安倍晋三、菅義偉、小池百合子の「PCR検査数の増加が陽性者増加に繋がった」とする薄汚のペテン 社会経済活動停滞阻止がホンネ

2020-07-13 11:30:17 | 政治
 東京都の新型コロナ感染者数が2020年5月25日の緊急事態宣言解除後、増減を見せながらも全体的に徐々に増加を見せ、6月19日の県をまたぐ移動解禁後はさらに増加に転じて、7月2日に100人を超え、7月9日には200人を超えて、224人の感染者数を数えるに至った。緊急事態宣言下の4月17日に206人を数えて以来の200人超えだそうで、7月10日、243人。7月11日、206人。7月12日、同数の206人。4日連続で200人を超えた。

 この急激な増加を東京都知事小池百合子や政府側安倍晋三、官房長官の菅義偉がそれぞれに解釈している。

 小池百合子に関しては7月9日の記者団に対する説明を動画から。

小池百合子「検査を行った数が過去最高で、3千件を行ってるんです」

 要するにPCR検査を過去最高の3千件も行った結果の224人であって、3千件も行わなければ、感染者は224人も出てこなかったということになる。

 但し検査するしないに関係なしにこの224人は感染していたのであって、その事実は変えることはできないのだから、3千件の検査を行わなければ、224人という人数で感染者数が表には出てこなかっただけということになる。

 つまり検査を2千件で済ませていたなら、224人のうちの何人かはPCR検査検査を新たに受けて感染者と認定されるまでに隠れ感染者として存在し続けて、他者に二次感染、三次感染の形で感染を広げていくコロナウイルス保菌者とならない保証はない。つまりさらなる感染拡大である。

 である以上、224人の感染を3千件のPCR検査検査の結果だとする小池百合子のこの主張は見え透いたマジックに過ぎない。勿論、マジックの種は感染者数を少なく見せようとするペテンにある。

 2020年7月9付「SankeiBiz」記事が伝えている7月9日の東京都の新型コロナウイルス感染症対策本部会議での小池百合子の発言にしても、同じマジックを使っている。。

 小池百合子「3400件に上るPCR検査を行った上での224人の陽性者数ではある。PCR検査の件数も増えていることも影響しているが、感染者数の動向についてはさらなる警戒が必要である」

 当然のことで、感染者の増加傾向に警戒は必要としているものの、あくまでもPCR検査件数が224人という数の陽性者を炙り出したという趣旨の発言となっていて、裏を返すと、検査数を増やさなければ、224人は出てこなかったというマジックとなる。

 このマジックは官房長官の菅義偉が6月29日午前の記者会見で既に使っている。2020年6月29日付「NHK NEWS WEB」記事からその発言を見ている。 

 6月28日、東京都で新型コロナウイルスの新たな感染者数が緊急事態宣言解除後最多の60人確認された。

 菅義偉「東京を中心として、一定の新規感染者が継続して確認されているが、症状の有無にかかわらず、濃厚接触者などに、積極的な検査を行っている結果も含まれている。直ちに再び緊急事態宣言を発出する、あるいは県をまたいだ移動の自粛を要請する状況に該当するものとは考えていないが、引き続き自治体と緊密に連携し、地域の感染状況を注視しながら、感染拡大の防止、社会経済活動の両立に取り組んでいきたい」

 東京を中心とした感染者の増加は「症状の有無にかかわらず、濃厚接触者などに、積極的な検査を行っている結果も含まれている」

 裏を返すと、感染している事実は変えることはできないにも関わらず、積極的な検査を行わなければ、感染者はこれ程多くは出てこなかった、もっと少なかったとする、少なくとも、出てきた感染者数は驚くに当たらないと見せかけるマジックを使っている。

 菅義偉のこのマジックは東京都で感染者が3日連続で200人を超えていた2020年7月11日の北海道千歳市で行った講演でさらに腕を磨いた状態で発揮されることになる。「NHK NEWS WEB」

 菅義偉「今は陽性者のうち約8割が39歳以下の人だ。政府としては、徹底してPCR検査をして陽性の人を探すという攻めの姿勢で今は対応している。

 新たな感染者が増えることにより、『また緊急事態宣言を出すのか』と聞かれるが、今の社会経済活動を進めていくという方針に変わりはない。政府の基本方針は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐと同時に、社会経済活動を徐々に復活させていくことだ。

 これ以上の感染拡大を防ぐために、東京やそれぞれの区と連携しながら今、取り組んでいる。この問題は圧倒的に『東京問題』と言っても過言ではないほど、東京中心の問題になってきている」

 「この問題は圧倒的に『東京問題』と言っても過言ではないほど、東京中心の問題になってきている」と言ってるが、東京都と往来が頻繁な神奈川県、埼玉県、千葉県でも感染者数は増加している。「東京中心の問題」とすれば、全国的に見た場合、大したことはないという意味を取るマジックとすることができる。

 つまり、政府の問題であり、日本の問題でありながら、「東京問題」だと、矮小化のマジックを見せている。

 「政府としては、徹底してPCR検査をして陽性の人を探すという攻めの姿勢で今は対応している」

 言っていることは小池百合子と同じである。攻めの姿勢のPCR検査の結果、出てきた感染者数であって、驚くに当たらない数だという趣旨となる。このように見せかけたいマジックとしてPCR検査数の増加を用いている。
 もし感染拡大の事実がなければ、どのようにPCR検査を増やそうと、東京都のように3400件も行ったとしても、感染者数は200人を超えることはないはずだが、そういった事実を捨て去って平気でいる。

 PCR検査はそれを行った対象者から既に感染している人間を拾い出す作業に過ぎないのだから、PCR検査の対象外の感染者数までさもたいしたことがないかのようにみせかける矮小化のマジックは薄汚いペテンとしか言いようがない。

 一方で、「政府の基本方針は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐと同時に、社会経済活動を徐々に復活させていくことだ」と言っているが、実際には感染拡大を防ぐことはできず、感染拡大の状況にあるのだから、少しぐらいの感染拡大よりも社会経済活動の復活をより優先させますというサインとなる。

 要するにこれがホンネであって、このホンネのために大した感染拡大ではないと見せかけるマジックを必要としていることになる。

 「今は陽性者のうち約8割が39歳以下の人だ」と言っている。その多くが夜の街の若者ということだが、社会経済活動を優先させることによって人の移動が頻繁化した場合、あるいは広範囲化した場合、夜の街から昼間の街に感染機会が場所を変えて、若者から中高年に感染していく事例が増えない保証はない。

 安倍晋三も2020年6月18日の時点で感染者数の増加を積極的なPCR検査の結果と結びつけるマジックを既に見せている。「新型コロナウイルス感染症対策本部(第38回)」

 安倍晋三「5月25日に緊急事態措置を解除してから、3週間あまりが経過いたしました。この間、新たな感染は一部の自治体にとどまっており、東京都では新規陽性者数が増えていますが、これは、二次感染防止の観点から、これまで集団感染が確認された夜の街で積極的なPCR検査を行った結果であり、しっかりと対応できている状況です。このため、先般改定した基本的対処方針にのっとり、明日、社会経済活動のレベルをもう一段引き上げます」

 勿論、感染者の数を数字で人目に明らかにするためにはPCR検査は欠かすことはできないが、安倍晋三にしても、新規陽性者数の増加を積極的なPCR検査の結果だとするマジックを平然と用いる薄汚いペテンを恣にしている。例え積極的なPCR検査が新規感染者数の増加を明らかにすることになっていたとしても、その増加はそれまでPCR検査は受けずにいた感染者が検査を受けたことによって引っかかった結果であり、当然、検査を受けずにいる不特定多数が今以って存在する以上、積極的なPCR検査の結果のみで隠れ感染者まで大したことがないように見せかけるのは、感染拡大よりも社会経済活動を優先させる、その正当化に用いるためのマジックであって、そのようなマジックを小池百合子まで巻き込んで、政府一丸となって振り回すのは薄汚いとまで非難できるペテンそのものである。

 この社会経済活動優先は感染拡大傾向にあるにも関わらず、感染拡大は大したことではないというマジック・ペテンのもと、移動の自粛は必要ないとしている政府の態度に一貫して現れている。

 小池百合子は感染拡大下で一旦は都民に対して不要不急の移動の自粛を要請したが、菅義偉が記者会見で「移動自粛を要請する必要はない」と反論、経済再生担当相の西村康稔が小池百合子に電話を入れて、発言の修正を求めた結果、小池百合子は自らの発言を「特に体の具合が悪い方」と後退させている。

 2020年2月6日付の厚生省健康局結核感染症課国際感染症対策室のサイト、「新型コロナウイルス感染症の退院基準の見直しについて」には、〈無症状病原体保有者の入院期間については、世界保健機関(WHO)から発表された知見も参考に、退院までの日数に当たっては10日間としているところ〉、〈WHOから発表された最新の知見も参考に、無症状病原体保有者の入院期間については、10日間から12.5日間に変更することといたしましたので、お知らせいたします。〉とある。

 そして「退院基準」に関しては、〈無症状病原体保有者については、12.5日間の入院の後、核酸増幅法の検査を行い、陰性が確認され、その検査の検体を採取した12時間以後に再度検体採取を行い、陰性が確認された場合とする。〉となっている。

 無症状病原体保有者でさえも、人に感染させる危険性を有する者として一定期間の入院を要請し、二度の陰性確認を以って退院を許可する。

 PCR検査を可能な限り増やして、隠れ感染者を炙り出し、炙り出した順に入院という手続きを取って、感染者を隔離していかなければ、感染拡大の連鎖をいつまでも断ち切ることができないことになるのだから、積極的なPCR検査は行政側が行わなければならないごくごく当たり前のことである。にも関わらず、安倍晋三にしても菅義偉にしても、小池百合子にしても積極的なPCR検査を何かの手柄であるかのように得々と吹聴する結果となっている。この薄汚いペテンも如何ともし難い。

 安倍晋三はマジックやペテンを薄汚く用いずに一定程度の感染者が増加することがあっても、社会経済活動を優先させますと正直に言うべきだろう。そのようにに正直に言わないことによって必然的にマジック・ペテンを必要とすることになっている。
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安倍晋三が言う「強靭なふるさとづくり」に国民が確かさを感じ取るのはいつのことか そうさせないうちに「人命第一」を言う鉄面皮

2020-07-06 12:06:19 | 政治
 第2次安倍政権発足の2012年12月26日の翌年2013年1月11日に安倍政権は「日本経済再生に向けた緊急経済対策」を閣議決定している。

 東日本大震災からの復興・防災対策に関わる対策を羅列してから、「事前防災・減災のための国土強靭化の推進、災害への対応体制の強化等」と題して、〈命と暮らしを守るために緊急に必要とされるインフラの再構築のため、老朽化対策、事前防災・減災対策を抜本的に強化し国土強靭化を推進する。また、東日本大震災の経験を踏まえ社会の重要インフラ等の防御体制の整備を進めるとともに、子どもの命を守る学校の耐震化・老朽化対策等の防災対策を推進する。さらに、緊急に必要な大規模な災害等への対応体制を強化する。〉と謳い上げている。

 「事前防災・減災のための国土強靭化の推進、災害への対応体制の強化」とは自然災害に強い国土造りを目標に置いていることになる。

 この対策に基づいてなのだろう、2013年12月11日に「国土強靭化基本法」が公布・施行された。その前文は次のように謳っている。

 〈我が国は、地理的及び自然的な特性から、多くの大規模自然災害等による被害を受け、自然の猛威は想像を超える悲惨な結果をもたらしてきた。我々は、東日本大震災の際、改めて自然の猛威の前に立ち尽くすとともに、その猛威からは逃れることができないことを思い知らされた。〉

 そのため大規模自然災害等に対する国家危機管理として、〈今すぐにでも発生し得る大規模自然災害等に備えて早急に事前防災及び減災に係る施策を進めるためには、大規模自然災害等に対する脆弱性を評価し、優先順位を定め、事前に的確な施策を実施して大規模自然災害等に強い国土及び地域を作るとともに、自らの生命及び生活を守ることができるよう地域住民の力を向上させることが必要である。〉

 この法律に基づいて2014年6月3日に国土強靱化基本計画を策定、閣議決定し、3年間を国土強靭化集中期間(第一段階)と目標設定して、15兆円の追加投資を決めている。

 2018年9月20日、安倍晋三は自民党総裁選3選を受けて自民党本部で記者会見している。告示は9月7日、開票は9月20日。

 安倍晋三「あわせて、この夏は猛暑による熱中症も相次ぐなど、全国の皆さんが、近年の急激な気象の変化、それに伴う自然災害の増加に、大きな不安を抱えておられます。この総裁選挙でも、全国で、防災・減災、国土強靭化のための緊急対策を、3年間で集中的に実施することをお約束させていただきました。

 強靭なふるさとづくりは、待ったなしの課題です。直ちに着手いたします。被災地の復興を加速することとあわせ、小・中学校へのクーラー設置やブロック塀の安全対策など、急を要する対策について、来たる臨時国会に補正予算を提出する考えであります。速やかに編成作業を開始します」

 2014年6月3日に国土強靱化基本計画を策定、閣議決定した国土強靭化集中期間の3年間は2016年6月に期限切れとなっている。当然、3年間が過ぎて、新たに3年間を期限とした国土強靱化基本計画を策定していなければ、安倍晋三の発言は出てこない。

 自民党総裁選から約2ヶ月半後の2018年12月14日に「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」を閣議決定している。自然災害に触れている箇所を一箇所拾ってみる。
  
〈(1)大規模な浸水、土砂災害、地震・津波等による被害の防止・最小化

 突発的又は広域かつ長期的な市街地等の浸水、大規模な土砂災害、火山噴火、地震による住宅、建物等の複合的・大規模倒壊や不特定多数が集まる施設の倒壊、広域にわたる大規模津波等のほか、密集市街地等における大規模火災により多くの人命・財産が失われる事態や、農地・森林等の被害による国土の荒廃に伴い複合災害・二次災害が発生する事態を回避する必要がある。

 このため、これらの自然災害による被害を防止・最小化するために必要な対策のうち、近年の自然災害発生状況に鑑み、特に緊急に実施すべき対策を実施する。〉
 
 この国土強靱化基本計画を前以って念頭に置き、総裁選挙で、「全国で、防災・減災、国土強靭化のための緊急対策を、3年間で集中的に実施することをお約束させていただきました」と言ったことになる。

 だが、初めに口にすべきは最初の「お約束」をどの程度果たすことができたか、できなかったかであって、その成果の程度に応じてどのような見直しを行ったのかの説明であろう。その説明がないのは矛盾を通り越して、誤魔化しそのものとなる。実効性ある、3年間という期間を置いた国土強靱化基本計画だったのか、どうだったのか。

 安倍晋三は新しい「お約束」を「直ちに着手いたします」と言っているが、「直ちに着手」は最初の「お約束」も同じであって、そうである以上、なおさらに前の3年間の「お約束」の果たし具合を明らかにしなければならない。

 「国土強靱化の経緯」(総務省)を見ると、このページの作成日は表示されていないが、「国土強靱化基本計画(2014年6月)」と、「国土強靱化基本計画の見直し(2018年12月)」の2事例しか載っていない。この見直し以外の見直しはないことになる。3年間という期限から見ても、2018年12月からの3年間は2020年12月となるから、新たな見直しは2020年12月以降となることになって、余すところ5ヶ月という、新たな3年間の最終局面にかかっていることになる。

 2018年11月27日に首相官邸で第2回重要インフラの緊急点検に関する関係閣僚会議が開催され、安倍晋三は2018年12月の見直しについて前以って発言している。

 安倍晋三「近年、災害が激甚化する中、国民の命を守る防災・減災・国土強靱化を進めることは重要かつ喫緊の課題であると痛感しています。このため、重要なインフラが災害時にしっかりとその機能を維持できるよう、洪水や土砂災害対策のためのインフラのほか、災害時に拠点となる病院など防災のための重要インフラについて、また電力や交通インフラのほか、水道や食料に関する施設など国民経済、生活を支える重要インフラについて、総点検を実施し、本日取りまとめました。

 この総点検の結果などを踏まえ、特に緊急に実施すべきものについて、達成目標、実施内容、事業費等を明らかにした防災・減災・国土強靱化のための3カ年緊急対策として年内に取りまとめます。国土強靱化基本計画にも位置付けた上で、3年間集中で実施してまいります。各大臣におかれては、強靱な故郷(ふるさと)、誰もが安心して暮らすことができる故郷をつくり上げるために、総力を挙げて対策を講じるようにお願いいたします」

 安倍政権下の「国土強靭化」=「強靭なふるさとづくり」は2018年12月14日から新たな3カ年が始まり、前の3カ年に加えて、現在、4年半を経過したことになる。「国土強靭化」=「強靭なふるさとづくり」は相当に進んでいると見てもいいのだろうか。
 
 新たな3年間の2018年12月14日から前の3カ年をプラスして4年近く経過した、現時点から9ヶ月前の2019年10月6日から2019年10月13日にかけた台風第19号と前線の影響を受けた記録的な大雨は関東地方や甲信地方、東北地方などに洪水、土砂災害をもたらし、死者91人という甚大な被害を発生させた。

 マスコミ報道によると、91人の死者の7割が60歳以上だそうで、常に災害弱者を直撃する。河川の決壊は西日本豪雨の際は25河川37か所だったそうだが、今回は国と県管理の河川で5倍強の合計140箇所となっている。

 その他、水道管破裂や浄水場浸水により断水が各地で起こった。これもマスコミ報道だが、浸水した面積は2018年7月の西日本豪雨の約1万8500ヘクタールを超えて、約2万3000ヘクタールに達したという。農林水産業の被害については安倍晋三が2019年10月25日夕方の首相官邸開催の「非常災害対策本部」で、「現時点で1000億円余りに上る」と発言したそうだ。

 かくかように台風19号と前線の活発化は甚大なまでの記録的な被害を広範囲に与えた。この状況は自然の猛威に対して無力であることを思い知らすことになる。大きな自然災害に襲われるたびに改めてのように人間の無力を突きつけられる。

 但しこの人間の無力は安倍晋三も、以下の政権閣僚も、「国土強靭化基本法」の策定に関わった役人も十分に承知していた。前のところで既に触れているように2013年12月11日の「国土強靭化基本法」の前文で、〈我々は、東日本大震災の際、改めて自然の猛威の前に立ち尽くすとともに、その猛威からは逃れることができないことを思い知らされた。〉との認識に立っているからである。

 但しこのような認識に立ちながら、なおかつ安倍政権は「国土強靭化」=「強靭なふるさとづくり」に果敢に挑戦した。つまり大規模自然災害に対して人間は無力ではあるが、それでもなおかつ人知・人力を尽くして自然の猛威を少しでもコントロールすべく、自然災害に立ち向かう姿勢を見せた。

 それが最初の3カ年であり、3カ年経過後の、2021年12月に終了期限を迎える、既に1年半を経過した新たな3カ年であった。安倍政権の国土強靭化対策に、あるいは強靭なふるさとづくり対策に込めることになった人知・人力は自然の猛威に対してどれ程に楯突く力を備えることになり、その力が人間は無力だという思いをどれ程に削ぎ、逆にどれ程に希望を与える力となっているのだろうか。

 2020年7月3日から熊本県、鹿児島県を中心に九州南部を襲った豪雨は熊本県内を流れる球磨川を氾濫させ、多くの人命を奪うことになった。2020年7月6日2時18分発信のNHK NEWS WEB記事は熊本県で24人が死亡、16人が心肺停止、12人が行方不明と伝えている。心肺停止12人と行方不明12人はこれまでの自然災害時の経験からすると、限りなく死者の数に入れられることになるだろう。

 さらに球磨川などの2河川11カ所で氾濫等を発生させ、広い範囲での浸水、土砂災害を多数発生させているという。濁った水が家屋を、その屋根部分を残して飲み込んでいる様子や、水が引いたあとの流木が道路や家の敷地を所構わずに乱雑に積み重なって埋め尽くしている様子をニュース映像で見る限り、同じくニュース映像でこれまで見てきた自然災害の爪痕と何ら変わりなく、安倍政権の国土強靭化対策が、あるいは強靭なふるさとづくり対策が自然の猛威に楯突く人知・人力となり得ていない光景しか見えてこない。

 特に球磨川の支流である「小川」が氾濫して、1階部分が完全に水に浸かった特別養護老人ホーム「千寿園」では入所者の51人の生存が確認された一方で、14人もが心肺停止となったとマスコミは報道しているが、「千寿園」は球磨川とその支流である「小川」の合流点からは約400メートル離れた距離であることから、球磨川が増水によって得た水嵩と流れの勢いが支流の本流よりもより弱い水の流れを遮る壁の役目を果たして、その流れを押し返す「バックウォーター現象」によって支流の増水を招き、その増水がついには支流自身の堤を越える氾濫を誘った可能性が高い。

 「バックウォーター現象」による支流の氾濫は本流との合流点から約1キロ以内で発生する危険性が高いという。「千寿園」は既に触れているように球磨川との合流点から約400メートルしか離れていない支流のすぐ脇に位置している。

 事実は「バックウォーター現象」が招いた氾濫でなくても、「バックウォーター現象」は既に広く知られている知識なのだから、その危険性がある場所として何らかの人知・人力を以ってそれ相応の対策を施すべき場所ではなかったろうか。

 だが、何も対策を施していなかった。施していたとしても、役に立たない対策だったことになる。

 安倍晋三は7月4日の午前11時23分から同38分まで、熊本、鹿児島両県などの大雨に関する「関係閣僚会議」を開いている(時事ドットコム「首相動静」)。

 「政府として、今回の大雨を踏まえ、何よりも人命第一に地元自治体と連携し、被害状況の把握、応急対策に万全を挙げています」と発言し、「各位にあっては、国民の皆様に対し、避難や大雨・河川に関する情報提供を引き続き適時、的確に行うとともに、被害が発生している地域においては、地元自治体と連携しつつ、政府一体となって、人命第一で応急対策に万全で取り組んでください。また、各地で開設されている避難所に対しては、新型コロナウイルス感染症対策も十分に考慮の上、必要な物資をプッシュ型で提供してください」等、発言している。

 千寿園の14人の心肺停止は蒲島郁夫熊本県知事が7月4日午後5時前に記者団に対して明らかにしたということだから、安倍晋三は7月4日午前11時23分からの関係閣僚会議では把握していなかった情報だろうが、大きな自然災害が起きるたびにいつも、いつも「何よりも人命第一」を言い、避難所に避難している住民に対してはいつもいつも必要な物資のプッシュ型提供を口にする。

 但しこういった発言は安倍政権下の「国土強靭化」対策、「強靭なふるさとづくり」対策がある程度の成功を収め、自然の猛威に対しての人間の無力感を少しは和らげ、「国土強靭化」と「強靭なふるさとづくり」に関わる安倍政権の人知・人力を国民が少しは感じ取る状況にあることを前提としていなければならない。

 前提とすることができずに大規模な自然災害が発生するたびに何ら変わらない被害光景が繰り返しているなら、少なくとも被害地域に於いては対策が力となっていないからこその同じ光景でり、そうである以上、「何よりも人命第一」の発言は空疎そのものとなるだけではなく、同じく対策が力となっていないことの延長線上にある避難所の開設であり、必要な物資のプッシュ型提供にしても同じ線上にある結果論に過ぎないことになる。

