孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南スーダン  和平協定署名 8回目の停戦? 先行きは不透明 安全保障関連法案と日本のPKO

2015-08-27 22:13:55 | アフリカ

(写真は【8月27日 AFP】 和平協定の先行きもさることながら、写真の美しい女性は何者だろうか?・・・とつまらないことが気になったりします。)

【「独立後は希望にあふれていたが、もう過去のことだ」】
2011年7月に希望に燃えて独立をはたしたにもかかわらず、民族対立を背景にした大統領派(政府軍)と元副大統領派の内戦状態が続く南スーダンについては、6月30日ブログ「南スーダン 止まない内戦状態 少女たちをレイプした上、生きたまま火をつけて殺害・・・・」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150630)で、表題にもあるような悲惨な事例などを取り上げました。

その後も、悲惨な出来事が報じられています。

****南スーダン兵、「戦車で市民ひき殺す」 人権団体報告****
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は22日、内戦状態が19か月続いている南スーダンで、政府軍の兵士らが市民を戦車でひき殺し、公衆の面前で集団レイプを行い、人々を生きたまま焼き殺しているとする報告書を発表した。

HRWは報告書で、南スーダン政府軍の衝撃的な残虐行為を列挙し、戦争犯罪にあたる「民間人に対する意図的な攻撃」が行われていると非難。民間人への攻撃は、政府軍と政府軍側につくヌエル人の一氏族「ブル・ヌエル」の戦闘員が行っていると述べた。

HRWは戦地と化している北部ユニティ州で被害者や目撃者ら174人を対象に行った聞き取り調査の結果として、「子どもや高齢者を含む一般市民の男女が、首つりや銃撃、火あぶり」などによって殺害されていると報告。

ある女性は「(政府軍は)人々を戦車で追いかけ、戦車でひいた後、確実に殺すために引き返してもう一度ひいた」と証言し、別の被害者は、政府軍兵士が村から住民を追い出すために、見せしめとして男性と15歳の少年の性器を切断している場面を目撃したと話したという。

報告書では63件のレイプが報告されているが、HRWは、これは「ほんの一部」に過ぎないだろうと述べ、「事件の中には残忍な集団レイプや、公衆の面前でのレイプ、殺すと脅した上でのレイプなどが含まれている」と報告した。

被害者の一人は、男に後頭部に銃を突き付けられ、「おまえの娘をレイプする様子を見ろ」と脅され、娘が目の前で強姦される様子を見せつけられた。事が終わると男は、次に年上の娘を強姦したという。【7月22日 AFP】
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戦場の狂気と言えばそれまでですが、「人間性」の存在に疑問を抱かせるような残虐さです。

2013年12月から1年半以上続く内戦状態により、国内避難民・難民の数は225万人以上になったと推計されています。

****<南スーダン>独立4年 内戦状態で難民225万人超****
アフリカ東部の南スーダンは9日、独立から4年を迎えた。2013年12月以降、事実上の内戦状態が1年半以上も続いており、事態収拾のめどは立っていない。困窮する国民は放置されたまま、政府と反乱軍の対立は深まっている。

「キール大統領が人々への権力移譲を拒むなら、市民が蜂起し、政権を転覆するのは当然のことだ」。ロイター通信によると、反乱軍を率いるマシャール前副大統領は8日、隣国ケニアの首都ナイロビで発表した声明でこう述べ、政権への対抗意識を鮮明にした。

キール氏の任期が同日で切れるのに先立ち、南スーダン議会はキール氏の任期の3年延長を承認、マシャール氏はこれに異議を唱えた形だ。今後、政府軍と反乱軍の戦闘が活発化する可能性もある。

南スーダンは住民投票を経て、11年7月9日にスーダンから分離独立した。キール氏が13年7月、マシャール氏の副大統領職を解任して対立が深まり、同年12月14日に両者の話し合いが最終決裂。翌15日に首都ジュバで政府軍とマシャール氏を支持する反乱軍との戦闘が勃発した。

権力闘争はやがて、キール氏の出身民族ディンカ人とマシャール氏のヌエル人との民族対立に転化され、各地に戦闘が拡大、国連難民高等弁務官事務所によると、避難民・難民の数は225万人以上になったと推計される。

政府と反乱軍は周辺国の仲介で和平交渉を行い、これまでに複数回停戦に合意しているが、毎回直後に新たな戦闘が発生し、一向に戦闘は収束しない。

この間、市民生活は窮乏し、人口の4割に当たる約460万人が食料不足に陥る危険性も指摘されている。【7月10日 毎日】
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国民は、困窮するままに放置されるだけでなく、先述のような残虐な行為にも直面しています。

