(1966年、文化大革命時代の紅衛兵【10月26日 WSJ】)
【習氏がトランプ大統領に「もう6年、一緒に働きたい」】
中国・習近平国家主席がこれまでの慣例に従った2期での退任を拒否し、長期政権への道を画策している・・・ということは多くの識者が指摘しているところです。
“19年の大阪での米中首脳会談で、習氏がトランプ大統領に「もう6年、一緒に働きたい」と述べた”とか。
どういう意味合いだったかは知りません。他愛もない外交辞令にすぎないのか、それとも自分の将来を見据えた発言だったのか・・・
****習氏、長期政権へ続く難題 引退年齢の慣例/評価に陰りも 5中全会開幕****
中国共産党の重要会議、第19期中央委員会第5回全体会議(5中全会)が26日、北京で始まった。
党指導部が入れ替わる次の党大会まで残り2年。習近平(シーチンピン)国家主席が前例を破って引き続き政権を担うか、駆け引きが本格化していく時期でもある。自らの権威を固め後継者育成も控える習氏の地位は盤石に見えるが、クリアすべき課題も多い。
党中央委員会全体会議は5年に1度の党大会に次ぐ重要会議だ。10年前、李克強(リーコーチアン)氏と共に次世代リーダー候補として党最高指導部の政治局常務委員入りしていた習氏は、胡錦濤指導部2期目の5中全会で党中央軍事委員会副主席にも選出され、次期総書記としての立場を固めた。
しかし、今の政治局常務委員には習氏の後継候補が見あたらない。有力とうわさされた習氏側近の陳敏爾・重慶市党委書記(60)、胡氏や李氏らが輩出した共産主義青年団(共青団)出身の胡春華副首相(57)は、政治局常務委員の1ランク下の政治局員にとどまっており、2022年の党大会でいきなりトップに就く可能性は低いと見られる。
習氏の前任、前々任の総書記である胡錦濤氏、江沢民氏は2期10年の任期でバトンを次世代に引き継いだ。しかし、ボルトン前米大統領補佐官は今年発表した自著で、19年の大阪での米中首脳会談で、習氏がトランプ大統領に「もう6年、一緒に働きたい」と述べたと暴露した。
共産党関係者は「習氏は、早くから『党の核心』の地位を築いた。22年以降も政権が続くのは前提だ」と言い切る。
習氏は18年の憲法改正で、「2期10年」とされていた国家主席の任期制限を撤廃。党総書記には明文化された任期制限がなく、理論上は22年以降も政権を担うことが可能になった。
今年9月に制定した党中央委員会工作条例では、「習氏を核心とする党中央の権威」を擁護するよう党幹部に求めて、さらなる権威づけも進んでいる。
だが、習氏の3期目が確定したわけではない。次の党大会を69歳で迎える習氏にとっての大きな壁は、党最高指導部に適用されるといわれる「七上八下」の慣例だ。
党大会の年に67歳以下なら残留し68歳以上は退くとされる不文律で、前回党大会で習氏の盟友・王岐山(ワンチーシャン)国家副主席(72)が最高指導部から外れたのも、このためとの見方が強い。
就任以来、強い指導力を発揮してきた習氏だが、米国との対立をはじめとする国際摩擦や、新型コロナの初期対応などでその評価には陰りも見え隠れする。
北京のシンクタンク研究員は「1期目の『反腐敗』政策は確かに党を引き締めたが、権力闘争の側面もあった。2期目は新型コロナ対応で一定の評価を得ているものの、8年の実績という意味では寂しい部分もある」と話す。
共産党の求心力を高めるため「強国」路線を打ち出す半面、それに警戒を強める国際社会との折り合いをどうつけるか。党関係者は「党の安定が国家の安定につながるというのが、習指導部の基本方針だ。5中全会では、その方向性をより確実にしようとするだろう」と語る。【10月27日 朝日】
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中央委員会については、“中央委員会の委員は5年に1度の党大会で選出される。中央委員会は党大会と並ぶ最高指導機関で指導部人事や重要政策の方針を決める権限を持つ。約200人の中央委員と議決権を持たない約170人の中央候補委員で構成され、党規約で少なくとも毎年1回総会を開くことが定められている。”【10月26日 毎日】