 対策より自然災害の猛威の方が常に上回ると言ってしまったなら、人知・人力に賭ける人間の意志力を自ら放棄することになって、自然災害対策は後追いの形を取ることになり、自然災害の猛威に追いつき、追い越すことのない永遠の追っかけっことなる。

 確かに自然災害は場所を選ばない。自然災害の猛威に対してそれを防ぐ公共土木事業をいくら積み重ねても、自然災害発生場所が一歩違うと、対策は空振りに終わって、何ら変わらない被害光景を曝け出すことになる。その一方で、国土強靭化の防災・減災の公共土木工事を以ってして日本国土の全てを残らずカバーすることはカネの面(予算の面)で不可能なことも常識としているはずである。

 であるなら、カネをかけない防災・減災の国土強靭化を国土を可能な限りより広く、そして可能な限りより短時間に覆う人知・人力を発揮する必要が生じる。

 例えば先に例を挙げた球磨川本流から支流沿いに合流地点から僅か400メートル程離れた千寿園が支流の氾濫によって1階部分が水没、14人が心肺停止状態となったことは「バックウォーター現象」が発生しやすい場所として前以って川堤の嵩上げが必要箇所となるが、そのような場所は日本全国至るところにあって、川堤の造り替えから始めていたなら、全ての箇所の工事を終えるには気が遠くなるくらいの時間とカネを必要とし、その間に工事前の場所が大雨によって氾濫し、多くの死者を出す事態を招くことも否定できない。

 但し造り替えずに強度を十分に保つ工事方法は存在する。

 左側の画像は2019年10月の台風第19号で長野市千曲川の堤防が約70メートルに亘って決壊した箇所を、土木工事の土留めに使う鋼板製のシートパイルで工事終了までに新たな水害を阻止するために決壊箇所を塞いだもので、産経ニュースは「本堤防と同程度の強度がある」と伝えている。

 ニュース写真で見ると、千寿園の脇を流れる支流は単なる土手で、コンクリート製ではない。コンクリート製なら、鉄筋を繋ぎにして新たに同じ幅のコンクリートを打つことで嵩上げはできるが、土手の場合は単に上に新たに土を盛っただけでは強度を保つことができず、強度を足すためには新たにコンクリート製の堤に造り変えるかする方法しかなく、工事費がかかることになる。

 但し画像にあるようにシートパイルを並べて土中に打ち、現在の土手の表面からシートパイルの頭を1メートルか2メートル、大雨の際に予想される水位の高さにまで覗かせる形にすれば、嵩上げした川堤の役を果たすことになるし、シートパイルは大型重機に吊るして振動で打ち込むだけだから、さして時間がかかる工事とはならないし、シートパイルに溶融亜鉛めっきを施せば、錆びや腐食を発生しにくくして、長持ちさせることができると言う。土手から鉄板が出ていて見栄えが悪ければ、蔦を這わせるなりすれば、見栄えの悪さをカバーできる。あるいは溶融亜鉛めっきを施した場合は表面が白銀色になるから、そのまま放置しておいても、見栄えはさほど悪くならない。

 さらに川の堤防決壊や増水による河川の氾濫の原因の多くは大雨による山の土砂崩れが樹木を根こそぎにして、その樹木を土砂と共に山の麓にまで滑らせ、さらに増水した川に押し流して流木とし、その流木が橋脚に引っかかって水をせき止める役目を果たすことになって、川の水を更に増水させて氾濫や堤防の決壊を誘うことにある。

 このような状況を防ぐ方法は橋脚のない橋に架け替えることが最善の方法となるが、どの自治体も寿命が来た橋をすべて架け替えるだけのカネがなくて、補修、補修で誤魔化している状況にある。

 となると、新規に架け替えるよりも安価に済む方法で橋脚を撤去するしかない。左側画像は2020年6月20日に開通した、周辺の渋滞緩和と東京オリンピック・パラリンピックの開催の際には選手などの輸送ルートとする目的の「海の森大橋」で、長さが250メートル、アーチ橋であって、橋脚は存在しない。

 画像にあるようなアーチ部分と既存の橋に橋桁から下に出る長さで上からすっぽりかぶせることができる広さで側板をアーチの左右下部に取り付けてから、その側板を橋桁を両脇から挟む形にアーチ全体を吊り降ろす状態にして、橋脚部分を除いて、H鋼で橋桁の下から左右の側板を繋いで、アーチ全体を既存の橋に固定して、それから橋脚を抜けば、新しく橋を架け替える間の交通遮断も1日か2日で済み、仮の橋を架ける必要もなく、安価でより短時間で橋脚のない橋に架け替えることができる。

 山の斜面に道路が走っていて、その道路のすぐ脇に川が流れているような地区の橋が山崩れによって発生した流木が川に流れ込んで橋脚箇所で堰を造ってしまう危険性を避けるためにはこのような方法で橋脚をなくしていくことが求められているはずである。

 今回の大雨がやんだあと、住民が建物の中に流れ込んだ泥濘や道路の泥濘をスコップで掬って、ネコ車に積み、片付けるいつものシーンにお目にかかったが、再び雨が降り出してきて、遣り直さなければならないことを思い遣ってのことなのだろう、疲れて落胆した様子を見せていたが、10トンクラスの泥濘をホースで吸い取るバキュームカーを用意していれば、例え雨が降ってきて作業を中止しなければならなかったとしても、雨が止めば、人力よりも短時間で労力も使わずに泥濘を片付けることができる。

 自衛隊に兵器を何百億と掛けるだけではなく、災害対処部隊の役目も負っているのだから、兵器に掛けるカネをバキュームカーにも回して、災害のたびに出動させたなら、家が流された、水に浸かったとタダでさえ落胆している被災者の労苦を軽くすることができるはずである。

 安倍政権は「国土強靭化だ」、「強靭なふるさとづくり」だ、「人命第一だ」と言う割に防災・減災に向けて人知・人力を最大限に尽くしていると言えるだろうか。

 毎年毎年、大雨が降る時期になると、今年もどこかで大きな被害が出ると予想しなければならないことが証明しているように、少なくとも「国土強靭化」にしても、「強靭なふるさとづくり」にしても、国民は確かさを感じ取ることができないままでいる。にも関わらず、自然災害で大きな被害が発生するたびに「人命第一」を言うのは、明らかに鉄面皮に過ぎる。
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安倍晋三の支持率低下を恐れた、予測不可能性からのコロナ対策立ち往生による"後ろのめり"が招いた専門家会議の前のめり

2020-06-29 11:40:15 | 政治
 経済再生担当相の西村康稔が2020年6月24日の記者会見で新型コロナウイルス感染症対策専門家会議を廃止した上でメンバーを拡充するなどして、政府内に「新型コロナウイルス感染症対策分科会」として改めて設置する考えを明らかにしたとマスコミが伝えていた。

 専門家会議はあれ程安倍内閣と、勿論、安倍晋三とも一心同体でコロナ対策を進めてきたと思っていたのに、そうでもなかったようだ。この西村康稔の記者会見が開かれたのは同じ6月24日の16時00分から17時15分まで開かれていた新型コロナウイルス感染症対策専門家会議構成員の脇田隆字座長と尾身茂副座長と岡部信彦構成員の日本記者クラブでの記者会見のさ中で、尾身茂副座長は記者から西村康稔の会議廃止表明を問われて、「え?もう1回言って」と聞き返したと、2020年6月27日付時事ドットコム記事、〈専門家会議、唐突に幕 政権批判封じ?政府発表前倒し―新型コロナ〉が伝えている。

 要するに新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は一心同体のはずの政府から会議廃止を前以って知らされていなかったことになるが、そうではなく、記事によると、専門家会議の廃止は尾身茂副座長らの提言を受けて、既に決まっていたことで、6月25日発表の予定であったのに対して西村康稔が専門家会議の断りもなしに1日前倒しの6月24日に発表したのだという。

 この点を取っただけでも、政府と専門家会議の関係が一心同体の親密期から倦怠期か、不仲期に突入していたことを物語っている。西村康稔の専門家会議廃止が1日前倒しの表明となったのは尾身茂副座長らが記者会見で何を述べるのか前以って知らされていたか、政府と専門家会議の最近の関係性から何を述べるのか予測できたか、いずれかであろう。そしてその内容が政府に不利になることを回避する意味で1日前倒しの先制攻撃ということになったはずである。

 だが、西村康稔のこのような立ち回りは政府の立場からの思惑であって、自己都合という夾雑物が混ざり込み、公平な判断かどうかの保証はない。記事は前倒し発表の狙いをある政府高官の情報として、〈「専門家の会見で、政府が後手に回った印象を与える事態を回避しようとした」と断言する。〉と解説している。

 つまり安倍政権は新型コロナ感染問題で専門家会議の提言を様々に受けながら、後手に回った対策しか打つことができなかった印象を専門家会議の記者会見が与えることを回避する必要があった。

 だが、専門家会議を廃止して、法的な位置付けを持つ新型コロナ対策分科会へと衣替えすることの1日前の発表が後手に回った印象の払拭に繋がる効果を持つとする西村康稔の立ち回りは理解を与え難い。大体が衣替え自体が組織そのものか、その組織と政府の連絡に何らかの欠陥か障害を窺わせる。

 記事は専門家会議は記者会見で、〈政府の政策決定と会議の関係を明確にする必要性を訴えていた。〉と書いている。関係明確の必要性の訴えの背景には、誰なのか分からないが、会議メンバーの発言として、「十分な説明ができない政府に代わって前面に出ざるを得なかった」と伝えている。

 コロナ対策で「政府が後手に回った印象」、「十分な説明ができない政府」という二つのキーワードからは専門家会議の提言・情報に頼った政府の提言・情報という状況しか窺うことができない。

 安倍政権は2020年1月30日に「新型コロナウイルス感染症対策本部の設置」を閣議決定している。本部長は内閣総理大臣安倍晋三である。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の提言・情報を受けて、安倍晋三は新型コロナウイルス感染症対策本部に於いて自らの責任のもと、感染症防止対策の決定を行わなければならない。だが、その決定は感染症対策専門家会議の提言・情報を追随するだけでしかなかったことになる。

 果たして事実はそのとおりだったのだろうか。

 〈コロナ対策の責任、専門家に矛先も-問われる政府との役割分担〉(Bloomberg/2020年6月24日 17:00)に、〈安倍首相は2月の記者会見で、「大きな責任を先頭に立って果たしていく」と言及。政治は結果責任であるとした上で、逃れるつもりは「毛頭ない」と強調した。一方で、4月の国会では、緊急事態宣言の期間について問われた際、「専門家の分析、ご判断に従っている」と責任を転嫁するような発言も飛び出した。〉の一文を見つけた。

 安倍晋三は2020年2月29日の「記者会見」でPCR検査への医療保険の適用や、5千床を超える病床確保等を伝えたあと、「皆さんの暮らしに直結する決断には、当然、様々な御意見、御批判が伴います。内閣総理大臣として、そうした声に真摯に耳を傾けるべきは当然です。しかし、それでもなお内閣総理大臣として国民の命と暮らしを守る。その大きな責任を果たすため、これからも先頭に立って、為すべきことは決断していく。その決意であります」と自らの責任の重大性と対策への批判を恐れない決断ある率先遂行を宣言している。

 同時にこの姿勢に反する当該記事が伝えている発言は2020年4月17日(金曜日)の衆議院厚生労働委員会で飛び出している。

 安倍晋三「最初に緊急事態宣言を出したときから、いわばこれは専門家の皆様の分析、御判断に我々は従っているわけでございますが、先ずは(人と人との接触を)最低5割、そして8割減らすことができれば2週間後には(コロナ感染防止の)成果が出てくる、更に2週間、そしてもう少しということで、1カ月ということで判断をしていただいたところでございます。

 でも、しかし、それが十分でなければ、これは8割ということでこの1カ月(4月16日に緊急事態宣言対象区域を東京都等7都道府県から全国に5月6日目途に拡大したこと)なんですが、7割であれば更にこれは延びていくということは専門家の皆様にもお話をいただいているところだ、このように思うわけでございます」

 そして今、更に加えたところについては、それは、加えた皆様が更に一カ月ということではなくて、まず、今、とりあえずは5月6日ということで合わせるべきだということが専門家の皆さんの御意見でございましたので、そこに合わせているところでございます」

 要するに2020年4月7日の最初の東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象範囲とした緊急事態宣言発出にしても、4月16日の全国への対象範囲拡大にしても、「専門家(会議)の皆様の分析、御判断」に従って決定したものであることを赤裸々に告白している。専門家会議の「専門家の皆様の分析、御判断」を伺って、政府として最終的に対策を決定したとは言っていない。

 4月16日から5月6日目途の対象範囲全国拡大にしても、「専門家の皆さんの御意見でございましたので、そこに合わせているところでございます」と、政府としての判断決定の関与を一切排除して、それを当然としている。つまり政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の本部長であることを忘れて、感染症防止対策の決定を専門家会議に預けている状況に自らを置いている。

 専門家会議の側からすると、自分たちの「分析、判断」がそのまま政府の対策として打ち出されることになるから、安倍晋三の責任感の軽さに反して責任の重大さを自覚、感染症対策の専門家としての自負と間違った方向性を与えてはいけない緊張感から的確な「分析、判断」とその発信に前のめりな姿勢にならざるを得なかったことは容易に想像できる。

 但し安倍晋三が政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の本部長を務めている関係から、コロナ感染防止対策の最終決定権者であると同時に最終責任者に位置していながら、対策の決定と責任を専門家会議任せとする後ろのめりが招いた専門家会議の前のめりという関係でなければならない。

 安倍晋三自身が対策の最終決定権者であり、最終責任者であることを自覚していて、その自覚どおりの行動を取っていたなら、専門家会議が前のめりになる余地などなかったはずである。当然、「専門家の皆様の分析、御判断に我々は従っているわけでございます」といった発言も、「専門家の皆さんの御意見でございましたので、そこに合わせているところでございます」といった発言も、安倍晋三の口からは出てこない。

 学校一斉休校は安倍晋三自身が独断で決めたことだということだが、子どもから子どもや大人への感染例が少ないこと、感染したとしても、感染した場合の子どもの重症者が殆ど存在しないことなどの前例から、細心の注意を払えば、学校を休校にしなくても済んだし、親に過重な負担をかけなくても済んだはずである。休校によって子どもが親と一緒に家庭で過ごすことになり、親から子供への感染が増えたのではないかと疑っている。

 総額466億円の国家予算をかけた全世帯への1世帯ごと2枚の布マスク配布にしても、安倍晋三自身が決めたことで、「急激に拡大しているマスク需要に対応する上で、極めて有効であると考えている」とか、「洗うことで再利用が可能な布マスクは、そうした需要の増大を抑えて、需給バランスを回復することに大きな効果が期待できます」とマスク配布を正当化しているが、マスクは簡単に手作りできるのだから、各家庭の自助努力で解決不可能というわけではない。独居老人等の家庭に対してはマスク作りに余裕のある家庭にボランティアでの作成をお願いして配布することでも、解決はできる。

 つまり466億円という大金をかけずにマスクの需給バランスを確保できることになった。466億円もの国費投入は壮大なムダ遣いに過ぎなかった。

 余分なことばかりして、肝心なコロナ感染防止対策では専門家会議に頼ったのはコロナの感染に関わる知見が当初はほぼ皆無で、その予測不可能性に下手に立ち向かえば、支持率低下に繋がることから、そのことを恐れた安倍晋三の後ろのめりであって、その反動としての専門会議の前のめりということなのだろう。
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安倍晋三の軍事力増強を国家安全保障上の優先的抑止力とする単細胞 日本国憲法前文は非同盟全方位外交宣言であり、9条と対応

2020-06-22 10:52:28 | 政治

 ブログに何度も書いてきていることで、最初に断わっておくが、自衛隊は違憲である。安倍晋三とその一派は最高裁が憲法の番人であり、砂川事件最高裁判決が自衛隊を合憲としていることを根拠にして、自衛隊合憲説を高らかに謳い上げているが、砂川事件最高裁判決には自衛隊合憲に触れている個所は一つもない。自衛隊を違憲とする指摘個所を拾ってみる。

 〈わが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、わが憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではないのである。憲法前文にも明らかなように、われら日本国民は、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようとつとめている国際社会において、名誉ある地位を占めることを願い、全世界の国民と共にひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認するのである。

 しからば、わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。すなわち、われら日本国民は、憲法9条2項により、同条項にいわゆる戦力は保持しないけれども、これによって生ずるわが国の防衛力の不足は、これを憲法前文にいわゆる平和を愛好する諸国民の公正と信義に信頼することによって補ない、もってわれらの安全と生存を保持しようと決意したのである。そしてそれは、必ずしも原判決(第一審判決のこと)のいうように、国際連合の機関である安全保障理事会等の執る軍事的安全措置等に限定されたものではな く、わが国の平和と安全を維持するための安全保障であれば、その目的を達するにふさわしい方式又は手段である限り、国際情勢の実情に即応して適当と認められるものを選ぶことができることはもとよりであって、憲法9条は、わが国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることを、何ら禁ずるものではないのである。

 そこで、右のような憲法9条の趣旨に即して同条2項の法意を考えてみるに、同条項において戦力の不保持を規定したのは、わが国がいわゆる戦力を保持 し、自らその主体となってこれに指揮権、管理権を行使することにより、同条1項において永久に放棄することを定めたいわゆる侵略戦争を引き起こすがごときことのないようにするためであると解するを相当とする。従って同条2項がいわゆる自衛のための戦力の保持をも禁じたものであるか否かは別として、同条項がその保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し、外国の軍隊は、たとえそれがわが国に駐留するとしても、ここにいう戦力には該当しないと解すべきである。〉――

 まず最初に、〈わが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく〉と言っている。その自衛権とは、〈平和のうちに生存する権利を有する〉としている"平和的生存権"を守るためであるのは、勿論、断るまでもない。

 それ故にこそ、〈わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。〉と、〈自衛のための措置〉を〈国家固有の権能の行使〉であるとして認めている。

 ここまで読むと、自衛隊合憲説には見える。

 但しここで憲法の番人である砂川事件最高裁は日本国憲法前文と自衛権の関係に触れる。要するに戦力不保持と交戦権の否認を謳った憲法9条2項によって〈生ずるわが国の防衛力の不足〉は憲法前文で謳っている、〈平和を愛好する諸国民の公正と信義に信頼することによって補ない、もってわれらの安全と生存を保持〉すべきであり、この目的の実現のためには憲法9条は〈他国に安全保障を求めることを、何ら禁ずるものではない〉との表現で、憲法9条2項によって〈生ずるわが国の防衛力の不足〉を〈他国に安全保障を求めること〉で補うことは憲法9条は何ら禁止していないとしている。

 では、憲法9条2項が、〈保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し〉云々の文言で自衛隊を9条2項が不保持としている戦力に相当すると指摘、そのあと、〈外国の軍隊は、たとえそれがわが国に駐留するとしても、ここにいう戦力には該当しないと解すべきである。〉と、日本駐留アメリカ軍は憲法9条2項が指摘する戦力には該当しないとして、最終的に米軍の日本駐留は憲法違反ではないと判決づけたのである。

 このように駐留外国軍は憲法9条2項が言う「戦力」に該当しないと解釈した手前、9条〈2項がいわゆる自衛のための戦力の保持をも禁じたものであるか否かは別として〉と判断保留にせざるを得なかったのだろう。9条2項が〈自衛のための戦力の保持をも禁じたもの〉とした場合、日米安保条約に基づいて行われているアメリカ軍の日本駐留を憲法違反としなければならなくなる。

 そこで駐留外国軍は「戦力」に該当しないとする根拠を憲法前文の、〈平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。〉点に求めることになった。

 なかなか苦しい結論となっているが、砂川事件最高裁判決は結果的に"平和的生存権"は憲法前文が謳っている、〈平和を愛する諸国民の公正と信義〉を〈信頼〉することによって成り立たせる自衛権によって手に入れることを正当化する一方で、〈わが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力〉、〈わが国自体の戦力〉である自衛隊は9条2項が保持を禁止している戦力であり、当然、そのような戦力で自衛権を発動することは憲法違反になるとご託宣していることになる。

 安倍晋三やその一派は砂川事件最高裁判決が自衛隊を違憲としているにも関わらず、どう血迷ったのか、憲法の番人は最高裁判決だ、砂川事件最高裁判決は自衛隊を合憲としている大合唱、砂川事件最高裁判決を自衛隊合憲説の錦の御旗としている。あるいは水戸黄門の葵の印籠如くに扱っている。

 安倍晋三が再び政権を握ることになった2012年12月16日投票の衆院選挙の2日前の2012年12月14日にネット番組に出演、日本国憲法前文について次のように発言したと同日付「asahi.com」記事が伝えている。

 安倍晋三「日本国憲法の前文には『平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した』と書いてある。つまり、自分たちの安全を世界に任せますよと言っている。そして『専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う』(と書いてある)。

 自分たちが専制や隷従、圧迫と偏狭をなくそうと考えているわけではない。いじましいんですね。みっともない憲法ですよ、はっきり言って。それは、日本人が作ったんじゃないですからね。そんな憲法を持っている以上、外務省も、自分たちが発言するのを憲法上義務づけられていないんだから、国際社会に任せるんだから、精神がそうなってしまっているんですね。そこから変えていくっていうことが、私は大切だと思う」

 砂川事件最高裁判決は日米安保条約に基づいた日本駐留アメリカ軍を9条2項が禁じる「戦力」に当たらないとする根拠を日本国憲法前文に置いているのだから、「自分たちの安全を世界に(と言うよりも、アメリカに)任せますよと言っている」ことになるが、前文を他力本願だとか、「いじましい」とか、「みっともない」とか否定した場合、アメリカ軍の日本駐留をも否定しなければならなくなるが、砂川事件最高裁判決によって日本国憲法とアメリカ軍の日本駐留がそういう関係にあることには、鈍感なのだろう、少しも気づいていない。

 但し日本国憲法を如何に貶めようとも、砂川事件最高裁判決が自衛隊を違憲としていることに変わりはない。もし合憲としているとするなら、具体的に判決のどの個所のどの文言が合憲を意味させているのか、指摘すべきである。

 防衛相の河野太郎が2020年6月15日夕方、山口県と秋田県への配備を計画していたイージス・アショアの配備計画停止を表明した。リンク切れに対処するために全文を参考引用させて頂くことことにした。

 河野防衛相「イージス・アショア」配備計画停止を表明 (NHK NEWS WEB/2020年6月15日 20時50分)

河野防衛大臣は、新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の山口県と秋田県への配備計画を停止する考えを表明しました。これにより日本のミサイル防衛計画の抜本的な見直しが迫られることになります。
「イージス・アショア」は、アメリカ製の新型迎撃ミサイルシステムで、政府は、山口県と秋田県にある、自衛隊の演習場への配備を計画していました。

このうち、山口県の演習場への配備について、河野防衛大臣は15日夕方、記者団に対し、迎撃ミサイルを発射する際に使う「ブースター」と呼ばれる推進補助装置を、演習場内に落下させると説明していたものの、確実に落下させるためには、ソフトウェアの改修だけでは不十分だと分かったことを明らかにしました。

