中国政府を後ろ盾に受注し、多数の中国人労働者を送り込むやり方は、「新植民地主義」として、地元で反感も買っている。
習氏の訪問にも多数の企業家が同行するとされる。チャイ雋(チャイチュン)外務次官は「貿易や金融、文化など多くのプロジェクトに署名する」と話す。【3月24日 朝日】
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インドへ“秋波”】
中国はインドへの外交攻勢も強めています。
新興国代表としてライバル関係にもある両国ですが、国境紛争に加え、中国の「真珠の首飾り戦略」とも言われるインド洋進出もあって、これまでインド側は中国への強い警戒感も持ってきました。そのインドとの関係強化の動きが見られます。

****中印演習、年内に再開 日米牽制 習氏も歩み寄り演出****
中国がインドとの関係強化を図るため外交攻勢を仕掛けている。
22日にはニューデリーで、中国人民解放軍の威建国副総参謀長がアントニー国防相と会談し、2008年の実施以来中断している両国の合同軍事演習を、年内に中国で再開することを確認し、両国関係の歩み寄りをアピール。習近平国家主席自らもインドに“秋波”を送るなど、日米との緊張関係が続く中、南西の大国インドとの緊張緩和を図っている。

習氏は19日、南アフリカのダーバンで26、27日に中印が参加して行われる新興5カ国(BRICS)首脳会議を前に、インドのPTI通信などのインタビューに応じた。この中で習氏は、中印関係を「もっとも重要な2国間関係の一つ」と強調した。
PTIによれば、習氏の主席就任後、外国メディアのインタビューに応じるのは初めて。

中印は、印北東部のアルナチャルプラデシュ州や北部カシミール地方で領土問題を抱え、1962年には国境紛争が起きている。習氏は「国境問題は歴史がもたらした複雑な問題で、解決は容易ではない。しかし、友好的な協議を続けているかぎり、適正で合理的、そしてお互いに受け入れられる解決にゆくゆくは到達できる」と述べ、最近の日中関係での中国の立場とは対照的な姿勢を示した。

習氏以外でも、中国側の要人から、インドへ“秋波”を送る発言が目立っている。
昨年12月、外交トップの国務委員だった戴秉国(たいへいこく)氏は、国境問題の協議で訪中したインド側代表団に、「雑音が両国の友好的な協力と共通の発展の方向を変えようとするのを防ぐ必要がある」と述べ、中国の台頭を念頭に安全保障問題などでインドとの連携を進める日本や米国を牽制(けんせい)した。

こうした中国の友好姿勢をインド側は好感している。産経新聞などと21日に会見したクルシード印外相は、「習新主席の最近の発言は、中印関係を強化しようとするものだ」と歓迎する意向を示した。【3月24日 産経】
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“インドのサルマン・クルシード外相が26日からの日本訪問を前に21日、日本人記者団と会見した。中国をけん制するため、日本や米国、インド、オーストラリアが戦略的協力を深めるべきだとの声が日本などで出ていることに関連し、クルシード外相は「インドは中国を念頭にした多国間関係は築かない」と語り、「中国包囲網」構築に否定的な考えを示した。”【3月21日 毎日】とも報じられています。

【「これまでの核実験後の対応とは明らかに違う」】
一方、「血盟関係」と言われ、実際にも中国が経済的・政治的後ろ盾となっている北朝鮮との関係ですが、北朝鮮の核実験・長距離弾道ミサイル発射などで中国としてはメンツを潰され「不快感」を強めているとも言われています。
7日の国連安保理による制裁強化決定は、中国次第としてその実効性が疑問視されていますが、中国側の対応にはこれまでにないものが見られるようです。

****中国、対北姿勢に変化…税関厳格化・資産凍結****
中朝貿易関係者らによると、中国当局が北朝鮮に対し、税関手続きの厳格化や北朝鮮が関係する銀行資産凍結などの措置に出ている。
関係者の間では「これまでの核実験後の対応とは明らかに違う」との受け止めが広がっている。

中朝貿易の海の拠点港・大連の通関業者は19日、「大連の港で最近、北朝鮮に向かう貨物が差し止められたケースが少なくとも数件ある」と明かした。
複数の中朝貿易関係者によると、遼寧省丹東の税関でも、形骸化していた輸出品の内容検査や証明書の確認が厳格に行われるようになった。

中国から北朝鮮に向かう物の流れだけではない。北朝鮮に拠点を置く貿易商は18日、吉林省琿春の税関を通って中国に入国した際、靴下まで脱がされ身体検査された。過去の対北朝鮮制裁の際にも税関の検査は厳格化されたが、「これほどの厳しさは初めて」と貿易商は話した。

北朝鮮による3度目の核実験を受け、今月7日に採択された国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議は、これまで加盟国に「要請」していた、核ミサイル開発計画との関連が疑われる貨物の検査や金融取引阻止を「義務」に変えた。西側外交筋によると、制裁内容を巡る米中間の交渉が続いていた2月中旬、中国当局が全国の税関や金融機関に手続きの厳格な履行を文書で指示したことが確認されたという。

中国は、今回の核実験が昨年12月の長距離弾道ミサイル発射実験に続き、再三の自制要求を無視して強行されたことから、「また、メンツをつぶされた」(共産党関係者)と受け止めている。呂超・遼寧社会科学院研究員は「中国国民も、放射能漏れを心配し、核実験に怒っている」と指摘し、これらの反発が今回の「変化」につながったとみる。【3月24日 読売】
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金融面での北朝鮮系銀行への締め付け、その他さまざまな分野での北朝鮮の違法活動への取り締まり強化も行われているようです。

****中国 北朝鮮系銀行の「違法営業」を禁止****
中国の金融当局が先ごろ、代表部の形で北京や遼寧省・丹東、吉林省・琿春などに事務所を置いている全ての北朝鮮系銀行の違法営業を禁じた。北朝鮮事情に詳しい消息筋が19日に伝えた。
対象の銀行は端川商業銀行や朝鮮クァンソン銀行、朝鮮大聖銀行、黄金の三角州銀行など。

端川商業銀行は国連安全保障理事会の金融制裁対象になっている銀行で、朝鮮クァンソン銀行と朝鮮大聖銀行は2010年に米国の独自制裁の対象に指定された。黄金の三角州銀行は北朝鮮北東部・羅先に対する中国側の投資を引き出すために設立された銀行だという。
代表部の事務所では与信や送金、両替などの業務が禁じられているにもかかわらず、これら銀行は密かに貿易代金の送金などを行ってきた。

違法営業の禁止は口座を凍結するものではないが、北朝鮮系銀行の代表部は実質的に海外支店の役割を果たし、資金のやりとりの窓口機能を担ってきたため、北朝鮮へのダメージは少なくないとみられる。

中国政府は昨年12月の北朝鮮による長距離ロケットの発射を受けて採択された安保理決議を厳しく履行するよう、金融機関をはじめ税関、公安(警察)、国境守備隊などに通達した。
これを受け、北朝鮮系銀行の違法営業が禁じられただけでなく、関係機関が通関検査を強化したり、北朝鮮人の不法就労実態の調査に乗り出したりと、さまざまな分野で北朝鮮の違法活動に対する取り締まりが厳しくなっている。 【3月19日 聯合ニュース】
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最後に、アメリカとの関係。
“米軍が主催する2014年の環太平洋合同演習(リムパック)に、中国軍が初めて参加する意向を示したことがわかった。米国防総省関係者が明らかにした。米国のパネッタ前国防長官が昨年9月に訪中した際に、中国を招待していた。”【3月23日 朝日】
昨年は中国は招待されず、不快感を示していました。
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