孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

台湾  学習指導要領改訂をめぐり、高校生らが「中国寄り」と抗議行動 臨時の審議会設置へ

2015-08-05 23:09:51 | 東アジア

(“flickr”より By Daniel M Shih https://www.flickr.com/photos/dans180/20000889428/in/photolist-wtpMBb-wtq1P5-wtq1Lu-wL2LER-wLwGbD-wLwG9z-wtpMMS-wLnrtS-wusMmQ-wwFSDC-wwFim3-wwEhJA-wwFrf1-vSfGjG-wwG3HA-wwNK6r-wwNwE4-wNyYLh-wwEqmh-wwNZwk-wwPieV-wLYBB1-wNyMdh-wwNtkP-wwG2iG-wPPfwk-wPgVRv-wNzkf3-wPi5DZ-wwFRdj-wwFFMY-wLYGfE-vShcws-wNzsnj-wwFxy3-wwMBi4-wPiwmk-wwP77e-wPNYbK-wPPfgv-wNyJs7-wwEcx3-wPMH66-wwMtRR-wwFEeY-vSfNqu-wPgSCX-wwFMjC-vSh9mE-vSfS2h)

【「中国化を推し進める洗脳教育だ」】
台湾では昨年3月、中国とのサービス貿易協定の承認に反対する大学生らが立法院(国会)議場を約3週間占拠した「ひまわり運動」がありましたが、7月24日ブログ「台湾 中国軍部隊が台湾総統府に酷似した建物を攻撃する軍事演習の中国TV映像が問題化」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150724)の最後でも取り上げた、高校の学習指導要領の改定をめぐり、「中国色」が濃いとして改定指針に反対する高校生らの抗議行動が続いています。

学生らは「中国化を推し進める洗脳教育だ」などと反発しています。

****中国寄りの教科書改訂に台湾青年の怒りが爆発****
日本や韓国でたびたび論争を巻き起こしてきた歴史教科書問題が、今度は台湾社会を揺さぶっている。

台湾では学習指導要領の改定によって、今年9月の新学期から使われる高校の教科書に「中国寄り」の記述が増えることになっている。

中国大陸の歴史に関する記述が増える一方、中国国民党が台湾住民を弾圧した47年の「2・28事件」や、その後
長らく続いた政治弾圧「白色テロ」の記述は減少。

さらに日本による「統治」を「植民統治」に変更したり、旧日本車の従軍慰安婦問題では慰安婦になることを「強制された」という文言が入るなど、「中国史観」が色濃く打ち出された内容だ。

こうした変更に、学生や活動家らが猛反発。この数カ月間、台湾各地で抗議運動が激化している。

150校以上の学生らが教育部(教育省)に変更の撤回を要求しているほか、新教科書の採用拒否の意向を表明した地方自治体の首長も少なくない。

先月23日の深夜には、台北中心部にある教育部の敷地内に活動家らが侵入し、バリケードを作って立てこもった。現場に突入した警察が33人を逮捕。なかには18歳未満の11人を含む24人の学生が含まれていた。

数日後、その一人だった男子学生(20)が保釈中に抗議をほのめかし自殺すると、若者たちの怒りは頂点に。
教育部の建物周辺には数百人のデモ隊が集結し、呉思華教育部長の辞任と教科書の改訂撤回、拘束されている学生らの釈放を求めて座り込みを続けている。

台湾の人々が怒りを募らせるのは、教科書の中身だけではない。
改訂のプロセスが不透明で十分な説明が行われなかったことや、当局の対応が不誠実な点にも非難が集まっている。

