
(インド・パキスタン両国の砲撃の応酬から身を隠す住民 https://www.youtube.com/watch?v=wp4WamQsy0w )
【朝鮮半島南北関係は「南北対話に弾みがつく可能性」も】
つい先日「準戦時状態」とか「軍事境界線に隣接する住民ら1万5000人に避難命令」とかで極度に緊張が高まった朝鮮半島の南北関係は、一転して「南北対話に弾みがつく可能性」も取りざたされるようになっています。
****金正恩氏「和解と信頼の転機に」 南北合意に初めて言及****
北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)第1書記が25日に発表された南北の共同報道文について、「北南関係を和解と信頼の道に戻した重大な転換的契機になった」と述べた。
朝鮮中央通信が28日、朝鮮労働党中央軍事委員会拡大会議での発言として報じた。報道文をめぐり、金正恩氏の評価が伝えられるのは初めて。
共同報道文では、南北関係を改善するための当局者会談の早期開催や、朝鮮戦争で生き別れた離散家族の再会、民間交流の活性化などが盛り込まれた。
朝鮮中央通信によると、金正恩氏は「今回の合意を大切にし、豊かな結実に育てていかなければならない」と前向きに対応する考えを示した。
一方で、合意の背景には「自衛的核抑止力」をはじめとする強力な軍事力があったとも指摘。今後も「国家防衛のための軍事力強化に最優先の力を注ぐべきだ」と強調した。
韓国統一省報道官は28日の記者会見で、離散家族の再会事業をめぐり、韓国赤十字社が北朝鮮の赤十字側に9月7日に実務協議を行うことを提案したことを明らかにした。【8月28日 朝日】
********************
金正恩第1書記にしてみれば、北側が「遺憾表明」で譲歩したともとられる一連の経緯を正当化する思惑もあるのかもしれませんが、もし「南北対話」につなげることができれば、金正恩第1書記は世間で揶揄されるほど狂気の人物ではないのかもしれません。
【印パの安全保障部門協議は中止】
朝鮮半島の南北関係や中台関係と並んで、アジアの不安定で危険を孕んだ関係がカシミール地方の帰属をめぐる核保有国インド・パキスタンの対立です。
****カシミールめぐりインドとパキスタンは3度の戦争****
カシミール地方は、インド北部からパキスタン北東部にかけての山岳地域。イギリス領時代は従属下で一定の支配権を認められる藩王国だった。
住民の約5分の3がムスリム(イスラム教徒)だったが藩王がヒンドゥー教徒で、1947年8月のインド・パキスタンのイギリス領からの分離独立時に帰属が決まらず宙に浮いた。
独立から2カ月後、イスラム教徒による暴動が発生。藩王はインドへの帰属を表明し、暴動の鎮圧にインド軍派兵を要請。ムスリム国家のパキスタンはこれを認めず、第1次印パ戦争が勃発した。
1949年に国連の調停で停戦ラインが設けられ、両国に中国を加えた3カ国が実効支配地域を分け合うことに。
1965年9月の第二次印パ戦争を経て、1971年12月には第三次印パ戦争が発生し、カシミール地方は戦場になった。1999年には再び印パ間の衝突(カルギル紛争)も発生した。
インド側カシミールでは1989年以降、イスラム過激派がテロ活動を中心とする運動を展開し、2010年までに約5万人が犠牲になっているとされる。
1990年代後半からは、「ラシュカル・エ・タイバ」(LeT)などの過激派が参加。LeTはパキスタンのCIAと称されるISI(三軍統合情報局)が背後で糸を引いているとも、タリバンやアルカイダと関係するともいわれ、2008年11月には、約170名が殺害されたムンバイ・テロ事件を起こすなどしている。
インド政府は、ムンバイ・テロ事件などに対するISIなどの関与を指摘しているが、パキスタン政府はこれを否定。カシミール問題は、核問題とともに両国関係の改善を妨げる大きな要因となっている。
現職のインドのモディ首相とパキスタンのシャリフ首相は、カシミール紛争の終結に道筋を付けて経済交流を進めたい意向を持っているとされる。
しかし、両国の関係に改善の兆しが見えるとテロなどこれに反対する動きが活発化するという堂々巡りがこれまで繰り返されてきてきた。一筋縄ではいかないようだ。【8月25日 中野渉氏 The Huffington Post】
*********************
インドのモディ首相とパキスタンのシャリフ首相は7月の会談で、安全保障部門の協議などで合意していましたが、“両国の関係に改善の兆しが見えるとテロなどこれに反対する動きが活発化”。
*********************
カシミール地方では7月27日、インド北部のパキスタン国境に近いパンジャブ州グルダスプールで、3人からなる武装グループが警察署などを襲撃、警官と市民計8人が殺害されるテロが起きた。
8月15日には、インド・パキスタン双方から銃撃や砲撃があり、インドからの報道などによると、少なくとも市民4人が死亡、約20人が負傷。