そのうえで「ソフトに加えて、ハードの改修が必要になってくることが明確になった。これまで、イージスアショアで使うミサイルの開発に、日本側が1100億円、アメリカ側も同額以上を負担し、12年の歳月がかかった。新しいミサイルを開発するとなると、同じような期間、コストがかかることになろうかと思う」と述べました。

そして「コストと時期に鑑みて、イージス・アショアの配備のプロセスを停止する」と述べ、配備計画を停止する考えを表明しました。

こうした方針をNSC=国家安全保障会議に報告して、政府として今後の対応を議論するとともに、北朝鮮の弾道ミサイルには当面、イージス艦で対応する考えも示しました。

さらに河野大臣は、山口県と秋田県の両知事に15日、電話で報告したとしたうえで、できるだけ早い時期におわびに赴く考えを明らかにしました。

政府は、北朝鮮の弾道ミサイル攻撃への対処能力を高めるためとして、3年前の2017年にイージス・アショアの導入を閣議決定していましたが、ミサイル防衛計画の抜本的な見直しが迫られることになります。

 記事は、〈3年前の2017年にイージス・アショアの導入を閣議決定した〉としているが、具体的には2017年12月19日午前の閣議決定となっている。

 要するに安倍政権はアメリカ製の新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を使って発射させる迎撃ミサイルの、重量2トン超もあるとされている発射推進補助装置「ブースター」を演習場内に落下させる技術を確立させないままに演習場内に落下させますと虚偽の説明をして、山口県と秋田県に対して自衛隊演習場への配備を納得させようとしてきた。結構毛だらけ、猫灰だらけということになる。

 〈防衛省「平成30年版防衛白書」 陸上配備型イージス・システム(イージス・アショア)について〉
イージス・アショアは、イージス艦(BMD対応型)のBMD対応部分、すなわち、レーダー、指揮通信システム、迎撃ミサイル発射機などで構成されるミサイル防衛システム(イージス・システム)を、陸上に配備した装備品であり、大気圏外の宇宙空間を飛翔する弾道ミサイルを地上から迎撃する能力を有しています。
北朝鮮に、わが国を射程に収める各種の弾道ミサイルが依然として多数存在するなど、弾道ミサイル防衛能力の向上は喫緊の課題である中、イージス・アショアを導入すれば、わが国を24時間・365日、切れ目なく守るための能力を抜本的に向上できることになります。

一般に防衛装備品については、事態が切迫してから取得しようとしても、取得までには長期間を要します。国民の命と平和な暮らしを守ることは、政府の最も重要な責務であり、防衛省として、いかなる事態にも対応し得るよう、万全の備えをすることは当然のことであると考えております。

また、現状のイージス艦では、整備・補給で港に入るため隙間の期間が生じることが避けられず、長期間の洋上勤務が繰り返されることとなり、乗組員の勤務環境は極めて厳しいものとなっております。イージス・アショアの導入により、隊員の負担も大きく軽減され、さらには、イージス艦を元来の任務である海洋の安全確保任務に戻すことが可能になり、わが国全体の抑止力向上につながります。

イージス・アショア2基の配備候補地について、防衛省において検討を行った結果、秋田県の陸自新屋演習場及び山口県の陸自むつみ演習場を選定したところです。こうしたことを受け、18(平成30)年6月1日には、福田防衛大臣政務官及び大野防衛大臣政務官が秋田・山口両県をそれぞれ訪問し、また、同月22日には、小野寺防衛大臣が両県を訪問し、配備の必要性などについてご説明しました。

防衛省としては、今後とも、配備に際して、地元住民の皆様の生活に影響が生じないよう、十分な調査や対策を講じるとともに、配備の必要性や安全性などについて、引き続き、誠心誠意、一つ一つ丁寧に説明し、地元の皆様から頂戴する様々な疑問や不安を解消すべく努めてまいりたいと考えています。
〈注 「イージス艦(BMD対応型)」とはミサイル防衛〈Ballistic Missile Defence)の略〉

 要するにイージス・アショアとはレーダー、指揮通信システム、迎撃ミサイル発射機などで構成される陸上配備のミサイル防衛システム(イージス・システム)のことであり、大気圏外の宇宙空間を飛翔する弾道ミサイルを地上から迎撃する能力を有すると、その有能性を誇っている。

 具体的にはどのような迎撃手順となっているのか見てみる。

 2017年1月26日衆議院予算委員会

 小野寺五典(当時防衛相)「北朝鮮がもし弾道ミサイルを発射した場合、当然、発射する場所というのは、北朝鮮の領土内にあるミサイル基地とか、あるいはミサイルの発射装置から発射されます。発射された後、当然、日本に飛んでくることをアメリカの早期警戒衛星で察知した場合、日本に通報があります。そして、それに対して、例えば日本のレーダーでこれを捕捉して、そして速やかに日本海にある日本のイージス艦からミサイルを発射して、弾道ミサイルでまず一義的に迎撃をする。万が一これが防げなかったら、今度は日本の国内にあります航空自衛隊が運用しますパトリオット部隊でもう一度迎撃をする。こういう二段構えで私どもは防いでおります。

 ただ、このミサイルが飛んでくるということに関しては、当然、一発、二発であればしっかりとめることができるんだと思いますが、連続して、あるいは何発も何発も何発も何発も繰り返し来た場合、こういういわば飽和攻撃という状況になった場合に本当に防ぎ切れるか、これは大変心配なことがあります。

 ですから、もし仮に日本が攻撃されるということになれば、一番安全な防御策は、北朝鮮の領土にある、弾道ミサイルを発射するミサイル基地あるいはミサイルを発射しようとする装置をまず攻撃して無力化して、相手に撃たせないこと、これが一番大切なんだと思います。相手に撃たせないこと。

 ところが、これは北朝鮮の領土内にあります。ですから、これを撃たせないようにするためには、日本は実は今まで専守防衛という考え方ですから、相手の領土を攻撃するような装備をあえて日本の自衛隊は持っていません。

 かわりに、日本を狙ってミサイルを撃ってくるミサイル基地をたたいてくれるのは、日米同盟によって米軍がこの役を担ってくれる。ですから、米軍が北朝鮮の発射するミサイル基地をたたいて、日本の防衛のためにミサイルを無力化するというのが具体的な役割ということになります。

 ですから、これを見ると、日本の防衛にとって、この弾道ミサイル防衛一つとっても、アメリカの関与というのが必ず必要ということになります。

 以前の日本が攻められるというイメージであれば、例えば爆撃機が飛んできて日本の上で爆弾をばらばらばらと落とすとか、あるいは大きな軍艦が日本の近海まで来て艦砲射撃で港を攻撃するとか、あるいは沿岸から上陸用舟艇で相手の国の兵隊が上陸をしてきたり戦車が上陸をするとか、そういうような日本が攻撃されるということのイメージがあったんだと思います。ですから、専守防衛というと、来た相手を防げばいいんだ、自衛隊はそういう装備体系になっています。

 ところが、これは十数年ぐらい前の話であって、ここ十年で周辺国の軍事技術は格段に向上して、さまざま、日本が攻撃される想定が変わってまいりました。

 今お話をしたように、例えば北朝鮮は弾道ミサイルを発射して日本を攻撃してくる、これを日本は防ぎますが、最終的に防ぎ切れないこともあります。ですから、相手の領土にある北朝鮮のミサイル基地をたたかないと日本の平和が保たれない。ですが、そこは実は、今まで日本の自衛隊はあえて相手の領土を攻撃する装備を持つことはしなかった、これが現実であります。そして、アメリカがこれをかわりにやってくれる。一つ一つ考えても、日米同盟は大変重要です。ですから、これをこれからも守っていく必要は当然あるんだと思います。

 ただ、もう一つ、アメリカが日米同盟で日本を守っている、この前提があります。それは、アメリカが、今までもこれからも超軍事大国であって、アジアを含めた世界の警察官という役割を持って、そして何より日米同盟を大切にする、この存在があってこそ、実は日本を守るというこのお互いの役割が成り立つわけです。

 小野寺五典は要するに北朝鮮が弾道ミサイルで日本を攻撃した場合、現在の日本は専守防衛の建前上、敵基地攻撃が許されていないから、米軍が北朝鮮の基地に対して直接的に攻撃を仕掛けて、弾道ミサイル発射を遮断するが、アメリカの軍事力を以ってすれば簡単なことであっても、発射を完全に遮断するためにはそれ相応の時間がかかり、最初に飛んできた弾道ミサイルと、完全な攻撃遮断までの間に飛来する弾道ミサイルに対してはアメリカの早期警戒衛星の察知に従って日本海をパトロール中の日本のイージス艦からミサイルを発射して迎撃をするが、特に飽和攻撃といった状況に至って防ぎ切れずに失敗した場合は日本国内の航空自衛隊運用のパトリオット部隊が保有する地対空誘導弾パトリオットを発射して迎撃・撃墜させる二段構えの手順となっていると説明している。

 但しこの説明は日本にとってのいいこと尽くめなことを色々と達者に言っているに過ぎない。なぜかと言うと、日本のイージス艦からのミサイル発射を以って北朝鮮の攻撃ミサイルの迎撃に失敗する場合を仮定している以上、日本国内の航空自衛隊運用のパトリオット部隊が保有する地対空誘導弾パトリオットを発射して迎撃・撃墜させる二段構えに於いても失敗する場合を仮定しなければならないからである。

 だが、仮定していない。二段階目迎撃が成功するとの仮定に立った説明となっている。二段構えですから、大丈夫ですよといいこと尽くを言っているに過ぎない。

 この予算委員会はイージス・アショアの導入を閣議決定した2017年12月19日よりも約11ヶ月も前であるが、イージス・アショアを導入したとしても、二段構えの北朝鮮ミサイル迎撃体制であることに変わりはない。なぜなら、イージス艦搭載の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)の迎撃能力が完璧でない以上、〈イージス艦(BMD対応型)のBMD対応部分、すなわち、レーダー、指揮通信システム、迎撃ミサイル発射機などで構成されるミサイル防衛システム(イージス・システム)を、陸上に配備した〉(防衛省HP)に過ぎないイージス・アショアの迎撃能力にしても、完璧でないことになって、二段構えを崩すことはできない。

 海上配備型としてイージス艦に搭載したミサイル防衛システム(イージス・システム)が常に完全に機能するとは限らないとしながら、地上配備型のミサイル防衛システム(イージス・システム)である「イージス・アショア」は完璧な機能性を有するとしたら、矛盾が生じる。

 上記防衛省のHPでは、〈イージス・アショアの導入により、イージス艦を元来の任務である海洋の安全確保任務に戻すことが可能になる〉と謳っているが、高性能のレーダーを持ち、「高度な情報処理・射撃指揮システムにより、200を超える目標を追尾し、その中の10個以上の目標(従来のターター・システム搭載艦は2~3目標)を同時攻撃する能力を持つ」(「Wikipedia」)イージス艦を地上配備型の「イージス・アショア」を備えることによって万が一の攻撃に対する軍事的抑止力としてではなく、「海洋の安全確保任務に戻すことが可能にな」るとしているのは綺麗事に過ぎる。

 地上配備型の「イージス・アショア」と海上配備のイージス艦が二段構えで、相互に能力を補わなけれがならない関係にあることに対して北朝鮮のミサイルは着々と性能と精度を高めているとされている。具体的にはミサイル発射の探知・識別がより困難となる無限軌道型(キャタピラー型)の移動式発射台の存在が既に確認されていて、2029年10月には潜水艦からの新型ミサイル発射実験を成功させている。

 無限軌道型(キャタピラー型)の移動式発射台からのミサイル発射は発射位置の確認がより難しくなるし、潜水艦発射にしても、海中移動という性質上、発射位置の探知が困難となる上に通常よりも角度をつけて高く飛ばす「ロフテッド軌道」で発射されて、約910キロの高さで約450キロ飛行したという。

 ロフテッド軌道発射を『コトバンク」が解説している。〈通常の発射方法より角度を上げ、高い高度に打ち上げられた弾道ミサイルの飛行経路。射程距離は通常より短くなるが、1000キロメートルを超える高高度から落下するような軌道をとることで、着弾間際の速度がより高速になる。そのため、イージス艦などでの迎撃が困難とされている。〉

 また、ロフテッド軌道発射を水平軌道発射に修正した場合、射程距離は優に千キロを超えることになると言う。要するに北朝鮮のミサイル開発はイージス艦やイージス・アショアでの迎撃をより困難にする場所にまで進んでいる。つまり日本の抑止力に不確実性を与えることになっている。

 だから、敵基地攻撃をアメリカ任せにせずに日本もその能力を持ちたいと欲求することになっているのだろう。だが、敵基地攻撃にしても諸刃の剣である。一度に北朝鮮の全ての基地を叩くことは不可能で、虱潰しに叩いている間に叩かれる前の基地からミサイル攻撃を受けたり、戦闘機攻撃や爆撃機攻撃を受けない保証はない。受ければ、一部国民の生命の危害へと向かわないとも限らない。敵基地攻撃という名の軍事的抑止力にしても、完璧ではないということになる。

 中国は2018年8月初めに最終最高速度が音速6倍のマッハ6に達する極超音速飛翔体の飛行実験に成功させ、2020年からの配備を目指しているとされている。ロシアは2003年に極超音速飛翔体の開発に着手、2018年末に飛行実験を成功させた、音速の20倍の速さで飛行可能な、核搭載の極超音速兵器を2019年に配備すると発射実験成功時に発表している。

 対してアメリカは2020年3月20日、ハワイ州カウアイ島で極超音速兵器の発射実験を行い、成功したと発表している。中国とロシアに後れを取っているものの、こういったミサイル開発競争の一つを取っただけでも、軍拡競争を続けている間は国家安全保障上の完全な抑止力は存在しないことを物語ることになる。

 極超音速飛翔体(極超音速ミサイル)とは通常の弾道ミサイルを打ち上げ後、近宇宙空間で切り離されて大気圏に再突入、マッハ5以上の極超音速で滑空し、重力の関係からだろう、最終的にはマッハ10の最高速度に達して目標に向かうとされているが、ロシアはその2倍のマッハ20としている。

 安倍晋三がイージス・アショアの配備計画停止に関して通常国会閉会に合わせて行った2020年6月18日の記者会見で冒頭発言の最後に次のように発言している。

 安倍晋三「今週、イージス・アショアについて、配備のプロセスを停止する決定をいたしました。地元の皆様に御説明していた前提が違っていた以上、このまま進めるわけにはいかない。そう判断いたしました。

 他方、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増している。その現状には全く変わりはありません。朝鮮半島では今、緊迫の度が高まっています。弾道ミサイルの脅威から国民の命と平和な暮らしを守り抜いていく。これは政府の最も重い責任であります。我が国の防衛に空白を生むことはあってはなりません。平和は人から与えられるものではなく、我々自身の手で勝ち取るものであります。安全保障政策の根幹は、我が国自身の努力にほかなりません。抑止力、対処力を強化するために何をすべきか。日本を守り抜いていくために、我々は何をなすべきか。安全保障戦略のありようについて、この夏、国家安全保障会議で徹底的に議論し、新しい方向性をしっかりと打ち出し、速やかに実行に移していきたい。そう考えています」

 質疑。

 テレビ朝日吉野記者「イージス・アショアについてお伺いしたいと思います。今、総理、夏に向けて新しい戦略を議論して実行に移すとおっしゃいましたけれども、例えば、併せて防衛大綱ですとか、中期防の見直しをする考えはありますでしょうか。

 そして、今回、アショアの停止によって浮くであろう予算等、これを宇宙ですとか、サイバーですとか、電磁波といった領域の戦略構築に振り向ける考えはございますでしょうか」

 安倍晋三「今回のイージス・アショアにつきましては、住民の皆様に御説明してきたその前提が違っていた以上、これは進めることはできないと、こう判断をしました。

 そこで、これはブレーキ、では、ある意味、このイージス・アショアを配備をしていくということについては確かにブレーキをかけましたが、安全保障、国民の命を守っていく、日本国を守り抜いていくという防衛に、これは立ち止まることは許されない。つまりそれは空白をつくることでありますから、その意味において、言わば国民の命と、そして、平和な暮らしを守り抜いていくために何をなすべきか。基本からしっかりと、私は、議論すべきだ、こう判断をしたわけであります。

 抑止力とは何か。相手に例えば日本にミサイルを撃ち込もう、しかしそれはやめた方がいいと考えさせる、これが抑止力ですよね。それは果たして何が抑止力なのだということも含めて、その基本について国家安全保障会議において議論をしたいと思います。大綱、中期防については、まずは議論をすることを始めていきたいと。まだ大綱や中期防については全く考えてはいない。まずは国家安全保障会議について、しっかりと議論をしていきたい。

 ミサイル防衛につきましても、ミサイル防衛を導入したときと、例えば北朝鮮のミサイル技術の向上もあります。その中において、あるべき抑止力の在り方について、これは正に新しい議論をしていきたいと、こう思っています。

 また、宇宙やサイバーといった新領域については、重要分野と位置づけており、引き続きしっかりと取組を進めていきたいと思います」

 要するに軍拡競争を続けている間は国家安全保障上の完全な軍事的抑止力は存在しないにも関わらず、軍事力増強を国家安全保障上の優先的抑止力とする安倍晋三の発言となっている。そのような抑止力を以って、「弾道ミサイルの脅威から国民の命と平和な暮らしを守り抜いていく」と、「国民の命と平和な暮らし」を最大限保障している。

 この矛盾に安倍晋三は全然気づかない単細胞を発揮している。気づかないだけではなく、「抑止力とは何か。相手に例えば日本にミサイルを撃ち込もう、しかしそれはやめた方がいいと考えさせる、これが抑止力ですよね」と言って、軍事力増強を国家安全保障上の優先的抑止力とすることに日本の首相としての責任を置いている。

 今日の抑止力があしたの抑止力になる保証はないことに無神経でいられる。軍拡競争の際限のなさを脇に置いて、「宇宙やサイバーといった新領域については、重要分野と位置づけており、引き続きしっかりと取組を進めていきたいと思います」と、「宇宙やサイバーといった新領域」にまで日本の軍事力を拡大する意思を固めている。

 かくこのように安倍晋三は国家安全保障上の完全な軍事的抑止力とはならない関係にある軍事力増強を国家安全保障上の優先的抑止力に位置づけて、その対局に日本国憲法の前文と9条を置いている。

 それゆえに2012年12月14日のネット番組で日本国憲法の9条を前文と共に「自分たちの安全を世界に任せますよと言っている」とか、「自分たちが専制や隷従、圧迫と偏狭をなくそうと考えているわけではない。いじましいんですね。みっともない憲法ですよ」と貶し、さらに「日本人が作ったんじゃないですからね」と他力本願の憲法だと排斥している。

 安倍晋三が日本国憲法前文と9条の価値をいくら低めようとも、あるいは軍備増強の意思をいくら露わにしようとも、軍拡競争を続けている間は国家安全保障上の完全な軍事的抑止力は存在しないという事実を変えることはできない。攻撃を仕掛ける側も、攻撃を受ける側も、生半可ではない痛手を被ることになるだろう。痛手は一部「国民の命と平和な暮らし」の犠牲となって現れる。

 日本国憲法前文の国家安全保障上の抑止力に関係する個所を取り上げてみる。

 〈日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。〉・・・・・

 〈平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持〉することによって、〈恒久の平和を念願〉する。いわば、〈平和を愛する諸国民の公正と信義〉を抑止力として、このことを以って国家の安全保障とする。

 このような国家安全保障を可能にするには完全な軍事的抑止力は存在しない以上、安倍晋三のように軍拡競争の一員となって軍備増強に奮闘するのではなく、その対極の位置、〈平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して〉の言葉通りにどの国とも軍事同盟を結ばない、非同盟の全方位外交の実現しか、方法はないはずである。

 いわば日本国憲法前文は非同盟全方位外交の宣言そのものとなっていて、勿論のこと、9条と対応している。9条の戦争放棄、戦力の不保持、交戦権の否認は非同盟全方位外交の国家安全保障によってのみ、実現可能となる。

 安倍晋三が日本国憲法前文をいくら批判し、憲法そのものの価値を低めて、軍拡競争にいくら励もうとも、あるいはアメリカから高性能の武器をいくら高額で仕入れようとも、そのような方法で確立した国家安全保障体制からは、全面的には「国民の命と平和な暮らしを守り抜いていく」ことはできない。

 安倍晋三自身は命拾いをしたとしても、無視できない数の国民が犠牲となる。

 要するに安倍晋三は一人残らずのニュアンスで「国民の命と平和な暮らしを守り抜いていく」と虚偽発言しているに過ぎない。そのような虚偽発言で軍備増強に励んでいる。

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国税庁e-Tax制度から見て、安倍晋三の持続化給付金制度に思う素朴な疑問

2020-06-15 10:30:32 | 政治
 【訂正】(2020年6月15日 13:15)「e-Tax 利用件数約3759万件は平成30年1年間の件数であり、持続化給付金申請件数は5月初めから6月11日まで約199万件であって、比較できないのではないのか」と指摘するメールを頂いが、1年間で最も忙しい2月半ばから4月中までの3ヶ月間に確定申告申請が集中することを考慮すると、ある程度の比較ができて、経費の差額を決定的に否定できないと思うが、指摘の事実を割り引いて読んで頂きたい。

 e-Tax年間利用件数(約3,759万件)÷12ヶ月≒313万件/1ヶ月>持続化給付金5月1日~6月11日申請件数199万件

  新型コロナウイルス感染症の拡大による営業自粛等で収入の減少を受けた個人事業者や中小企業等に現金を支給する持続化給付金制度が2020年5月27日に閣議決定された。

 「個人事業者等向け持続化給付金申請要領(申請のガイダンス)」(中小企業庁 令和2年度補正 持続化給付金事務事業 持続化給付金事務局/2020年5月9日)

持続化給付金とは?
感染症拡大により、 営業自粛等により特に大きな影響を受ける事業者に対して、事業の継続を支え、再起の糧としていただくため、 事業全般に広く使える給付金を給付します。
給付額 個人事業者等は100万円まで
 ※ただし、 昨年1年間の売上から減少分が上限です。
■給付額の算定方法
前年の総売上 (事業収入) - (前年同月比▲50%月の売上×12ヶ月)
給付対象 フリーランスを含む個人事業者が広く対象となります。

持続化給付金の申請手順
持続化給付金ホームページへアクセス!
持続化給付金の申請用HP (htps://jizokuka-kyufu.jp)
申請ボタンを押して、 メールア ドレスなどを入力 [仮登録]
入力したメールアドレスに、メールが届いていることを確認して、[本登録]へ
ID・パスワードを入力すると[マイページ]が作成されます
●基本情報 ●売上額 ●口座情報 を入力
 必要書類を添付
入力すると、申請金額を自動計算!
【通帳の写し】 をアップロード!
 2019年分の確定申告書類の控え
 売上減少となった月の売上台帳等の写し
 身分証明書の写し
※スマホなどの写真画像でもOK (できるだけきれいに撮ってください ! )
申請
持続化給付金事務局で、申請内容を確認
※申請に不備があった場合は、メールとマイページへの通知で連絡が入ります。

 以上、主なところを拾ってみた。

 中小企業庁は「中小法人向け」のHPも作成していて、〈法人は200万円まで ※ただし、昨年1年間の売上から減少分が上限です。〉となっていて、給付対象は〈資本金10億円以上の大企業を除く、中小法人等を対象とし、医療法人、農業NPONPO法人など、会社以外の法人についても幅広く対象となります。〉と断り、「給付額の算定方法」等以下は個人事業者向けと同じになっている。

 要するに電子申請(紙によって行われている申請や届出などの行政手続をインターネットを利用して自宅や会社のパソコンを使って行えるもの)の形式となっている。申請用のサイトを作成する労力と受け付けた申請の内容が適正か、間違いや誤魔化しがないかを審査する労力と、申請内容に不備があった場合、問い合わせる労力と、最終的に適正の判断を下した場合は登録した口座番号に入金する労力と受付完了の記録をつける労力が残されることになる。

 問題は申請件数である。2020年6月13日 付「Yahoo!ニュース」は6月12日付「TBSニュース」の配信記事で経済産業省の発表として、〈6月11日までにおよそ199万件の申請があり、このうち75%ほどにあたる149万件に給付、給付額は1兆9600億円〉にのぼり、〈申請が開始された5月1日から11日までに受け付けた、およそ77万件について、このうち6%程度にあたる5万件ほどが1か月以上たった現在でも給付が済んでいない〉と紹介している。

 支給・未支給に関係なしに約200万件の申請に対する審査とその他の労力を必要とした。勿論、適正か否かを判定する審査の労力に最も多くの時間を取られたはずである。

 2020年6月6日付「しんぶん赤旗」記事掲載の画像でお分かりのようにっ政府はこの「持続化給付金事業」を一般社団法人サービスデザイン推進協議会に769億円で委託、一般社団法人サービスデザイン推進協議会は電通に749億円で下請け(再委託)させている。電通はさらに「電通東日本」や「電通デジタル」等に孫請けさせている、一般的には同系列会社複数への下請けや孫請けは利益を分散して、課税額を抑えるために利用される。
 上記「しんぶん赤旗」は、〈この事業では給付金の受け付けやコールセンター業務の外注を受けた電通ライブ社が、さらに派遣大手のパソナ、IT業のトランスコスモスに外注していました。〉と書いている。電通関連ではこのほかに申請サポート会場の運営も行っているという。要するに電子申請にかかる労力以外にコールセンター業務と申請サポート会場運営の労力が加わることになる。

 この上記労力から見た約200万件かそこらの申請にかかる持続化給付金事業の外部委託に国の税金を769億円もかける適正性を見ることができるだろうか。

 この適正性か否かに気づいたのは国税庁が確定申告を紙媒体以外にインターネットでも行っていることからである。文色は当方。

 平成30年度におけるe-Taxの利用状況等について(国税庁/2019年8月)

≪評価指標≫ ≪実績値≫ ≪前年対比≫
○ オンライン利用率 ※別紙1参照(3ページ)
・ マイナンバーカードの普及割合等に左右される国税申告2手続(所得税申告、消費税申告 (個人))58.5% (+3.4 ポイント)
・ 上記以外の国税申告4手続(法人税申告 消費税申告(法人)、酒税申告、印紙税申告)82.9% (+2.9 ポイント)
・ 申請・届出等9手続(給与所得の源泉徴収票等(6手続)、利子等の支払調書、納税証明書の交付請求、電子申告・納税等開始(変更等)届出書) 76.9% (▲0.5 ポイント)
○ ICT活用率 ※ 別紙2参照(4ページ) 82.7% (+2.9 ポイント)
○ e-Tax の利用満足度 81.5% (+5.5 ポイント)
○ 国税庁HP「確定申告書等作成コーナー」の利用満足度 93.5% (▲0.1 ポイント)
オンライン申請の受付1件当たりの費用265円 (▲8 円)
○ 国税申告手続の事務処理時間 833,000 時間 (▲35,000 時間)

※ICT活用率
所得税申告及び消費税申告(個人)の総件数のうち、
① e-Tax 利用件数
② 国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」を利用して作成した申告書を印刷して書面により税務署に提出した件数の合計件数が占める割合。

※オンライン申請の受付1件当たりの費用
① e-Tax の運用等に係る年間経費
② システム整備に係る1年当たりの経費(※)の合計額をe-Tax 利用件数で除して算出したもの。
年間運営経費等(約99億円)÷e-Tax 利用件数(約3,759万件)≒265円
※ システム整備に係る経費(システム開発費など)は、税制改正などにより毎年変動するため、システム整備に要した経費の総額を支出年数で除して算出。

 「 e-Tax 利用件数(約3,759万件)」「約3,759万件」で、年間運営経費等「(約99億円)」「オンライン申請の受付1件当たりの費用」「265円」

 国税庁も確定申告コールセンターを開設し、確定申告会場を各地域の税務署に設けているが、上記数値はe-Taxに限定した経費と言うことになる。対して持続化給付金事業は「6月11日までにおよそ199万件の申請」、これが倍の400万件と仮定したとしても、769億円で一般社団法人サービスデザイン推進協議会に外部委託し、電通が749億円で再委託を受けた。

 769億円÷400万件=19225円

 持続化給付金事業の申請件数400万件と仮定した場合の電子申請にかかる1件当たりの経費19225円に対して国税庁の約3759万件のe-Taxにかかる1件あたりの経費が265円。差額は18960円。

 持続化給付金事業の申請件数400万件を6月11日までの申請件数199万件に近づけていけばいくほど、差額は増えていき、2万円や3万円を超えることもあり得ることになる。この差額は国が行うのと民間が行なうのとの違いで、止むを得ないという言い訳は許されない。こういったことに最低限、素朴に疑問を感じないのだろうか。

 差額の不可解さは持続化給付金事業の入札にも現れている。文色は当方。

 「中小企業庁 2020年4月の競争入札」

令和2年度補正持続化給付金事務事業
契約を締結した日 2020年4月30日
契約の相手方の商号又は名称 一般社団法人サービスデザイン推進協議会
予定価格(円) 非公表
契約金額(円) 76,902,084,807円 (769億208万4807円)
落札率(%) 非公表

 予定価格を公表したら、落札率も分かってしまう。但し予定価格と落札率はそれが適正な落札かどうかを判断する材料の一つであって、それを非公表とするのは秘密の介在を疑わないわけにはいかない。

 安倍晋三は2020年6月11日午前の参院予算委員会で、「委託に当たってはそうした事業目的に照らしてルールに則ったプロセスを経て、決定されたものと承知をしております」と白々と答弁しているが、予定価格と落札率が非公表では「ルールに則ったプロセスを経て、決定された」とは言い難い。

 入札に参加するためには事業に於ける各項目の費用を一つ一つ見積もって、それらを積み上げて全体の入札金額を算出、提示しなければ、発注者側はそれが適正な価格なのかどうかは判断できない。当然、中小企業庁は持続化給付金事務事業の入札に当たって一般社団法人サービスデザイン推進協議会から見積書の提示を受けているはずである。中小企業庁側からしたら、そのような見積書の提示があって初めて発注の当否が判断可能となる。

 経産省側は入札額が769億円の記入がある書類を野党に提出しているが、サービスデザイン推進協議会が事業の各項目にかかる経費を見積もり、全体の入札金額を算出・提示した見積書を公表したという報道にはお目にかかっていない。その公表によって、経産省側の落札が正当か否かの唯一の判断根拠となり得る。

 但し見積書の公表は予定価格と落札率の非公表と相反する措置となる。予定価格と落札率の非公表に対応させた見積書の非公表と見るべきだろう。

 だとしたら、野党は見積書の公表を迫り、公表を実現させなければならないが、どうも野党はピント外れの追及に終始しているようだ。但し当方のこの判断の方が間違っているということもあり得る。

 間違っている可能性もあることを承知で、ピント外れに思えた質疑を一つ取り上げてみる、

 2020年6月11日午前の参院予算委員会

 蓮舫「持続化給付金というのはどういう重みがあるとお考えですか」

 安倍晋三「新型ウイルス感染症の影響で経済、大きな打撃を受けている中に於いて中小企業・小規模事業者の皆さま、大変経営が困難な状況に追い込まれている中に於いて手持ち資金が不足をしている。明日からの経営にも大きな支障が出てきているという中に於いてですね、その固定費たる賃料等々のですね、半年分ということで最大200万円の給付を行うことにしているところでございます。

 大切なことはですね、スピードでございまして、できる限り多くの方々にお届けしたい。現在のところですね、既に1兆6000億円をお手元にお届けをさせて頂いているというふうに伺って、承知をしております」

 蓮舫「大切なのはスピード、全くその通りです。5月1日、初日に申請して、未だに未支給なのは何軒ありますか」

 梶山弘志(経産相)「5月1日の申請、18万件ありまして、そのうちの未支給というのは5000件であります。

 蓮舫「一か月以上も経って、まだ5000件の未支給。なぜですか」

 梶山弘志「データ等の不備がありまして、再度遣り取りをしているものもあります。そういったものも含めて審査をしているということであります。

 蓮舫「スピードが大事、総理、そう仰ってるんですけれども、まだ未支給の方がおられて、この作業をしているのは、サービスデザイン推進協議会、中抜き団体、再委託、再々委託。大変問題になっている。ここに委託したのは、総理、適正だとお考えですか」

 安倍晋三「業務の中身につきましてはですね、梶山大臣から答弁をさせて頂きたいと思いますが、委託に当たってはそうした事業目的に照らしてルールに則ったプロセスを経て、決定されたものと承知をしております。
 大変な業務量の中ではありますが、既に120万件の中小企業・小規模事業者の皆さまに1兆6000億円の現金をお届けしているというふうに承知をしております」

 蓮舫「計算大臣、確認しますが、本当に実態あるんですか。この法人は」

 梶山弘志「これまでも受注実績がありますし、補助金の仕事もしております。実際実態があると思って、実体があるという前提で我々も契約をしております」

 蓮舫「答弁、大丈夫ですか。国会でね、問題視されて、議員がアポを取ろうにも、ここ電話ないんですよ、事務所に。事務所に行ったら、人いないんですよ。電通に取材したら、答えないって言うんですよ。これ、適切な対応ですか?」

 梶山弘志「これリモートワークをずっとしておりました。さらにまた今回全国で数十カ所、審査会場があります。またサポート、申請のサポート会場もあります。そういったところに出向いているということでもございます」

 蓮舫「大臣ね、6月8日に国民の批判に耐えかねて、ようやく会見をして、6月の9日から業務を再開しますと、これは労務と、労務管理等を始めて、5人が昨日、おとといから仕事を再開したって、大々的にメディアに公開したんですよ。そしたら昨日国会議員が視察に行ったら、誰もいません、何ですか。これ」

 梶山弘志「実際には継続している仕事も、おもてなし認証等がございます。そういった仕事も含めた中でやっとりますけど、その中で、今回の事業に関するものは、21名、対応しておりますけども、5名が経理の担当と言うことで、銀行との遣り取りをしております。ただ、これはリモートでも出来ますので、リモートも含めて今、事業の対応をしていることであります」

 蓮舫「リモートワークを解除して5人が常駐すると言って、メディアが来た時だけその仕事をしてる姿を見せて、昨日から誰もいないんで、もっと言ったら、呼び鈴も内線電話も外されていました。どういうことですか」

 梶山弘志「私共はリモートワークをしているという認識でございます。ただこれは実態がないと言われますけれども、実際に仕事をしているんですね、しっかりとね。そして我々とも報告もある、ただ、そこにリモート、リモート、その場所にいなければ仕事が出来ないのかと言うと、そうではありません

 リモートワークで今は全てできております」

 蓮舫「そもそもこの推進協議会が前田中小企業庁長官が大臣官房審議会の時、最初に協議会におもてなし規格認証事業を業務委託しました。これどんな事業でした」
 埒が明かないから、以下略。

 国税庁のe-Tax制度の事業規模と経費から見て、より事業規模が小さくて、その小ささに反比例して経費が多額な持続化給付金制度に感じる素朴な疑問が依然として埋まらない。

 このような素朴な疑問自体が間違っているなら仕方がない。

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安倍晋三の拉致問題無策・無能を棚に上げた横田滋さん死去「断腸の思い」は白々しさだけが浮き立つ

2020-06-08 12:09:39 | 政治
 
 北朝鮮の金正恩は自らの特異な独裁体制の保守を謀る限り、核開発と開発した核の放棄に応じることはない。なぜなら、核こそが自らの独裁体制保守の最重要条件だからだ。どのような経済制裁を受けても、自らの独裁体制を維持できる限り、今後とも核開発を続けて、到達距離と破壊力を最大限に高めた核を独裁体制安全保障の要とするに違いない。

 現実がこのことを証明している。

 以前トランプは核放棄の条件として北朝鮮の国家体制の保障を口にしたことがあるが、2018年12月18日、第73回国連総会本会議で日本及びEU共同提出の北朝鮮の深刻な人権侵害を非難し、その終結を強く要求する「北朝鮮人権状況決議」が14年連続14回目のコンセンサス採択を受けていて、その状況は西欧の民主主義国家の人権保障が北朝鮮ではそれが全く欠いていることの突きつけであものの、人権改善の受け入れは最も避けたい独裁体制放棄の逆説を孕むことを一番良く知っているのは金正恩自身であって、国際社会から独裁体制放棄の要求を阻止する最有用の手立てとしての核を放棄することは北朝鮮の国家体制の将来的保障ともならないことも金正恩は弁えていて、核放棄は決して受け入れることはできない北朝鮮国家にとっての有害策と位置づけているはずである。

 必然的に金正恩の核開発と核の放棄は金正恩独裁体制そのものの崩壊と崩壊後の北朝鮮民主化によって可能となる。

 但し金正恩独裁体制崩壊の過程で毒を食らわば皿までの開き直りから、核ミサイル発射の暴発を招かない保証はないし、平穏のうちに崩壊したとしても、 次の国家が民主主義体制に移行するのではなく、金正恩一派の残党による疑似金正恩独裁体制であったなら、やはり核を国家安全保障の重要な道具とする可能性は否定できない。

 つまり民主主義体制移行が確実な、暴発のない、平和裏な金正恩独裁体制崩壊を演出しない限り、北朝鮮の核開発と核の放棄は実現不可能に近いことになる。

 逆に北朝鮮の核開発と核保有を認めて、何らかの制御下に置くことも一つの方法ということになる。
 イランの核開発を監視しているIAEA(国際原子力機関)が2020年6月5日、イランが未申告の核物質保管の疑いがある国内2ヶ所の施設の査察拒否を続けていることの懸念を示す報告書を理事会のメンバーに通知したとマスコミが伝えていた。

 1979年2月のイラン革命以来、イランは最悪の状態で敵対国となったイスラエルの保有核弾頭総数が2019年5月現在、80発と推定される以上、国家の安全保障上、北朝鮮同様に核開発を放棄することはないだろう。イランの核開発を放棄させたいなら、先ずは最初にイスラエルの核を放棄させなければならない。イスラエルは応じないだろうから、イランも核開発を放棄することはない。

 北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの父親の横田滋さんが2020年6月5日、死去した。

 《安倍首相発言全文 横田滋さん死去》(時事ドットコム/2020年06月05日21時26分)
 
 安倍晋三首相が5日、拉致被害者横田めぐみさんの父、滋さんの死去を受け、東京・富ケ谷の私邸前で記者団に語った内容は次の通り。

 ―滋さんの死去の受け止めは。

 横田滋さんのご冥福を心よりお祈り申し上げる。そして早紀江さんはじめご遺族に心からお悔やみを申し上げたい。滋さんとは本当に長い間、めぐみさんをはじめ拉致被害者の帰国を実現するために共に闘ってきた。

 2002年10月15日、5人の拉致被害者が帰国を果たされた。羽田空港に当時、私は官房副長官としてお出迎えにうかがったわけだが、滋さんも早紀江さんと共に「家族会」の代表として来ておられた。そして、代表としての責任感から、その場を記録にとどめるためにカメラのシャッターを切っておられた。

 帰国された拉致被害者はご家族と抱き合って喜びをかみしめておられた。その場を写真に撮っておられた滋さんの目から本当に涙が流れていたことを今でも思い出す。あの場にめぐみさんがおられないということ、どんなにか残念で悔しい思いだったかと、そのときに本当にそう思った。

 滋さんが早紀江さんと共にその手でめぐみさんを抱きしめることができる日が来るようにという思いで今日まで全力を尽くしてきたが、そのことを首相としてもいまだに実現できなかったこと、断腸の思いであるし、本当に申し訳ない思いでいっぱいだ。

 なんとかめぐみさんはじめ拉致被害者のふるさとへの帰還、帰国を実現するために、あらゆるチャンスを逃すことなく果断に行動していかなければならないという思いを新たにしている。改めて、滋さんのご冥福を心からお祈り申し上げる。

 ―拉致問題の交渉状況は。

 25年以上、滋さんはじめ家族会の皆さんとなんとか拉致被害者が帰国できるように、まだ世の中が(拉致問題を)十分に認識していなかった時代から、滋さん、本当に暑い日も寒い日も署名活動を頑張っておられた。その姿をずっと拝見してきただけに痛恨の極みだ。さまざまな困難があるわけだが、なんとしても被害者が(帰国を)実現するために、政府として、日本国として、さまざまな動きを見逃すことなくチャンスを捉えて果断に行動して実現していきたい。

 安倍晋三は涙まで滲ませていたという。横田滋氏が自身の娘の帰国を見ることなく亡くなった無念の思いに対してなのか、自身の拉致解決の無力に対してなのか?はたまた空涙なのか。

 安倍晋三が「滋さんが早紀江さんと共にその手でめぐみさんを抱きしめることができる日が来るようにという思いで今日まで全力を尽くしてきた」と言っている「全力」とはどのような方法を採っていたのだろうか。

 その方法に基づいて拉致被害者帰国実現のために、「政府として、日本国として、さまざまな動きを見逃すことなくチャンスを捉えて果断に行動して」きたことになる。2006年9月26日政権に就いて2007年8月27日に辞任するまでの約1年間、そして2012年12月26日に再び政権に就いてから今日までの7年間と約5ヶ月間の合わせて8年間と4ヶ月の間、「全力を尽くしてきた」。

 これほど長期に亘って拉致問題と真正面から向き合った首相は他には存在しない。全力を尽くすことのできる時間まで味方につけることができた。時間は様々な知恵を生む。十分な時間があるのに知恵を生まなかったとしたら、時間を無為に過ごしたことになる。

 最初の政権に就いた2006年9月26日から3日後の9月29日国会所信表明演説

 安倍晋三「拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化はありえません。拉致問題に関する総合的な対策を推進するため、私を本部長とする拉致問題対策本部を設置し、専任の事務局を置くことといたしました。対話と圧力の方針の下、引き続き、拉致被害者が全員生存しているとの前提に立って、すべての拉致被害者の生還を強く求めていきます。核・ミサイル問題については、日米の緊密な連携を図りつつ、6者会合を活用して解決を目指します」

 「対話と圧力」で拉致問題を解決してから北朝鮮との国交正常化に取り組むと、拉致解決の方法論を宣言している。「圧力」は安保理制裁決議違反となる北朝鮮のミサイル発射や核実験に応じて段階的に罰則を強化していく灯油やガソリン等の石油精製品の対北朝鮮輸出入の削減や北朝鮮からの食品、機械、電気機器、木材の輸入禁止と北朝鮮への産業機械や運搬用車両の輸出の禁止、あるいは北朝鮮の核又は弾道ミサイル計画に貢献し得る資産の凍結等の措置を指す。日本とアメリカは安保理制裁以外にそれぞれが独自の制裁を課している。

 要するに「圧力」とは経済的に追いつめて、ミサイル開発や核開発に費やす資金を枯渇させて、開発そのものを不可能にする作戦である。

 だが、この「圧力」は核開発とミサイル開発を北朝鮮独自の独裁体制保持のための最大の安全保障と看做して、両開発を決して放棄することはない北朝鮮の意思とは相容れない。結果、「圧力」と平行させて日本やアメリカ側の北朝鮮の核開発とミサイル開発を如何に断念させるかの目的に添わせるべく仕向ける「対話」に反して北朝鮮側が求めている「対話」は核開発とミサイル開発を如何に続けることができるかどうかの目的を持たせた努力機会と言うことになる。

 当然、「対話」で北朝鮮が核放棄とミサイル開発放棄にどのような前向きな姿勢を見せようと、あるいは放棄の約束をどのように匂わせようとも、核開発とミサイル開発を継続させる目的を隠した北朝鮮側の態度ということになる。

 また、拉致問題を議題とした「対話」であっても、日本独自の対北朝鮮経済制裁の一部解除、あるいは全面解除の譲歩を求めて、それが実現したとしても、解除によって得た資金を日本側の監視を受けることなく直接的にか間接的に核とミサイル開発に回すことができなければ、日本側が求める解決は受け入れることはない道理となる。

 日本側の資金が万が一、核開発やミサイル開発に回されたことが明らかになった場合、日本の立場を失うから、監視をつけないままにどのような解除もできないことになる。

 但し北朝鮮に対して核とミサイル開発の継続を保障できる唯一の国はアメリカであって、日本にはできないことを承知している。要するに北朝鮮側にとって核保有保障の交渉相手はアメリカのみであって、日本ではない。北朝鮮側は拉致解決が核保有の保障とならないことを承知していて、常に一歩距離を置く姿勢を取っているはずである。

 2012年8月30日、フジテレビ「知りたがり」

 安倍晋三「ご両親が自身の手でめぐみさんを抱きしめるまで、私達の使命は終わらない。だが、10年経ってしまった。その使命を果たしていないというのは、申し訳ないと思う。

 金正恩氏にリーダーが代わりましたね。ですから、(拉致解決の)一つの可能性は生まれてきたと思います」

 伊藤利尋メインキャスター「体制が変わった。やはり圧力というのがキーワードになるでしょうか」

 安倍晋三「金正恩氏はですね、金正日と何が違うか。それは5人生存、8人死亡と、こういう判断ですね、こういう判断をしたのは金正日ですが、金正恩氏の判断ではないですね。

 あれは間違いです、ウソをついていましたと言っても、その判断をしたのは本人ではない。あるいは拉致作戦には金正恩氏は関わっていませんでした。

 しかしそうは言っても、お父さんがやっていたことを否定しなければいけない。普通であればですね、(日朝が)普通に対話していたって、これは(父親金正日がやってきたことを)否定しない(できない?)。

 ですから、今の現状を守ることはできません。こうやって日本が要求している拉致の問題について答を出さなければ、あなたの政権、あなたの国は崩壊しますよ。

 そこで思い切って大きな決断をしようという方向に促していく必要がありますね。そのためにはやっぱり圧力しかないんですね」――

 2014年10月22日首相官邸でのぶら下がり対記者団発言。

 安倍晋三「私は基本的に拉致問題を解決するためにはしっかりと北朝鮮に圧力をかけて、この問題を解決しなければ北朝鮮の将来はないと、そう考えるようにしなければならないと、ずっと主張し、それを主導してきました。その上において対話を行っていく」

