孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ナイジェリアなど西アフリカに見る「悪しき統治」と混乱

2020-10-25 23:18:49 | アフリカ

(ナイジェリアの首都アブジャで20日、警察による暴力に抗議するデモ隊に対し、催涙ガスを発射する警官隊【10月23日 朝日】

 

【「アフリカの巨人」ナイジェリアで日常的な暴力 警察の暴力に国民不満が爆発】

ナイジェリア・・・およそ2億人というアフリカ最大の人口を擁し、経済でも2014年のGDPの基準年度変更(1990年→2010年)および再推計では南アフリカを抜いてアフリカトップに躍り出た「アフリカの巨人」ではありますが、イスラム過激派ボコ・ハラムの襲撃、部族間の衝突で数十名規模の犠牲者をだすことも珍しくない暴力が蔓延する国でもあります。

 

今年に入ってからも

“「盗賊団」100人が村々を襲撃し略奪・放火、50人殺害 ナイジェリア”【3月3日 AFP】

“オートバイ100台超の集団が村襲撃、47人殺害 ナイジェリア北部”【4月20日 AFP】

“ナイジェリアで武装集団が住民74人殺害 負傷者も多数 AFP通信など伝える”【5月29日 毎日】

“過激派が村襲撃、81人死亡 ナイジェリア”【6月11日 AFP】

“「盗賊団」がナイジェリア軍襲撃、少なくとも兵士23人死亡”【7月20日 AFP】

“子ども203人を「人間爆弾」に イスラム過激派がナイジェリアで”【7月25日 共同】

“イスラム過激派、数百人を人質として拘束か ナイジェリア”【8月19日 AFP】

“ナイジェリア農村部で襲撃激化、半年で死者1100人超 人権団体”【8月25日 AFP】

 

どれひとつとっても、もし欧米で起きたら国を揺るがすような大事件ですが、「アフリカだから・・・」「ナイジェリアだから・・・」ということで、国際的にも大きな話題にもなりません。

 

そういうナイジェリアで、今度は警察の暴力が明らかになり、国民の怒りを買い、大きな混乱となっています。

 

****ナイジェリア、拷問などで批判の警察特殊部隊を解体****

ナイジェリアは11日、暴力犯罪に対処する警察の特殊部隊「対強盗特殊部隊」(SARS)を解体した。

 

この部隊は長年にわたり市民を虐待してきたとされ、抗議デモで死者も出たほか、ソーシャルメディアではミュージシャンや映画界の著名人も加わって解体を求める運動が起きていた。

 

英ロンドンのナイジェリア大使館前で開かれた集会に参加していた数百人は、SARS解体のニュースを知って喜びをあらわにした。

 

その場にいたナイジェリアのアフロポップのスター、ウィズキッドさんは、「われわれが勝った!」と叫び、「みんなの声が届いた。これは新しいナイジェリアの幕開けだ。私たちは自分の考えを話すことを恐れない」と語った。

 

最近、ナイジェリア南部のデルタ州で警察官が男性を殺害した場面とされる映像がネット上に拡散し、SARSの行動に対する懸念が猛烈に高まっていた。当局はこの映像は本物ではないとして撮影した男性を逮捕し、人々の怒りに火を注いだ。

 

デルタ州警察のハフィズ・イヌワ本部長は、南部の町ウゲリで8日に行われた抗議行動で、デモ参加者と警察官各1人が死亡、さらにもう1人が命に関わる重傷を負い、9人を逮捕したと明らかにした。

 

9日には、ナイジェリア南部の主要都市の多くで大規模なデモ行進が行われた。

 

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは6月に公表した報告書で、2017年1月から2020年5月の間にSARSが幹部の指揮監督の下で行ったとする拷問、虐待、超法規的殺人の82の事案を列挙した。

 

アムネスティ・インターナショナルは、SARSが「組織的な拷問」を行ったと非難し、ナイジェリア警察には拷問室が存在すると主張。被害者のほとんどは、低所得で社会的に弱い立場にある18〜35歳の男性だという。

 

アムネスティの報告書は、「多くの場合、(被害者は)違法に逮捕・拘束され、釈放と引き換えに巨額の賄賂を渡すことを余儀なくされている。賄賂を払えない人は拷問や虐待の対象となる」としていた。 【10月12日 AFP】

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警察の特殊部隊「対強盗特殊部隊」(SARS)は解体されましたが、騒ぎはそれでは収まらず、デモ拡大、警察の発砲と混乱は拡大。

 

****警察暴力、デモ拡大 発砲、死者56人に ナイジェリア****

アフリカ西部のナイジェリアで警察による暴力への抗議活動が広まっている。

 

最大都市ラゴスでは20日、治安部隊がデモ隊に向けて発砲し、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると12人が死亡。これまでの犠牲者は全土で少なくとも56人に達した。約2週間続くデモは激しさを増し、ラゴス州知事は事実関係の調査を指示した。