インドは、同国内でのテロ攻撃にパキスタン軍の関与を指摘、一方のパキスタン側はこれを否定している。【同上】
*********************
こうしたテロやインドのカシミール分離独立派を巡る対立もあって、安全保障部門の協議は中止に追い込まれています。
****印パ、安保責任者の会談を中止 カシミール地方巡る対立で****
インドのアジット・ドバル国家安全保障担当補佐官とパキスタンのサルタージ・アジズ国家安全保障・外務担当首相顧問が23日、ニューデリーで予定していた会談が、直前になって中止された。
両氏の会談は先月、インドのモディ首相とパキスタンのシャリフ首相がロシアで会談した際に発表。同日から2日間の日程で計画されていた。
アジズ氏はニューデリー訪問を機に、インドのカシミール分離独立派指導者とも会談する予定だったが、インド側がこれに強く反発した。
インドは両氏の会談の議題について、テロ対策に限定するべきだと主張。同国のスワラジ外相は22日の記者会見で、アジズ氏が会談前に分離独立派と会うことになれば「会談はなくなる」と警告していた。
パキスタンはこれに対し、インドが会談に「前提条件」を設けていると反発を示した。
外務省は声明で「インドとの対話の主な目的は、国交正常化に向けた緊張の緩和と信頼の回復だ」「会談の目的をテロ対策に限定すれば、非難合戦が激化するばかりだ」と主張した。
印パ両国はカシミール地方の領有権をめぐって長年対立してきた。最近も同地方で銃撃戦が続発し、双方が責任を追及し合っている。
インドはさらに、同国内でのテロ攻撃にパキスタン軍が関与しているとの批判を強めているが、パキスタン側はこれを否定している。【8月24日 CNN】
*******************
28日にも両国はカシミールで衝突、9人が死亡しています。
****印パ、カシミール地方で砲撃や銃撃戦 9人死亡、負傷者多数****
インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方で28日、両国軍の間で砲撃や銃撃戦が発生し、民間人9人が死亡、数十人が負傷した。両国とも相手が最初に攻撃したと非難している。
パキスタン軍は声明で、国内で6人が死亡、46人が負傷したとの被害を発表。インド軍は、自国の死者は3人、負傷者は8人としている。ただ、両国とも兵士の死者はいないとしている。
パキスタン側はパンジャブ州シアルコット市近くの村落が交戦の被害を受けたと指摘。インド側はジャム・カシミール州に着弾被害が出たと主張した。(後略)【8月29日 CNN】
******************
【互いの国是・国家理念にかかわる問題ではあるものの・・・・】
イスラム教徒の国として建国したパキスタンにすれば、イスラム教徒が多いカシミールは自国に属すべき地域ですが、多宗教国家を国是とするインドにすれば、宗教的理由による分離は国の基本理念を否定するものになります。
カシミール帰属問題は、印パ双方とも互いの国家理念から一歩も引けない問題でもあります。
そのため、これまで3回の戦争を含め、絶えず緊張と緩和を繰り返しています。
(2013年8月7日ブログ「印パの緊張がたかまるカシミール」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130807など)
ヒンズー至上主義の側面もあるインド・モディ首相ですが、経済発展を重視する点ではパキスタン・シャリフ首相と利害が一致します。
しかし、特にパキスタン側では軍や軍情報機関ISIはインドとの対話に批判的で、 更に、インドを敵視するイスラム過激派も強い勢力を持っています。
そうしたことから、“両国の関係に改善の兆しが見えるとテロなどこれに反対する動きが活発化”という話にもなり、テロなどが起きるとインド側の国民感情も一気に悪化します。
部外者からすれば、「いつまで同じようなことを繰り返すのか・・・?」とも思えますが、当事国がそこから抜け出すのはなかなか難しいようです。
一方、インドとバングラデシュは独立以来の懸案事項であった「飛び地」を交換することで、国境を安定化させています。
****インドとバングラデシュが領土交換 162カ所の飛び地****
英領からの独立以来、インドとバングラデシュの国境地帯に残っていた162カ所の飛び地を整理・解消する領土交換が1日午前0時、両国の間で発効した。
母国から隔絶されてきた5万人以上の住民は、それぞれ新たな国籍を選択。村々で喜びの声を上げた。
タイムズ・オブ・インディア紙などによると、これまでバングラデシュに囲まれたインド領の飛び地111カ所に約3万7千人が居住。このうち約千人がインド国籍を希望して移住を選択した。
インドに囲まれたバングラデシュ領51カ所に住む1万4千人は全員がインド国籍への移籍を希望している。【8月1日 朝日】
*******************