孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

米軍  駐留女性兵士の3割が軍内部でレイプ被害 相次ぐ駐留米軍による犯罪 “神との距離”

2013-03-19 23:41:47 | アメリカ

(これまでも女性兵士は戦闘斥候などの戦闘任務を実際に行っており、1月のペンタゴンの発表はこれを認めるものという指摘もあります。写真は2005年当時、イラクで警備にあたる女性兵士 【1月28日 INTERNATINAL BUSINESS TIMESより】http://jp.ibtimes.com/articles/39976/20130128/521374.htm

【「今ですら性暴力の告発は難しい。最前線で公正な判断ができるのだろうか」】
やや旧聞に属する話ですが、1月末、アメリカは女性兵士の直接戦闘参加を認める方針を発表しています。

****米軍、女性にも戦闘任務を認める方針****
レオン・パネッタ米国防長官とマーチン・デンプシー米統合参謀本部議長は、女性兵士にも直接戦闘に参加する任務を認める方針を24日にも発表する。匿名の国防総省高官が23日明らかにした。

米軍にとっては、バラク・オバマ大統領政権下で同性愛者であることを公言して軍務に就くことが認められたことに続く大きな変化となる。空軍と海軍は既に女性の戦闘任務を禁じる規定をほとんど撤廃しているため、主に陸軍と海兵隊が今回の措置の影響を受ける。実施には2016年1月までの猶予期間があるという。

前線とそうでない場所の区別があいまいだったイラクやアフガニスタンで任務に就いていた女性兵士に死傷者が出ていたことから、女性への戦闘任務の全面的な開放を求める声が10年以上前から上がっていた。

議会民主党と人権団体は今回の決定を歓迎している。パネッタ国防長官は昨年2月、戦闘関連の約1万4000の任務を女性に開放していたが、一部の活動家からは不十分だという批判も出ていた。米国防総省によると、現役米軍人のうち女性は全体の約14.5%にあたる約20万4000人を占めている。【1月24日 AFP】
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上記記事にもあるように、人権団体もこの性差別を改善する決定を概ね好意的に見ています。
世論調査では、アメリカ人の70%以上が、女性が戦闘部隊に参加することに賛成しているそうです。
しかし、男性兵士の中には、「異性がいると気が散る」や「男性の方が敵を倒すことに向いている」など、反対する声が多くあるとか。【1月25日 FCIより】

この話題を引っ張りだしたのは、下記の記事を目にしたからです。
駐留米軍の女性兵士の3割が軍内部で“レイプ”されているとの実態調査が報告されています。
“性的いやがらせ”ももちろん問題ですが、“レイプ”となると文字どおり重大な犯罪です。

****駐留部隊:米女性兵士の3割、軍内部でレイプ被害****
米英軍主導の侵攻から20日で10年を迎えるイラクや国際部隊の駐留が続くアフガニスタンに派遣された米女性兵士延べ28万人の3割以上が、上官らから性的な暴行を受けていたことが分かり、米国内で「見えない戦争」と問題視されている。
連邦上院の軍事委員会で13日、「軍内性的トラウマ(MST)」と呼ばれる心的ストレスに関する公聴会が初めて開かれた。新たな被害を恐れ沈黙を余儀なくされてきた被害者は「風穴が開いた」と歓迎している。

カリフォルニア州図書館調査局が昨年9月に発表した実態調査によると、イラクとアフガニスタンに派遣された女性兵士の33.5%が米軍内でレイプされ、63.8%が性的いやがらせを受けたと回答した。国防総省も問題を認めている。軍内での性的暴力は2010年だけで、男性の被害も含め推計1万9000件にのぼる。
上院公聴会で議長を務めたバーバラ・ボクサー議員は「被害申告が出ているのは17%にすぎない」と指摘。「この問題の公聴会を開くのに10年もかかった。変革の第一歩だ」と意義を強調した。

イラク戦争中の03年にクウェートに派遣された前後に米国内基地で上官から性的暴力を受けたコーリン・ブッシュネルさん(39)は、公聴会をインターネットの生中継で見ながら「草の根運動で長年取り組んできたことがようやく公に明るみに出た」と興奮した。証言する予定だったが心的外傷後ストレス障害(PTSD)のため断念。議長の言葉に救われた思いがした。

クウェート派遣前に男性上官からレイプされ、帰還後に女性上官から性的暴力を受けた。「上官を訴えても自分を助けてくれる人がいると思えなかった」。精神的なバランスを崩し、06年に退役。2人の子供がいる家には帰れず、5年近くホームレス生活を続けた。「自分が恥ずかしく、行く場所がなかった」

