安倍晋三の一世帯2枚総額466億円布マスク配布等のマスク不足狂想曲がマスク万能の風潮を生み、感染拡大の穴となっていないか

2020-04-20 11:38:00 | 政治
 マスク・手袋着用の病院医師・看護師はなぜ病院内で新型コロナウイルスに感染するのか

 新型コロナウイルスの感染の増加が止まらない状況を受けて、安倍政権は政府は2020年4月7日に緊急事態宣言を発令した。対象地域は感染が拡大している東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の6都府県。宣言の効力は来月5月6日まで。安倍晋三は緊急事態宣言発令当日の記者会見で、「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することができれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができます」と請け合った。

 と言うのも、緊急事態宣言を発令すれば、人と人との接触機会の最低7割・極力8割削減は可能と見たからこそ、実行したはずだから、請け合ったことになる。だが、外出自粛を強力に要請していたにも関わらず、人出の削減は目標に達せず、感染者の増加は止まらなかった。

 特に最も感染者数の多い日本の首都、巨大都市東京都は4月13日の91人から4月14日には一気に100人台に突入、161人となり、4月15日には126人、4月16日には148人と4月14日の161人よりも下降したものの、4月17日には201人と200人台へと踏み込み、4月18日には181人と下降、19日には107人とさらに下降したが、かなりの人数で感染が引き続いていることに変化はない。

 勿論、潜伏期間は2週間程度とされているから、4月19日に感染が判明した107人は4月初め頃の感染と推定されることから、4月7日に緊急事態宣言発令前の感染ということも考えることができるが、2020年2月25日の政府の新型コロナウイルス感染症対策本部で決定した「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」では人の密集を感染拡大リスクとしていながら、あくまでも外出自粛は感染が疑われる場合に限定した措置で、外出自粛を広く国民に求める前以っての予防措置は2月25日の時点では行っていなかった。

 なぜなら、都道府県知事が外出自粛を求めることができるのは2020年3月13日成立の改正新型インフルエンザ対策特別措置法によって総理大臣が「緊急事態宣言」発令後と規定しているからなのは勿論のことである。
 2月25日の「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」は具体的には次のように触れている。

〈風邪症状があれば、外出を控えていただき、やむを得ず、外出される場合にはマスクを着用していただくよう、お願いする。

 2. 新型コロナウイルス感染症について現時点で把握している事実
 ・ 一般的な状況における感染経路は飛沫感染、 接触感染であり、 空気感染は起きていないと考えられる。
   閉鎖空間において近距離で多くの人と会話する等の一定の環境下であれば、咳やくしゃみ等がなくても感染を拡大させるリスクがある。
 ・感染力は事例によって様々である。一部に、特定の人から多くの人に感染が拡大したと疑われる事例がある。一方で、 多くの事例では感染者は周囲の人にほとん  
  ど感染させていない。〉

 そして、〈手洗い、咳エチケット等の一般感染対策の徹底〉等々を呼びかけている。

 要するにマスクで飛沫感染を防ぎ、手洗いの徹底で接触感染を防ぐよう呼びかけた。マスクと手洗いは感染防止の両輪でなければならないが、手袋着用の必要性には一言も触れていない。手袋着用は手への直接的なウイルス付着を防ぎ、手洗いをより確実にするはずだが、その必要性はないようにさえ見える。

 但し手袋を着用したからと言って、絶対に感染しないというわけではない。このことはマスク着用にしても同じことで、マスクや手袋にウイルスが付着した場合、そのどちらを外すときに付着箇所を不用意に素手で触れてしまったなら、感染防止の役目を失う。

 もしからしたら、ウイルスを手袋に付着させるよりも素手に直接付着させた方が水で簡単に流すことができるから、却って始末がいいと考えているのかもしれない。だが、ウイルスを手に付着させて、手洗いする前にその手でスマホを触ったり、財布から紙幣や硬貨を出した場合、後で手洗いをしても、再度手に触れたスマホから感染しない保証はないし、手に触れた紙幣や硬貨が回り回って他人の手に触れさせた場合にしても、その他人がウイルスに感染しない保証もない。

 安倍政権はこの『基本方針』決定翌日の2月26日にスポーツや文化イベント等の開催についての要請を行っている。

 「イベントの開催に関する国民の皆様へのメッセージ」(厚労省)

 〈2020年2月26日(安倍総理)

 政府といたしましては、この1、2週間が感染拡大防止に極めて重要であることを踏まえ、多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベント等については、大規模な感染リスクがあることを勘案し、今後2週間は、中止、延期又は規模縮小等の対応を要請することといたします。〉・・・・・

 あくまでも人の密集を回避させ、例え外出することがあっても、マスク着用を併用させることで感染防止の方策としている。但しこのメッセージは欠陥があることは人が集まるのは何も「全国的なスポーツや文化イベント等」に限ったことではないことによって明らかである。

 感染拡大を極力抑えるには国民の側からの外出自粛によって人が集まらない状況をつくることが必要不可欠だが、感染者数が一進一退しながらも増加傾向にあったことを放置したことは外出自粛を可能とする「緊急事態宣言」の発令が遅かったことになる。

 2020年3月9日の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の「新型コロナウイルス感染症対策の見解」が人の密集の感染リスクについて触れている。

 〈6. みなさまにお願いしたいこと
 これまでに明らかになったデータから、 集団感染しやすい場所や場面を避けるという行動によって、 急速な感染拡大を防げる可能性が、 より確実な知見となってきました。

 これまで集団感染が確認された場に共通するのは、
 ①換気の悪い密閉空間であった、
 ②多くの人が密集していた、
 ③近距離 (互いに手を伸ばしたら届く距離) での会話や発声が行われたという3つの条件が同時に重なった場です。

 こうした場ではより多くの人が感染していたと考えられます。そのため、市民のみなさまは、これらの3つの条件ができるだけ同時に揃う場所や場面を予測し、避ける行動をとってください。〉

 要するにマスク着用と手洗いに加えて、人の密集の回避を感染予防策とした。

 そして安倍晋三は2020年3月28日の首相官邸での「記者会見」で、冒頭発言ではマスクの着用にも、手洗いにも触れずに、〈集団による感染のリスクを下げるため、いわゆる3つの条件をできるだけ避ける行動を改めてお願いいたします。第1に、換気の悪い密閉空間。第2に、人が密集している場所。そして第3に、近距離での密接な会話。密閉、密集、密接。この3つの密を避ける行動をお願いします。〉と、感染予防策として外出自粛ではなく、国民の側からの人の密集の回避のみをお願いしている。

 質疑に入って、記者からマスク不足を問われて、安倍晋三は次のように回答している。

 安倍晋三「まず、マスクについては、御承知のように8割近く中国に生産を依存していた中において、我々、国内で新たにマスクを作ってくれる、いろいろなところ、気持ちがある企業にお願いしながら、助成金を出して、補助金を出して、やってもらっています。例えばシャープなんかも、こんなマスクを作るということは全く関係なかった企業でありますが、シャープが彼らは本格的に作る。そういう努力もして、今月は6億枚を超える規模で供給し、これは平年の需要を上回る供給量を確保しています。また、来月は、更なる生産の増強及び輸入の増加によって、7億枚を超える供給を行います。

 しかし、現下の感染症の影響によって例年を大幅に上回るマスク需要が発生しているため、供給が追い付かずに、国民の皆様に大変な御不便をおかけしているのは事実であります。次の経済対策も活用して、更なる生産の増強に引き続き取り組み、必要の高い施設についてはしっかりと供給を確保していきます。