 

アムネスティが目撃者の証言などを元にまとめた報告書によると、20日夜、ラゴスのレッキ地区などで数千人が参加した平和的な抗議デモに対し、軍や警官隊が警告なしに突然、発砲を始めたという。

 

デモをめぐっては「犯罪者たちが抗議活動を隠れみのにしている」として、州知事が外出禁止令を出したばかりだった。

 

抗議は21日も続いた。ロイター通信によると、警察はラゴス各地で検問所を設けて警戒を強めたが、若者たちのグループは、へし折った道路標識や木の枝などを使って道路を封鎖。建物の火災も各地で相次いだ。(中略)

 

ナイジェリアのブハリ大統領は21日の声明で「SARSの解体は改革政策の第一歩だ。ナイジェリア国民に説明責任を負う警察制度をもたらすことになる」と述べたが、デモ隊に向けた発砲については言及しなかった。

 

ロイター通信によると、オシンバジョ副大統領はツイッターで犠牲者に同情を示した。【10月23日 朝日】

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元軍人のブハリ大統領ですが、軍・警察の不当行為を認めることに抵抗があるのでしょうか。

 

国民の怒りは政府の食糧管理にも向かっています。

 

****ナイジェリア、数千人が食料倉庫を襲撃 「政府が隠したと住民怒り****

情勢不安が続くナイジェリアで24日、数千人規模の群衆が同国中部ジョスの政府倉庫を襲い、食料を略奪した。

 

略奪は最大都市ラゴスと南西部エデに続き発生。襲撃されたジョスの大規模倉庫には、新型コロナウイルス感染拡大を受けて実施されたロックダウン(都市封鎖)の期間中に配給される予定だった食料が保管されていた。

 

一方、20日発令の夜間外出禁止が緩和されたラゴスは比較的穏やかで、約1週間続いた暴動も沈静化。暴動では警察署が放火され、商店が略奪の標的にされたほか、車も破壊されるなどし、当局は混乱に乗じた「ならず者たち」の仕業だと非難していた。

 

ジョス在住の女性は、倉庫に保管されていたのは3月と4月に配給されるはずの食料だったと述べ、「当局はロックダウンの間に食料を隠していた。この国の政府は一体どうなっているのか、大勢の人々が飢え死にしているのに」と憤った。

 

また、別の住民は「当局はこうなる前に食料を配給すべきだった」と指摘。ロックダウン中に食料価格が高騰したことに触れ、「貧しい人間はどうやって生き延びたらいいのか」と疑問を呈した。 【10月25日 AFP】

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政府が食糧を隠したのかどうかはわかりませんが、そのように思われるということは、政府が国民から信頼されていないということでしょう。

 

【周辺西アフリカ諸国でも 大統領任期・選挙をめぐる“よくある”混乱】

暴力の蔓延・連鎖はナイジェリアに限ったことではなく、近隣西アフリカ諸国の混乱も報じられています。

 

****カメルーンで武装集団が学校襲撃、児童8人死亡****

カメルーンの南西州で24日、銃や刃物で武装した集団が学校を襲撃し、少なくとも8人の児童が死亡した。犯行声明は出ていないものの、一帯では英語圏の分離独立を求める活動家らと政府軍の衝突が3年続いている。

 

国連人道問題調整事務所現地事務所によると、事件があったのはマザー・フランシスカ・インターナショナル・バイリンガル・アカデミーで、銃撃と刃物による攻撃で少なくとも8人の児童が死亡した。この他に12人が負傷して地元の病院に搬送され、これまでに域内で発生した襲撃事件の中でも最も深刻なものの一つとなっている。

 

警察関係者は、「9人のテロ攻撃者」が9〜12歳の児童らを銃撃したと語った。

 

カメルーンの英語圏である南西州と北西州は長年にわたり、国内多数派のフランス語圏から冷遇されていると主張。両州は、政府軍を攻撃したり、政府事務所や学校の閉鎖を要求したりするなど、先鋭化した分離独立派の活動家らが関与する紛争の中心地となっている。

 

2017年以来の衝突による死者は3000人を上回り、70万人超の住民が自宅からの避難を余儀なくされた。 【10月25日 AFP】

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****大統領選目前のコートジボワールで民族間衝突、少なくとも2人死亡****

大統領選を2週間後に控えた西アフリカのコートジボワールで民族間の衝突が発生し、野党の大統領候補の自宅が燃やされ、少なくとも2人が死亡した。目撃者らが18日、明らかにした。大規模な紛争に発展する恐れが懸念されている。

 

衝突は16日、経済活動の中心地アビジャンから北に200キロ離れたボングアヌーの市内と周辺地域で起きた。同市は、野党の大統領候補パスカル・アフィ・ヌゲッサン元首相の地盤だ。