05年のイラク派遣中に変死した女性米兵ラベナ・ジョンソンさんの両親が、自殺と断定した軍に「殺害された」と異議を唱えていることを知った。ジョンソンさんの遺体には、殴られ、レイプされたと見られる痕が残っていた。下士官時代のつらい記憶と重なり「彼女の無念を伝えるのが使命」と感じた。昨年夏から3カ月、全米12州の退役軍人組織を巡る行脚に出た。

退役軍人庁の11年の統計によると、ホームレスの女性退役軍人のうち39%が軍内性暴力の被害者だ。市民団体「女性兵士行動ネットワーク」によると、10年に退役軍人庁のPTSD認定基準が緩和されたが、MSTは申請の32%しか認められていない。全体平均は53%だ。

米国防総省は1月、直接戦闘地域への女性派遣を禁ずる規定の撤廃を発表した。ブッシュネルさんは女性の戦闘任務参加を歓迎しつつ、「今ですら性暴力の告発は難しい。最前線で公正な判断ができるのだろうか」と不安を語った。【ロサンゼルス堀山明子】
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女性兵士にとっては“敵”は身近に潜んでおり、前面の敵との戦いと同時に「見えない戦争」も戦わないといけない状況のようです。
個人的には、どうしてそんな環境に自ら希望していくのか・・・という疑問は残ります。
日本における自衛隊はかつてはやや“日蔭の存在”的なところもありましたが、現在では社会的に認知され、国防軍云々も議論されています。しかし、アメリカ社会にあっては、軍隊はもっと身近な愛国心を具体化させるものなのでしょう。よくわかりませんが。

実戦配備された軍隊は生死と向き合う極度の緊張を強いられます。特に、米軍は世界でも最も実戦に配備されている軍隊です。
その緊張が身内の女性への暴力という形で噴きだすこともあるのでしょうか。

市民にBB弾を乱射。追いかけてきた警察官を車ではねて逃走し、警察官が拳銃を発砲
軍内部の規律の乱れは米軍に限った話ではありません。アフリカなどでは政府軍兵士は反政府勢力より住民から恐れられているような国もあります。究極の暴力である戦闘行為に参加するということは、人間の精神にかなりの影響を与えずにはおかないとも想像されます。

日本でもしばしば米軍兵士による犯罪が問題となりますが、事情は韓国でも同じ・・・というか、もっとひどいようです。

****在韓米軍 禁酒令など措置=米兵の犯罪相次ぎ****
在韓米軍が米兵による犯罪が相次いでいることを受け、禁酒令などの措置を取るなど事態の沈静化に乗り出している。

韓国に駐留する米第8軍は18日、犯罪を犯した米兵に「不名誉除隊」を含む措置を講じると発表した。また、「違法行為を根絶し、不適切な行動の再発を防ぐための措置を取っている」として、関連部隊に禁酒令や3~4日間の外出・外泊禁止などを命じたと強調。米兵が関わった事件で韓国警察に協力する方針を明らかにした。
米第2師団も同日に声明を発表し、遺憾を表明。「第2師団の兵士が犯した不適切な行動により、60年以上築き上げてきた韓米関係が後退することを座視しない」として、全兵士に飲酒禁止や週末休暇禁止命令を出したと表明した。

在韓米軍が過去に比べ厳しい措置を取っているのは、米兵による犯罪の頻度や被害が深刻な水準に達しているためとみられる。
韓国では今月2日、米兵3人がソウル都心で市民にBB弾を乱射。追いかけてきた警察官を車ではねて逃走し、警察官が拳銃を発砲する事件があった。17日には米兵が居酒屋で暴れ、通報を受けて駆けつけた警察官を暴行した。【3月18日 聯合ニュース】
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“市民にBB弾を乱射。追いかけてきた警察官を車ではねて逃走し、警察官が拳銃を発砲する”・・・・今回使用されたBB弾がどのようなものかは知りませんが、BB弾は一般にはサバイバルゲームなどでも使用されるエアガンです。それでもこんな事件が日本で起きたら大騒動になります。
もちろん、韓国でも問題となっています。

****相次ぐ在韓米兵犯罪 韓国大統領府が米に対策求める****
韓国青瓦台(大統領府)は最近相次いで発生した在韓米兵による犯罪について、米側に懸念を表明したことが18日、分かった。
朝鮮半島安保に危機が迫り、新政権が韓米関係を強固にする方針を打ち出す中、在韓米兵による犯罪が相次ぎ、両国関係への悪影響を考慮したものとみられる。

