孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  イスラム教徒との衝突、中部メイッティーラにも飛び火

2013-03-22 23:37:42 | ミャンマー

(仏教徒とイスラム教徒の衝突が発生したミャンマー中部メイッティーラ(Meiktila)で炎を上げる建物【3月22日 AFP】)

【緊張が続く西部ラカイン州のロヒンギャ問題
ミャンマー西部ラカイン州での仏教徒とイスラム教徒の衝突が起き180人ほどの死者も出たこと、そして、このイスラム教徒というのがミャンマー国内では市民権が与えられていない“存在を否定された民族”ロヒンギャ族であることは、これまでも何回か取り上げてきました。
(2012年8月19日ブログ「ミャンマー イスラム教徒ロヒンギャ族問題で強まる海外からの圧力」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120819 など)

このラカイン州ロヒンギャ問題が現在どうなっているのかについては最近記事を目にしていませんが、下記のようなロヒンギャ難民に関する指摘があるところを見ると、今も緊張状態が続いているといった状況ではないでしょうか。

****タイ海軍、ビルマ(ミャンマー)のロヒンギャ難民を射殺か ****
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチが、タイ海軍がビルマ(ミャンマー)のロヒンギャ難民を射殺したとして糾弾している。一方、タイ当局はこの訴えを否定している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、12日、タイ海軍が2月22日にロヒンギャ難民20人に発砲し、2人を射殺したと述べた。
ロヒンギャ人たちは、ビルマのラカイン州から逃れる途中であったという。タイ海軍による射殺は、パン・ナ州クラブリ地区で起きたという。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、タイ政府に対し、発砲した人物を処罰するよう求めている。

一方、タイ当局は、ロヒンギャ人に発砲する理由がないとして、この訴えを否定している。
「当地のタイ海軍もこの訴えを否定しています。」
タイ外務省のマナシ・スリソダポル報道官はこう語った。
防衛省タナティプ・サワングサン報道官も訴えを否定している。彼は、タイ海軍は人道的な観点から、ロヒンギャ人に食料と水を供給し、マレーシアへの亡命を支援していると語った。(後略)【難民支援NGO"Dream for Children"公式ブログ http://ameblo.jp/dream-for-children/entry-11490434199.html
*****************

【「自分が生きてきた中でこんな衝突は経験がない」】
この西部ラカイン州での仏教徒とイスラム教徒の衝突が、ミャンマーのイスラム教徒(全人口の4%)と仏教徒の緊張を高め、他の都市へも飛び火しているとのことです。

****ミャンマー中部で仏教徒とイスラム教徒が衝突、非常事態を宣言****
ミャンマー中部メイッティーラで20日、イスラム教徒が経営する金製品の店で始まった口論から仏教徒とイスラム教徒の衝突が起き、市街地を焼く暴動に発展している。各所で黒煙が上がり、路上に焼け焦げた遺体が転がるなか、暴動は22日になっても収束せず、今年に入って最悪の宗教間衝突となっている。ミャンマー政府は22日、メイッティーラに非常事態宣言を出した。

AFP記者は21日夜、放火されたモスクや住宅から炎と刺激臭がする煙が空に上がるのを目撃した。焼け焦げたオートバイの脇に黒焦げになった遺体が横たわっていた。夜が明けて外出が禁止されている時間帯が過ぎると、怒りをあらわにした男たちの集団が再び路上に繰り出してきた。
AFP記者ら報道関係者が暴徒に取り囲まれ、治安部隊に救出される場面もあった。警察官によると、地元警察当局には21日、暴徒の射殺許可が下りたという。

ミャンマーの国営メディアは22日、この暴動でこれまでに僧侶1人と男性3人、女性1人の計5人が死亡し、40人近くが負傷したと伝えた。一方、野党国民民主連盟(NLD)のウィン・テイン議員(メイッティーラ選出)はAFPの取材に、乱闘で25人ほどが死亡したと述べた。同議員によれば、暴徒たちはナイフやこん棒を手に路上をうろついており、地元のイスラム教徒たちはサッカースタジアムに、仏教徒たちは寺院にそれぞれ避難しているという。