批判的な世論の高まりを受けて、教育部は反対派の意見を聞く集会を何度も企画したが、開催がキャンセルされたり、呉教育部長が姿を見せないことも多かった。

こうした流れを、政府が中国との貿易協定締結を強行し、それに反対する若者らが立法院(国会)を占拠した14年の「ひまわり学生運動」の再来と指摘する声もある。

ひまわり運動は24日間に及ぶ立法院占拠を経て、政権から一定の譲歩を引き出した。
教科書改訂をめぐる若者たちの怒りは実を結ぶだろうか。【8月11日号 Newsweek日本版】
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****中国色」強い教科書に抗議 台湾、学生らが政府庁舎を占拠 33人が拘束****
・・・・改定版は、歴史分野で「日本統治」を「日本植民統治」に、「慰安婦」の表現を「強制されて慰安婦にされた」とそれぞれ変更。戦後の中国国民党による台湾統治の始まりを、台湾の「接収」から祖国復帰のニュアンスが強い「光復」に変えている。

また、「中国」の表現をすべて「一つの中国」原則に従って「中国大陸」に変更するなど、中国的な要素が強まり、台湾に関する内容が薄まっている。

改定は文字の誤りの訂正など「微修正」としていたにもかかわらず、「台湾史」では字句の「6割」(聯合報)が変更されたことや、当局が審査過程の議事録公開を一時、拒んだことも反対派の不信感を増幅した。【7月24日 産経】
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自殺した学生については、“学生らは7月23、24日にも教育部の庁舎内に乱入し、警察に排除された。その後30日朝、24日に身柄を拘束され保釈されていた学生(20)が、自宅で自殺しているのが発見された。鬱病の治療中だったといい直接の原因は不明だが、事前に改定阻止のための自殺をにおわせていたことから30日夜、学生らが「追悼」と称して教育部周辺に集合。一部が近くの立法院(国会)の敷地内に一時侵入し、改定撤回と呉教育部長の辞任を求める横断幕を掲げた。”【8月1日 産経】とのことです。

指導要領について議論する審議会の設置
3日に行われた教育相と学生の対話は物別れに終わっています。

****<台湾>中国寄り教科書 生徒側と教育部側対話でも平行線****
台湾で改定された学習指導要領により高校の歴史教科書の内容が「中国寄り」になるとして高校生らが撤回を要求している問題で、教育部の呉思華部長(教育相)と生徒側が3日、対話に臨んだ。

生徒側が改定撤回と呉部長の辞任を要求したが、教育部側は撤回の意向がないことを改めて強調。物別れに終わった。
参加したのは高校生7人と大学教授、法律家らの計11人。対話の様子はネット中継された。

事態打開に向け、立法院(国会)は、臨時会を開催するかどうかを決める与野党協議を4日に開く予定だが、与党・国民党は開催に反対している。

指導要領は今月1日に施行され、改訂教科書は9月の新学期から使用される予定だ。【8月3日 毎日】
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与野党の協議により、上記記事にある立法院の臨時会は開かれず、かわりに指導要領について議論する審議会が設置されることになったようです。

****<台湾>歴史教科書で指導要領の議論審議会を設置へ****
台湾で改定された学習指導要領により高校の歴史教科書の内容が「中国寄り」になるとして高校生らが撤回を要求している問題で、立法院(国会)は4日、与野党協議を開いた。

与野党は、教育部(教育省)に対し、指導要領について議論する審議会の設置を提案することで合意した。これを受け教育部は今月末までに審議会を開始する意向を示した。

与野党協議で野党側は臨時会の開催を提案したが、審議会の設置合意により提案を取り下げた。

改定撤回を求めて教育部で座り込みデモを続ける生徒側は、臨時会が開かれないことに失望感を示し、デモ継続を表明した。
生徒側は「最低ライン」として指導要領の施行を約1年間延期するよう提案している。【8月4日 毎日】
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“呉思華教育部長(文科相)は協議の場で、辞意を漏らした”【8月4日 産経】とも。

また、学生らは“野党の立法委員(国会議員)らの説得を受け、同部からの撤退について話し合いを開始。早ければ5日午前9時までに結論を出すとしている。”【8月4日 中央社】とのことですので、すでに収束に向かっているのかも。