内戦の混乱によって、子どもたちは通学できないだけでなく、学校が武装勢力に占拠されたり、子どもが兵士として徴集されたりしています。

****初等教育、紛争で崩壊 南スーダン*****
・・・内戦状態の中で、児童80万人の所在が一時わからなくなった。40万人を避難民キャンプなどで発見したが、残り40万人は不明のままだという。大臣は「追跡できないのだ」とため息をついた。武装勢力に占拠された学校については「あきらめた」と話した。

国連開発計画(UNDP)南スーダン事務所の現地職員ダニエル・リアク・キルさんは「独立後は希望にあふれていたが、もう過去のことだ」と嘆いた。【7月8日 朝日】
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教育を受けず、戦うことしか知らない環境で育った子供は、やがて戦場の狂気に身を投じることにもなります。

和平協定署名 ただし、和平が実現するかどうかには疑問も
こうした事態に、南スーダン独立を支援したアメリカのオバマ大統領は、和平に向けた政府軍・反政府軍双方への圧力を強めていました。

****オバマ氏「南スーダンの状況は悪化****
アフリカを訪れているオバマ米大統領は(7月)27日、2番目の訪問国エチオピアの首都アディスアベバでハイレマリアム首相と会談した。

会談後の会見でオバマ氏は、事実上の内戦が続く隣国の南スーダンについて「状況が悪化している」と懸念を表明し、紛争当事者と周辺国などによる解決を強く促した。

オバマ氏と周辺国の指導者らは会談後、アディスアベバで南スーダン問題を協議した。

オバマ氏は会見で、8月中旬までに和平が実現しない場合、南スーダン政府と反乱軍双方に対し、制裁強化などの圧力を加える意向を示唆した。(後略)【7月27日 毎日】
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そうしたアメリカの圧力もあって、とにもかくにも和平協定が成立しました。
しかし、これまでも7回の停戦合意が交わされたがましたが、いずれも数日で崩壊していることから、今後和平が実現されるかどうかを危ぶむ向きも少なくありません。

****南スーダン内戦、大統領が和平協定に「条件付き」署名****
20か月にわたり内戦状態にある南スーダンのサルバ・キール大統領は26日、リヤク・マシャール前副大統領率いる反乱軍との和平協定に署名した。ただ、キール大統領は首都ジュバで行われた署名式典に際して複数の「条件」を挙げており、和平が実現するかどうかには疑問が残る。

マシャール氏は既に署名を終えており、国際連合がキール大統領に対し署名を拒むならが制裁も辞さないと警告していた。

2011年にスーダンから分離独立し世界で最も若い国家となった南スーダンでは、13年7月にキール大統領がマシャール氏を副大統領職から解任。同年12月にマシャール氏がクーデターを企てたとキール大統領が非難したことから、激しい内戦に発展した。これまで7回の停戦合意が交わされたが、いずれも数日で崩壊している。

今回の和平協定では反乱軍側に第1副大統領の座を約束しており、マシャール氏が復職するとみられている。

ただし政府側は、和平協定の維持を担う監視委員会を設立する条項と、反乱軍の権限拡大につながりかねない首都ジュバの非武装化に関する条項について、懸念を表明している。【8月27日 AFP】
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何回かの停戦合意と破綻はこれまでも報じられていますが、今回が8回目にあたるというのは驚きです。
これが最後になることを期待します。

日本のPKO ハイリスクな治安維持活動は安全保障関連法案成立でも実施せず
南スーダンの戦闘が収まるかどうかは、この地のPKOに自衛隊を派遣している日本にも関係してきます。
日本は、2011年から司令部要員、2012年から道路整備などを行う施設部隊を派遣していますが、活動は延長継続されています。

****南スーダンPKO、自衛隊派遣6カ月延長****
政府は(8月)7日の閣議で、今月末に派遣期限を迎える南スーダンの国連平和維持活動(PKO)を、来年2月末まで6カ月間延長することを決めた。

国連安全保障理事会が南スーダン派遣団(UNMISS)の活動期間を11月末まで延長したことに伴い判断した。

中谷元(げん)防衛相は記者会見で「今後も積極的平和主義のもと、国際社会と協力しながら活動を継続していく」と述べた。【8月7日 産経ニュース】
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単に、これまでどおりの活動が継続されるだけではなく、国内で議論を呼んでいる安全保障関連法案が成立した場合、宿営地を他国軍と共同で防衛することや、外国部隊らを救援する「駆けつけ警護」も可能とするように内容を変更する方向で検討されています。