 全国の医療機関に対しては、1,500万枚以上の医療用マスクを確保しました。既に北海道など17都府県の医療機関に200万枚を超えるマスクを配布済みでありまして、来週までには全ての都道府県に行き渡らせます。さらに、今後も必要となることから、4月中には追加で1,500万枚を確保して、配布します。また、介護施設、高齢者施設向けには布製のマスクを配布する方針でありまして、既に愛知県内の施設には15万枚が到着済みでありまして、来週半ばまでには2,000万枚以上の確保を完了し、全国50万か所の施設に、施設職員及び利用者に順次、必要な枚数を配布します。

 これに加えまして、全国の小中高、これは再開するということを踏まえているのですが、向けに、1,100万枚、ざっと計算しますと小中高生が900万人でありますからそれを上回る、教職員等も含めて1,100万枚の布製のマスクを今後、確保して、4月中を目途に配布をします。御承知のように、この布製のマスクは洗剤で洗えばもう一度使っていくことができます。ですから、使い捨てではなくて、この1回のマスクを何回も使えることができるということでありますので、急激に拡大している需要に対応する鍵となると考えています。

 そして、4月中には1億枚を超える布製のマスクの生産が見込まれておりまして、感染拡大防止の観点から、必要な皆さんに幅広く配布をしていきたいと考えています」・・・・

 「更なる生産の増強及び輸入の増加によって、7億枚を超える供給を行います」と確約した上で、「全国の医療機関に対しては、1,500万枚以上の医療用マスクを確保した」、「北海道など17都府県の医療機関に200万枚を超えるマスクを配布済み」、「来週までには全ての都道府県に行き渡らせる」、「4月中には追加で1,500万枚を確保し、配布する」、「介護施設、高齢者施設向けには布製のマスクを配布する方針だ」、「既に愛知県内の施設には15万枚が到着済みである」、「来週半ばまでには2,000万枚以上の確保を完了し、全国50万か所の施設に施設職員及び利用者に順次、必要な枚数を配布する」、再開した場合の「全国の小中高に教職員等も含めて1,100万枚の布製のマスクを確保して、4月中を目途に配布する」等々の対応を約束している。

 だが、これらの発言を裏返すと、相当量のマスク不足を来していることを物語っていることになる。東京では2月初旬からマスクが入手しにくくなったそうだが、「8割近く中国に生産を依存」する状況下で中国での新型コロナウイルス感染拡大に伴って生じたマスク不足による日本への輸入にまで回らない事態が、花粉症シーズンを迎えるということもあったのだろう、日本で急激なマスク需要を呼び込んだ結果のマスク不足ということらしい。

 同時にこれらの発言は、約束の多さから見ても、このマスク不足に対して安倍政権が、あるいは安倍晋三自身が懸命に対応しようとしている姿が否応もなしに浮かび上がらせる。この懸命さは政府対応のまずさ、あるいは遅さを批判されたくない思いの現れでもあろう。

 そしてこの懸命さの究極の姿が全世帯への2枚宛て布マスクの配布であろう。2020年度補正予算で233億円、20年度当初予算で233億円、合計466億円も充てている。

 但し安倍政権のこのようなマスク不足への懸命な対応はマスクの必要性をクローズアップさせるものの、却って手袋の必要性や手洗いの必要性を限りなく小さくしてしまった可能性はないだろううか。

 新型コロナウイルスの感染防止策として接触感染には手洗い、飛沫感染にはマスクだとしていながら、それを両輪とするのではなく、マスクの必要性のみのクローズアップさせた場合、マスクをしていさえすれば、大丈夫だというマスク万能の風潮を煽ることにならないだろうか。

 なぜこのような心配をするのかと言うと、2020年2月5日付「人民網日本語版」記事に遡る。記事は2月3日午後9時からの湖北省の中央指導チーム医療治療特別記者会見の内容を伝えている。出席者は国家衛生健康委員会専門家チームメンバーを務める中国工程院院士で天津中医薬大学学長の張伯礼氏、国家衛生健康委員会専門家チームメンバーを務める東南大学附属中大病院副院長の邱海波氏、国家衛生健康委員会専門家チームメンバーを務める北京地壇病院感染二科主任医師の蒋栄猛氏の顔触れ。

 蒋氏「ウイルスは飛沫と接触により広がる。飛沫は通常、くしゃみやせきにより生じる。空気中における飛散距離は非常に限定的で、およそ1−2メートルだ。飛沫は人体から出るとすぐに沈み、空気中を漂うことはない。つまり空気中にウイルスは存在せず、ウイルスが空気中でどの程度生存するかという問題も存在しない」

 解説、〈飛沫は周辺の物体の表面に付着する。手を触れることでウイルスが付着し、さらにその手が触れる物体の表面、例えばドアの取手、エレベーターのボタンなど滑らかな物体の表面などでは、数時間生存するとの研究結果が出ている。

 温度と湿度が適度であれば、数日生存する可能性がある。例えば摂氏20度で湿度が40−50%であれば、ウイルスは5日生存するとの研究結果がある。これに基づけば、ある人がくしゃみをする時に手などで遮らない場合、ウイルスはドアの取手やエレベーターのボタンを汚染することになる。もし次の人が手を洗わず、接触した後に目や鼻をこすった場合、ウイルスは接触により広がってしまう。そのためこまめに手を洗うことが特に重要だ。〉・・・・・・

 〈ウイルスは5日生存するとの研究結果がある。〉、当然、5日前後の生存日数を危機管理の基本としなければならない。

 但し2020年2月13日付「Sputnik日本」は、〈コロナウイルスの物体表面での生存期間が明らかに〉と題して、〈室温で金属、ガラス、プラスチックなどの表面に最大9日間生存することが可能であることが示された。〉と伝えている。

 とは言え、〈研究者らは「現在のところ、ウイルスが存在する表面または物体に触れた後、自分の口、鼻、または目に触ることでCOVID-19(新型コロナウイルス)がヒトへうつるかどうかさえわからない」と指摘している。〉としている点が前出の「人民網日本語版」と違う点だが、現在では接触感染することが広く認められている。

 生存日数が5日前後、あるいは最大9日間のどちらが正しいのかわからないが、危機管理はより多い日数に対応しなければならない。

 ここでこのブログ冒頭で触れた、〈マスク・手袋着用の病院医師・看護師はなぜ新型コロナウイルスに感染するのか〉の疑問に戻る。

 老人施設での介護士等の施設職員から入所者への感染、入所者から介護士等の施設職員への感染、その集団感染は例えマスクや手袋を着用していたとしても、医者程注意深くないからで片付けることができるが、では、注意深いと見られる医師・看護師はなぜ感染を許してしまうのだろう。

 これは何も日本だけの問題ではなく、海外でも同じ事例が多発している。
 参考になる「NHK NEWS WEB」記事がある。集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号に横浜検疫所から派遣されて検疫業務に当たっていた男性検疫官が2020年2月9日に発熱、翌10日に医療機関を受診、ウイルス検査の結果、陽性と確認された。検疫官は医療用のマスクや手袋を着用していたが、防護服やゴーグルなどは着用していなかった。

 この点について厚生労働省はWHO(世界保健機関)の指針に基づく対応だとした。つまり防護服やゴーグルなどの着用までは必要としていなかったことになる。

 記事は感染症対策に詳しい厚生労働省仙台検疫所元所長の岩崎恵美子医師の発言を解説として伝えている。

 〈岩崎医師は手袋を取り外した際に、ウイルスが付着して感染したのではないかと見ています。〉

 手袋を外す場合、片方の手袋を外してから、素手となった手で残った方の手袋を外すのが一般的な外し方となっている。だが、油仕事などをする際は手に染み込まないようにするためにゴム手袋をするが、手袋には油がベッタリと付着する。それを外す際に手に付着しないようにするためには片方を全部外すのではなく、手袋をしたままの片方の手でもう片方の手袋の指先を引っ張って、普段は手首に当たる部分を指に残したままの状態にしておいてから、その残した部分でもう片方の手袋を同じように指先を引っ張って外して、最後に手袋が僅かに残った方の手を遠心力を利用するように振れば、素手に触れずに手袋を外すことができる。

 検疫官のウイルス感染がウイルスの付着した手袋を素手で触れたことが原因だとしたら、手袋の外し方が間違っていたことになる。

 もう一つNHK NEWS WEB記事を参考にすると、2020年4月15日の時点で医師と患者合わせて7人の院内感染が発生した金沢市の病院の幹部職員がNHKの取材に応じて、「手洗いやマスクなど院内感染の対策を取っていたが、ドアのカギといったみんなが手にする病院の備品までを毎日、消毒することなどが徹底されていなかった」と答えたと言う。

 例えドアのカギに何らかの方法でウイルスが伝わることになったとしても、医師が患者の前に出る際はマスクと手袋をしているはずだから、患者にまで感染することはないはずだが、ドアのカギから最終的に診察衣にウイルスが付着して、診察衣から患者に感染したのだろうか。病院内の感染が止まらないのはマスク着用・手袋着用であっても、どこかに手落ちがあるのだろう。

 これまで何らかの施設内で感染者が出た場合、出てから、施設内を専門業者が消毒しているが、出ないうちは消毒は行ったという例はお目にかかっていない。家庭に於いても同じはずだ。

 果たしてマスクの着用と手洗いの励行だけでウイルスを排除できるのだろうか。既にウイルスを手に付着させて、手洗いする前にその手でスマホを触ったり、財布から紙幣や硬貨を出した場合、後で手洗いをしても、再度手に触れたスマホから感染しない保証はないし、手に触れた紙幣や硬貨が回り回って他人の手に触れさせた場合にしても、その他人がウイルスに感染しない保証もない危険性に触れているが、例えばどこかに食事なり、飲みに行くとする。飲食店に入る際は備え付けの消毒液で手を消毒し、出る際もきちんきちんと消毒をする。だが、飲食の間、スマホを手に取る機会がなかった客は幸いだが、もし使うことになった場合、カウンターが既にウイルスに汚れていたなら、スマホにウイルスを移さないとも限らない。そして生存期間は最大9日間ではなく、5日前後としたとしても、感染の危険性は低くはない。

 スマホを使う機会がなかったとしても、勘定を払う際に服のポケットから財布を出す。店の出入りの際に手を消毒したとしても、カウンターなりにウイルスが付着していて、手で触れて、財布を使う際に財布にウイルスを移していたとしたら、財布を消毒しない限り、店の出入りの際の消毒は無意味となる。

 スマホを使っていたなら、カウンターがウイルスで汚れていた場合を用心して、スマホも消毒しなければ、手洗いの励行は意味を失う。つまり、手洗いも絶対ではない。マスク着用も手袋着用も絶対ではない。マスクと手袋の正しい着脱方法はネットでかなりの量で紹介されている。それでも病院内感染が止まらないということは医師や看護師でさえ、正しい着脱をしていないことになる。

 4月19日日曜日の公園はかなりの人出があったと言う。家に閉じこもっていなければならなかったことの反動だろうが、ニュースを見ていると、殆どがマスクをしているものの手袋はしていない。公園を出る際に手洗いするのだろうが、夜のNHKニュースで、遊具を触った手で子どもがそのまま口を触ることを感染リスクに上げて、親が注意して子どもを見ている必要があると言っていたが、目を離した隙きに口に触ってしまったということがあったとしたら、公園を出る際の手洗いは無意味となる。

 子どもでも手袋をさせていたなら、手袋をしたままの指や手で口に触れる機会を極力抑えることができるのではないだろうか。注意していながら、感染してしまうということはこういったほんの小さな手落ちからだろう。

 安倍晋三の一世帯2枚総額466億円布マスク配布も含めて、さながらマスク不足の狂想曲を呈している状況がマスクをしていさえすれば、感染を防げるという安易な気持を誘い、マスクの着脱や手袋着脱の注意点を怠らせたり、手袋着用の効用等を蔑ろにさせて感染拡大の穴となってなっていないだろうか。
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安倍晋三は「強大な経済対策の実行」、「日本経済のV字回復」などと出来もしない言葉を口先だけで弄ぶな

2020-04-06 11:36:29 | 政治
 2020年2月17日財務省発表の2019年10月から12月のGDP=国内総生産は大幅なマイナスに転じ、2020年3月17日公表の民間エコノミスト分析の2020年1月~3月までのGDP伸び率予測では物価変動除外の実質は年率換算でマイナス2.89%という数字が提示された。

 このマイナス2.89%は消費税率引き上げの影響で5期ぶりにマイナスとなった去年10月~12月をさらに下回っていて、予測どおりだと、2期連続のマイナスになるという。

 2018年初頭から始まった米国の中国製品に対する追加関税措置とそれに対する中国の米製品に対する報復関税措置の米中貿易摩擦が2018年末頃から日本の産業界に影響が出初めて、2018年、2019年の自然災害による経済活動停滞、2019年10月1日からの消費税増税の影響、さらに、〈2019年11月に中国湖北省武漢市で発生が確認され、同年12月31日に最初に世界保健機関 (WHO) に報告された〉(「Wikipedia」)新型コロナウイルス感染症の世界的流行等が日本経済を縮小させる要因となった。

 2020年3月27日に2020年度予算が成立。日本の首相安倍晋三は翌3月28日夕方6時から首相官邸で新型コロナ対応や追加の経済対策について「記者会見」を開いた。

 安倍晋三「これまでになく厳しい状況に陥っている現下の経済情勢に対しても、思い切った手を打ってまいります。昨日、来年度予算が成立しました。これによって、医療や介護など社会保障の充実、高等教育の無償化など、予算を切れ目なく新年度から執行することができます。加えて、この後、政府対策本部を開催し、緊急経済対策の策定を指示いたします。リーマン・ショック以来の異例のことではありますが、来年度予算の補正予算を編成し、できるだけ早期に国会に提出いたします。国税・地方税の減免、金融措置も含め、あらゆる政策を総動員して、かつてない強大な政策パッケージを練り上げ、実行に移す考えです」

 「あらゆる政策を総動員して、かつてない強大な政策パッケージを練り上げ、実行に移す考えです」・・・・

 安倍晋三「感染の拡大が抑制され、社会的な不安が払拭された段階では、一気に日本経済をV字回復させていく。全国津々浦々、皆さんの笑顔を取り戻すため、旅行、運輸、外食、イベントなどについて、短期集中で大胆な需要喚起策を講じるなど、力強い再生を支援する考えです」

 「感染の拡大が抑制され、社会的な不安が払拭された段階では、一気に日本経済をV字回復させていく」・・・・・

 マスコミ記者との質疑応答でも、「強大な政策」を言い、「V字回復」を確約している・

 安倍晋三「先ず、昨日、来年度予算が成立しました。先ずはこの中の26兆円の事業規模の経済対策を一日も早く執行していきたいと考えています。そして、景気を下支えしていきます。その上で、日本経済全体にわたって極めて甚大な影響が生じていますが、そのマグニチュードに見合っただけの強大な政策を、財政、金融、税制を総動員して実行していく考えであります」

 「マグニチュードに見合っただけの強大な政策を、財政、金融、税制を総動員して実行していく考えであります」・・・・・

 日本経済の地盤沈下の程度を地震の規模を示す「マグニチュード」という言葉で譬えている。

 安倍晋三「感染の拡大が抑制された段階において、旅行や運輸、外食、イベントなど、大変な影響を受けている方々に対して、短期集中で大胆な需要喚起策を講じていきたい。そして、正に全国津々浦々、また笑顔が戻ってくるように、V字回復を目指していきたいと考えています」

 「感染の拡大が抑制された段階において」、「大胆な需要喚起策を講じ」、「正に全国津々浦々、また笑顔が戻ってくるように、V字回復を目指していきたいと考えています」・・・・

 この「V字回復」、冒頭発言では「一気に日本経済をV字回復させていく」と言い切っているのに対して質疑では、「V字回復を目指していきたいと考えています」とかなりトーンを下げている。とは言うものの、「V字回復」を将来の目標に据えた。

 勇ましい言葉、聞こえのいい言葉が信用されるのも、信用されないのも、過去の実績が物を言うことになる。過去の実績が有言実行性、あるいは有言不実行性のいずれかを占う。

 当然、安倍晋三が日本経済を「V字回復」に持っていく第一番の動機として「正に全国津々浦々、また笑顔が戻ってくるように」と、そこに願いを置いている以上、過去、アベノミクスによって国民に「笑顔」を与えていなければならない、当然の理屈となる。

 第2次安倍政権発足以来、アベノミクスによって国民に笑顔を与えることができたが、米中貿易摩擦、自然災害、消費税増税、新型コロナウイルス感染症の世界的流行等々によって日本経済が逼迫し、国民から笑顔が消えてしまった。その笑顔を再びのアベノミクスによって取り戻してやろうじゃないか。そうミエを切ったことになる。さすが、安倍晋三。

 国民から笑顔を奪った大きな要因の一つを米中貿易摩擦に置いたとしても、このことが日本の経済に影響を与え始めたのは2018年末頃からであり、もう一つの大きな要因となっている新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって日経平均株価が大きく下落したのは2020年1月末からである。

 つまり2013年初めから2018年末までのアベノミクス6年間に関しては米中貿易摩擦にしても、新型コロナウイルスにしても、国民から笑顔を奪う要因とはなっていないことになる。

 2018年、2019年の自然災害にしても、アベノミクスの2013年から2020年までの8年間の予算で「公共事業関係費」は毎年7兆から8兆円規模を組み、この全てを防災・減災に回しているわけではないが、防災・減災に注力していたのは事実であるし、この内の「治山治水対策予算」は6年間合計で7兆円、「災害復旧費等」の予算は同じく2013年から2020年までの8年間合計で4兆4千億円近くを注ぎ込んでいる(2019年と2020年は決算額ではなくて、当初予算額)。

 当然、自然災害に対する経済損失を公共事業によってそれなりにカバーしてきているはずで、公共事業費1兆円はGDP1兆円の押上効果があるとされていて、GDPに対しても貢献しているはずで、自然災害をアベノミクスの好循環を阻害する要因とする正当性はない。阻害要因として正当づけるとしたら、安倍晋三だけではなく、安倍内閣、自民党、公明党共々に「防災だ、減災だ」と大騒ぎしている割に公共事業に注ぎ込んでいるカネ相応に経済効果を引き出していないことになって、公共事業政策自体にどこか欠陥があることになる。

 東日本大震災の被災地に於いて今以て引きずっている芳しくない経済状況はいくら公共事業にカネを注ぎ込んでも、人を戻す政策を欠いていることが原因となっている現状であるはずだ。東京圏一極集中が加速している昨今の状況にあって、余程の強力な人口回復策がなければ、東北に人を戻すことはできない。だが、安倍晋三は口先だけで終わらせている。

 2012年12月26日の首相就任記者会見。

 安倍晋三「閣僚全員が復興大臣であるという意識を共有し、あらゆる政策を総動員してまいります。これにより、単なる最低限の生活再建にとどまらず、創造と可能性の地としての新しい東北をつくり上げてまいります」 

 NHKが2019年12月から2020年1月にかけて岩手・宮城・福島の被災者や原発事故の避難者など4000人余りを対象にアンケート(有効回答数48%の1965人)を行った結果、今も被災者だと感じている人が有効回答の62%(1218人)にも上ったという。

 〈阪神・淡路大震災から10年で専門家が行った同様の調査では、兵庫で被災者と意識していた人は25%で、岩手・宮城・福島と比べおよそ2.5倍の開きがある。〉と解説している。

 今も被災者だと感じている人のうち、「地域経済が震災の影響を脱した」と回答した人が4%に過ぎなかった。〈経済的な復興の実感が乏しい人ほど今も被災者だと感じている割合が高くなっている。〉と解説しているが、安倍晋三が「最低限の生活再建にとどまらす」と言っている「最低限の生活再建」さえままならない被災者の姿が浮き彫りになる。

 被災3県共に人口減少に悩んでいる。「創造と可能性の地としての新しい東北」は言葉だけのことで、どこにも見えてこない。2018年10月24日の所信表明演説でも同じことを言っている。

 「東北の復興なくして、日本の再生なし。この決意の下に、『創造と可能性の地』としての東北を創り上げてまいります」

 安倍晋三の立派な言葉に反する被災地の現状は復興事業とそのカネを生かしきれていない状況しか浮かんでこない。自然災害に対してそれなりのカネを注ぎ込んでいるのだから、アベノミクスの阻害要因とすることも、国民から笑顔を奪った憎き仇とすることもできないはずで、満足とは言えない復興状況は自らの政策推進能力の欠如に原因を置かなければならないはずだ。

 では、消費税の2014年4月1日から5%から8%への、2019年10月1日から8%から10%への増税がアベノミクス好循環の阻害要因の一つとすることができるのだろうか。

 2014年11月18日安倍晋三解散記者会見。2014年4月1日から5%から8%へ増税した消費税は2015年10月1日に10%への増税が決まっていた。

 安倍晋三「本日、私は、消費税10%への引き上げを法定どおり来年10月には行わず、18カ月延期すべきであるとの結論に至りました
   ・・・・・・・・・・
 来年(2015年)10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年(2017年)4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします。3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる。私はそう決意しています」――

 再引き上げはない。その理由を「3年間、3本の矢をさらに前に進めることにより、必ずやその経済状況をつくり出すことができる」

 2014年4月1日の5%から8%への増税も前以って分かっていたことで、そのための景気対策を打っていたはずだが、その対策の効果もなく、増税によって経済の維持にブレーキがかかった。当然、その時点から同じ轍を踏まないために2015年10月1日の10%増税に向けて新たな景気対策を構築、3本の矢をさらに前進させて、増税可能な経済状況をつくり出さなければならなかった。

 にも関わらず、アベノミクス経済政策を阻害する、これといった国外的・国内的要因がないままに2014年11月18日に至って増税延期を決定することになったのは、アベノミクスに力強いエンジンを備え付けることができなかったからに他ならない。

 ところが、2014年11月18日の記者会見で「来年(2015年)10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない」と確約した力強い言葉をあっさりと反故にし、2017年4月1日引き上げ予定を、2016年6月1日の記者会見でさらに30カ月延期することを公表、2019年10月1日に増税の着地点を持っていくことになった。

 消費税増税を再延期しなければならない程にアベノミクスが脆弱でありながら、2015年9月24日の記者会見で「アベノミクスは第2ステージに移る」と宣言、2020年に向けた経済成長のエンジンと位置づけた新たな「3本の矢」を発表までしている。

(1)希望を生み出す強い経済
(2)夢を紡ぐ子育て支援
(3)安心につながる社会保障

 ワンパターンのギャグで売っていたお笑い芸人がフアンのそのギャクへの食いつきが悪くなると、食いつきのいい新しいギャグを考え出そうと四苦八苦するものだが、食いつきだけを狙ったのだろう。

 以下、説明することがその証明となる。

 消費税増税再延期の理由を「中国など新興国経済に『陰り』が見える」こと。「リーマンショックの時に匹敵するレベルで原油などの商品価格が下落していること」、こういったことで「投資が落ち込み、新興国や途上国の経済が大きく傷ついる」ことを挙げたが、一方で、「正規雇用は昨年、8年ぶりに増加に転じ、26万人増えた」、「この春の高校生の就職率は24年ぶりの高さとなった」、「大学生の就職率は過去最高だ」、「政権交代前から中小企業の倒産も3割減少している」、「中小企業も含めて、一昨年、昨年に続き、今年の春も3年連続で今世紀に入って最も高い水準の賃上げを実現することができた」とアベノミクスの成果を次々と謳い上げているが、これらの成果が消費税再増税で潰え去ってしまう恐れを抱かざるを得ない程にアベノミクスは力強くなかったことになる。