地元の警察官はAFPの取材に、3日間で少なくとも20人が死亡したことを確認したが、死者数はもっと多い可能性が高いと述べた。
国際社会からは暴力の即時停止を求める声が相次いで上がっている。

■昨年から続く宗教間衝突、政府の頭痛の種に
ミャンマーのイスラム教徒は主にインド、中国、バングラデシュから来た人たちの子孫。ミャンマーはこの30年ほど国勢調査を実施していないが、およそ6000万人の人口のうち多数は仏教徒で、イスラム教徒は4%程度と推定されている。

ミャンマーには1948年までの英植民地時代にインドから契約労働者として多くのイスラム教徒が入ってきた。しかし、ミャンマー国内のイスラム教徒は完全には社会に溶け込んでおらず、宗教間対立は軍政からの迅速な民政移行を目指すミャンマー政府にとって頭の痛い問題となっている。

 ミャンマーでは昨年、西部のラカイン(Rakhine)州で仏教徒とイスラム教徒が衝突し、昨年のうちに少なくとも180人が死亡し、11万人以上が家を追われた。

ウィン・テイン議員はメイッティーラの人口約8万人のうちイスラム教徒は約3万人だと述べつつ、「自分が生きてきた中でこんな衝突は経験がない」と指摘した。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、ラカイン州での宗教間の緊張の高まりが波及してきたとの見方を示している。【3月22日 AFP】
**********************

なお、ミャンマー中部メイッティーラは、かつてインパール作戦に失敗した日本軍が反攻に転じた英印軍に応戦し、日本軍及び現地住民に多大の犠牲者がでたところでもあります。

カチン独立軍との和平交渉 具体的進展なし
少数民族問題は民主化を進めるテイン・セイン政権の最も大きな問題のひとつですが、先月、戦闘状態が続いていたカチン族反政府組織との和平協議が行われたことが報じられています。
この和平交渉については、“昨年12月に政府軍がカチン独立軍(KIA)の拠点があるライザの近郊に猛攻撃を開始して以来、交渉は初めて。KIA筋によると、カチン州から難民が大量に流入する事態を警戒する中国政府の仲裁で実現した。”【2月4日 読売】と報じられています。

****ミャンマー、政府と反政府勢力が和平協議****
ミャンマー政府と同国北部カチン州の反政府組織カチン独立機構(KIO)は4日、中国雲南省の国境沿いの都市、瑞麗で和平交渉を行い、共同声明を発表した。

共同声明によると、両者は対話のチャンネルの構築や軍事的緊張の緩和、停戦を目指した監視制度の構築について話し合った。また、オブザーバー参加の下で月内に再度、協議を行うことで合意した。
KIOの交渉団代表、Sung Lyut Gam氏は5日、AFPの取材に、今回の和平協議が紛争解決に向けて限られた進展しかなかったと語り、見通しは不透明であるものの、今後の協議継続に期待していると述べた。

4日の会合には、オブザーバーとして中国政府高官と少数民族のシャン人、カレン人の代表も出席した。【2月5日 AFP】
*********************

前月に引き続き、3月11日にも停戦に向けた話し合いが行われていますが具体的な進展はなく、カチン州東部からシャン州北部にかけての地域は依然として緊張状態が続いています。【3月16日 「ビルマのカチン州・シャン州での出来事」  菅光晴 http://blog.livedoor.jp/kachin_shan/archives/7784886.html より】

少数民族問題は外資導入を進めたいテイン・セイン政権にとっても難しい課題ですが、野党勢力を率いるスー・チー氏にとっても、仏教徒ビルマ族の枠組みを超えた指導力を発揮できるか試金石ともなっています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする