『蘭渓道隆天童山坐禅図』すっかり完成した気でいた.これは唯一縦長で、長辺2メートル超の予定だが、そもそも天童山というのは中国の栄西や道元も修行したといわられ、蘭渓道隆来日前の坐禅図という設定である。岩山の全てを手に乗るサイズの石で作った。松の木は盆栽である。なのに滝だけは以前撮影した実際の滝である。それで良いのか? 頭に浮かんだイメージを、眉間にレンズを当てる〝念写が理想”なのであって本物とみまごう物を作ろうというのではない。なので主役の人物のディテールは一貫して粘土丸出しである。不必要なことはしない。長い間、真を写すという写真に抗い続けて来た。97年作家シリーズ第一回の個展タイトル『夜の夢こそまこと』は宣言だったはずである。
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