 増税再延期を決めるに当たって2019年10月1日の10%増税に向けてアベノミクスの3本の矢をさらにさらに前進させて、増税可能な経済状況をつくり出さなければならなかった。しかし10%増税が、食料品は軽減税率を設けて8%のまま維持していながら、景気の足を引っ張ることになった。アベノミクス3本の矢だけではなく、新3本の矢も国民に安心も笑顔も与えることができなかった。

 要するに2014年4月1日の5%から8%への消費税増税も、2019年10月1日の8%から10%への消費税増税も国民から笑顔を奪ったアベノミクス好循環の阻害要因の一つとすることができないということになる。

 もともと、アベノミクス経済下で国民は笑顔など作っていなかった。笑顔を作っていたのは、株高と円安で潤った大企業や高額所得者だけであった。このことは「アベノミクス失敗の原因は伸びない個人消費、迫られる選択肢は2つ」(ダイアモンドオンライン/ 2020/03/24 06:00)なる記事が証明してくれる。

 要約すると、アベノミクスは2%の実質経済成長率を目指していたのに対して7年間の累積で実質GDPは6.4%増加した。

 要するに見事な成果と言うことができる。但し記事は、〈設備投資は15.5%増加したのに対し、個人消費は0.4%しか増加していない。〉と断じている。

 企業は、特に大企業はと言うことなのだろう、15.5%も設備投資を増加できる資金を有していたが、アベノミクス7年間で個人消費は0.4%の増加のみ。

 この両者間の関係構図は格差の状況以外に何も映し出していない。特に大企業は史上最高の450兆円前後の内部留保を溜め込んだ。金融・保険業を加えると、日本のGDPに相当する500兆円を超えていると言う。だが、企業のそういった史上最高の利益は給与の形で社員に、広く言うと国民に十分に再分配されることがなかった。その結果が個人消費が高々の0.4%の増加と言うことになる。

 2008年平均給与(男女共) 429万6千円
 2018年平均給与(男女共) 440万7千円
 伸び率           2.6%

 アベノミクスが始まった2013年の男女合わせた平均給与は413万6千円で、男女合わせた2008年の平均給与429万6千円から年々減り続けていって、16万円も低くなったところからアベノミクスは始まっていることになるから、一見すると、給与が増えたように見えるが、長年働いている一般的な給与所得者からしたら、目減り分を取り戻しているような感覚になって、余程の給与所得者でなければ、思い切った消費行動に出ることができないといったことも、個人消費が伸びない要因の一つのなっている可能性がある。

 アベノミクス景気は戦後最長の景気期間を迎えた。一方で、大企業や高額所得者の側に立たない限り、大方の見方として、実感なき景気と言われている。当然、安倍晋三が様々な経済指標を駆使してアベノミクスの成果を如何に誇ろうと、国民はその実感のなさに笑顔を見せるどころではない状況に置かれていたことになる。

 いわば国民は安倍晋三のアベノミクスの景気政策下では最初から笑顔をつくるどころではなかった。終始笑顔でいることができたのは日銀の異次元の金融政策の恩恵として出現することになった株高と円安で懐を潤すことができた企業、特に大企業と高額所得者ぐらいだろう。

 当然、見栄えのしない過去との比較で評価できないという意味で「過去が過去だから」と一蹴せざるを得ないのと同じようにアベノミクスの過去の実績から言うと、安倍晋三がいくら勇ましく「強大な政策パッケージを練り上げ、実行に移す考えです」と言おうが、吠えようが、あるいは「V字回復」を実行可能であるかのように見せようが見せまいが、出来もしない言葉を口先だけで弄んでいるとバッサリと切り捨てる以外にない。

 「V字回復」の目的の一つに「全国津々浦々、また笑顔が戻ってくる」ことを挙げたとしても、大方の一般国民はアベノミクスに最初から「笑顔」など見せていなかったのかだから、これも出来もしない言葉を口先だけで弄んでいるに過ぎないとしか言い様がない。

 安倍晋三は自分が口にすることは全て現実の形にすることができるかのように広言する傲慢なところがあるが、自分で自分を偉大な存在だと思い込んでいる自己愛性パーソナリティ障害がそうさせているのであって、そろそろ自分の実力に気づくべきだろう。

 アベノミクスは中国とアメリカの好況の恩恵を受けて成り立っていただけのことで、米中貿易摩擦と新型コロナウイルスの世界的感染でその両恩恵が怪しくなると、アベノミクス自体も傾きかけてきた。結果、一般国民にはただでさえ芳しくない生活実感がなおのこと芳しくない状況に追いやられることになった。
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安倍晋三の東京五輪1年程度延期はアスリートファーストで決めたことか、自らの任期内開催を優先させた自己利害の自己都合なのか

2020-03-30 11:03:08 | 政治
 2020年東京オリンピック・パラリンピックの延期を余儀なくさせた原因は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大であることは誰もが承知しているはずである。当然、延期の期間は世界的な感染拡大の終息の時期か、終息に近い時期を予測して判断しなければならない。

 このことも誰もが承知しているはずであり、誰もが承知していなければならない。1年後にオリンピックを開催しても、世界的な感染がやまなければ、延期が無駄となって、開催が困難となり、さらに延期するか、あるいは中止するか、改めて決めなければならなくなる。

 つまり3月24日夜の安倍晋三とIOCトーマス・バッハ会長との間の電話会談で1年程度の延期を決めたということは来年の夏には新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が終息しているか、終息とまでいかなくても、一定程度以上に収まっていて、どの国でも人の移動が制限を受けることなく自由に行われていることを予測してのこととなる。人の移動の自由はアスリートたちの練習の自由を保障する。

 人の移動の制限の解除は世界中どこでも、オリンピックが延期開催される時期よりも何ヶ月も前でなければ、アスリートたちは本番で最高のパフォーマンスを目指すための前以ってのトレーニングを困難とするか、不可能とすることになる。オリンピック・パラリンピックがスポーツに於ける世界の祭典である以上、主催国日本のアスリートだけが十分にトレーニングできればいいということにはならない。

 また、終息か、終息に近い状況を迎えることができてこそ、オリ・パラの開催を安倍晋三が自らの発言を勇ましく見せる効果的な言葉の一つとして使っている「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証」とすることができる。

 3月25日の参院予算委員会で立憲民主党の田島麻衣子が1年延期を「来年9月にある自民党総裁の任期に合わせたものですか」と質問したところ、五輪相の橋本聖子が「全く関係することではありません」と否定したと「asahi.com」記事が伝えていた。You Tubeから動画を探し出して確かめてみた。一部抜粋。この日の委員会には安倍晋三は出席していない。

 田島麻衣子「先ず東京オリンピック・パラリンピックの延期について橋本大臣に伺います。延期を1年程度と決めたのはなぜなのですか。それについて客観的な根拠はありますか」

 橋本聖子「昨夜ですけど、安倍総理とバッハ会長との電話会談が行われました。コロナウイルスの感染を受けて開催するのは困難な状況にある。安倍総理の方からバッハ会長に対して1年程度の延期を提案させて頂いたということであります。そしてすぐにバッハ会長からは100パーセント同意をするということで、その後のIOCの理事会で1年程度の延期ということが決定されたということであります」

 橋本聖子が1年延期の「客観的な根拠」を述べずじまいだったから、田島麻衣子が再度尋ねると、安倍晋三が1年延期を提案して、IOCが協議をして決定した、その決定に添って政府として粛々と勘案をしていくといった趣旨の答弁、1年程度の延期決定としたIOC協議を1年とした「客観的な根拠」としているが、安倍晋三がトーマス・バッハに提案の「1年程度」がそもそもの始まりなのだから、安倍晋三の胸の内にあった「1年程度」という年数に対する「客観的な根拠」について答えなければならないが、そのようには答えていない。