 2015年3月20日参議院予算委員会外交・安全保障集中審議。

 安倍晋三「すべての拉致被害者のご家族がご親族をその手で抱きしめる日がやってくるまで、われわれの使命は終わらない。国際的にも拉致問題に対する理解が深まるなかで、この問題を解決しなければ、北朝鮮の未来を描くことはできないという認識に北朝鮮側が立つよう強く求めていく。北朝鮮の特別調査委員会が正直かつ迅速に調査結果を日本側に報告するよう強く求めていく」

 2015年4月4日の拉致被害者家族と首相官邸での面会。

 安倍晋三「大切なことは、拉致問題を解決しないと、北朝鮮は未来を描くことが困難だと認識させることです。すべての拉致被害者が再び日本の地を踏むことができるよう全力を尽くしたいと思います。
 拉致問題が解決しない限り我々の使命は終わらない。家族も被害者も高齢化しており、一刻の猶予もゆるさないとの認識のもと交渉していきたいと思います」

 要するに安倍晋三は経済制裁の圧力と平行させて「こうやって日本が要求している拉致の問題について答を出さなければ、あなたの政権、あなたの国は崩壊しますよ」という警告を対話の要点としていた。

 だが、経済制裁が最終目的としているミサイル開発と核開発の放棄自体が北朝鮮独裁体制の安全保障に対する危険な挑戦と看做している金正恩にとって、そのことを無視して拉致解決の如何によって「あなたの政権、あなたの国」の「崩壊」を告げられるのは腹立たしい滑稽にしか見えないはずだ。

 確かに拉致解決によって得る日本からの経済援助や戦争賠償が北朝鮮の経済の立て直しに役立つかもしれないが、その資金の大部分を核開発とミサイル開発に回すことができたとしても、最終的に独裁体制の安全保障となる核とミサイルの保有を認めることができる唯一の国はアメリカであって、日本ではない。

 安倍晋三はこういったことを弁えて、北朝鮮の将来を口にしなければならないのだが、拉致解決だけが北朝鮮国家の将来を保障するかのような言動を弄する。相手を不快にする効果はあっても、拉致解決が北朝鮮の核保有を保障するわけではない現実を変えることもできない。

 2014年5月26日から5月28日までスウェーデン・ストックホルムで開催の日朝政府間協議で北朝鮮は「特別調査委員会」を立ち上げて、拉致被害者を始めとするすべての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を約束した。この約束に応じて安部晋三は北朝鮮側の調査開始時点での制裁一部解除の方針を北朝鮮側に伝えた。

 ところが北朝鮮は6月26日に日朝協議を問題外とするような日本海に向けたミサイル発射実験を行った。勿論、日本側は北朝鮮に対して抗議した。

 その後調査がなかなか開始されないために約束の履行を求める目的で2014年7月1日に中国・北京で日朝政府間協議を開催する予定を組んだ。対して北朝鮮は開催予定の2日前の6月29日に6月26日に引き続いて短距離弾道ミサイルを日本海に向けて発射した。政府は拉致問題とミサイル発射を別問題とし、制裁解除方針は維持、政府間協議をそのまま開催することにした。

 開催の結果、北朝鮮は調査を開始し、最初の調査結果の通報時期を「夏の終わりから秋の初めごろ」との見通しを示した。日本側は2014年7月4日、北朝鮮側から調査開始の報を受け、調査の実効性が確認できたとして、アメリカが懸念を示したものの日本独自に科してきた人的往来や送金などの経済制裁の一部を解除した。

 北朝鮮は制裁解除決定の5日後の7月9日早朝に複数の弾道ミサイルを日本海に向けて発射、安倍政権は抗議したものの、一方で慎重に状況を見極めるという態度を取り、7月13日には「先般の合意に従って北朝鮮に調査を進めていくよう求めていきたい。問題解決に向けた我々の取り組みにミサイル発射が影響を及ぼすことはない」と言明。「対話と圧力」が対北朝鮮の基本姿勢であったにも関わらず、拉致問題とミサイル発射問題を切り離した。

 北朝鮮は一度は約束した「夏の終わりから秋の初めごろ」とした最初の報告は夏の終わりになっても、秋の初めになってもなく、確認のための日朝政府間協議を開くが、結局のところ、梨の礫で終わることになった。

 この一連の経緯は「こうやって日本が要求している拉致の問題について答を出さなければ、あなたの政権、あなたの国は崩壊しますよ」とする安倍晋三の警告の無視であり、核とミサイルの保有にこそ、独裁体制保持の安全保障を最大限に賭けていることの意思表示の現れである。

 要するに拉致解決よりも核とミサイルの性能向上、あるいはその保有を優先させている。安倍晋三にしたら、この視点から拉致解決を俯瞰しなければならなかった。

 10月22日の首相官邸でのぶら下がり記者会見。

 安倍晋三「この問題を解決しなければ北朝鮮の将来はないと、そう考えるようにしなければならないと、ずっと主張し、それを主導してきました。その上において対話を行っていく。まさにその上において今対話がスタートしたわけです。北朝鮮が『拉致問題は解決済み』と、こう言ってきた主張を変えさせ、その重い扉をやっと開けることができました」

 「北朝鮮の将来はない」云々が功を奏したと自身の拉致政策の成果としている。但し成果に反して拉致問題は一向に進展しなかった。

 2017年9月19日、トランプが国連総会一般討論演説で拉致問題を取り上げた。このことに対して官房長官の菅義偉が翌9月20日の記者会見で「大統領の発言は涙が出る程嬉しかった」と感激。トランプ様々を見せた。

 翌9月20日、我が日本の安倍晋三が一般討論演説に臨んだ。

 安倍晋三「9月3日、北朝鮮は核実験を強行しました。それが水爆の爆発だったかはともかく、規模は前例をはるかに上回りました。

 前後し、8月29日、次いで北朝鮮を制裁するため安保理が通した「決議2375」のインクも乾かぬうち、9月15日に北朝鮮はミサイルを発射しました。いずれも日本上空を通過させ、航続距離を見せつけるものでありました。
 脅威はかつてなく重大です。眼前に差し迫ったものです。

 我々が営々続けてきた軍縮の努力を北朝鮮は一笑に付そうとしている。不拡散体制はその史上最も確信的な破壊者によって深刻な打撃を受けようとしています。
 ・・・・・・・・・・
 対話とは北朝鮮にとって我々を欺き、時間を稼ぐため、むしろ最良の手段だった。

 北朝鮮にすべての核・弾道ミサイル計画を、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で、放棄させなくてはなりません。そのため必要なのは対話ではない。圧力なのです」――

 「対話とは北朝鮮にとって我々を欺き、時間を稼ぐため、むしろ最良の手段だった」と北朝鮮を非難するが、時間稼ぎに利用された自身の非は反省しない。「重い扉をやっと開けることができた」ものの、部屋に入って効果的な話ができなかった事実には目を向けない。そして「対話と圧力」政策から「対話」を放棄、「圧力」一辺倒で突き進むことを決めた。

 だが、再び「対話と圧力」路線に戻ることになった。

 2018年6月7日午後(現地時間)、安倍晋三はアメリカ合衆国のワシントンでトランプと首脳会談、引き続いて共同記者会見を開催。

 安倍晋三「拉致問題を早期に解決するため、私は、もちろん、北朝鮮と直接向き合い、話し合いたい。あらゆる手段を尽くしていく決意です。そして、この拉致問題の解決に対するトランプ大統領を始めアメリカ国民の皆様の御理解と御支援に日本国民を代表して感謝申し上げたいと思います。

 累次の安保理決議の完全な履行を求めていく。これまでの方針に、全く変更はありません。拉致、核、ミサイルの諸懸案を包括的に解決し、北東アジアに真の平和が実現することを、我が国は、強く願っています」

 安倍晋三はこの首脳会談で2018年6月12日にシンガポール開催される歴史上初めての米朝首脳会談でトランプに拉致問題を取り上げるように要請したという。

 そしてトランプが米朝首脳会談で拉致問題の解決を提起したことに対して金正恩は「拉致問題は解決済み」の従来の態度を取らなかったとされていて、拉致解決に後ろ向きの態度ではなく、前向きの態度を示したサインと受け取られることになった。

 米朝首脳会談後の同2018年6月12日午後9時34分から約20分間、安倍晋三はトランプと電話会談を行い、その後記者会見を開いている。

 安倍晋三「拉致問題についてでありますが、まず私から拉致問題について米朝首脳会談においてトランプ大統領が取り上げて頂いたことに対して感謝申し上げました。

 遣り取りについては、今の段階では詳細について申し上げることはできませんが、私からトランプ大統領に伝えた、この問題についての私の考えについてはトランプ大統領から金正恩委員長に明確に伝えて頂いたということであります。

 この問題についてはトランプ大統領の強力な支援を頂きながら、日本が北朝鮮と直接向き合い、解決していかなければいけないと決意をしております」

 要するにトランプの金正日に対する強力な影響力を信じたのかどうか、対話を用いた北朝鮮との直接交渉に基づいた解決に強い意欲を示した。

 ところが、2018年6月12日の「米朝首脳会談」から3日後の6月15日夜、トランプのこの影響力に冷水を浴びせるサインが北朝鮮側から示された。北朝鮮国営ピョンヤン・ラジオ放送が「日本は既に解決された拉致問題を引き続き持ち出し、自分たちの利益を得ようと画策している。国際社会が一致して歓迎している朝鮮半島の平和の気流を必死に阻もうとしている」

 つまり拉致問題に関わるトランプの金正恩に対する影響力はゼロに等しかった。金正恩側からしたら、トランプの拉致問題解決の提起を無視した。

 2019年2月27日と28日の2日間に亘ってにベトナム首都ハノイで第2回目米朝首脳会談が開催された。トランプはこの会談でも拉致の解決を提起した。但し核問題と経済制裁の解除の問題で首脳会談は決裂した。決裂に関する両者の言い分は例の如くにと言うか、食い違っている。トランプは北朝鮮が制裁の全面解除を条件としたためだと主張。対して北朝鮮側はニョンビョン(寧辺)にあるすべての核施設の廃棄と引き換えに国民生活に影響が及ぶ一部の制裁の解除を条件として提示しただけだと反論している。

 2回目の首脳会談終了後の2月28日夜、安倍晋三とトランプは約10分間の電話会談を行っている。トランプから2月27日の金正恩委員長との1対1の会談の場で拉致問題について提起し、安倍晋三のメッセージを明確に伝えたとの説明があったこととその後の夕食会でも拉致問題について首脳間で真剣な議論が行われたとの説明があったという。

 2019年3月5日の参院予算委員会。

 安倍晋三「その場(首脳会談の場)に於きまして、言わば日本にとって大きな問題であるこの問題をトランプ大統領は出したということでありまして、言わば米国がそこまで(拉致問題を)重視をしているということを金正恩委員長も理解したんだろうと、こう思うわけでございます。

 さらには、その後の少人数の夕食会でもこの問題を引き続き提議をし、真剣な議論が行われた。これは今までなかったこと、昨年も提議をして頂きましたが、今までなかったことが行われたのでございまして、そういう意味におきましてはしっかりと金正恩委員長に伝わったのではないかと、そこを私は成果と考えているところでございます。

 ただ、まだ実際に、拉致被害者が実際に日本に帰ってくることができているわけではございませんから、実は、実際は、この問題について進めていく上に於いては日本自身の問題でありますから、私自身が金正恩委員長と向き合わなければならないと、このように考えております」

 つまりトランプが提議した拉致問題解決を「米国がそこまで重視をしているということを金正恩委員長も理解した」ことと、解決の重要性が「金正恩委員長に伝わったのではないかと、そこを私は成果と考えている」と評価しているが、核を自身の独裁体制の最重要の安全保障としてる金正恩のトランプとの首脳会での狙いが、表面的には核の段階的な廃棄を口にしたとしても、実質的には如何に核保有に繋げるかにある以上、拉致問題を解決して、いい子だ、いい子だと頭を撫でられて、ご褒美に核保有を認めてくれるならいざ知らず、そんなことはあるはずもない別の問題なのだから、核保有に向けた進展が何もなければ、あるいは経済制裁の一部でも解除されるなら、解除で得る資金を核とミサイル開発に向けることができるが、そのことも期待できないなら、拉致解決に誰が動くというのだろうか。

 このことに気づかずに拉致問題は「日本自身の問題でありますから、私自身が金正恩委員長と向き合わなければならないと、このように考えております」と、トランプの提議が何らかの進展に向かうかのような気楽なことを言っている。

 2019年5月4日北朝鮮の複数の飛翔体発射を受けて、安倍晋三は5月6日夜、トランプと電話会談。電話会談後、「拉致問題を解決をするために私自身が金委員長と条件を付けずに向き合わなければならないと考えています。あらゆるチャンスを逃さないという決意でこの問題の解決に当たっていく」と、ミサイルの発射実験を脇に置くことにしたのか、そう述べている。

 その後同じ趣旨の発言を何度となく繰り返している。当然、安倍晋三自身は自覚しているかどうか分からないが、金正恩との首脳会談を実現させる責任と、その責任を果たす政治的才覚の発揮を負ったことになる。

 だが、1年経過した現在、首脳会談を実現させる政治的才覚の発揮も、実現の責任も果たせないままに推移している。

 安倍晋三は最低限、金正恩が核を自身の独裁体制の最重要の安全保障としていることを深く認識して、その認識と共に拉致問題と向き合わなければならなかった。そのような認識を持つことができなければ、「日本が北朝鮮と直接向き合い、解決していかなければいけない」といくら決意しようが、「拉致問題を解決をするために私自身が金委員長と条件を付けずに向き合わなければならない」と金正恩との首脳会談をどう頭に描こうが、ただの言葉で終わる。

 横田滋さんのめぐみさんと再開できないままの死去に「断腸の思い」をいくら訴えようとも、目に涙を浮かべようとも、自身の無能・無策を棚に上げた白々しさだけが浮き立つことになる。
 
 国債社会の一員として北朝鮮の核放棄を優先させなければならない日本の立場であるなら、徹底的な経済制裁による金正恩独裁体制そのものの打倒と平和裏な北朝鮮の民主化を優先させて、拉致解決はその後であることを拉致被害者家族と国民に正直に説明しなければならなかった。

 あるいは国際社会から日本が孤立することがあっても、核放棄よりも拉致解決を優先させて、北朝鮮の核保有を認めるかすれば、拉致解決に終始一貫した姿勢を示すことができたはずだし、アメリカが北朝鮮の核保有を認めなくても、日本の承認を核保有のための一つの力とするために拉致解決に前向きの姿勢になった可能性は否定できない。拉致可決によって得ることになる日本からの資金も核開発に自由に向けることが可能となる。

 結局は二兎追う者一兎も得ずの宙ぶらりんの状況に陥っている。そしてこの状況が拉致を解決できない理由となっている。

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安倍晋三と森まさこは「ウソ押し通して事実に変える」最大の実践者 最初から黒川弘務訓告処分ありき

2020-06-01 11:20:38 | 政治

 安倍晋三は「ウソ押し通して事実に変える」巧みな実践で首相を続けていられると、タカをくくっている。

 東京高検検事長黒川弘務の賭けマージャンスキャンダルが明るみに出たのは週刊文春の報道がキッカケだった。法務省が黒川弘務に対して聴き取りを開始したのは2020年5月19日。
 2020年5月22日 衆議院厚生労働委員会

 川原隆司「今回の調査は今月19日火曜日から開始をしておりまして、昨日(2020年5月21日)、調査結果を取り纏めるまで、何回かに亘りまして、事務次官が必要に応じて複数回に亘り、聴取をしたということで、ところでございます」

 「文春オンライン」が《黒川弘務東京高検検事長 ステイホーム週間中に記者宅で“3密”「接待賭けマージャン」》と題して黒川弘務の賭けマージャンスキャンダルを伝えた日付は2020年5月20日。「週刊文春」編集部の記事作成で、〈source : 週刊文春 2020年5月28日号〉と記されている。

 ネットで調べたところ、週刊文春は発売号日付よりも1週間前に実発売するそうだから、「5月28日号」は5月21日当たりが発売日となる。その号の販売促進が目的で、発売日前日の5月20日にオンライン記事として配信したと思われる。
 但し週刊誌の場合は発売約一週間前に記事に取り上げた人物に対して内容確認の文書・電話・直接の本人取材等を行なうとされている。黒川記事の場合は5月20日から1週間引いた5月13日頃には黒川弘務本人が記事にされることを知ることになったはずである。その際、5月20日にオンラインでの記事配信を知らされていたであろう。

 だから、法務省はオンラインでの記事配信の5月20日よりも1日前の5月19日から黒川弘務に対する聴き取り調査を行なうことができたことになる。ところが5月13日頃には黒川弘務本人に対しては5月20日のネット配信を知らされていたはずだから、5月12日から5月19日の聴き取り調査開始までの1週間の間に善後策(後始末をうまくつけるための方法「goo国語辞書」)を練っていたはずだ。

 黒川弘務本人としたら、法務省に知らせるよりも前に官邸に伝えていなければならない。2020年1月31日に安倍内閣は検事総長は年齢が65年に達したときに、その他の検察官は年齢が63年に達したときに退官するとしている検察庁法の規定を覆して「検察庁の業務遂行上の必要性」を理由に誕生日前日の2020年2月7日に退官しなければならなかった黒川弘務の定年を半年間延長する閣議決定を行っている。

 黒川弘務が誕生日前日の2020年2月7日に退官していたなら、週刊文春報道は約3年前から賭けマージャンしていたとしているものの、特に問題となったのは新型コロナウイルス禍を受けた緊急事態宣言下での政府要請の外出自粛中の賭けマージャンだったからで、退官後に発覚した黒川弘務本人の事件扱いということで、安倍晋三の任命責任はこれ程までに国会で追及を受けることはなかったはずである。

 なかったはずの国会追及を受けることになった経緯は法律の改正によってではなく、1981年の国会で「検察官に国家公務員の定年制は適用されない」と答弁した人事院の法解釈を事後公表の形で変更、閣議決定で異例の定年延長を決めたからであって、定年延長を受けた側の検事長黒川弘務の賭けマージャンスキャンダルとなれば、当然、一番迷惑がかかるのは閣議決定した安倍内閣ということになる。

 黒川弘務としたら、一番迷惑がかかる相手にいの一番に報告しなければならない自身の不始末でなければならない。報告するについても、善後策を練るについても、事実関係を明らかにしなければならない。

 黒川弘務から明らかにされた事実関係に基づいた善後策は官邸側からしたら、法務省や検察庁を混じえて練ったとしても、特に安倍晋三自身に迷惑をかからない、あるいは安倍晋三に迷惑をかけない解決方法を最終的な答としたはずであるし、そのような答としなければならなかった。

 安倍晋三に迷惑がかかってもいい解決を答とするはずはないからである。それが訓告処分という最も軽い決定だった。最も軽い処分と安倍晋三に迷惑がからない解決はイコールの関係にある。つまり安倍晋三に迷惑がからない解決は最も軽い処分によって導き出され、最も軽い処分は安倍晋三に迷惑がからない解決によって導き出される。イコールは両者を調和した関係に置く。

 安倍晋三に迷惑がからないための善後策は最も軽い処分である訓告を既定路線としていたことになる。法務省の5月19日からの聴き取り調査というのは単なるタテマエで、既に訓告処分が決まっていて、訓告処分を相当とする演出用の架空のスケジュールに過ぎなかったことになる。実際に取調べが行われていたとしても、取調べましたという事実を打ち立てるためのアリバイ作りに過ぎなかったろう。

 安倍晋三は処分認定は法務省と検事総長が行ったことで、自身は一切関与していない、処分認定の報告を受けて、それを了承しただけだと言っているが、このような経緯を取ったとすると、黒川弘務から報道されることの報告を受け取っていないことになって、黒川弘務は安倍内閣の閣議決定によって定年延長を受けたという関係から生じる、安倍晋三には迷惑を掛けることはできないとするための配慮の儀礼を欠いていたことになる。その儀礼を欠いて、法務省のみに報告した。法務省も検事長定年延長閣議決定の主たる当事者である官邸に報告せずに調査を開始した。

 この事実を事実通りに事実と認めることができる神経を一般的とすることが果たして可能かどうかである。不可能と見るなら、安倍晋三も森まさこもウソを押し通して、そのウソを巧妙に事実と変えていることになる。

 週刊文春の黒川弘務賭けマージャン報道は、黒川弘務は一部を否定しているものの、概ね事実と認めていることから虚偽報道、デマではなく、事実報道であった。虚偽報道であったなら、せっかく定年延長された検事長職を辞職するという形で投げ出すはずはないし、安倍晋三に対しても辞職できるはずはない。

 2020年5月21日付「asahi.com」記事が、〈黒川弘務コメント全文〉を載せている。

 〈本日、内閣総理大臣宛てに辞職願を提出しました。

 この度報道された内容は、一部事実と異なる部分もありますが、緊急事態宣言下における私の行動は、緊張感に欠け、軽率にすぎるものであり、猛省しています。

 このまま検事長の職にとどまることは相当でないと判断し、辞職を願い出たものです。〉

 少なくとも検事長の職を投げ出さなければならない程度の賭けマージャンだと認めた。但し、〈緊急事態宣言下における私の行動は、緊張感に欠け、軽率にすぎる〉と、反省点を法を取り締まる側による賭けマージャンという違法行為自体よりも緊急事態宣言下の行動であったことに重点を置いている。まるで緊急事態宣言下の賭けマージャンでなければ、許されるかのようなニュアンスを漂わせている。

 もし文春の報道がなかったなら、黒川弘務の検事長という立場での賭けマージャンは国民の目に届くことなく続けられて、国家公務員法が改正されて検事総長に採用されでもしたら、賭けマージャンを続けながら、立場を検事総長に変えて、「個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる」(検察庁法第14条)強い権限で以って犯罪を取り仕切るという皮肉な事態を演じていたはずである。

 2020年5月20日の文春オンライン配信記事の主たる内容は緊急事態宣言下の外出自粛中の5月1日と5月13日に産経新聞社会部記者2人と朝日新聞の元検察担当記者が黒川弘務を加えて賭けマージャンをしたことと、黒川弘務の賭けマージャンは今に始まったことではないといったことで、法務省の黒川弘務に対する取調べもこの記事内容にほぼ添って行われたことが2020年5月22日の衆議院厚生労働委員会での法務省刑事局長川原隆司の答弁で明らかになっている。

 川原隆司「今年の5月1日と13日の日を跨いでおりますが、これについては申し上げますが、それぞれ産経新聞の記者と黒川検事長が賭けマージャンを行った事実、それから帰宅の際にハイヤーに同乗した事実等を認められております。

 そのほか黒川検事長にその後も麻雀、ハイヤーの事実ということを、当然、確認したところでございますが、その結果、黒川検事長からは今回の5月1日、あるいは13日のメンバーとされています記者3人と約3年前から月に1、2回程度、同様な賭けマージャンをやっていたということ、あるいは帰宅の際に記者が帰宅するために乗車するハイヤーに同乗したというような聴取の結果を得ているところでございまして、そうした調査結果になってございます」

 報道の事実を対象とした調査の範囲となっている。一度も、「週刊誌報道にはなかったことですが、黒川弘務検事長本人からの申し立てによってこれこれの事実も明らかになり、それらの事実も加えた事案の内容と諸般の事情を総合的に考慮し、適正な処分を行った」とは誰も言っていない。そしてこの聴取の結果を以って懲戒でもなく、停職でもなく、軽い、軽い訓告処分とした。