【中国メディア:「中国化」と「日本化」との争い】
中国メディアは、この問題を「中国化」と「日本化」との争いであり、新たな“中日戦争”とも表現しています。

****台湾で新たな“中日戦争”、歴史教科書の中で勃発―中国メディア*****
中国サイト・観察者網は4日、台湾で学習指導要領の改訂により高校の歴史教科書の内容が「中国寄り」になるとして高校生らが撤回を求めている問題をめぐり、「台湾の歴史教科書の中で新たな“中日戦争”が勃発した」と指摘する記事を掲載した。

記事では撤回要求運動のデモで「中国化拒否、台湾史を守れ!」とのスローガンが掲げられていることを指摘。「中国化」のもう一つの言い方が「去台湾化(脱台湾化)」であり、台湾教育部の蒋偉寧元部長が改訂について、「去台湾化の傾向は全くないが、『去日本化(脱日本化)』の傾向はややある」と語ったことを紹介した。

こうしたことから改訂をめぐる議論は「中国化」と「日本化」との争いであり、台湾で起きた新たな“中国と日本との戦争”だと表現している。【8月5日 FOCUS-ASIA.COM 】
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「中国化」と「日本化」との争い・・・・日本の植民統治の評価が問題ともなっていますが、日本が何かコメントしても火中の栗を拾うようなことにもなりますので、ここは静観した方がよさそうです。

基本的には、中国とのかかわりにおける台湾のアイデンティティに関する問題でしょう。

高校生の政治活動
また、野党・民進党が学生らに物品を提供して支援する形で、運動を煽り、高校生を政治的に利用している・・・との批判もあるようです。(「DPP is staging a Taiwanese version of Cultural Revolution for next year’s election victory 」http://ireport.cnn.com/docs/DOC-1261646

学生らの過激な政治行動は必ずしも国民世論の広い支持を得ている訳でもないようですが、若い人々が政治に監視を持つこと自体は結構なことでしょう。

若者の政治参加には、よく理解できていないくせに・・・、利用されているのも知らず・・・といった批判が多々ありますが、受験以外では、異性・恋愛やファッション・音楽のことにしか関心がないよりはましでしょう。

フランスの高校生の政治活動がよく話題になりますが、日本では18歳以上に選挙権を認めた公選法改正を受けて、高校生の政治活動が解禁になるようです。ただし、あくまでも「18歳以上」という制限付きですが。

****高校生の政治活動「解禁」=選挙違反事例集も-文科省****
18歳以上に選挙権を認めた公選法改正を受け、文部科学省は高校生の政治活動を禁じた通知を46年ぶりに見直し、今秋にも新たな通知を出す。副教材として模擬投票などに使う器材や選挙違反となる事例集などを作成し、来年夏の参院選までに生徒の理解を高める。

文部省(当時)は1969年、高校生の政治活動は「教育上望ましくない」として、ビラ配布や集会参加の禁止などを各学校に通知。

だが、有権者に認められるべき内容も多く、学生運動が活発だった発令当時とは時代背景も異なるため、文言を見直す。ただ、学業優先の姿勢は変えず、校外での活動に限るなど一定の制限は残す方針だ。

18歳以上の高校生は、特定の候補者を応援する内容の動画を共有サイトに投稿するなどインターネットを使った選挙運動も可能になるが、18歳未満の生徒がすると違反になる。

こうした高校生に身近な事例集を作り、1~3年の全生徒に配布する。文科省は「買収に応じると公選法違反罪に問われる可能性があるなど、刑事罰が科されるケースもきちんと教えたい」と話している。

政治に関する学習方針も、参加意識を高める積極的な指導を行うよう見直し、社会科だけでなく総合的な学習の時間なども活用。また、授業が政治的中立性を損なわないよう、教員の主義主張を押し付けない、異なる見解のバランスを取るなどのルール作りにも取り組む。【6月17日 時事】
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日教組を不倶戴天の敵としてきた自民党政権ですから、現場ではさまざまな混乱も生じるでしょうが。
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