 安倍晋三の「1年程度」が私的な利害からの計算ではなく、公的な利害に立った計算であるなら、明確に答えることができた「客観的な根拠」のはずだが、答えることができないのだから、「客観的な根拠」の程度が知れることになる。

 田島麻衣子は「1年程度」が安倍晋三の私的な利害に立った計算と見たのだろう。

 田島麻衣子「来年9月にある自民党総裁の任期に合わせたものですか」  

 橋本聖子「全く関係することではありません。来年のオリンピック東京大会、パラリンピック東京大会に向けてIOC、そして組織委員会等が様々な競技日程というものを考えながら、IOCの理事会で決定に至ったということであります」

 IOCが提案して安倍晋三が受け入れた「1年程度」というわけではないのだから、IOCの協議や決定に関係しない場所から「客観的な根拠」を明らかにしなければならないが、IOCが協議・決定した「1年程度」に「客観的な根拠」を置くゴマカシで凌いでいる。

 安倍晋三は3月24日夜のトーマス・バッハとの電話会談後に首相官邸で「囲み会見」を開いている。

 安倍晋三「先程、森会長、小池都知事、橋本大臣同席の下に、バッハIOC会長と電話会談を行いました。まず、改めて、東京オリンピック・パラリンピックの中止はないということについて、バッハ会長と確認いたしました。

 そしてその上で、開催国日本として、東京五輪について、現下の状況を踏まえ、世界のアスリートの皆さんが、最高のコンディションでプレーでき、そして、観客の皆さんにとって、安全で安心な大会とするために、おおむね一年程度、延期することを軸として、検討していただけないか、という提案をいたしました。

 バッハ会長から、100パーセント同意する、という答えをいただきました。そして遅くとも2021年の夏までに東京オリンピック・パラリンピックを開催するということで合意いたしました。今後、人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証として完全な形で東京オリンピック・パラリンピックを開催するために、IOCバッハ会長と緊密に連携していくということで、一致したところであります。日本は日本として、開催国の責任をしっかりと果たしていきたいと思います。

 先ずは現下のこの感染症の広がりの状況を見る中において、これは、年内ということは難しいだろうということにおいて、1年程度ということにいたしました。その上において、遅くとも2021年の夏までにということで合意をしたところであります。そして、この目標の上において、しっかりと会場等の対応について、調整をしていくことになると思いますし、この後、IOCの理事会が開催されると思います。」

 安倍晋三は「1年程度」としたことの理由を二つ口にしている。

 「世界のアスリートの皆さんが、最高のコンディションでプレーでき、そして、観客の皆さんにとって、安全で安心な大会とするため」が一つ目。「現下のこの感染症の広がりの状況を見る中において、これは、年内ということは難しいだろうということにおいて、1年程度ということにいたしました」が二つ目。

 だが、この一つ目も二つ目も、新型コロナウイルスの世界的な感染状況の趨勢、成り行きにかかっている。当然、安倍晋三の方から提案した「1年程度」の延期で新型コロナウイルスの世界的な感染は「人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証として、完全な形で東京オリンピック・パラリンピックを開催」できる状況にまで終息していると見ていることになる。

 では、このことの「客観的な根拠」は?安倍晋三自身の口から確かめてみる。 

 2020年3月27日参院予算委員会

 石橋通宏「先ず安倍総理に伺います。東京オリンピック・パラリンピックの延期、1年程度ということを先ず最初に言われたそうですが、その根拠を教えてください」

 安倍晋三「東京大会を延期する期間についてではですね、世界のアスリートが万全のコンディションでプレーを行い、そして観客にとって安全で安心な大会としていくためには世界に於ける感染の広がりを勘案するとですね、数ヶ月程度の時間では困難であり、ある程度の時間を要せざるを得ないと考えたところであります。

 他方で例えば2年といった余りにも長期な延期となれば、これはもはや2020年東京大会へのモメンタム(勢い)が失われ、別の大会のようになってしまうという懸念があったのであります。そのため先日(3月24日)のIOCバッハ会長との電話会談に於いて私から概ね1年程度の延期を提案し、遅くとも2021年の夏までとの合意に至ったところでございます」

 石橋通宏「東京で開催する以上は東京のモメンタムは失われないんじゃないですか」

 安倍晋三「これはアスリートの皆さんがですね、2020年をめがけて最高のコンディションも作ってきているところでございます。そしてそれがまた2年後ということになればですね、これはまた、かなり、初めから遣り直さなきゃなんないということにも繋がってくるわけでございまして、そん中に於いてですね、様々な疑問があるということは承知をしておりますが、先程申し上げた理由でですね、私から1年程度を軸として検討して貰えないかということを申し上げたところでございます」

 石橋通宏「来年の秋ではダメなんでしょうか」

 安倍晋三「1年程度を軸としてということを私が申し上げ、そしてバッハ会長からは、遅くともですね、夏までにとというお話があり、最終的にですね、遅くとも夏までにということで合意がなされたところでございます」

 石橋通宏「ちょっと根拠が分からないんですが、真夏で昨年も大問題になったマラソンの札幌開催等も決めたわけです。真夏にやるんですか」

 安倍晋三「それはですね、また今IOCに於いてですね、具体的な時期については議論がなされていくものと承知をしておりますが、IOC組織委員会に於いてですね、最終的な調整がなされていくものと考えております」

 石橋通宏「バッハ会長は夏に限定していない、2021年なら、全ての選択肢がテーブルにあると発言されていますが、その通りでよろしいですか」

 安倍晋三「バッハ会長、今申し上げましたように遅くとも2021年の夏までに大会を開催するということで合意をしたところであります。具体的な開催時期については今後IOC大会組織委員会、東京都の間で検討し、決定されることになるわけでございますが、なおバッハ会長は遅くとも2021年の夏までにとの内容として2021年の夏季の前、または夏季と発言したと承知をしております」

 石橋通宏「確認ですが、先程世界のアスリートをという話もありましたが、専門家、有識者のご判断、ご助言は頂いたのでしょうか」

 安倍晋三「いわば専門家と言う方々の助言は頂いていないところございますが、これはある程度、この判断を、政治的に判断をしなければいけないわけであります。それぞれですね、それぞれ、いわば1年、2年、あるいは半年に於いて、それぞれのご意見があるわけでございますが、どっかで判断をしなければいけないと考えたところでございます」

 石橋通宏「しかしIOCのバッハ会長もWHOの判断を云々と仰ってましたよね。IOCはWHOと相談されたのでしょうか」

 安倍晋三「いわばIOCがWHOとですね、相談しているかどうかということについてはIOCがWHOと連携をしながらというふうにおっしゃっているというふうに承知をしているところでございます。いわば私の提案を、の上にですね、バッハ会長は遅くても来年の夏までにという判断をされた、ということではないかと思います」

 石橋通宏「よく分かりませんが、今日、脇田専門家会議座長、(国立感染症)研究所所長に来て頂いております。ありがとうございます、お忙しい中。

 今世界的な広がりが拡大しています。途上国も含めて、欧米がかなり広がっていますが、南アフリカ等でも広がりを見せているということで大変懸念されますが、現在は欧米を中心とした世界的な広がりの状況をどう見ておられるのか、教えてください」

 脇田隆字「新型コロナウイルス感染症につきましては昨年度末から中国湖北省、武漢市から流行が始まり、中国では流行が終息しつつあるもののの、現在で欧米を中心とした世界的な流行となり、3月26日時点で世界全体の感染者数は41万4279名。死亡者数は1万8440名となってございます。今のところ世界的な流行の終息はなかなか予測は難しいという状況でございます。

