家訓は「遊」

幸せの瞬間を見逃さない今昔事件簿

怪物の叫び

2010-06-02 07:56:47 | Weblog
我が家にある杉の木にカラスの巣があるらしい。

逆光じゃなくても黒く見えるが杉の葉を通して黒い影がうごめいているのを確認した。

子ガラスは2羽から3羽いるようだ。

親ガラスは、しきりとエサを運んでいる。

「カアカア」という親ガラスの透る声に混じって中途半端な「ワァ」とか「アァ」のような甘えた声が聞こえる。

昼休み寝転んでいたら猫がやってきた。

家の中を警戒しながら歩いている猫に私の姿が見えたようだ。

あわてて引き返していった。

しばらくすると石垣の更に上を歩いているのが見えた。

「ううん」と咳払いをした。

その瞬間ネコは身を低くして固まった。

「耳がいいなぁ」と感じた。

その直後カラスがやってきて猫を低空飛行で威嚇した。

ネコは驚いて退いた。

なおも別の方向からカラスの攻撃があった。

ネコはほうほうの体で逃げ出していった。

やはり巣が近くにあると子を守ろうとして親は必死になる。

午後は東屋に行く。

荷物を持って坂を下りていると不気味な声が聞こえた。

「ん?何だ今の声は」

確かに聞こえたような気がしたが今は聞こえない。

再び歩き出すとまた聞こえた。

子ガラスの甘えた声でもなくネコの声でもない。

もっと力強く不気味な濁った音だ。

「今度は、いったい何が居るんだ?」

とその場に佇んでしばらく次の声を待った。

「ワァーオァー」

聞こえた。

道路から「こんにちは」と女性の声が聞こえた。

上を見上げてみると近所に住む娘さんだった。

と、その時再び、あの声が。

やっと分かった。

声は、その女性の引いている乳母車の中から聞こえていたのだ。

だから声が移動していた。

今年生まれたばかりの赤ちゃんだった。

「怪物の声かと思った」と言うと

「済みませーん」と返ってきた。

お互いに笑って別れた。