とのこと。
【党の規則に習近平氏「核心」再び明記】
【朝日】記事にもあるように、党の規則にも習近平氏を「党中央や全党の核心」とすることが改めて明記されています。
****習近平氏「核心」再び明記 共産党が「長期施政に関わる」新規則****
中国共産党は13日までに、習近平総書記(国家主席)を「党中央や全党の核心」として擁護する義務を盛り込んだ党の規則「党中央委員会工作条例」を制定した。
習氏の「核心」としての地位はすでに党内で確立されているが、今回改めて明文化したのは2022年以降の3期目続投に向けた布石の一環とみられる。
条例と同時に出された「通知」は、同条例が「党の長期執政と国家の長期安定」に関わると言及。「習近平同志を核心とする党中央の権威と統一的な指導を揺るぎなく擁護することが最も重要だ」と強調した。
習氏の党内における「核心」としての地位は16年に開かれた党の重要会議で決定。その後も折に触れて党や政府の重要文書などで言及され、19年制定の「党組織工作条例」も「習総書記の核心の地位」を擁護する義務を定めている。
今回の条例は、10月下旬に党の重要会議「第19期中央委員会第5回総会(5中総会)」が開かれるのを前に、習氏への高度な忠誠を党高官に要求する狙いがありそうだ。習氏は3期目続投を目指しているが、米国との対立激化などを受けて「長期政権化よりも、まずは現政権の安定維持に懸命だ」(北京の中国人ジャーナリスト)【10月13日 産経】
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中国政治でよく使われる「核心」という言葉については、以下のようにも。
****新“党内法規”制定で習近平が突き進む前例なき独裁****
・・・・では、「核心」とはなにか。(趙紫陽の政治秘書であった)鮑彤はこういう。
「核心という言葉を最初に使ったのは鄧小平だ。鄧小平はこう語っている。核心とは何か。実は定義はない。その発言がすべてを決定する、それが核心だ。過去の毛沢東が核心であった。毛沢東がすべてを決めた。毛沢東が死んだあとは、私が核心だ。私が決めた。その後は君が核心だ。君が決める。このように、核心は決定する、ということだ。私は核心をそのように考えている、と」。
核心をこのように考えると、習近平は、今後の中国共産党に関する一切を自分が決定する権力を持つために、この条例を制定したいようだ。
そして、条例の細かい条文はまだ不明ながら、「個人の指導的地位の強化」を盛り込んでおり、おそらくは民営企業や大学の知識人に対するコントロールも含めて、あらゆる方面の決定権を掌握するつもりだろう。【10月1日 福島 香織氏 JBpress】
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【党内の習近平長期政権受容の背景には“習近平への責任押し付け”?】
とは言え、中国を取り巻く環境は米中対立激化など厳しくなる一方。
上記の福島香織氏は、習近平長期政権が党内で受容されることについて、「習近平氏への責任の押しつけ」のようなうがった見方もあることを紹介しています。
****習近平に責任を押し付けようとしているのか****
だが、そんなこと(「核心」として、あらゆる方面の決定権を掌握すること)が党内的に可能なのだろうか。習近平に対する批判的な声は、すでに体制内からも隠せないほど出ており、中国内世論の風当たりも厳しくなっている。
中央党校の元教授の蔡霞が共産党をゾンビだと形容し、習近平はマフィアのボスにすぎない、と批判したことで党籍をはく奪された例をみても、米国・ヒューストンの中国総領事館がスパイ拠点として閉鎖された背景に、総領事館内部の人間が米国側に情報を漏らしたことがあったことからみても、党内のアンチ習近平勢力は想像以上に広がっている。