 石橋通宏「現時点で予測は難しい。過去の大きな世界的な感染症と比較をして今後の展開の予測、終息までの予測、どんな状況なんでしょうか」

 脇田隆字「今ご質問の過去に流行した主な感染症との比較でございます。あのサーズにつきましては感染者数が8096名、死亡者数774名、マーズにつきましては感染者数が2494名、死亡者数が858名となっております。で、サーズ、マーズにつきましては日本の感染者はございませんでした。

 で、サーズはですね、平成14年11月に初めて確認をされまして、終息宣言まで8か月がかかっております。それから新型インフルエンザにつきましては平成21年4月に初めて確認をされ、終息宣言まで1年4ヶ月を要していますで、マーズついては未だに中東地域に於いて流行が継続していると言うことを承知しております。

 終息までの期間ということでございますけども、現在の感染状況を踏まえますと、我が国に於いても流行の終息等の見通しについて考える段階にはまだないというふうに考えております。

 一方で武漢に於ける強力な外出禁止、あるいは交通遮断による都市封鎖による流行の封じ込め、及びこれまでの日本の流行状況などの解析から。この新型コロナウイルス感染症に対する有効な対策も徐々に明らかになってきております。今ではお願いしてますとおり、密閉・密集・密接な場所を徹底的に避けるということによりクラスターの発生を予防して、また、現在国内の複数地域で発生しているクラスターを早期発見をして早期対応する。そしてクラスターの連鎖による感染拡大を防止することをやります。

 また大規模イベントを自粛して頂くことによりましてメガクラスターの発生を回避すること、さらに医療体制の強化によりまして、患者の重症化予防に取り組んでいくということがこの感染対策と非常に重要だと思っております」

 石橋通宏「重ねてお聞きしますが、心配なのは途上国です。これから広がりがある。医療体制、先程言われたような体制が取れない。そういったところにこれからさらに感染が拡大していく。過去の感染症と比較しても、1年、2年の話ではない懸念、あるんじゃないでしょうか」

 脇田隆字「只今の委員のご質問でございますけども、途上国の感染状況の把握というのは、これ、さらに検査の状況等がなかなか報告もされないという難しい状況になっておりますので、今後の見通しについてもなかなか難しいと考えおります」

 石橋通宏「総理、聞いておられたと思います。分からないんです。1年なのか、2年なのか。とりわけこれから途上国、南米、そして南アフリカ含めて広がっていたときに来年になるか分からない。終息するか分からない。その状況で本当に来年の夏って断言できるんでしょうか。

 橋本大臣。アスリートの皆さんのことを第一に考えたときに途上国でこれから本当にいつ終息できるか分からない。それからアスリートの皆さんがもう一度、準備をされる。そういったときに本当に世界の全てのアスリートの皆さんのことを考えたときに1年以内にできるんでしょうか。ご意見をお願いできないでしょうか」

 橋本聖子「アスリートからの観点ということでお聞きを頂いたというふうに思いますけれども、4年に一度のこの大会に向けて万全を期して4年サイクルで準備をしているというのがアスリートであります。ただ、今回のこの世界的にコロナウイルスが拡大しているという状況を踏まえて先週アスリートからも、大変な懸念が示されていたところでありまして、先ずは1年程度の延期というふうにに決定をしたことによって各国アスリートから1年程度という延期が示されたけれども、そのことに於いて先ずは示されたことに、あの、アスリートたちは世界各国から称賛の声が上がっておりました。その中でアスリートたちが、今後どのように準備をしていくかというふうに考えたときには終息から次へのアプローチと言いますか、準備期間というものを十分に取っていきたいというふうに考えるのは、当然だというふうに思っております。

 ただ、1年以上ということになりますと、やはり総理のお話がありましたとおり、もはや2022年、20年の大会から1年が限界であって、その以上のということになりますと、当然別のものとして、あるいは選考委員会ですとか、そういったことも遣り直さなければいけないというような新たな問題が生じていくということになりますと、IOCが決定をした、先ずは1年程度の延長・延期というのがアスリートたちが望ましいというふうに現段階では考えていることだと思います」、

 石橋通宏「先程来の話でとりわけ途上国、これから感染が広がっている国々のアスリートの皆さん、どういう対応できるのか、そのことを考えれば、いや、十分な体制を取って、十分な万全の体制をアスリートの、世界のですよ、世界の、そうすれば、そのことを本当に考えれば、1年以内にできるのかと言われれば、先程脇田座長にも言って頂きました、『分からい』。だから来年の秋、2年という選択肢も、本来であれば、しっかり専門家のご意見を聞いて、議論すべきでは、なかったのか、いうふうに強く思います。

 是非、世界のアスリートのためと言われれるのであれば、総理、そのことも含めて、ちゃんとした議論をして頂きたい。そのことは改めて追及していきたいと思います」

 石橋通宏は安倍晋三に延期期間を「1年程度」とした根拠を尋ねたが、安倍晋三はIOC会長のトーマス・バッハとの電話会談後の囲み会見とほぼ同じ内容を述べたのみである。いわば世界のアスリートのコンディショニング(スポーツパフォーマンスを最大限に高めるために、筋力やパワーを向上させつつ、柔軟性、全身持久力など競技パフォーマンスに関連するすべての要素をトレーニングし、身体的な準備を整えること)の問題、そして現在の感染状況から見て、早期の開催(=年内の開催)は困難であることを根拠にした「1年程度」であり、新型コロナウイルスの世界的な感染状況が終息か、終息に近い状況となることを見通して根拠づけた「1年程度」ではないことを結果的に明らかにしている。

 しかもこの「1年程度」は専門家の助言に基づいた延期幅というわけではなかった。

 石橋通宏「確認ですが、先程世界のアスリートをという話もありましたが、専門家、有識者のご判断、ご助言は頂いたのでしょうか」

 安倍晋三「いわば専門家と言う方々の助言は頂いていないところございますが、これはある程度、この判断を、政治的に判断をしなければいけないわけであります。それぞれですね、それぞれ、いわば1年、2年、あるいは半年に於いて、それぞれのご意見があるわけでございますが、どっかで判断をしなければいけないと考えたところでございます」

 新型コロナウイルスの世界的な感染状況の今後を専門家の助言に基づいた疫学的な見地から判断した上での「1年程度」ではなく、オリンピックの延期開催をいつにするかに関係した政治的判断のみで感染状況の今後を占うことも、処理することもできないことを棚に上げて、いわば世界的な感染状況から離れた政治的判断で「1年程度」とするに至ったと、安倍晋三は間接的に証言したことになる。

 要するに感染状況の今後の見通しとは無関係の政治的判断であることだけは分かった。当然、政府、あるいは安倍晋三個人の利害に関わる政治的判断ということになる。

 と言うことなら、「1年程度」の延期の根拠を「世界のアスリートの皆さんが、最高のコンディションでプレーでき、そして、観客の皆さんにとって、安全で安心な大会とするため」に置いていることも、「世界のアスリートが万全のコンディションでプレーを行い、そして観客にとって安全で安心な大会としていくため」としていることも、自分たちの利害を隠し、その利害を綺麗事とするためにアスリートや観客をあざとく利用していることになる。

 石橋通宏は新型コロナウイルスの世界的な感染状況との関係から延期幅を「1年程度」とすることが疫学的な知見に基づいて妥当かどうか、国立感染症研究所所長であり、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部新型コロナウイルス感染症対策専門家会議座長である脇田隆字の口を借りて証明しようと試みた。

 脇田隆字の答は過去に流行したサーズ、マーズ、新型インフルエンザ等の感染規模、感染期間、人体への感染の影響等で得た知見との比較で、「今のところ世界的な流行の終息はなかなか予測は難しいという状況でございます」、あるいは「終息までの期間ということでございますけども、現在の感染状況を踏まえますと、我が国に於いても流行の終息等の見通しについて考える段階にはまだないというふうに考えております」であった。

