家訓は「遊」

幸せの瞬間を見逃さない今昔事件簿

N爺

2010-06-16 07:29:01 | Weblog
N爺が1年ぶりでやって来た。

抗ガン剤治療を終えると「どうしても浜松に行く」の一点張りだったと奥さんは言う。

妻はガン患者に、どのようなものを食べさせたらいいのか心配した。

私は、どんな話をして、もてなしたらいいのか悩んだ。

東京のU氏に応援を頼んだ。

奥さんの運転で現われたN爺は、見たところ元気そうであった。

少し瘠せてはいるが、いつもの笑顔を見せてくれた。

N爺とU氏と私は、早速モーガンの話をした。

楽しくて大きな声を出して笑いあった。

妻の出した料理も箸が進み皆が驚き心配するほど食べた。

N爺の行きたがっていた春野にU氏のジャガーで行った。

翌日は私たち夫婦の毎月の予定である岩水寺フリーマーケットに連れて行った。

体力の衰えは仕方ないが病を忘れて行動できたと思う。

事前に「N爺はえらいなぁ。病気に負けていない。自分の道を失うことなく進んでいるなぁ」と考えていた。

死ぬことは誰でも同じ。

後か先かの違いだけだ。

そう心から思っているつもりだった。

だがいざN爺との別れが近づいていると感じ始めると少し涙が出た。

本番では本人を前にして冷静でいるフリをすることが出来た。

最後の旅先に我が家を選んでくれたことを光栄に感じている。

立ち去る前に助手席から「またお邪魔します」と言ってくれた。

約束は私たちのもてなしを誉めてくれたようにも感じられたしN爺に希望が湧いているようにもとれた。

何とか病の奴をやっつけてやりたい。

N爺が気弱になったころを見計らって愛媛を急襲してやろうと思っているところだ。