ジャズが流れる洋食屋、バックドロップ(長野市)で遅い昼食。お客さんが他にいなかったので、マスターは大きめの音量でピアノトリオをかけてくれました。チック・コリアに似たところがあるけど誰だかわからず訊ねてみたところ、ジョン・テイラーとの答え。そういえば持っていたはずで、このごろ所持品まで忘れることが多くなりました。重症の健忘症でしょうか(笑)
JOHN TAYLOR (ジョン・テイラー)
DECIPHER (MPS 1972,73年録音)
ピアノのジョン・テイラーは、1942年英国生まれで、ジョン・サーマンやアラン・スキモドアと共演し、77年にはケニー・ホイーラー(tp)らを加えたグループ「アジムス」を結成して、ECMに録音を残しています。いまとなっては、彼に注目する人は少ないかもしれませんが、「DECIPHER(覚醒)」は一聴の価値があります。
力強く流れるようなピアノとベース、ドラムスが一体になった刺激的な作品です。この路線の先輩格は、チック・コリアの「Now He Sings, Now He Sobs」なのでしょうが、曲目にメロディの綺麗なものがあること、ドラムスのプレイが多彩なことなど、こちらの作品も悪くありません。
ジョン・テイラー(p)、クリス・ローレンス(b)、トニー・レヴィン(ds)というメンバーですが、リズムの二人は結構自由にピアノに絡んでいます。曲目はすべてジョン・テイラーの自作で、「Cipher~Wait For Me」、「Leaping」、「Speak to Me」、「Song For A Child」、「White Magic」というもの。はじめの曲が、印象的なテーマと切れのあるピアノ・タッチによるアドリブによって一番聴きごたえがあります。
このトリオの響きを聴いていると、午後の昼下がりのお客さんがほとんどいなかった1970年代のジャズ喫茶空間を思い浮かべます。そういえば、ジョン・テイラーとジョー・ハイダー(ドイツのピアニスト)を混同して、バックドロップのマスターと話をしてしまいました。最近、このあたりの作品とは疎遠になっているせいでしょうか。