****自衛隊、他国軍と宿営地防衛 南スーダンPKOで政府検討****
政府は自衛隊を派遣している南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)で、首都ジュバにある宿営地を他国軍と共同で防衛する検討に入った。

参院で審議中の安全保障関連法案に盛りこんだ新たな任務で、法案が成立すれば来年春にも開始する。同じく法案成立で可能になる治安維持任務については、隊員の安全を確保できないとみて見送る。

自衛隊は2012年から南スーダンPKOに参加し、現在は約350人が幹線道路の整備や避難民への医療支援にあたっている。

宿営地は国連が管理するジュバのトンピン地区にあり、インド、ネパール、バングラデシュ、ルワンダの各国軍もそれぞれ拠点を置く。

現行のPKO協力法では、自衛隊が防衛できるのは自らの拠点がある区域だけ。安保関連法案に含まれる同法改正案は、同じ宿営地内なら他国軍の区域も守れるようにする。
成立後、自衛隊はインド軍などと協力して宿営地全体を共同で防衛することを視野に入れる。

改正案は離れた場所で武装集団に襲われた外国部隊らを救援する「駆けつけ警護」や、住民の保護など治安維持といった任務も認めている。防衛省は南スーダンでの駆けつけ警護の実施を検討しており、派遣部隊の訓練などを経て来春にも始める見通しだ。

治安維持は隊員のリスクが高いとみて実施しない。南スーダンは大統領派と前副大統領の衝突が続いており、ジュバがある南部の治安は比較的安定しているが、中北部の治安は悪いとされる。【8月16日 日経電子版】
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他国軍との宿営地防衛や駆けつけ警護は自衛隊員の安全・生命を守るための活動になりますが、「ルワンダ大虐殺」やボスニア・ヘルツェゴビナ紛争での「スレブレニツァの虐殺」などを経験して、国連PKOにも住民保護・治安維持活動への積極関与が求められています。

当然、隊員の生命は保証できないハイリスクな活動になります。

“現地では不安定な治安情勢を背景に住民保護のニーズが高まっているが、政府関係者は「日本に対してインフラ整備以外の要請は来ていない」と指摘した。”【7月29日 毎日】

“要請は来ていない”ということで、ハイリスクな活動には参加しない方針のようです。
ただ、もし自衛隊の目の前で住民が虐殺されるような事態となったとき、宿営地への攻撃はないということで虐殺を放置、見殺しにして撤退するのでしょうか?

個人的には、安倍政権のもとで安保関連法案によって日本周辺で「国益」の名のもとに戦闘可能性が拡大していくことへの警戒感はありますが、一方で、国連PKO活動に参加するのであれば、「ルワンダ大虐殺」やボスニア・ヘルツェゴビナ紛争での「スレブレニツァの虐殺」を座視するようなことは、「国益」云々を超えて、人間として許されないことのように思えます。

その際のリスクについては、あらかじめ覚悟する必要があるとも考えます。

ルワンダ大虐殺の混乱当時にルワンダ愛国戦線(RPF)を率い、現在ルワンダ大統領の席にあるカガメ大統領は、目の前で虐殺が行われているとき動かなかった(動けなかった)UNAMIR(PKOである国連ルワンダ支援団)司令官ダレール将軍のことを「人間的には尊敬しているが、かぶっているヘルメットには敬意を持たない。UNAMIRは武装してここにいた。装甲車や戦車やありとあらゆる武器があった。その目の前で、人が殺されていた。私だったら、絶対にそんなことは許さない。そうした状況下では、わたしはどちらの側につくかを決める。たとえ、国連の指揮下にあったとしてもだ。わたしは人を守る側につく。」と評しています。

なお、ダレール将軍もただ大虐殺を座視した訳ではなく、“ダレールの着任前、国連はルワンダでジェノサイドの可能性がある報告書を出していたが、その報告書は彼に届けられなかった。ダレールは1994年1月に匿名の情報者によってフツの過激派による虐殺計画を知り、国連に平和維持軍の増強や過激派の武器の押収を提案するが、UNAMIRには権限がないという理由で不許可となる。次いでアメリカ、フランス、ベルギーの大使へ情報を伝えるが状況は改善されず、ダレールは要人の暗殺や民兵(インテラハムウェ)の武装を静観することになる。”【ウィキペディア】とのことで、相当に苦悩したようです。
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