 本人からの申し立てによる新事実の判明など、掛けることはできない内閣への迷惑を上乗せして、自身の罪をなお重くするだけの効果しか見込めないことであって、ありようはずはないと断言できる。大体がコメントで、「一部事実と異なる部分もありますが」の云々は罪を軽くする意図の常套句として頻繁に用いられる。

 要するに報道の事実を少しでも事実から遠ざけたい虚しい悪足掻きに過ぎないのは辞職を欠かすことができな要件とする程に報道の事実を概ね事実と認定せざるを得なかったところに現れている。

 ところが文春オンラインは黒川弘務賭けマージャン第2報なのか、2020年5月27日付で、〈黒川前検事長は10年以上前から「賭博常習犯」だった〉とする趣旨の証言付きの記事を配信している。

 「週刊文春」編集部の作成で、「source : 週刊文春 2020年6月4日号」となっている。

 元雀荘店員の証言「黒川さんは、週に1~2回、多い時には週3回もいらっしゃいました。いつもBさん(産経記者2人のうちの1人)が予約を入れるのですが、Bさんが急な取材でドタキャンになることもあった。Aさん(産経記者の残りの1人)が一緒のことも多かった。休日に、ゴルフ帰りの黒川さんたちがマージャンをやりたがって、特別にお店を開けたことも何度もありました。風営法上、午前0時を過ぎての営業は出来ないのが建前ですが、照明を落として午前2時頃まで暗がりの中で続けることもありました。点数を取りまとめていたのはBさんでした」

 記事は、〈黒川氏は10年以上前から、新橋や虎ノ門、時には渋谷にまで足を延ばして、雀荘に足しげく通っていたことが分かった。〉と書いている。

 東京高検検事長黒川弘務の常習賭博マージャンは文春オンラインの2020年5月20日報道によって事実とされた。但しその常習性は法務省調査によって「約3年前から月に1、2回程度」とされた。

 2020年5月27日付文春オンライン記事は黒川弘務の常習性を「10年以上前から」としている。最初の記事が虚偽報道ではなく、事実報道として法務省の調査が開始されたなら、次の記事を虚偽報道と決めつける根拠は希薄で、一応は事実報道と仮定して、「約3年前から月に1、2回程度」の常習性とした法務省の調査が適切であったかどうか、検証する必要性が生じる。例え検証といかなくても、調査の遣り直しは必要となる。断るまでもなく、「約3年前から月に1、2回程度」の常習性と「10年以上前から、新橋や虎ノ門、時には渋谷にまで足を延ばして、雀荘に足しげく通っていた」常習性とは質も回数も明らかに異なるからである。

 2020年5月29日 参議院本会議

 一括質問・一括答弁方式

 倉林明子(共産党)「社会福祉等改正案についてお尋ね致します。法案の質疑に入る前に黒川前東京高検検事長の処分について質問します。内閣が『余人を以って代え難い』として法解釈を変更してまで定年延長された黒川氏があろうことか、賭博行為である賭けマージャンをしていたこと、さらにこの処分は訓告にとどまり、約6千万円もの退職金が支払われることに国民から抗議の声が上がっております。総理は任命責任をどう果たすおつもりですか。

 10年前からも常習性を疑われる新たな事実が報じられています。再調査の指示を出すべきではありませんか。

 処分について訓告との判断はなぜ適正と考えるのか、国民の疑念に総理自身の言葉で説明すべきです。明確な答弁を求めます」

 安倍晋三「黒川前東京高検検事長処分等についてお尋ねがありました。黒川氏の処分については法務省に於いて必要な調査を行い、法務省及び検事総長に於いて事案の内容等諸般の事情を総合的に考慮して、訓告が相当であると判断し、適正に処分したものと承知をしています。

 黒川氏の処分を認定するに当たり、法務省に於いては事実関係について必要な調査を行ったものと承知をしており、再調査は必要ないものと考えています。

 他方で黒川氏を検事長として任命したこと等については法務省・検察庁の人事案を最終的に内閣として認めたものであり、その責任については私にあり、ご批判は真摯に受け止めたいと考えております。その上でまさに我々には新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止すると共に国民の健康と命、雇用と暮らしを守り抜いていく大きな責任があると認識しております。

 いずれも行政府の長として一層身を引き締めて、行政運営に当たることにより、その責任を果たしていく所存であります」

 この参議院本会議があったのは2020年5月29日。「10年以上前から」の常習性を内容とする記事を文春が配信したのは2020年5月27日付であって、2日後の安倍晋三の答弁である。文春の「10年以上前から」の記事を知らなかったとした場合、官邸の情報収集能力が疑われるだけではなく、国会答弁は一般的には質問通告を受けて行なう。ましてや本会議の一括質問・一括答弁方式では質問通告がなければ、答弁は成り立たない。

 要するに安倍晋三は2020年5月27日付の文春オンライン記事の内容を把握していなければ、答弁はできなかったことになる。

 共産党参議院議員倉林明子は2020年5月27日付文春オンライン記事を取り上げて、黒川弘務の賭博マージャン常習性を「10年前からも常習性を疑われる新たな事実が報じられています」と指摘した。

 ところが、安倍晋三が答弁している「法務省に於いて必要な調査を行った」、処分認定に関しても法務省が「必要な調査を行った」としている法務省の調査とは文春が最初の報道で伝えている「約3年前から月に1、2回程度」の常習性を根拠として行ったものであり、2020年5月27日付の文春オンライン記事が黒川弘務の賭博マージャンの常習性を「10年以上前から」としている情報を根拠とした調査では全くない。

 このゴマカシを正当化して、「再調査は必要ない」とするのは、「10年以上前から」の常習性を「約3年前から月に1、2回程度」の常習性としたままにして置く、「ウソ押し通して事実に変える」類いの強弁に過ぎない。

 森まさこが2020年5月22日の記者会見で検事長黒川弘務の訓告処分は「法務省内、任命権者であります内閣と様々協議を行いました。その過程でいろいろな意見も出ましたが、最終的には任命権者である内閣に於いて決定がなされたということでございます」との発言で、法務省と内閣が様々に協議し、最終決定は内閣が行ったとする経緯を、黒川弘務としたら、一番迷惑がかかる相手にいの一番に報告しなければならないのだから、官邸が関わらないはずはない処分決定であるにも関わらず、5月26日の記者会見になると、「(5月)22日の記者会見における私の『内閣において決定がなされた』旨の発言は法務省及び検事総長が『訓告』が相当と決定した後、内閣に報告したところ、その決定に異論がない旨の回答を得たことを申し上げたものでございます」と、内閣決定を法務省及び検事総長の訓告処分決定に対する内閣による「異論がない旨の回答」に変えている。

 法務省と検事総長の2者のみで決めた訓告処分であるなら、5月22日の記者会見で述べた「法務省内、任命権者であります内閣と様々協議を行いました。その過程でいろいろな意見も出ました」は法務大臣でありながら、なかった事実をあった事実であるかのように発言したことになる。そのメリットはどこにあるのだろうか。

 逆に5月26日の記者会見であった事実をなかった事実とすることによるメリットは容易に考えることができる。処分決定に内閣は一切関わらなかったとする事実の打ち立てが可能となる。

 要するに処分決定に内閣が関わったとする森まさこの5月22日の記者会見発言「法務省内、任命権者であります内閣と様々協議を行いました。その過程でいろいろな意見も出ました」は内閣にとって、即ち安倍晋三にとってデメリットそのものであって、発言自体に矛盾が生じることも構わずにあった事実をなかった事実に変えざるを得なかった。

 この森まさこのあった事実をなかった事実に変えて、デメリットをメリットとする巧妙さを必要とする方向転換にしても、「ウソ押し通して事実に変える」実践によって可能となる。

 森まさこは黒川弘務定年延長の閣議決定に対する野党の国会追及でも散々に「ウソ押し通して事実に変える」ことを散々に実践してきた。

 安倍晋三にしても、黒川弘務定年延長閣議決定にとどまらずに、森友・加計疑惑、「桜を見る会」疑惑、アベノマスク全世帯配布等々に対する国会答弁で「ウソ押し通して事実に変える」名人芸を数え切れない程に実践してきた。

 この名人芸からしたら、共産党議員倉林明子に対する答弁の最後で「他方で黒川氏を検事長として任命したこと等については法務省・検察庁の人事案を最終的に内閣として認めたものであり、その責任については私にあり、ご批判は真摯に受け止めたいと考えております」はウソの上塗りに過ぎないと見なければならなくなる。

 要するに安倍晋三なる政治家はオオカミ少年の少年に当たる。オオカミ少年のようにウソがいつ命取りになるのだろうか。

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安倍晋三・森まさこの黒川弘務の検事長としての規範意識の欠如に目をつぶった茶番な訓告辞任に見る責任意識の欠如

2020-05-25 12:53:18 | 政治
 「文春オンライン」が2020年5月20日、東京高検の黒川弘務検事長(63)が産経新聞社会部記者2人、朝日新聞社員1人と賭けマージャンをしていたと報じた。

 この黒川弘務の賭けマージャン不祥事で何よりも問題としなければならないのは、新型コロナウイルス禍を受けた緊急事態宣言下での政府要請の外出自粛中の出来事であったこと自体が黒川弘務の検察官としての規範意識に則った行動であったかどうかということでなければならない。しかも検察庁ナンバー2の検事長の任にある。特大の規範意識を体していなければならなかった。

 【規範意識】「道徳、倫理、法律等の社会のルールを守ろうとする意識のこと。遵法精神ともいう」(Weblio辞書)

 道徳、倫理、法律等の社会のルールを守らない、犯罪を取り締まる組織検察庁ナンバー2の検事長なんぞ、逆説も逆説、シャレにもならない。

(楽天KOBO出版・価格800円)

 2020年5月22日 衆議院法務委員会

 無所属の山尾志桜里はマスコミ報道で賭けマージャン不祥事が発覚し、検事長を辞任することになった東京高等検察庁検事長黒川弘務の処分が懲戒ではなく、軽い訓告で終わったことの理由、経緯などを法相の森まさこと法務省刑事局長川原隆司に対して追及した。

 政府参考人として呼ばれた法務省刑事局長の川原隆司は2019年1月8日のマスコミ報道で54歳と紹介されていたから、現在、55、6歳か。慶応大学を卒業、東京地検刑事部長や最高検検事を歴任している。だが、経歴に見合った理路整然な答弁を見せることができず、言葉の言い換えや言葉の詰まり、思った言葉を思ったとおりに発することができないときの「あー」とか「うー」とかの連発。その様子だけで黒川弘務の訓告処分が厳正な決定からは程遠い、最初から軽い処分ありきで決定されたことが分かる。

 質疑の途中に青文字で寸評を加えることにした。

 山尾志桜里「新聞の記事によりますと、賭けマージャンのあとのハイヤーの中が主な取材の時間であったような記事が出ておりますし、森大臣、個人的な時間であったと仰るのであれば、この賭けマージャンに於ける前後の時間帯も含めてこういった黒川検事長が検事長という立場で取材に応じるようなことがなかったという事実認定されていいんですか」
 川原隆司「私共の調査結果に於きまして取材に応じていたか、応じていなかったという点について事実は認定しておりません」

 山尾志桜里「事実の認定をしていないんだから、本当の個人的な時間の使い方だったのか、検事長としての取材を受けた、一定程度検事長としての公務の遂行に関わる時間帯だったのか、森大臣、ここは判断できないんじゃないですか。

 判断をされてるんですか、個人的な時間帯だったと。これが森大臣の認識でよろしいんですか」

 森まさこ「私は検察庁に登庁している職務の時間以外の行為であっても、東京高検検事長たる者、公私を問わず、国民から疑問を問われないように自分自身を律して行動していくものと思っておりますので、そういう意味で今回の処分になったものです」  

 森まさこの「東京高検検事長たる者、公私を問わず、国民から疑問を問われないように自分自身を律して行動していくもの」とは、規範意識を常に体した行動への法務大臣としての期待であり、森まさこ自身規範に添うことを信条としていることになる。信条としていなければ、こんなことは言えない。森まさこ自身も常に常に規範意識を体して行動しているはずである。

 当然、「そういう意味で今回の処分になった」と言っていることは、黒川弘務は規範意識を常に体して行動している人物であるから、そういう人物であることを考慮に入れて、懲戒免職ではなく、訓告という軽い処分としたという意味を取る。

 犯罪を取り締まる側の検察官が犯罪となり得る賭けマージャンをしていたとしても、規範意識に則った行動ですとしたら、前代未聞の法意識、人物解釈となる。森まさこが法務大臣に座っていることを考えなければならない。


 山尾志桜里「今回の賭けマージャン、事実認定された中で事実認定された賭けマージャンが行われた時間帯というのはさっきから仰ったように個人的な時間帯だというのが法務大臣の認識ということでよろしいですか」

 森まさこ「職務時間外という意味でございます」

 山尾志桜里は賭博容疑を問われてもいい黒川弘務の賭けマージャンが森まさこの「公私を問わず」の規範意識に反している行動であることに目を向けずにハイヤー内で記者から取材を受けていたとしている報道の方に重点を置いて「公」か「私」かに拘った。賭けマージャン帰りに「公」の立場で取材を受けていたなら、賭けマージャン中も、「公」の立場でしか提供できない検察内部の情報を「私」の立場で漏らしていた可能性が出て、その処分に公私混同の罪を加えなければならず、「訓告」は軽過ぎることが証明できるからなのだろう。

 山尾志桜里「森大臣ね、本当に答弁が、申し訳ないけれど、大事なところで言葉遣いが物凄く軽いので、個人的な時間帯かどうかということは一つの大きなことでしょ。勤務時間以外だと言うなら、勤務時間外だというふうに仰っしゃればいい。

 個人的な時間なのか、取材に応じて検事長としての立場、一定の公務の遂行が行われていたのかと言うことは、これは今回川原刑事局長によると、事実認定していないということでした。

 これ、再調査の必要性は色んな面であるんですけども、これ、再調査して頂けますか」

 川原隆司「再調査につきましては先程大臣が答弁された通りでございますが、今回処分するに必要な調査は行ったものと認定しております」

 法務省刑事局長川原隆司は予定の答弁だったのだろう、ここでは落ち着いて答弁している。

 山尾志桜里「取材が行われていたかどうかは処分を認定するのに不必要だという答弁でありました。大臣、今回訓告されたわけでありますけども、何を以って訓告にしたのかどうかということを聞きたいんですけれども、一つ、賭けマージャン、違法になる賭けマージャンをしたということ。

 二つ目。特定のメディアと不適切な癒着があったのではないかということ。三つ目、自粛中のいわゆる3密をしたということ。

 まあ、そのほかもあるのかもしれないのですけども、何を訓告の対象としたのですか」

 森まさこ「黒川検事長については東京高等検事長という立場でありながら、緊急事態宣言下の令和2年5月1日と5月13日の2回に亘り、報道機関関係者3名とマンションの一室で会合し、金銭を賭けて、麻雀を行っていたことが調査により判明を致しました。これらの事実関係が認められたことから、検事総長から監督上の措置として訓告されたものと承知を致します。

 それ以上の調査については詳細については事務方から説明させます」

 これまでの遣り取りを見ると、法務省内で刑事局長川原隆司が主体となって黒川弘務の聴取に当たっていたと受け取ることができる。聴取によって賭けマージャンの事実認定ができたことから、検察に報告、検事総長が「監督上の措置として訓告」したという経緯を踏んだことになる。

 つまり、検察は聴取にノータッチだった。告発や告訴を受けなくても、犯罪事実や犯罪事実の疑いに基づいて捜査、取り調べはできる。タレントの間で誰それが麻薬を常習しているらしいという噂から開始される捜査、取り調べがいい例となる。黒川弘務の賭けマージャン相手の産経新聞の記者と朝日新聞の社員はそれぞれの社の取り調べで事実を認め、それぞれにその事実についての記事を報道している。つまり、賭けマージャンの事実を3人の記者は認定した。

 当然、賭けマージャンが賭博罪に当たる犯罪であることから、警察自身が動くか、検事長の賭博であることから、検察が警察に指示をして取り調べに当たってもいい事案であるはずだが、法務省内で取り調べを完了させて、その取り調べ内容を検事総長に連絡、当然、法務省の取り調べ内容に基づいてということになって、訓告処分とした。

 こういった一連の流れを見ると、「訓告」が正当な取調べに基づいた正当な処分ではなく、処分を「訓告」に向けるためのヤラセの疑いが出てくるが、この疑いをゲスの勘繰りとする答弁は以後も見えてこない。

 【ヤラセ】「事実関係に作為・捏造をしておきながらそれを隠匿し、作為などを行っていない事実そのままであると(またはあるかのように)見せる・称することを言う」(Wikipedia)

 確実に言えるのは森まさこは黒川弘務が犯罪構成要件となり得る賭けマージャンをしていながら、その規範意識を何ら疑っていないことである。疑っていたなら、処分の重大な一要件としたはずであるし、しなければならなかった。


 山尾志桜里「そうするとですね、賭けマージャンの話、そして3名の記者とのこと、3名の記者との関係の話。ここがやはり焦点になってくるわけですね。
 そうすると、この賭けマージャンの一定程度の常習性の有無。あるいは特定メディアとの癒着の固定化や常態化。この程度の問題が私はやはり大事だと思うので、ここはやはりしっかりと調査をして頂きたいと思うのですけども、調査の手法についてですので、刑事局長でも構いません、お伺いを致します。

 先ず今回の調査の中でですね、今、黒川さんへのヒアリングと各報道局報道陣がいましたけど、黒川さんへのヒアリングはいつ、何回されたのですか」

 川原隆司「今回の調査は今月19日火曜日から開始をしておりまして、昨日(2020年5月21日)、調査結果を取り纏めるまで、何回かに亘りまして、事務次官が必要に応じて複数回に亘り、聴取をしたということで、ところでございます。以上でございます」

 黒川弘務の聴取は川原隆司が主体となって行ったのではなく、事務次官が主体となって行っていたことがここで判明する。但し川原隆司は聴取の回数を「何回かに亘りまして」と最初は言い、次に「複数回に亘り」と、どちらも回数を曖昧にする言い方となっている。

 この曖昧に合わせてしまったのだろう、聴取が終わって、処分が出たのだから、「聴取をしたということでございます」と一定時間が経過した過去完了形とすべきところを、「聴取をしたということで、ところでございます」と、過去完了形と聴取からさして時間が経過していない現在完了形とを混ぜた言い方になってしまった。

 この二つの曖昧さはニつ共に何らかのウソを介在させていることから発している。何もウソがなければ、聴取回収を何回かとはっきりと言うことができるし、しっかりとした聴取ではなかったからこそ、しっかりとした過去完了形で表現できずに聴取を終えたばかりみたいな言い方をしてしまった。

 当然、このウソは検察庁ナンバー2の検事長の賭けマージャン問題なのだから、採るべき聴取記録も採らずに、残してもいないことを証拠立てることになる。


 山尾志桜里「何回聴き取りを行い、何時間なのですか」

 川原隆司「では、あのー、私の方から申し上げる調査は、フク、フク、複数回に亘り聞き取りをしているということでございます」

 抗議、中断。答弁し直し。

 川原隆司「先ず、あのー、今、私の承知している範囲で、お答えできる範囲でお答え申し上げますが、えーと、黒川検事長との聴取につきましては面談、直接なのか、電話なのか、というのがございまして、その全てについてを含めて、何回かということまで私は事実に関する資料ということはございません。

 (終わろうとして、言い足す)ただ必要に応じて、電話や面談という形で聞き取りをしたということでございます」

 抗議、中断。

 法務省刑事局長の川原隆司は東京地検刑事部長や最高検検事を歴任した慶大卒の50代半ばの大の大人でありながら、山尾志桜里から聴き取り回数と聴き取り時間を聞かれただけで、言葉がつっかえ、言い回しも理路整然さを失ってしまう。聴取にウソがなければ、理路整然と答弁できたはずである。

 分かったことは聴取記録を採らなかったこと、聴取は面談と電話を用いたこと。但しそれが事実解明のためにウソのない聴取であったなら、最初から「電話と面談という方法で聴き取りをした」と落ち着いて明確に答弁できたはずだが、ウソがあるから、「面談、直接なのか、電話なのか、というのがございまして」などと、聴取方法の必要のない解釈から始めることになったのだろう。


 山尾志桜里「これはですね、複数回ということが明らかになるということですが、手元にここで産経新聞なんですが(必要箇所のみコピーしたものか、B5程度の用紙を左手に持って)、これも(答弁は)刑事局長で結構です。この産経新聞の件はですね、ちゃんと黒川検事長と、事実なのか、違うなら、どこなのか、ヒヤリングしたのかどうかということを聞きたいんです。

 この(産経新聞の)記者の二人が数年前から賭けマージャンを続けていた。1ヶ月に数回のペースであり、(緊急事態)宣言後も5回程度あり、いずれも金銭の遣り取りがあり、そしてハイヤーを利用して主にその車内で取材を行っていたと。

 こういうことを、事実かどうか分かりませんよ。ただこの新聞社は記者からの聞き取り内容を社内調査の内容ということで(記事に)上げているんですけど、この事実については黒川さんに当てたんですか。
 当てたとしたら、それに対してどういうお答えだったんですか」

 産経新聞は5月22日、東京高検の黒川弘務検事長と同社記者らが賭けマージャンをした問題を巡り、社内調査の結果とおわびを同日付朝刊一面に掲載しているとのこと。

 川原隆司「えーと、こうー、調査、あの、昨日取り纏めたわけでございますが、それまでの時点に於きまして、私、あるいは産経新聞から、それぞれに社に於ける調査の状況であるとか、事案に対してどういうことか、というようなコメントは出ておりますが、それを念頭に置いた聴取は当然、しているところでございます」

 山尾志桜里、席に座ったまま、「何ていう答だったんですか」

 松島みどり委員長「その聴取をして、(黒川弘務から)どのような回答を得られたのか、答えられますか?」

 川原隆司「そのような聴取結果、先ず先程、大臣、対象事実として答弁申し上げましたけれども、今年の5月1日と13日の日を跨いでおりますが、これについては申し上げますが、それぞれ産経新聞の記者と黒川検事長が賭けマージャンを行った事実、それから帰宅の際にハイヤーに同乗した事実等を認められております。

 そのほか黒川検事長にその後も麻雀、ハイヤーの事実ということを、当然、確認したところでございますが、その結果、黒川検事長からは今回の5月1日、あるいは13日のメンバーとされています記者3人と約3年前から月に1、2回程度、同様な賭けマージャンをやっていたということ、あるいは帰宅の際に記者が帰宅するために乗車するハイヤーに同乗したというような聴取の結果を得ているところでございまして、そうした調査結果になってございます」

 「文春オンライン」が黒川弘務の賭けマージャンスキャンダルを伝えたのが2020年5月20日、産経新聞は自社記者からの聴き取りを記事にしたのが2020年5月22日。法務省が調査を開始したのは2020年5月19日。文春側から、これこれを記事にすると前以って黒川弘務に連絡が入り、逃げられないと観念して検察庁と法務省に記事になることを伝えたのだろう。でなければ、法務省は文春報道の5月20日前日の5月19日から調査に入ることはできない。
 
