(指名レース勝利を確実にしたオバマ夫妻 6月3日 ミネソタ “flickr”より By Cherie Priest
http://www.flickr.com/photos/cherie_priest/2551839384/)
【オバマ ヒラリーに勝利】
アメリカ大統領選挙の民主党候補がようやく確定しました。
選挙戦が始まる昨年の1,2月ころまでは、みんなヒラリー・クリントンが民主党候補になると思っていたばかりでなく、共和党支持者すら“次期大統領はヒラリーだろう”と考えていました。
しかし、結局「ガラスの天井」を突き破ることはかないませんでした。
それは女性であるがゆえに遠くからでは目に見えない“ガラスの天井”で進出を阻まれる・・・というよりは、「私は家庭でクッキーを焼いて満足するような女性ではない」というような攻撃的な彼女の個性が、対立候補のオバマ氏の優しく癒し、包み込むような個性を逆に際立たせていったようにも思えます。
オバマ候補をスターダムに押し上げた2004年民主党大会での有名なスピーチ。
「わたしは彼らにこう言いたい、“ここにあるのは、リベラルなアメリカでも保守的なアメリカでもなく、アメリカ合衆国なのだ”と。ここにあるのは黒人のアメリカでも白人のアメリカでもラティーノのアメリカでもアジア人のアメリカでもなく、アメリカ合衆国なのです。」
(http://macska.org/article/34 “macska dog org”より)
アメリカに人種の問題があることは誰もが知っています。
しかし、それを口にすることは、特に公の場に持ち出すことは、非常にデリケートな配慮を必要とするようです。
しばしば、人種の問題などないように振舞うことが要求されます。
それでも、やはり問題は存在します。
****米国の囚人、世界最多の230万人 30代前半の黒人男性は11%が壁の中*****
【6月7日 AFP】国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は6日、米国の刑務所で収監されている囚人が史上最多の230万人に上り、他国と比べても最多だと声明で発表した。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは米法務省が公表した調査を引用し、受刑率は米国が10万人あたり762人と、英国の152人、カナダの108人、フランスの91人などを大きく引き離していると指摘した。
米国の刑務所で収監されている黒人と白人の割合は6対1で、人種別の人口比率と大きく異なっている。司法省の報告によると、30歳から34歳の黒人男性の11%近くが収監されているという。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、米国内で白人も黒人もほぼ等しく薬物に手を染めているにもかかわらず、薬物に関連した犯罪で収監されるのは、黒人が白人に比べ12倍も多いと指摘している。
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“30歳から34歳の黒人男性の11%近くが収監されている”というのは驚異的な数字です。
該当の世代の場合、知り合いの10人にひとりは塀の中・・・ということですから。
“アメリカでどうしてこんなに犯罪が多いのか?”というのは重大なテーマですが、今日はパス。
“黒人と白人の割合は6対1”という点に絞ります。
アメリカは30年近く前に西海岸の観光ツアーに参加した以外は縁がありませんので、むこうの社会のことなどはわかりませんが、恐らく薬物や犯罪に関わりやすい生活環境の差があるのではないでしょうか。
(小説や映画などフィクションの世界からの印象ですが、ある程度現実を反映しているのでは・・・)
人種に関する話題でこんな記事も目にしました。
****糖尿病患者の手足切断率は黒人が白人の5倍、米大学研究*****
【6月9日 AFP】アフリカ系米国人の糖尿病患者が手足の切断手術を行うを確率は、白人の場合の5倍高い。医療における不平等を調査している米ダートマス大学の研究所は5日、こうした調査結果を発表した。
Dartmouth Institute for Health Policy and Clinical Practice(健康政策と臨床診療に関するダートマス研究所)が米政府管掌の医療保険制度「メディケア」に加入している糖尿病患者を対象に調査を行ったところ、手足の切断手術を行った確率は、黒人では1000人中4.17人だったのに対し、白人では1000人中0.88人に過ぎなかった。
また、糖尿病患者のうち、極めて重要な血糖値管理試験を受けたことがあるのは白人では85%だったが、黒人では79%にとどまった。
こうした人種間格差は、ほかの検査項目でもみとめられた。例えば、メディケア加入者のうち、マンモグラフィー検診を受けた人は白人女性では64%だったが、黒人女性は57%だった。
同研究所は、こうした結果は医療の質における「驚くべき」人種間格差を示す新たな証拠だとしている。
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“血糖値管理試験を受けたことがあるのは白人では85%だったが、黒人では79%”ということですから、確かに差はありますが、何倍もの差ではありません。
“手足切断率は黒人が白人の5倍”というのは、おそらく検査受診の差ではなく、普段の生活状態・意識の差ではないでしょうか。
糖尿病の食事療法は、非常に強靭な意志を必要とします。
食べ過ぎたら胃が痛む・・・というなら、誰でも摂生します。
しかし、糖尿病では別に不摂生しても当座は痛くもかゆくもありません。
ただ、その不摂生の影響が10年後、15年後に・・・という訳ですから、遠い将来のリスクのために、今現在の食欲という生理的欲求を押さえ込む意思が必要とされます。
漠然とでも“明日”に何らかの期待を持てるなら、「10年後、15年後を考えて、今はがんばろう」という気持ちにもなれます。
逆に“クソみたいな毎日で、明日のことなんて・・・”というのであれば、今を摂生するのは難しいでしょう。
そういう生活環境、意識の差が“手足切断率は黒人が白人の5倍”になっていると考えるのは思い違いでしょうか。
****黒人6割「オバマ氏の身に危険」=人種対立改善期待も-米ギャラップ社****
【6月7日 時事】米民主党の大統領候補指名が確定したオバマ上院議員について、他の候補者より、危害が加えられる可能性が高い」と回答したのは全体の42%。黒人では57%と高い割合を示したのに対し、白人では39%にとどまった。
また、同社とUSAトゥデー紙が最近、ロサンゼルスとニューヨークの黒人を対象にした調査では、75%が「オバマ氏は他の候補者より白人と黒人の関係を改善してくれる」と期待感を示した。
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ヒラリーが思ったのか思わなかったのかは分かりませんが、これまでのテロ・暗殺の歴史を考えると、そういう危害の可能性も現実問題としてはあるのかもしれません
もし、オバマ候補が大統領となれば、政策的には未知数なだけに、これまでの言動から、金正日総書記と会談するのではないか? 中国に対し貿易制裁を発動するのではないか? イスラム武装勢力一掃のためにパキスタンに米軍を派遣するのではないか?・・・といった疑問を感じる向きもあります。
一方で、実質的に多様な世界をリードする米大統領という立場に、人種的マイノリティー出身で、異なる価値観の共存と融和を旨とする人物がつくということには、“何か変わるのでは・・・”という期待を感じます。
しかし、“白人と黒人の関係を改善してくれる”という期待感は、問題が難しいだけに、期待にこたえられないときの反動ともなって、暗殺云々よりもっと厄介かも。