習政権を批判してきた任志強の懲役18年判決は、紅二代(親たちが革命に参加した共産党サラブレッドグループ)を完全に敵に回してしまった。
一方で、今、習近平の代わりに誰が共産党のトップに立っても、この体制を立て直すことは難しい。中国が今後直面する厳しい状況に変化はなく、いっそ最後まで習近平に最高責任者のポジションでいてもらい、すべての責任を負ってもらいたい、と考える党中央幹部も多かろう。
次世代の共産党指導者として注目株は、共産主義青年団(共青団派)出身で、胡錦涛や李克強らが大事に育ててきた現副首相の胡春華だが、いま仮に習近平の後継者になっても、米国による新型コロナ肺炎の国際賠償請求の矢面に立たされ、経済的にも、グローバルチェーンからのデカップリングの中で、立て直すことは困難であり、大衆の不満の矛先を一身に受けるつらい立場が待っている。
習近平長期独裁を共産党中央が受け入れるということは、もはや誰も、共産党の未来に期待がもてず、責任を習近平に押し付けようというだけのことかもしれない。
ならば、今年の五中全会は、習近平長期独裁体制を決定づけることになるかもしれないが、それは中国共産党にもはや自力更生の能力がない、ということであり、「裸の皇帝」「道化」と任志強が揶揄した習近平と共産党体制の末路を、我々はただ遠巻きにカウントダウンする段階に入ったということかもしれない。【同上】
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誰がやってもうまくいかないのなら、敢えて火中の栗を拾うこともない、習近平にやらせとけ・・・ということでしょうか。
【習近平政権のもとで進む、文革を彷彿とさせる過剰な国家主義、国家への忠誠の強要】
しかし、習近平政権が長期化することで困るのは、習近平氏の文化大革命再現的な政治体質です。
****「中国のトランプ」に鉄槌、習近平文革の始まりか****
「中国のトランプ」といわれるほどの遠慮のない発言、放言で知られる、紅二代(親が革命の功労者)の実業家・任志強(じん・しきょう)は、今年(2020年)2月に習近平を「裸の皇帝」「道化」などと激しく批判し、宮廷クーデターを煽ったともとれる署名原稿を米国発の華字論文サイトに寄稿したことで、およそ半年にわたって身柄拘束されていた。9月22日、その任志強に、懲役18年という重い判決が言い渡された。(中略)
習近平の性格を思えば、こうした実業家や学者、知識人、官僚らを次々と、それこそ文革時代のように粛清していかねば安心できない、ということになる。
今回の任志強事件は、十日では済まない長い“習近平文革”の始まりを告げるものになるかもしれない。【9月24日 福島 香織氏 JBpress】
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中国では、習近平氏のもとで、批判的勢力を容赦しない国家主義的風潮が強まっています。
****習主席支配の中国、過激な国家主義への暗転 「国家への忠誠欠如」で過激なバッシング横行****
中国に吹き荒れる国家主義の風がここにきて、過激な様相を帯びてきた。毛沢東主義の暗い過去を想起させる足元の潮流を後押ししているのが、共産党のプロパガンダや習近平国家主席の政治的野望、そして新型コロナウイルスの封じ込めに成功した国家のプライドだ。
ネット上で、中国指導部を批判する、または国家への忠誠が欠如していると見なされた人物は、執拗(しつよう)な集団攻撃の標的になる。嫌がらせは標的が沈黙するまで続く。中には職を失った人もいる。
今年目立った標的となったのが、コロナ対応を巡り、当局者の初動に疑問を投げかけた人々だ。湖北省武漢市の文筆家である方方氏もターゲットになった1人だ。
方方氏がネット上で住民の苦境に言及し、地元政府の対応の遅れを批判すると、多くの国内ネットユーザーは同氏を「裏切り者」と切り捨てた。武漢市内のバス停には、同氏に対して「人々に犯した罪を償うため、頭をそるか死ね」と書かれた匿名のポスターが貼られ、その画像はネット上に拡散した。太極拳の有名な武術家は「正義の握り拳」で同氏を攻撃するよう唱えた。
