孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

マレーシア  新型コロナ禍でも続く権力闘争 「裏切り」「多数派工作」、ドラマのような展開にも

2020-10-16 23:30:02 | 東南アジア

(握手するアンワル氏(左)とマハティール氏(右)【2018年5月17日 WSJ】 

アンワル氏はマハティール氏が選挙で首相に返り咲いた1週間後に釈放されたましたが、その当時の写真でしょうか?

長年の敵対関係を超えて握手した両者ですが、(大方が予想したように)再び権力をめぐるライバル関係に戻ったようです。)

 

【「裏切り」「多数派工作」・・・情勢は不透明】

マレーシアの政治情勢については、アンワル元副首相が議会の過半数の支持を獲得したとして政権を求めている話など、9月27日ブログ“マレーシア 進む巨大汚職疑惑の「幕引き」 アンワル氏、議会多数派獲得として政権を要求”で取り上げました。

 

その後も、いまだ不透明な情勢が続いています。

 

マレーシアでは超高齢のマハティール前首相が(選挙当時、「同性愛」という政治的冤罪とも思える罪で拘束されており、表に出ることができなかった)旧敵アンワル元副首相と手を組む形で、弟子筋にあたるナジブ元首相を追い落とし政権を獲得しました。

 

その際、2年以内にマハティール氏から政界復帰した本来の野党勢力指導者アンワル元首相に禅譲することになっていましたが、その禅譲スケジュールが明らかにされないなかで、マハティール氏を支持する勢力とアンワル元副首相を支持する勢力の間でギクシャクした状況に。

 

マハティール氏はいったん辞任して、態勢の立て直しを図ろうとしましたが、その間隙をつく形で、腹心のムヒディン・ヤシン氏がマハティール氏を裏切って野党勢力(ナジブ元首相の勢力)と結託、国王に「下院の過半数の支持」を集めたと申し出る形で政権を奪取。

 

汚職疑惑などで選挙で敗退したはずの野党(旧与党・ナジブ氏支持)勢力は選挙を経ずに権力に復帰。

ドロドロした韓国ドラマのような展開となっています。

 

*****マレーシア、ムヒディン前内相が新首相に マハティール暫定首相の腹心が野党と協力****

マレーシア王室は2月29日、アブドラ国王が野党勢力から支持を受けるムヒディン・ヤシン前内相(72)を、新首相に任命したと発表した。

 

与野党代表らや下院議員らの意向を確認した結果、ムヒディン氏が憲法で定められた「下院の過半数の支持」を集めたと判断したとみられる。3月1日に宣誓式が行われる。

 

マハティール暫定首相(94)は首相復帰を目指していたが、与党連合内の内紛に足をすくわれ、かつての腹心に敗れた。

 マハティール氏が率いる与党連合は2018年5月の総選挙で1957年の独立以来初の政権交代を実現。しかし、首相に就任したマハティール氏からアンワル元副首相(72)への政権禅譲を巡り連合内が分裂。マハティール氏は2月24日に辞任し、国内政治は混乱に陥っていた。

 

ムヒディン氏は、マハティール氏が所属する「マレーシア統一プリブミ党(PPBM)」の党首で、マハティール政権で内相を務めていた。ムヒディン氏は当初、マハティール氏の首相復帰を支持していたとみられるが、最終的に野党勢力と手を結んだ。

 

与党連合は29日に新首相候補をマハティール氏に一本化して政権維持を狙っていた。【2月29日 毎日】

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しかし、ムヒディン支持勢力も過半数をわずかに超える程度で不安定、今回その一部が「多数派工作」でアンワル元副首相支持に寝返ったということで、今度はアンワル元副首相が首相任命を国王に求めているという状況です。

 

なお、マハティール前首相は、さすがに95歳という高齢ということで首相復帰をあきらめ、引退表明しています。

 

****マレーシアで政治混乱、収束見通せず 「裏切り」に多数派工作で対抗****

マレーシアで、政治混乱が深まっている。マハティール前首相が2月に辞任した後、後継を巡って権力闘争が発生。

 

マハティール氏を裏切り、野党側と手を結んだムヒディン内相(当時)が首相に就任したが、ムヒディン氏に憤るマハティール氏、アンワル元副首相らが議会で多数派工作を仕掛けるなど、混乱の収束は見通せない。2023年に予定される下院選が前倒しされる可能性も取り沙汰されている。

 

「下院議員の過半数の支持を確保した」。アンワル氏は今月23日の記者会見でそう主張し、アブドラ国王に近く謁見することを明らかにした。

 

憲法は、国王が下院議員の過半数の信任を得ていると判断した議員を首相に任命すると定める。

 