 

現地のAFP記者によれば、ボングアヌー市内では店舗や飲食店が略奪と放火の被害に遭い、車も数台が放火された。また、ヌゲッサン氏は17日、ボングアヌーにある自宅が全焼したとAFPに語った。

 

コートジボワールでは、ワタラ大統領が3期目を目指して大統領選に出馬する意向を表明したことを受け、8〜9月に複数の都市で民族間衝突が発生し15人前後が死亡している。大統領選をめぐっては、ローラン・バグボ前大統領を含む数十人の候補者が立候補を認められなかった。

 

野党側は、選挙運動への不参加を呼び掛けるなど投票ボイコットの可能性を示唆しており、ヌゲッサン氏を含む著名人らがここ数週間「市民的な不服従」を訴えている。

 

こうした呼び掛けに応じたヌゲッサン氏を支持する若者らが16日、ボングアヌーの2つの幹線道路上を封鎖したことから衝突が起きた。

 

アグニ人と、北部出身で現職のアラサン・ワタラ大統領を支持するイスラム系民族ジウラ人は、互いに衝突の原因は相手側にあると主張している。

 

コートジボワールでは2010〜11年、大統領選後の暴動で3000人が死亡し、国内が大混乱に陥った。今回の衝突に、同様の事態に発展しかねないと懸念する声が上がっている。

 

ボングアヌー市内では18日、なたや刃物、鉄の棒、ゴム銃などで武装したアグニ人の若者たちがヤシ酒を飲みながら歩き回り、多数の住民らが徒歩で逃げだす様子が確認された。 【10月19日 AFP】

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****大統領選前に民族間の衝突相次ぐ、7人死亡40人負傷 コートジボワール****

今月31日に大統領選を控えたコートジボワールで、民族間の衝突が相次いでいる。最大都市アビジャン西郊の港町ダブーの当局者は21日、市内と周辺地域で前日からの2日間に少なくとも7人が死亡、40人が負傷したとAFPに語った。

 

ダブー市長は21日、市内でカラシニコフ銃の発砲音が聞こえていると述べており、死者数は増える恐れがある。

 

目撃者らによると衝突は19日、野党に近いとみられている地元のアジュクル人と、アラサン・ワタラ大統領を支持する北部出身のジウラ人との間で発生した。

 

ダブー近郊の村の長老は、20日に「ナイフや棒、なたで武装した者たちが襲ってきた」とAFPに話した。

 

コートジボワールでは2010〜11年の大統領選後、当時政権の座にあったローラン・バグボ前大統領がワタラ氏に対する敗北を認めず、暴動に発展して3000人が死亡した。今回の大統領選でも、8〜9月に複数の都市で民族間衝突が発生して15人前後が死亡して以降、緊張が高まっている。

 

コートジボワールの憲法は大統領の3選を禁止しているが、現在2期目のワタラ氏は、2016年の憲法改正で任期はリセットされたと主張して立候補。一方、バグボ氏ら数十人の候補者は立候補を認められなかった。野党側は、選挙をボイコットする可能性を示唆し、支持者らに「市民的な不服従」を訴えている。 【10月22日 AFP】

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本来、国民を統一していくツールであるはずの選挙が、激しい部族対立の場となることは珍しくありません。

また、大統領任期を巡って、“憲法改正で任期はリセットされた”として憲法が禁じる多選を実現しようとするのも、これまた権力者の常とう手段です。

 

同じ西アフリカのギニアでも、似たような権力への居座り・混乱が。

 

****ギニア大統領選で現職3選 出馬強行に抗議、9人死亡****

西アフリカ・ギニアで18日に行われた大統領選で、選挙管理委員会は24日、現職コンデ氏(82)が59.49%を獲得し勝利したと発表した。AP通信が報じた。

 

憲法は任期を2期までと定めていたが、コンデ氏は3月に国民投票を実施して改憲し3選出馬を強行。野党支持者が抗議デモを起こして治安部隊と衝突し、少なくとも9人が死亡するなど混乱が広がっている。

 

対抗馬のディアロ元首相の得票率は33.5%だった。コンデ氏は憲法の大統領任期の規定を、2期10年から2期12年に変更。自分が大統領を務めてきた2010年からの10年間は新規定に含まれず、出馬が可能だと主張した。【10月24日 共同】

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もちろん、ナイジェリアなどアフリカ諸国は他の地域をしのぐ経済背長を実現しているという「変化」の側面もありますが、上記のようなニュースに接すると、国民の幸せに至る道はまだまだ遠いようにも感じてしまいます。

 

良き統治が前提にないと、いくら経済が成長しても、格差の拡大・腐敗のまん延・国民不満の拡大にもなってしまいます。

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