 当然、川原隆司の答弁は文春の報道を黒川弘務に当てた結果出てきた、既に述べている事実であるなのか、産経新聞の調査内容を当てた結果、別の事実が出てきて、それも加えて答弁しているいるのかでなければならないはずだが、既に明らかにしている法務省自身の調査結果をくどくどと繰り返す答弁となっている。

 もし厳格な聴き取りを行っていたなら、その聴き取りに自信を持つことができて、繰り返しの答弁をする必要はない。繰り返しは事実と思わせたいときに特に使う。

 つまり厳格な聴き取りを行わない片手落ちの調査で「訓告」処分とした。


 山尾志桜里「黒川さん自体、数年前から特定の記者と月1、2回程度、賭けマージャンを継続しており、およそハイヤーの接待を受けていたということは認めているという話だったんですけど、森大臣、それなのになぜ、懲戒ではなくて、訓告なんですか」

 森まさこ「事案の内容と諸般の事情を総合的に考慮し、適正な処分を行ったものでございます」

 山尾志桜里「説明する意欲を突然なくした答弁なわけでありますけども、検察の信頼を回復させるために、本当は辞めたいんだけども、残るんでしょ。だったら、ちゃんと答弁してくださいよ。皆さんの資料にあるように人事院の指針は賭博をしただけでも減給、または訓告、常習だったら、停職をちゃんと国公法(国家公務員法)上に位置づけられた、こういった処分が決められているわけですよね。

 ましてや黒川さんは検察官ですよね。検事長ですよね。戦後初めて定年延長されて、『余人を以って代え難い』と評価された検察ですよね。その人がこうやって自ら3年前から、もう賭け賭博を認めている状況が明らかになっていて、どうして国公法にも当たらない訓告で足りると考えたのか、実質的な理由をきちっと国民の前に明らかにしてくださいよ」

 森まさこ「丁寧にご答弁を申し上げてまいります。事案の内容と諸般の事情を総合的に考慮したというふうに申し上げましたけれども、前例で賭けマージャンについてですね、問題になった事案でありますとか、様々な事案を参考に今回の事案を、諸般の事情を考慮し、例えばレートでありますとか、まあ、本人の態度も総合的に考慮し、処分したものでございます」

 「前例で賭けマージャンについてですね、問題になった事案」のうち、検察官が行った前例はあるのか。あるとしたら、どのような「前例」で、どのように参考にしたのか、聞くべきだったし、森まさこ自身も明らかにしなければ、「訓告」が正しい処分なのかどうか、国民も野党も、誰も判断できない。

 さらに森まさこは黒川弘務「本人の態度」も訓告という軽い処分にした理由の一つに上げているが、要するに黒川弘務の検事長としての規範意識は問題なしと見ていることになる。山尾志桜里は検事長でありながら、常習的に賭けマージャンをする規範意識とはどのようなものか聞くべきところを、規範意識にまで頭が回らなかったようだ。


 山尾志桜里「じゃあ、レートはどうだったんですか。態度はどう認定されたのですか」

 川原隆司「今、大臣が今回の処分を決めた理由は概略はご答弁しましたが、私ちょっと詳しくご答弁させて頂きたいと思います。

 先ずマージャンの関係でございますが、今回の一連のマージャンの件、即ち、あの、先程申し上げました今年5月1日、13日以来ですね、そういった状況でマージャンを行っていたと言うことは認められるんですが、(今年5月1日、13日以外は)具体的な日付の特定した事実を認定するには至っておりません。

 ただ、こういった状況だったといういうことを認定して、その中でそういったことを考慮して、えー、処分を決めているわけですが、この処分対象事実、そういった中で、処分対象を事実があった。5月1日、13日のマージャンというものにつきましては、これは旧知の間柄の間で、レートはいわゆる点ピン、これは具体的に申し上げますと1000点を100円と換算するものでありまして、これは勿論、賭けマージャンが許されるものではございませんが、社会の実情を見ましたところ、必ずしも高額とは言えないレベルであったということで、いうことを考えて、ですから、許されるものではありませんが、ということで、それで処分をしているものでございますが、処分の量刑に当たっての評価でございます。

 で、さらにハイヤーの問題。仰っておられますが、これにつきましては5月1日、13日に記者の一人の家でマージャンを行ったのちにその家に住んでいない記者が手配したハイヤーに同乗して帰宅しておりまして、その事実は黒川検事長は(代金を)払っていないものでございます。

 が、このハイヤーは黒川検事長個人のために手配したハイヤーを利用したというものではなく、記者が帰宅したハイヤーに同乗したものであることが認められることなどから、社会通念上、相当と認められる程度を超えた財産上の利益の供与があったとまでは認められませんでしたので、こちらの方は処分対象事実とはしておりません。

 その上で黒川検事長のこれまで懲戒処分を受けたことがない、あるいは今般以来のこれまでの先例など、そういったことを総合的に考慮致しまして、今回の訓告という処分にしたものでございます」

 法務省刑事局長川原隆司は賭けマージャンを掴まえて、「許されるものではない」と言いながら、、旧知の間柄の間でしたことであることと掛け金のレートが「必ずしも高額とは言えないレベル」である2点を「処分の量刑に当たっての評価」としているが、森まさこと同様、黒川弘務が検事長として常に体していなかればならない規範意識の欠如を「処分の量刑に当たっての評価」のうちには入れていない。つまり東京高検検事長であったとしても、規範意識の欠如を許していることになるし、黒川弘務にしても許される特別扱いを受けていることになる。安倍晋三のお友達だからなのだろうか。

 規範意識の欠如が許される検事長というのはどのような存在なのだろうか。


 山尾志桜里「中身の調査を尽くさずに出てきた表面上の結果をピックアップをして、そして人事院の基準よりも余程軽い処分で終わらせて、それについて説明もしないという状況で、法務大臣、どうやって森大臣が検察の信頼を回復するつもりなんですか」

 森まさこ「人事院の基準についてはこれに当てはまる過去の先例等を調べた上で、法務省に於いては賭けマージャンについて行った賭博による減給、または戒告に当てはめられたことはないわけですけれども、懲戒処分以外の処分を受けている例等はございますが、そういったものを参考にしつつ、今回の、先程言った例等とありますとか、その他の事情を考慮して、処分を決めたものでございます」

 先ず「人事院の基準についてはこれに当てはまる過去の先例等」を具体的に聞かなければ、量刑の正誤は判断できない。

 「法務省に於いては賭けマージャンについて行った賭博による減給、または戒告に当てはめられた」例はないが、「懲戒処分以外の処分を受けている例等」を参考にして、訓告処分とした。

 つまり最初から「懲戒処分」を視野に入れていなかった。これも検察官の賭けマージャンを規範意識欠如の最たる行為とは見ていないことからの懲戒処分回避なのだろう。

 森まさこが黒川弘務が「検察庁に登庁している職務の時間以外の行為であっても、東京高検検事長たる者、公私を問わず、国民から疑問を問われないように自分自身を律して行動していくものと思っております」と規範意識に則った行動をしているかのように言うことができるのも、「懲戒処分」など、頭の隅にも置いていないからと見なければならない。


 山尾志桜里「法務大臣、確認したいんですけれども、今されている事実認定に於いてこの黒川検事長の賭けマージャンね、罰金50万円の賭博罪とか、あるいは懲役3年もあり得る常習賭博罪、こういった罪で可罰的構成の存在があると考えているのですか。ないと考えているのですか」

 森まさこ「今委員より司法の賭博罪の成否についてのご質問があったと承知しました。刑事処分については捜査機関が法と証拠に基づいて判断するものでございまして、法務省としてはお答えする立場にはございません」

 「捜査機関が法と証拠に基づいて判断する」のは告訴・告発を受けた場合としている。そのうち黒川弘務を賭けマージャンの容疑で告訴するか告発する個人・団体が出てくると思うが、その事実が週刊誌報道と記者の証言、黒川弘務本人の証言によって認定されている以上、告訴・告発がなくても、検察自体が動いてもいいはずだが、「訓告」ありきだから、検察も警察も動かないということなのだろう。

 山尾志桜里「ちょっと一点お願いしたいのは調査結果ということで、1、2、3、4と出ているんですけども、今ここに書かれていない調査結果というものもそれぞれの答弁から出てきているので、ちゃんと調査結果を紙にして提出して頂けませんか」

 松島みどり委員長「後刻理事会で協議して――、ハイ」

 山尾志桜里「最後に森大臣に最後にお尋ねしたいと思います。制度論に入りませんでしたけれも、森大臣、今回責任を痛感していると言っている。私も本当にそう思いますよ。『検察官、逃げた』を始めとする森発言、あるいは森大臣自身の戦後初めての定年延長人事は大失敗に終わっているわけです。

 しかもその失敗を『その当時の判断としては正しかった』というふうに認めていないわけですから、これからも同様の失敗をすると思います。

 そういう意味で森大臣、ご自身の責任のとり方って、大臣を辞めること以外にどういう責任の取り方があり得ると考えているのですか。答えてください、教えて下さい」

 森まさこ「私自身の責任のご質問を頂きましたが、私自身の今般の事柄について大変遺憾であると考えておりまして、責任を痛感しております。安倍総理に対して進退伺を出したところであります。今後も検察の信頼を回復するように、また、後任を速やかに選ぶようにというご指示を受けてございますが、職責に当たることに決めたわけでございますので、信頼を回復するために全力で務めて参りたいと思います」

 山尾志桜里「あのね、自らね、まっとうする自信のない大臣に法務大臣を続けさせる程、日本の社会って、そんなに(ふっとひと笑い。ひと間置いてから続けたから、「甘くはない」と言いたかったところを踏みとどまったのか)待ってられない状態だと思いますので、ぜひ考え直して頂いてご自身で辞任をして頂きたいと強く要求して、終わりたいと思います」

 以上、まともな聴取も行わずに最初から「訓告」ありきの処分を決めたことが、森まさこと法務省刑事局長川原隆司の答弁から如実に浮かんでくる。特に黒川弘務の検事長としての規範意識の欠如に関係なしに訓告と決められたことは留意しなければならない。

 森まさこは法務省が聴き取った事実関係に基づいて「検事総長から監督上の措置として訓告されたものと承知を致します」と答弁している。だが、この衆議院法務委員会があった同じ2020年5月22日の森まさこの朝の「記者会見」では処分の最終決定者は内閣だと明かしている。

 記者「黒川検事長に対する処分は,訓告ということです。黒川検事長は,法務省の聞き取りに対して,賭け麻雀をしたと認めています。一方で,法務省として,賭け麻雀をしたと言われたのに,これは賭博罪に当たるものではないということで,この訓告処分をされたのでしょうか」

 森まさこ「これについては,法務省内,任命権者であります内閣と様々協議を行いました。その過程でいろいろな意見も出ましたが,最終的には任命権者である内閣において,決定がなされたということでございます。

 その際,賭け麻雀における過去の処分の例ですとか,刑法の賭博罪と人事院の規則の賭博についての定義の考え方ですとか,刑法の方は刑事処分が関連してまいりますので,人事院規則の方とは全く同じではないという説明も受けました。その中で刑法の賭博罪についても,立件される程度があるという説明もございました。様々なことを総合考慮した上で,内閣で決定したものを,私が検事総長にこういった処分が相当であるのではないかということを申し上げ,監督者である検事総長から訓告処分にするという知らせを受けたところでございます」

 ① 法務省と内閣が「様々協議」した。
 ② 任命権者である内閣が最終決定。
 ③ 内閣決定を森まさこが検事総長に伝えた。
 ④ 検事総長が森まさこに訓告処分を伝えた。

 問題は③と④である。内閣決定を検事総長が覆すことができるだろうか。覆すとしたら、検事総長は内閣及び法務省と協議しなければならない。その事実は伝えられていないから、検事総長は単に内閣決定を了解し、了解の意を森まさこに伝えたということなのだろう。

 大体が検事長の任命権者は内閣である。任命の責任に対して処分の責任を負うのも内閣でなければならない。この点から言っても、森まさこが「法務省内,任命権者であります内閣と様々協議を行いました」と法務省を内閣より先に持ってきているが、法務省が処分を主導したように見せかけるレトリックでdなければならない。

 内閣は法務省の上に位置する。上に位置する内閣に法務省が訓告相当の処分が適当ではないかと決めた上でそのことを伝えたとしたら任命権者たる内閣に対して僭越行為となる。法務省の聴取で明らかになった事実を先ず内閣に提示してから、処分についての「様々協議」に入る中で法務省の処分についての考えを伝えて、その適否についてさらに「様々協議」するというのが常識的な流れとなる。

 いずれにしても任命権者として内閣が訓告処分を最終決定した。法務省の検事長黒川弘務に対する聴取自体が訓告ありきのいい加減な体裁となっていることが森まさこと法務省刑事局長川原隆司の答弁からアリアリなのだから、任命権者という点からも、「訓告」は内閣発と見なければならない。

 最初から「訓告」ありきの茶番に過ぎなかった。当然、森まさこと法務省刑事局長川原隆司の訓告処分ありきの答弁は内閣の意、実際には安倍晋三の訓告処分で手を打つ意を受けたものだった。

 5月22日の衆院厚生労働委員会で安倍晋三は検事総長が処分の決定を行ったかのように答弁している。

 立憲民主党の小川淳也が安倍晋三の黒川弘務定年延長の閣議決定に対する安倍晋三自身の責任を問い質した。

 安倍晋三「先ず処分に当たってはですね、検事総長が事案の内容を諸般の事情を考慮して適切に決定の処分を行ったものと承知をしております。それを受けて、カズサ(「司」〈ツカサ〉の間違いか)として了承したということでございます。

 黒川氏についてはですね、検察庁の業務上の必要性に基づき、検察庁を所管する・・・・」

 小川淳也「総理の任命責任を聞いています」

 安倍晋三「検察庁を所管する法務省からの閣議請議により閣議決定されるといったプロセスを経て、引き続き勤務させることにしたものであり、この勤務延長自体に問題はなかったものと考えております。黒川氏については法務省に於いて先程答弁させて頂いたように確認した事実に基づき、昨日必要な処分を行うと共に本日辞職を承認する閣議決定を行ったところです。

 法務省、検察庁の(黒川勤務延長の)人事案を最終的に内閣として(小川淳也が何か抗議)、法務省、検察庁の人事案を最終的に内閣として認めたものであり、その責任については私にあるわけでございまして、ご批判は真摯に受け止めたいと思います」

 検事長の任命権者は内閣でありながら、「検事総長が事案の内容を諸般の事情を考慮して適切に決定の処分を行った」としている。そして黒川弘務定年延長の決定も、自身の任命責任を脇に置いて、「法務省、検察庁の人事案を最終的に内閣として認めた」と主導したのは法務省と検察庁としている。

 ここには任命責任者としての確たる責任意識は見えてこないばかりか、黒川弘務の規範意識の程度に向ける意識さえ見えてこない。だから、訓告という処分が可能になった。黒川弘務に対して公正・公平・中立の立場を維持できていたなら、規範意識の欠如に目をつぶった処分などできない。

 眼をつぶることができるのは安倍晋三自身が森まさこ同様に責任意識を欠如させているからだろう。

 安倍内閣の教育再生会議は第1分科会が「学校再生分科会」、第2分科会が「規範意識・家族・地域教育再生分科会」、第3分科会が「教育再生分科会」と分けれていて、第2分科会で規範意識の育みを受け持ち、「世界トップレベルの学力と規範意識を備えた人材を育成していきます」と高らかに謳っている。

 検事長黒川弘務の規範意識を問題にせずに子どもたちの規範意識を育てようとしている。前者を問題にせずに訓告したことにウソがあるだけではなく、教育再生会議で「規範意識」を謳っていることにもウソがあることになる。

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安倍晋三の法を以って決めたことは法を以って変更すべきを法に拠らずに私利を以って決めた陰謀もどきの黒川検事長定年延長閣議決定

2020-05-11 12:36:18 | 政治
 安倍内閣は、と言うよりは、その身内贔屓の性向から言って、安倍晋三自身の何らかの私利を目的とした意向に基づいてのことに違いない、2020年2月7日退官予定だった、首相官邸に近いとされる検察ナンバー2の東京高等検察庁検事長黒川弘務(63歳)の定年を半年伸ばす閣議決定を2020年1月31日に行った。

 1947年施行の検察庁法22条「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する」

 法を以って決めたことは法を以って変更すべきを法に拠らずに内閣の長である安倍晋三の意向で左右することも可能な閣議で決めた。マスコミは検事総長に就任させる布石とも見られていると報じているが、無理はない。黒川弘務が検事総長に就任したなら、森友・加計疑惑、「桜を見る会」の公職選挙法及び政治資金規正法違反疑惑等々で訴えられたとしても、安倍晋三の私利を受けた黒川弘務の私利を以って裁判に応えることも不可能ではない。

 この2020年1月31日閣議決定に対して当時立憲民主党所属の山尾志桜里が2020年2月10日の衆議院予算委員会で早速取り上げた。

 山尾志桜里「私の手元にありますけれども、昭和56年4月18日、衆議院内閣委員会、これは当時民社党の神田厚さんという議員がこういうふうに聞いています。『定年制の導入は当然指定職にある職員にも適用されることになるのかどうか。たとえば一般職にありましては検事総長その他の検察官』、『これらについてはどういうふうにお考えになりますか』と聞いています。それに対して、斧政府委員、これは人事院の事務総局の方です。『検察官と大学教官につきましては、現在すでに定年が定められております』、『今回の定年制は適用されないことになっております』。こういうふうにもう答弁していますよ、定年制は適用されないと、この国家公務員法の。

 適用できないんじゃありませんか」

 対して法相の森まさこは次のように答弁している。

 森まさこ「ですから、先程から答弁しておりますとおり、定年制の特例が年齢と退職時期の二点、これについて特例を定めたものと理解しております」

 「先程から答弁しております」と言っていることは少し前に「昭和56年の国家公務員の(勤務延長の特例を含む定年制を導入した)法改正が60年に施行されておりますので、そのときに、(勤務延長の)制度が入ったときに勤務延長の制度が検察官にも適用されるようになったと理解しております」と答弁したことを指す。

 国家公務員法第81条の3「任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。
 2 任命権者は、前項の期限又はこの項の規定により延長された期限が到来する場合において、前項の事由が引き続き存すると認められる十分な理由があるときは、人事院の承認を得て、1年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、その期限は、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して3年を超えることができない」等々定年延長を特例として定めていて、その上、定年退職者の再任用をも認める別の条項を設けている。

 但し森まさこが昭和60年生率の国家公務員法の改正による勤務延長の特例を含む定年制導入と同時に「勤務延長の制度が検察官にも適用されるようになった」と言っていることが正しいとすると、国家公務員法と検察庁法は連動した法律ということになる。

 だから、検察庁法で勤務延長についての法改正の手続きを踏まなくても、国家公務員法でその手続を取りさえすれば、事足りたということにすることができる。

 山尾志桜里が昭和56年4月18日の衆議院内閣委員会での斧政府委員の答弁を紹介しているが、当該委員会では内閣提出の国家公務員法の一部を改正する法律案の審議を行っていた。その答弁箇所の全文を「国会会議録」から引用して載せておく。

 斧誠之助(人事院事務総局任用局長)「検察官と大学教官につきましては、現在既に定年が定められております。今回の法案では、別に法律で定められておる者を除き、こういうことになっておりますので、今回の定年制は適用されないことになっております」

 改正国家公務員法では「別に法律で定められておる者を除いている」、つまり国家公務員法と検察庁法は別建ての法律として扱っている。だが、森まさこは国家公務員法の改正当時から国家公務員法と検察庁法を連動した法律として扱っている。

 大体が国家公務員法の改正による勤務延長の特例を含む定年制導入と同時に「勤務延長の制度が検察官にも適用されるようになった」と国家公務員法と検察庁法を連動させて、検察庁法に勤務延長の特例に関わる条文を書き込む法改正を行わなくても、勤務延長の特例に関しては国家公務員法を規準にすれば事足りるとすること自体に無理がある。

 国家公務員法と検察庁法はあくまでも別建ての法律である。だが、安倍晋三以下、安倍内閣の面々は検察官と言えども一般職の国家公務員であるからと、国家公務員法の適用範囲内の扱いとして、検察官の定年延長を押し通そうとしている。

 それが同2020年2月10日衆議院予算委員会での森まさこの対山尾志桜里答弁となって現れている。

 森まさこ「検察庁法22条には、定年制を定める旨、そして定年の年齢と退職時期の二点について特例として定めたと理解をしております。

 そして、32条の2だったと思いますが、ちょっと条文の数字が間違っていたら申しわけございませんが、そちらの方に国家公務員法と検察庁法の関係が書いてあるんですけれども、もし(検察庁法に)勤務延長を規定しないということであるならば、そちらの方(検察庁法)に記載がされるべきだと思いますが、記載をされていないこと、そして、検察官が一般職の国家公務員であることから、特例が定められている以外については国家公務員法が適用されると理解しております」

 検察庁法の第22条を改めて記載する。「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63に達した時に退官する」

 但し検察庁法に勤務延長の規定がないということなら、検察庁法に記載がされるべきだが、検察庁法の32条の2によって検察庁法で「検事総長は、年齢が65年に達した時」に退官と「その他の検察官は年齢が63に達した時」に退官の「特例が定められている以外については国家公務員法が適用されると理解している」と、検察庁法の32条の2を根拠にあくまでも別建てであるはずの国家公務員法と検察庁法を連動させて、国家公務員法で検察官の勤務延長を図るべきだとしている。

 つまり国家公務員法の力で検察庁法第22条の「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63に達した時に退官する」の「特例」の時と場合の無効を認めていることになる。「特例が定められている以外については」の「以外」とは65歳と63歳の定年以外の勤務延長や再任用の規定についてはという意味となるから、検察庁法第22条のなし崩しの規定以外の何ものでもない。

 一つの法律の条文を別の法律の条文で操作する。この無理筋は安倍晋三及び安倍内閣にとっては無理筋でも何でもない、常識とすることのできる流儀を持ち前としているらしい。

 では、森まさこが検察官の定年延長の正当性根拠として掲げた検察庁法の32条の2を見てみる。
 検察庁法32条の2「この法律第15条、第18条乃至第20条及び第22条乃至第25条の規定は、国家公務員法(昭和22年法律第120号)附則第13条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基いて、同法(注・国家公務員法のこと)の特例を定めたものとする」・・・・・

 要するに検察庁法第15条、第18条乃至第20条及び第22条乃至第25条は「検察官の職務と責任の特殊性に基いて」国家公務員法の「特例を定めたものとする」

 検察庁法第15条は検察官の任免について、第18条は二級検察官の任命及び叙級等について、第20条は任命不可対象者について、第22条は例の「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する」の検察官の定年について、第25条は「第15条」と「第18条乃至第20条」と「第22条乃至第25条」の「前3条の場合を除いては、その意思に反して、その官を失い、職務を停止され、又は俸給を減額されることはない。但し、懲戒処分による場合は、この限りでない」と検察官の身分保障を謳っている。