アンワル氏は過半数の詳細を明らかにしていないが、国王が認めれば新首相に任命される可能性がある。だが国王は健康上の理由から面会を見送っており、謁見が実現するかは不透明だ。

 

ムヒディン首相はすぐに声明を発表し、「憲法で定められた手続きを踏まない限りは、ただの主張に過ぎない」と強く反発した。

 

(中略)マレーシアでは、首相に議会の解散権がある。政治混乱が続く場合、下院が解散されて選挙が前倒しになる可能性がある。

 

26日に投開票された東部サバ州の議会選では与党側が勝利しており、地元メディアでは「ムヒディン首相が勢いに乗って解散に踏み切るのでは」との見方も出ている。

 

95歳のマハティール氏は26日に記者会見し、高齢を理由に23年の下院選には出馬せず、議員を引退する意向を表明した。だが、選挙が前倒しされた場合の対応は明言していない。【9月30日 毎日】

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国王も、何等か政治的思惑があるのか、ドロドロした権力闘争に巻き込まれたくないのか、病気を理由にアンワル氏の拝謁を拒否していました。

 

****マレーシア国王は病院に、首相任命巡り1週間は拝謁は許されず****

マレーシアのアブドラ国王は、病院の観察下にあり1週間は誰にも拝謁を許すことはない。王宮関係者が25日明らかにした。

国王はほぼ儀礼的役割を担っているだけだが、議会での多数派を得ていると判断すれば首相を任命することができる。

マレーシアの野党指導者であるアンワル元副首相は23日、議会で多数派を得たとし、新政権の樹立を目指す考えを表明した。

アンワル氏は22日に国王との謁見を予定していたが、体調不良で国王が病院に運ばれたため取りやめとなっていた。【9月25日 ロイター】

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10月13日、ようやくアンワル氏は国王に拝謁することになりましたが・・・・

 

*****マレーシアのアンワル氏、過半数議員の支持主張も個別名は挙げず*****

マレーシアのアンワル元副首相は13日、国王と面会し、下院(定数222)議員のうち120人からの支持を得たことを示す文書を提出したことを明らかにした。

アンワル氏はムヒディン首相からの政権奪取を目指している。

アンワル氏は国王との面会後、記者団に対し「与野党の双方に対し、国王が憲法に基づく責任を果たし、文書を吟味して、党幹部に見解を求めることに備えておくよう、強く求める」と述べた。

ただ王宮によると、アンワル氏は国王に対し支持を表明した個別の議員名は開示しなかったという。王宮は国王とアンワル氏との会談後に声明を発表し「アンワル氏は、支持を表明した下院議員の数は示したが、その主張を裏付ける議員名簿は提出しなかった」とした。

国王はアンワル氏に対し、憲法に基づいた法的手続きを尊重し、従うよう伝えたという。【10月13日 ロイター】

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「下院の過半数の支持」を獲得したというのがそれほど明確なものではないのか、何らかの理由で議員名をだせないのか・・・

 

【本来は、政争に時間を費やしているときではないコロナ禍】

政局は混とんとしていますが、新型コロナの感染拡大で、本来は政争どころではない状況にもなっています。

 

****マレーシア、コロナ再拡大でも「首相」巡り政争****
(中略)アンワル氏は(国王との)面会後、記者会見し「過半数を大きく上回る議員の支持を確保している」と改めて主張した。

 

王室側も13日に声明を発表し、アンワル氏が支持議員の数を提示したと認めた。ただ、議員名を明記したリストは示さなかったため、「国王は憲法に示された法的手続きに従うようアンワル氏に忠告した」という。

 

過半数の支持を得たことを証明するには、議員リストの提示が必要だとの見解を示したとみられる。アンワル氏が国王の支持を得るには、支持議員リストを改めて提出するか、下院でムヒディン首相の首相不信任案を可決するなどして、過半数の支持を裏付ける必要がありそうだ。

 

仮に国王がアンワル氏の主張を受け入れなかったとしても、与野党の議席数が拮抗する状況は変わっておらず、ムヒディン政権は薄氷の政権運営を引き続き強いられる。

 

ムヒディン氏は13日、「私の今の関心は新型コロナ対策と経済の運営だ」と述べ、政争と距離を置く姿勢を強調した。

 

マレーシアでは12日の新規感染者が563人に上るなど、新型コロナの感染が再び広がっている。政府は14日から2週間、首都クアラルンプールやスランゴール州に地域間の移動などを禁止する活動制限令を出す。

 

3月中旬に最初の活動制限令を全土に適用した際は、経済活動が収縮し、4~6月期の経済成長率は前年同期比でマイナス17.1%まで落ち込んだ。

 