方方氏はその後、中国版ツイッターの「微博(ウェイボー)」で、市民にこう呼びかけた。「中国は文化大革命の時代に後戻りすることはできない」
中国政治の専門家は、国家主義の高まりについて、世界における中国の地位が向上する中で自然な成り行きだと指摘する。中国人からは、国家に対する心からの誇りが根底にあるとの声も聞かれる。
中国政府も国家主義の増進に余念がない。当局者はネット規制や大量のソーシャルメディア(SNS)アカウントを通じて、当局に対する批判を検閲により徹底的に封じ込めているほか、政府や共産党を促進するコンテンツを大量拡散するエコシステムを構築している。
長期独裁体制を視野に入れる習氏も、国家主義者の急先鋒に立つ。国家復興という「中国の夢」の実現を誓う同氏は、経済成長が鈍り、米国との対立が先鋭化する中で、共産党への支持を固めようと、生活のあらゆる面で国民の愛国心に訴える。
習氏が目指す中国の国家像はこうだ。独裁政権およびハイテク技術による社会統制を超国家主義の浸透と組み合わせることで、反対派を封じ込める新たなタイプの強国――。
中国のネット検閲では、社会問題に関する限定的な議論を容認していた時代もあった。だが、習氏が実権を握って以降の8年間、国内リベラル派の間では、文化大革命の熱狂的な政治に後戻りするのではとの懸念が強まっている。毛沢東が仕掛けた「反革命的な要素」に対する戦争により、中国社会と経済は1960年代~70年代に崩壊の瀬戸際に追い込まれた。(中略)
<バッシングを呼んだ日記>
方方氏が「武漢日記」を記録し始めたのは、コロナ封じ込めに向けて武漢市当局がロックダウン(都市封鎖)を敷いた直後の1月だ。同氏は、政府も資金援助する湖北省の作家協会のトップを務めていた経歴を持つ。
中国メディアの報道が厳しく制限される中、同氏の日記は深刻化していたコロナ感染拡大の実態を知る上で、貴重な機会を提供していた。
大半はロックダウン下の日常に関する記述だが、時には真実を隠ぺいしているとして、当局者を批判することもあった。同氏の日記の視聴回数は数百万回に上った。
同氏への攻撃が加速したのは、日記の英語の翻訳版が米国で出版されるとのニュースが4月に伝わってからだ。ネット上では方方氏の動機に対して疑問を呈し、外国人に中国を攻撃するための「短刀を提供している」として糾弾する声が上がった。
方方氏の自宅には石が投げられた。あまりの嫌がらせに耐えられず、同氏は自身のウェイボー投稿に対するコメントが目に入らないよう遮断した。中国語版の日記を含め、本土や香港の出版社は、同氏の作品を出版することを拒否しているという。
ネット上のバッシングには、中国共産党系の新聞「環球時報」の胡錫進編集長など、政府とつながりのある人物も加わった。(中略)
<プロパガンダの威力>
中国のサイバー空間に詳しい専門家らは、ネット上には政府寄りのコンテンツを投稿する数百万人のユーザーが存在すると推定している。
こうしたユーザーは、政府からの雇われか、政府当局者だ。中国工業情報省(MIIT)傘下組織による2019年のデータでは、政府系の部署や機関は、約24万に上るSNSのアカウントを運営している。(中略)
中国のSNSは、コンテンツに関して政府の指示に従うとみられており、国家主義を増幅する存在になっている。
中国のネット規制当局は2019年末、「習近平の思想」を後押しするコンテンツを促進するよう新たな規定を認可。国営メディアや政府機関による共産党プロパガンダを優先的に扱うよう、アルゴリズムの調整を義務づけた。
企業の間では、政府系のコンテンツをユーザーのホームページで目立つところに表示したり、人気コンテンツのリストに追加したりする動きが出ている。政府機関の評判をおとしめるコンテンツは、削除しなければならない。(後略)【10月26日 WSJ】
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