 これらのことが「国家公務員法附則第13条の規定」によって一般法である国家公務員法の「特例を定めたもの」としている。つまり別建てとしている。

 国家公務員法附則第13條「一般職に属する職員に関し、その職務と責任の特殊性に基いて、この法律の特例を要する場合においては、別に法律又は人事院規則(人事院の所掌する事項以外の事項については、政令)を以て、これを規定することができる。但し、その特例は、この法律第一条の精神に反するものであつてはならない」・・・・

 「その職務と責任の特殊性に基いて、この法律の特例を要する場合においては、別に法律又は人事院規則(人事院の所掌する事項以外の事項については、政令)を以て、これを規定することができる」云々と「別に規定することができる」「法律」とは検察官の規定に関しては検察庁法を指しているのであって、検察庁法が国家公務員法とは“別に規定”した「法律」である以上、国家公務員法の適用範囲外であることと同時に両法律が別建てであることの証明そのものとなっている。

 この日の衆議院予算委員会に人事院給与局長である松尾恵美子は政府参考人として出席していなかったが、2日後の2020年2月12日の衆議院予算委員会に出席、2月10日の衆議院予算委員会で森まさこが山尾志桜里に「検察官が一般職の国家公務員であることから、特例が定められている以外については国家公務員法が適用されると理解しております」と答弁したことについて松尾恵美子に尋ねている。

 松尾恵美子「お答え申し上げます。

 人事院といたしましては、国家公務員法に定年制を導入した際は、議員御指摘の昭和56年4月28日の答弁のとおり、検察官については、国家公務員法の勤務延長を含む定年制は検察庁法により適用除外されていると理解していたものと認識をしております」

 要するに昭和56年に当時人事院事務総局任用局長であった斧誠之助と同じ趣旨の答弁をしている。

 後藤祐一は「やはり山尾(志桜里)さんの言っていることの方が正しいことが明確になりました」と喜んでいるが、2013年作成の「任用実務のてびき」なるものを持ち出して、「検察官については、国公法の定める定年制度の適用が除外されていると書いてある」、「それでよろしいか」などとさらに松尾恵美子に質問すると、喜んだことがいっときの糠喜びとなる。

 松尾恵美子「お答え申し上げます。

 先ほど御答弁したとおり、制定当時に際してはそういう解釈でございまして、現在までも、特にそれについて議論はございませんでしたので、同じ解釈を引き継いでいるところでございますが、他方、検察官も一般職の国家公務員でございますので、検察庁法に定められている特例以外については一般法たる国家公務員法が適用されるという関係にございます。

 従いまして、国家公務員法と検察庁法の適用関係は、検察庁法に定められている特例の解釈にかかわることでございまして、法務省において適切に整理されるべきものというふうに考えております」

 松尾恵美子が、「検察官も一般職の国家公務員だから、検察庁法に定められている特例以外については一般法たる国家公務員法が適用されるという関係にございます」と言っていることは、検察官に関しては国家公務員法の定年制は適用されないとする規定は当時のまま同じ解釈を引き継いでいるが、「検察官も一般職の国家公務員だから、検察庁法に定められている」、「検事総長65歳、他の他の検察官は63歳」の定年退官等の「特例以外」の勤務延長とか、再任用とかの規定は「一般法たる国家公務員法が適用されるという関係にある」と、連携プレーなのだろう、森まさこが山尾志桜里にしたのとそっくり同じ趣旨の答弁を返している。

 当然、「検察官も一般職の国家公務員だから」との根拠を基に国家公務員法の勤務延長とか、再任用とかの規定を検察庁法に適用した場合、「検事総長65歳、他の他の検察官は63歳」の定年退官等の特例規定は、安倍晋三が定年延長に持ち込みたい検事に限って言うと、有名無実化、無いに等しくすることができる。

 安倍晋三はこのことを狙っていた?

 安倍晋三の狙い通りにしないためには、「検察官も一般職の国家公務員だから、検察庁法に定められている特例以外については一般法たる国家公務員法が適用されるという関係にある」とする、事実を言葉の使いようで誤魔化す陰謀もどきの論理を、誰もが納得できる言葉で論破して、その非正当性を暴かなければならない。

 安倍晋三は2020年2月13日の衆院本会議で立憲民主党議員高井崇志の質問に答えて、同じ論理を披露している。

 安倍晋三「黒川東京高検検事長の任務延長等についてお尋ねがありました。先ず幹部公務員の人事については内閣府人事局による一元管理のもと、常に適材適所で行っており、内閣人事局制度を悪用し、恣意的人事を行ってきたとのご指摘は、全く当たりません(質問者の方を向いて、「全く当たりません」と言葉を強め、ゆっくりと言う)。

 検察官については昭和56年当時、国家公務員の定年制は検察庁法により適用除外されていると理解していたものと承知を致しております。他方、検察官の一般職も国家公務員であるため、今般、検察庁法に定められている特例以外については一般法たる国家の公務員法が、国家公務員法が適用されるという関係にあり、検察官の勤務延長については国家公務員法の規定が適用されると解釈されるとしたところです。

 ご指摘の黒川高等検事長の勤務延長については検察庁の業務遂行上の必要性につき、検察庁を所管する法務大臣からの閣議請議により閣議決定されたものであり、何ら問題はないものと考えております」

 だが、既に触れたように検察庁法第32条の2は「この法律第15条、第18条乃至第20条及び第22条乃至第25条の規定は、国家公務員法(昭和22年法律第120号)附則第13条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基いて、同法(注・国家公務員法のこと)の特例を定めたものとする」との条文によって検察庁法と国家公務員法とは別建ての関係にあることを示している。別建てとはそれぞれの法律は独立した関係にあるということである。

 但し「検察官も一般職の国家公務員」という立場上、検察官の任用に関して「特例を要する場合」はあくまでも国家公務員法とは「別に法律又は人事院規則(人事院の所掌する事項以外の事項については、政令)を以て、これを規定」しなければならないと、國家公務員法附則第13条は國家公務員法とは別建てであることを求めている。

 当然、黒川高等検事長の勤務延長は、検察庁の業務遂行上の必要性がどれ程に切迫していたとしても、検察庁法を改正するか、人事院規則を改正するかして、それが強行採決であったとしても一応の正当性を持たせて決めなければならないところを、安倍晋三が言っているように「検察庁を所管する法務大臣からの閣議請議により閣議決定された」とすることは法律というものの建て方から言っても、隠れてするような姑息な、陰謀もどきの非合法な定年延長そのものであろう。

 ところが、2020年2月7日に定年を迎える黒川弘務東京高検検事長を定年となる2月7日から7日を遡る2020年1月31日に滑り込みセーフの形で閣議決定という非合法な方法で、その定年延長を今年8月7日までと決めた。

 安倍政権が国家公務員の定年を段階的に65歳へ引き上げる国家公務員法や検察庁法などの改正案を閣議決定したのは2020年3月13日。これらの改正案の委員会審議が与党が強行する形で開始されたのは2020年5月8日。前以っての閣議決定は法律が成立するまでの繋ぎだったのだろう。

 但し安倍自民党一強体制から言ったら、黒川弘務が定年となる63歳を迎える前に強行採決という手を用いさえすれば、法律を成立させる力を十分に持っていたにも関わらず、そうはせずに閣議決定というワンステップを間に置いたのは、、63歳を迎えたあとに法律に取り掛かかることにした方が問題が大きくせずに済み、騒がれることも少ないと見たからかもしれない。

 この見方がゲスの勘ぐりだとしても、閣議決定が陰謀もどきの非合法な定年延長であることに変わりはない。

 検察官は公益の代表者であって、安倍晋三や安倍内閣の利益代表者ではない。だが、安倍晋三が黒川弘務定年延長に何らかの私利を見ていなければ、非合法な閣議決定で定年延長を認めるような強引なことはしない。

 マスコミが報じているように検事総長に就任させる布石であり、森友・加計疑惑、「桜を見る会」の公職選挙法及び政治資金規正法違反疑惑等々で訴えられた場合でも、安倍晋三の私利を受けて就任することになった検事総長黒川弘務が自らの私利を以って裁判に手心を加える計算からの一連の非合法な陰謀もどきの手続きであることの可能性は否定できない。
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安倍晋三の昭恵宇佐神宮参拝「事前に妻から聞いていた」は虚偽答弁 安倍昭恵の政府コロナ対策科学的合理性否定の非科学的合理性の危険性

2020-04-27 11:55:10 | 政治
 ウソつきがウソをついて、それを事実だと思わせるためには、実際には事実でないことを事実と粉飾する必要上、言わなくてもいい余分なことにまで言葉を費やすことになるが、安倍晋三も同様にウソの答弁をするとき、必要としない、言わなくてもいい余分なことにまで言葉を費やす。必要としないこと、言わなくてもいいことまで発言していることに内心は気づくのだろう、一旦口にしたウソを本当と思わせる目的を果たすまで途中でやめることができずにウソを続ける結果、慌て気味に早口になったり、発音がはっきりしなくなったり、言葉を突っかえたりの症状が現れることになる。
 2020年4月17日の衆議院厚生労働委員会での国民民主党の岡本充功と安倍晋三の安倍昭恵の大分県宇佐市の宇佐神宮参拝に関わる質疑応答でも、安倍晋三の答弁にはウソつきが自らのウソを事実だと思わせるときに見せることになる特有の症状が現れていた。

 その症状がこのように説明しているとおりなのかどうかは質疑の参考にしたYou Tube動画「安倍晋三 昭恵氏の大分参拝「事前に妻から聞いていた」4/17衆院・厚労委」から確かめて頂きたい。

 質疑応答に移る前に遣り取りの中に出てくるから、参考のために次の時系列を前以って記載しておく。

◇改正新型インフルエンザ対策特別措置法。
 成立 2020年3月13日
 公布 2020年3月13日
 施行 2020年3月14日

 安倍昭恵大分県宇佐市の宇佐神宮参拝 2020年3月15日 

 安倍晋三は安倍昭恵の神社参拝に関わる岡本充功の最初の質問に対する最初の答弁は前以って用意していたのだろう、突っかえ一つなくスムーズに答弁している。次の答弁でそのスムーズさを失って、事実性を怪しくさせていくのだが、その前後に"水平線"を入れて、区別しておく。但しスムーズな答弁だからと言って、それが常に事実に基づいているとは限らない。前以って虚偽の事実を用意しておいて、用意しておいたお陰でスムーズに答弁できるということもある。

 2020年4月17日の衆議院厚生労働委員会

 岡本充功「最期に、まあ、総理は先程大分の話をされましたけど、一点だけ確認させてください。これね、各それぞれのご家族のことですけど、私だって、仲間や家族と外でスポーツをすることはあります。しかし、まあ、『3密は避けでください』、総理自身がですね、『自身の身は守る、警戒をしてください』と言っていた翌日の、しかも特措法が改正された翌日、施行された翌日ですね、総理夫人が50人のみなさんと一緒に参拝をしていたと。大分の神社に。

 これ、総理、ご存知だったんですか。そしてまたそれについて何らか、ご存知でしたら、コメントされたんですか。どうですか」

 安倍晋三「えー、私の妻によればですね、3月15日にご指摘の大分県の神社に参拝をしたとのことでございますが、報道されている団体のツアーに参加したものではありません。参拝のみ、当該団体と合流して行ったものであります。

 この大分訪問は小池都知事が週末の外出自粛を都民に要請した3月25日より前に行ったものでございます。また、私がですね、不要不急の自粛を呼びかけたのは3月28日であったわけでございますが、また、参拝以外は特に観光等は行っていない。 

 そして参拝時に、参拝時に限って敢えてマスクを外したということでございます。勿論、参列については私が申し上げていたところでございますが、訪問中を通して感染拡大の防止には十分注意をして行動していたということでございます。

 なお、私の妻が大分県を訪問して、神社を参拝したことについては事前にその旨を聞いていたところでございますが、その際、3密についてはですね、3密とならないように心して行動して貰いたいと申し上げたところでございます」

 岡本充功「総理、ご存知のうちで総理の奥様が東京以外の府県を訪(おとず)られているケースは3月15日以降、今日(きょう)に至るまでほかにはあるんでしょうか、ないんでしょうか」

 安倍晋三「今すぐにお答えできないと思いますが、いわば外出を自粛、不要不急の外出を自粛するようにっていうことについてはですね、そういうことを申し上げて以降は、勿論、東京都から出ていることはないんだろうと思います。

 で、あの、その段階で、いわば大分を訪問した段階に於いてはですね、これは国会議員の皆さんも含めて、多くの方々も、ご、ご地元に帰っておられるんではないか、このように思います」 

 岡本充功「我々は地元に帰る。私も帰っておりますよ。それは帰るけれども、それはもう、仕事と、それから選挙区と、選挙区のニーズを聞いておくのは我々の仕事だから、それはやっています。

 ただね、今の話で大分に行くっていうと、それはちょっと違うのかな。ましてや3密のところとちょっと違ったのかな、という気は私はします。そこでですね、そこで何か寄付をしたというのは別だと思いますよ。3密の状態をつくるなと言っておきながら、やったということについてはやっぱり問題があったと。結果として3密はできちゃったということは問題があったという認識は総理はお持ちですか。

 最後にそれだけ聞いておきたいと思います」

 安倍晋三「いわば神社の参拝ということについてはですね、密閉ということについては密閉ではないわけでありまして、人が集まっている。ただ密接な、密接であったかどうかは、密接であろうと。

 人が何人か集まっているということが密接ということかもしれません。これ3密、重なってはダメなんです、いうことは私は申し上げているわけであります。

 ただ、今、フェーズは、そのときと今、フェーズは変わっていますから、そのときですね、いわば不要不急の外出ということについてはこれは今は行う、行うべきでないのは(慌て気味の、なめらかではない物言いとなっている)、当然のことであろうと、こう思います。

 ただ地方に行くという、人が地方に動くかどうかということであればですね、例えば地元に帰って、意見を聞くのであれば、例えば我が党に於いては電話に於いてですね、地元に帰らずに、えー、この、あの、地域の皆さんの意見・陳情を受けなさいと、決定しているわけでございます。

 本人が動くということ自体もですね、自粛を伸ばして頂いていると言うことでございますから、それも、是非、そういうことについても協力を頂きたいとこのように思います」

 岡本充功「時間が来ましたので、これで終わります」

 岡本充功は先ず安倍昭恵の2020年3月15日の50人の団体との神社参拝を取り上げ、対して安倍晋三は安倍昭恵の参拝は小池都知事が週末の外出自粛を都民に要請した3月25日以前、安倍晋三自身が不要不急の外出自粛を呼びかけた3月28日以前のことだと、参拝の正当性を主張。さらにマスコミが参拝時の安倍昭恵がマスクを着けていなかったと批判的に報道したことに備えて用意した答弁なのだろう、「参拝時に限って敢えてマスクを外したということでございます」と、マスクを外したのはほんの一時的なことだと、安倍昭恵の行為を免責対象としている。

 だとしたら、岡本充功は参拝時に限って敢えてマスクを外す必要があったのか、マスクを付けたまま参拝することの不都合を聞くべきだった。宇佐神宮は、〈全国に約44,000社ある八幡宮の総本社である〉(Wikipedia)ということだから、その格式の高さから、マスクを着けたまま参拝するのは失礼に当たる、畏れ多いということで外したのか、聞くべきだったろう。

 もしも格式の高さに敬意を払った、マスクを外した素顔による神との対面だとしたら、新型コロナウイルスの万が一の感染によって安倍晋三に与えかねない迷惑を想定しなければならない立場にありながら、そのような迷惑よりも神社の格式の高さをより優先させたことになる。 

 安倍晋三は安倍昭恵の神社参拝について、「私の妻が大分県を訪問して、神社を参拝したことについては事前にその旨を聞いていたところでございます」と、事前に報告があったとしている。つまり夫婦の間に何の隠し立てもないことを明らかにしたことになる。

 安倍晋三が淀みなく落ち着いて答弁したのはここまでである。岡本充功が安倍昭恵の3月15日の神社参拝からこの質疑の4月17日までの間に安倍昭恵自身が東京以外の府県を訪れた例はあるのかと尋ねると、安倍晋三の答弁の淀みなさはたちまち怪しくなる。

 安倍晋三は既に安倍昭恵の神社参拝は事前に報告があったとしているのである。つまり特別な外出については夫婦間に於いて事前報告制となっていたことの意思表明となる。もし安倍昭恵が事前報告がしたり、しなかったりの自由気儘な外出をしていたなら、その旨を明らかにしてから、宇佐神宮参拝時には例外的に事前の報告があったとしなければならない。

 そうしない以上、事前報告制となっていたとしたことになる。当然、岡本充功の問いに対する安倍晋三の答弁は事前報告によって把握できたこととして、「どこそこに出掛けのはこれとこれ」か、それ以外は事前報告がなかったから、「ほかには出掛けていない」か、あるいは事前報告が一つもなかったから、「どこへも出掛けていないはずだ」のいずれかを断定しなければならない。

 ところが、安倍晋三は東京以外の府県訪問については「今すぐにお答えできないと思いますが」と事前報告制と矛盾する物言いを頭に置き、同じ矛盾を連続させて、不要不急の外出自粛を「申し上げて以降は、勿論、東京都から出ていることはないんだろうと思います」と、断定できずに推測の領域で外出を否定している。

 明らかに宇佐神宮参拝時の事前報告との食い違いが露わになっている。この食い違いのみを以って安倍昭恵の宇佐神宮訪問を事前に知らされていたとする安倍晋三の答弁を虚偽と決めつけるわけではない。続けて安倍晋三は安倍昭恵が宇佐神宮を訪問した段階では、「国会議員の皆さんも含めて、多くの方々も、ご、ご地元に帰っておられる」と答弁している点である。

 安倍昭恵の50人の団体による参拝が小池都知事が週末の外出自粛を都民に要請した3月25日以前、安倍晋三自身が不要不急の外出自粛を呼びかけた3月28日以前のことだったとしても、同列に扱うことはできない国会議員の地元入りと安倍昭恵の外出を同列に扱って、免罪している点である。

 比較できない2つのことを比較して、正しいとするには牽強付会が必要となり、牽強付会はウソを混じえなければ、成り立たない。しかも、「ご、ご地元に帰っておられるんではないか」と、ウソつきがウソをつくときのように突っかえた物言いとなっている。

 安倍昭恵の宇佐神宮参拝が事前報告のもと行われていたとしていることが真正な事実なら、国会議員の地元入りと同列に扱う必要はどこにもなく、ほかの外出があるのかと問われて、「今すぐにお答えできないと思いますが」と曖昧に答えなければならない必要もなく、「東京都から出ていることはないんだろうと思います」と推測で応じる必要もなく、さらに言葉を突っかえる必要もない。

 曖昧に答えたり、推測で答えたのは外出はなかったと答えた場合、安倍昭恵の外出をマスコミがどこでどう嗅ぎつけないとも限らないことへの用心からの言葉遣いということなのだろう。つまり宇佐神宮参拝時にしても、事前報告はなかった。

 安倍晋三は「そのときと今、フェーズは変わっている」、「不要不急の外出は今は行うべきでない」、「自民党は地元の意見・陳情は電話で受けることになっている」等々、安倍昭恵の外出とは無関係な、言わなくてもいい余分なことにまで無駄なエネルギーを答弁に注いでいる。ウソつきが自分のウソを事実と思わせるために無駄な言葉を費やすように。最初にウソの答弁がなければ、こういった無駄なエネルギーを答弁に注ぐ必要性は生じない。

 安倍昭恵が参拝のみ参加したと言う50人の団体ツアーとは、〈「ドクタードルフィン」を自称する医師の松久正氏が主催する「神ドクター降臨 in Oita」というツアー〉だと、2020年4月21日付「時事ドットコム」記事が「文春オンライン」記事の転載として紹介している。

 記事は松久正の診療方針として、〈ドクタードルフィンの超高次元医学(診療)では、薬や手術というものを一切使いません。患者自身で問題(人生も身体も)を修復する能力を最大限に発揮させます〉と紹介、新型コロナウイルスについては、〈不安と恐怖が、ウィルスに対する愛と感謝に変わった途端、ウィルスは、目の前で、ブラックホールから、突然、喜んで、消え去ります〉とフェイスブックで述べているという。

 このフェイスブックの記述が〈どうやらこれが昭恵夫人に響いたっぽい。〉と書いているが、共感したからこそ、松久正主催の〈神ドクター降臨 in Oita〉なる団体ツアーに参加、宇佐神宮参拝と言うことに相なったのだろう。

 参拝は当然、安倍昭恵にしても、フェイスブックに書いてあることを実現させるために祈ったことになる。

 このことは松久正のサイトの「イベントについて・最重要 緊急メッセージ」の文言からも証明することができる。

 〈【ドクタードルフィンイベントについて】

昨日、コロナウィルス蔓延に対する安倍首相の大規模イベント自粛要請宣言あり、イベント開催の有無につき、ご心配されている方に、お知らせいたします。

かねてから、私ドクタードルフィンは、
マスクや隔離で回避するものではなく、目に見えないエネルギー体であるウィルスは、人間意識にてコントロールするものである、という、高次元の教えを説いております。

したがって、
イベント開催が、ウィルス感染を助長するものではなく、参加する人間の意識が創り出し、罹患するものである、という認識のもと、イベント開催は、下記の直近のものを含め、敢えて、参加者と、人類の気づきと学びのために、予定通り、実施します。〉――

 そして、〈大分 別府・宇佐 卑弥呼覚醒記念講演会&リトリートツアー〉を〈3月14日(土),15日(日)〉実施することを伝えている。

 安倍昭恵はこれに参加した。松久正が〈マスクや隔離で回避するものではなく、目に見えないエネルギー体であるウィルスは、人間意識にてコントロールするものである〉と啓示している以上、安倍晋三が岡本充功に対して「参拝時に限って敢えてマスクを外したということでございます」と答弁していることは別の意味を持ってくる。マスクをしたまま参拝したのでは、松久正の啓示に反することになる。神ドクターと名乗っているのだから、単なる教えや説ではなく、神の啓示に等しい啓示ということなのだろう。

 安倍昭恵はこういった神ドクターの啓示に心酔していた。

 但し安倍政権の新型コロナウイルス対策は感染症専門家の過去のサーズやマーズ 新型インフルエンザ、エボラ出血熱といったウイルス性の感染事例と治療経験等を科学的に分析して得た知見と、新型コロナウイルスの現時点までの感染事例と治療経験等を科学的に分析して得た知見を組み合わせた、科学的合理性に基づいた提言を元に構築したものであって、安倍政権のこの科学的合理性に対して首相夫人の安倍昭恵は安倍晋三筆頭安倍政権の科学的合理性を否定する、〈マスクや隔離で回避するものではなく〉、〈人間意識にてコントロールする〉といった非科学的合理性に基づいた新型コロナウイルス対処法で以って対峙していることになる。

 首相と首相夫人の立場にある者のこの思想の違いは滑稽であると同時に病気や医学が科学的合理性を基本としなければならない世界に於いて首相夫人という立場にある安倍昭恵のこの思想は国民の多くが科学的合理性に立っている手前、非常に危険なものに映ることになる。

 勿論、何をどう信じようとも、思想・信教の自由の範疇に入るが、事、コロナウイルスに限って政府の対応を否定する者を安倍晋三が身内に抱えているという事実だけはマスコミは伝えるべきだろう。

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