こうした状況下での政治の混乱は、国民の生活にも悪影響を及ぼす。マレーシア王室は13日の声明で「国王は(感染拡大の現状を)懸念し、全ての国民に落ち着くよう忠告した」と説明した。

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国王も、新型コロナ禍の状況での政争とは距離を置く姿勢を示しています。

 

****マレーシア王宮、コロナ制限で全会合延期 政争巡る決定先送り****

マレーシア王宮は、新型コロナウイルス流行に伴う制限令を受け、14日以降の全ての会合を2週間見合わせる。王宮関係者が明らかにした。野党を率いるアンワル氏が新政権樹立を目指していることを巡り、国王の決定が先送りされる公算が大きい。

アンワル氏は13日、国王と面会し、下院(定数222)議員のうち120人からの支持を得たことを示す文書を提出したことを明らかにした。同氏は自らが議会の「信任」を得たとしてムヒディン首相の辞任を求め、新政権の樹立を目指している。今後の政局混迷打開に向け、国王の判断が焦点となっている。

国王はアンワル氏の主張を確認するため主要政党の党首と会談する予定だったが、首都クアラルンプールおよび隣接するスランゴール州で14日から2週間の部分的なロックダウン(都市封鎖)措置が取られた。

王室の会計監査官はロイターに対し、新型コロナ感染者が増える中、CMCO(条件付き活動制限令)により王宮のロックダウンが実行されたことを明らかにした。制限令が解除された後に各党首との新たな会談日程を設定するとした。

マレーシアでは13日、新型コロナを巡り、660人の新規感染者と4人の死亡が報告された。累計の感染者は1万6880人、死者は163人。【10月14日 ロイター】

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****マレーシア国王、政治家に交渉を通じた問題解決を要請****

マレーシアのアブドラ国王は16日、国内の政治家に対し、政局の不透明感をこれ以上長引かせてはならないと主張、憲法で定められた法的な手続きと交渉を通じて問題を解決するよう呼び掛けた。

同国ではムヒディン首相と、野党連合を率いるアンワル元副首相が権力闘争を続けている。

マレーシア王室は「国王は最近の国内政治情勢を踏まえ、政治が二度と再び不透明になることがないよう、国民、特に政治家に協力を呼び掛けた。私たちはすでに様々な問題、新型コロナウイルス流行の脅威による厳しい未来に直面している」との声明を発表した。

アンワル元副首相は今週、国王と面会し、過半数の議員の支持を確保し政権を樹立できると説明したが、その後は新型コロナの移動規制により、面会がキャンセルされている。

国王は通常、儀礼的な役割のみを担うが、過半数の支持を得られると考える人物を首相に任命できる。(後略)10月16日 ロイター】

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【マハティール氏「どちらも支持しない」】

こうした状況で、マハティール氏はムヒディン首相とアンワル氏のどちらも支持しないとのこと。

 

****マレーシア、「アンワル首相」でも政治混迷続く=マハティール氏****

マレーシアのマハティール前首相(94)は16日、ロイターとのインタビューに応じ、野党連合を率いるアンワル元副首相が政権を樹立できるほどの支持を議会から得られているかどうかは疑問だとしつつ、たとえ得ているとしても政治の行き詰まりは続くと述べた。

アンワル元副首相は13日、国王と面会し、過半数の議員の支持を確保し政権を樹立できると説明した。

同国ではムヒディン首相とアンワル氏が権力闘争を続けているが、マハティール氏はどちらも支持しないと語った。

マハティール氏は、たとえ新たな首相が誕生してもマレーシアでは変化する政党連合の影響を受けやすい状況は続くと指摘。「そのためどちらにしても状況は非常に不透明であり、政治空白の状況が生まれるだろう」と述べた。【10月16日 ロイター】

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前回ブログにも“アンワル氏は(ナジブ政権当時)与党に対抗する立場で、華人など少数派民族の支持を背景にしてきましたので、既得権益を維持したい多数派マレー系住民の支持は薄く、マレー系住民を支持基盤とする(旧与党)UMNOの一部議員も取り込んで政権についても、マレー系とその他の間のバランスで厳しい政権運営も予想されます。”と書いたように、アンワル氏が政権獲得しても不安定な状況が続くという認識は、マハティール氏の指摘するとおりでしょう。

 

ただ、現在の混とんは、(首相に復帰して権力から離れ難くなったのか)マハティール氏がアンワル氏への禅譲約束の履行を明確にしなかったところから始まっているとも言え、上記インタビューはいささか他人事のような言い様にも聞こえます。

 

「そのためどちらにしても状況は非常に不透明であり、政治空白の状況が生まれるだろう」・・・・また、権力への復帰を考えているのでしょうか。現在95歳、生涯現役・・・かな?

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