青瓦台の外交安保関係者は同日、聯合ニュースの電話取材に対し「在韓米兵による犯罪が相次ぎ、米側とともにその原因を分析中だ」と話した。その上で米側と協議して関連対策を強化する方針であると明らかにした。
これに関連し、青瓦台外交安保室は17日に外交通商部担当局長を青瓦台に呼び、在韓米軍と在韓米大使館に強力な対策を求めるよう指示した。
同関係者は「米側もこの問題を深刻にみており、内部的により強力な措置を取るとみられる」と話した。(後略)【3月18日 聯合ニュース】 
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前出記事の米軍禁酒令などは、こうした韓国側の抗議への対応でしょう。
「原因を分析中だ」とのことですが、軍内部におけるレイプにしろ、相次ぐ犯罪にしろ、前述のように軍隊という戦闘参加組織の本質に関係しているように思われます。

ベトナム戦争、イラク戦争、アフガニスタン・・・・こうした戦闘に参加した米軍兵士の多くが、戦場での恐怖とストレス、市民を殺害したことによる良心の呵責などからPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみ、社会復帰できずにいることは周知のところです。
だからこそ、最近の米軍は人間兵士ではなく無人機やロボットなど多用するようになってきているところです。

【「ジーザス・ラブズ・ニュークス(イエス・キリストは核兵器を愛する)」】
ちょっと変わった米軍関連の話題としては、キリスト教との密接な結び付きを指摘した記事もありました。
「神は軍の文化の一部になっている」・・・とのことです。

****陸軍士官学校生 キリスト教重視に反発、自主退学 米軍「神との距離」苦慮****
宗教行事参加で特権/銃照準器に聖書一節
米軍が宗教問題に揺れている。陸軍士官学校「ウエストポイント」で最近、キリスト教重視の校風に反発する無宗教の学生が学校側と対立し、今春の卒業を待たずに退学した。また、陸・空軍の実戦部隊もここ数年、キリスト教との“近すぎる距離”が批判されている。米憲法は国家と教会の分離を明確に規定しており、軍は対応に苦慮している。

◆「礼拝拒めばトイレ掃除」
「学生の多くは異論を唱えようとしない。堂々と意見を述べれば、卒業後の陸軍内でのキャリアに支障となるからだ」。5月の卒業式を間近に控え、2カ月前にウエストポイントを退学したブレーク・ペイジ氏(22)はこう語った。

無宗教のペイジ氏によれば、学生はキャンパスの教会での礼拝を事実上強制され、礼拝を拒んだ場合、トイレの清掃や机ふき、芝刈りなどを命じられる。ペイジ氏は同校幹部から、「神のいない『穴』の開いた心を埋められなければ、いい士官にはなれない」とも言われたという。

米軍は士官教育に社会道徳を説くキリスト教を重視し、ウエストポイントでも宗教行事に積極的に出席したり、教会の合唱団に参加したりすれば、休暇を優先的に取れるといった特権が与えられる。キリスト教と距離を置くペイジ氏の立場を理解する教師も一部いたが、同氏は「無宗教の学生が軽んじられ、校内で白眼視されることに耐えられなかった」と振り返る。

米空軍士官学校(西部コロラド州コロラドスプリングズ)でも2005年、聖書の教えに忠実な福音派の学生を優遇したり、非キリスト教徒の学生に改宗を勧めたりしたことが発覚し批判が起きた。
10年に実施した学生対象の調査によれば、同校は05年以降、宗教的に寛容な雰囲気にはなった。ただ、宗教行事に参加すべきだとの圧力にさらされていると感じる学生は少なくなく、「無宗教の学生への寛容さに欠ける」と答えた非キリスト教徒の学生は08年比20%増の約半数に達した。

◆「キリストは核を愛する」
アフガニスタンに展開する陸軍内でも10年、聖書の一節を刻んだ銃の照準器が使われていたことが問題となり、「米軍が(イスラム教徒と敵対したキリスト教徒の)『十字軍』のようにみられかねない」との懸念が軍内外から噴出した。
国防総省の幹部は「米通貨のコインにも『われわれは神を信ずる』との一節がある」と強調し、事態の沈静化に努めたが、部隊幹部は、イスラム教徒が大半のアフガン人の感情に配慮して、同照準器の使用は望ましくないと提言した。

米紙クリスチャン・サイエンス・モニターによれば、空軍のミサイル部隊でも長らく、核ミサイルを担当する将校向けにキリスト教の倫理教育を施してきた。発射ボタンを押すことへの戸惑いをぬぐい去るためで、「秩序維持を目的とした敵への攻撃は正当化される」という聖職者の教えなどが紹介されたという。
空軍兵の間で冗談交じりに、「ジーザス・ラブズ・ニュークス(イエス・キリストは核兵器を愛する)」との名称で呼ばれたこの倫理教育には疑義が示され、11年に中止となった。

ペイジ氏は、キリスト教と米軍との密接な結び付きについて「神は軍の文化の一部になっている」と指摘。今後は政教分離を推し進めるため、ウエストポイントでの自身の体験や軍と宗教の関わりをまとめた書籍を執筆する予定だ。【2月25日 産経】
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コメント (1)
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