 脇田隆字のこの答からも、延期の「1年程度」が感染状況の今後の見通しとは無関係の政治的判断であることが分かる。

 確かに2年延期とか、中止とかは2020年の7、8月を目標にトレーニングを積んでいたアスリートに新たな困難をもたらす。年齢的な困難さに直面するアスリートもいるだろうし、年齢的な困難さは体力的な困難さとなって振り掛かってくる。それらの困難さを排除できたとしても、若手の台頭によって活躍の勢力図が変わってしまうということもあり得る。

 但しこれらの困難さを全て回避できたとしても、新型コロナウイルスの世界的な感染が終息か、終息に近い状況を迎えなければ、開催そのものが困難となる。そしてこのことを考慮に入れない、政府の利害からの「1年程度」という政治的判断だとしたら、コロナウイルスの世界的な感染によって急失速している経済をオリンピック景気でV字回復させることを狙ったのか、安倍晋三個人の利害からの政治的判断だとしたら、田島麻衣子が3月25日の参院予算委員会で五輪相の橋本聖子を追及したように時期的に見ても、いくら本人が否定しても、「来年9月にある自民党総裁の任期に合わせた」個人の利害に基づいた政治的判断から外すことはできない。

 安倍晋三は2020年3月28日の夕方6時から首相官邸で新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた政府の取り組みを説明する記者会見を開いている。

 「記者会見」

 NHK松本記者「東京オリンピック・パラリンピックの開催が1年程度、延期になったということですが、開催には新型コロナウイルスの感染終息が前提となると思います。

 先ほど総理は長期戦への覚悟を語っていらっしゃいましたけれども、長い闘いでも、やはり出口が必要だと思います。その出口となる終息の見通しあるいは目標、これを示すべきだと考えますけれども、いかがお考えでしょうか。

 また、その延期によって、政治スケジュールのほうが流動化したという指摘もあります。来年秋には総理の自民党総裁としての任期、また衆議院議員の任期も満了します。衆議院解散の判断は、オリンピックと同様、感染の終息が前提となるのか。また、その終息した場合に、年内にも行い得るのか、お考えをお聞かせください」

 安倍晋三「まず、オリンピックを遅くとも来年の夏までに開催するということで、バッハ会長と合意をしました。おおむね1年間、延期をしていくということなのですが、この判断、決断については、先般、G20においても、共同声明において、この決断を称賛すると強い支持が表明されたところでありますが、一方、ではいつこのコロナとの闘いが終わるのか、終息するのか。今、答えられる、現時点で答えられる世界の首脳は一人もいないのだろうと。私もそうです。答えることは残念ながらできません。

 と同時に、オリンピックを開催するためには、日本だけがそういう状況になっていればいいということではなくて、正に世界がそういう状況になっていかなければならないわけであります。

 そこで、先般のG7やG20でも強く主張したところでありますが、まずは治療薬とワクチンの開発に全力を挙げるべきだ。先ほど申し上げました、今、治療薬については、日本は相当、今、進んでいる。治験等に向けて進んでいると思います。同時に、またワクチンについても、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)やGavi(Gaviワクチンアライアンス)を通じて、国際社会とともにワクチンの開発を急いでいます。そういうものが出てくることによって、ある程度、終息に向かってめどをただしていきたいと、こう思っているところであります。

 そして、その後のスケジュールについてお話がございました。確かに来年、自民党の総裁としての私の任期も来ますし、衆議院の任期等が来ますが、今は我々はそういうことを一切、頭の中には置かず、頭から外して、この感染症との闘いに集中したいと思っています」

 NHKの松本記者は「開催には新型コロナウイルスの感染終息が前提となる」と言い、「出口となる終息の見通しあるいは目標、これを示すべきだと考えますけれども」と要請した。

 対して安倍晋三は「いつこのコロナとの闘いが終わるのか、終息するのか。今、答えられる、現時点で答えられる世界の首脳は一人もいないのだろうと。私もそうです。答えることは残念ながらできません」との物言いでいつ終息するのか見通すことはできないと答弁しながら、「オリンピックを開催するためには、日本だけがそういう状況になっていればいいということではなくて、正に世界がそういう状況になっていかなければならないわけであります」と、日本だけではない、世界的な感染の終息を開催の条件としている。

 つまり安倍晋三は開催の条件を世界的な終息だとしながら、自身を含めて世界の首脳はコロナウイルスの世界的な感染がいつ終息するかは誰も見通せていないと悲観論を展開、いわば開催の条件をクリアするのはいつの頃か不明であるとしながら、早々に「1年程度」の延期で開催を決める政治的判断を行った。

 矛盾しているということだけではない。ここには矛盾を矛盾でないとする強引さしか見えてこない。この強引さはかなりの強度なもので、何しろいつ終息するか見通すことができなのに「1年程度」の延期ということで開催を決めたのだから、「1年程度」という政治的判断がオリンピック景気を狙った政府の利害よりも、自民党総裁の任期内に合わせた安倍晋三個人の利害に基づいた自己都合の政治的判断の開催であることの方が濃厚となる。

 少なくとも新型コロナウイルスの世界的な感染の終息か、終息に近い状況を見通した延期期間でない以上、アスリートの最高のパフォーマンスを望み、そのパフォーマンスに観客が歓迎することに根拠を置いた「1年程度」ではないことだけは断言できる。

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安倍晋三の東京オリンピック「完全な形で」発言はアスリートのことを考えない自己都合だけを優先させた開催願望

2020-03-23 14:06:31 | 政治
 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2020年3月16日夜、G7=主要7か国の首脳による緊急のテレビ会議が行われ、安倍総理大臣は、治療薬の開発を加速し、世界経済への影響を食い止めるためG7の結束を呼びかけ、東京オリンピック・パラリンピックの完全な形での開催を目指す考えを示し、各国首脳の支持を得たと2020年3月17日付マスコミが一斉に伝えていた。文飾当方。

 「G7首脳テレビ会議」(外務省/2020年3月16日)  

 3月16日(月曜日)23時から約50分間,安倍晋三内閣総理大臣はG7首脳テレビ会議に出席したところ,概要は以下のとおりです。今回の会合は,仏からの提案を受けて,本年のG7議長国米国の呼びかけで開催されました。G7首脳間でテレビ会議が行われるのは初めてです。また,会合後,首脳宣言(英語(PDF)別ウィンドウで開く/仮訳(PDF)別ウィンドウで開く)が発出されました。

1 参加したG7首脳は,新型コロナウイルス感染症に関し,各国内の経済状況や感染拡大防止策について意見交換を行いました。
2 安倍総理からは,1点目として,現下の厳しい状況を収束させるためには,治療薬の開発が重要であり,G7の英知を結集させ,開発を加速させることが必要であること,2点目として,経済に悪影響がある中,G7が協調して必要十分な経済財政政策を実施するという力強いメッセージを出すべきであるとの点を述べ,G7の賛同を得ました。また,今回の首脳間のテレビ会議は非常に有意義であり,必要に応じ再度開催することで一致しました。
3 また,安倍総理は,東京オリンピック・パラリンピックについて,人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として,完全な形で実施したいと述べ,G7の支持を得ました。
4 参加したG7首脳間では,新型コロナウイルス感染症への対応に際し,国際社会が一丸となった取組が求められていることを確認し,首脳間で率直な意見交換を行い,G7として引き続き協力することで一致しました。

【参考】G7首脳テレビ会議出席者
 日:安倍総理,米:トランプ大統領,独:メルケル首相,加:トルドー首相,伊:コンテ首相,英:ジョンソン首相,仏:マクロン大統領,EU:ミシェル欧州理事会議長,フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長

 我が日本の偉大なる総理大臣安倍晋三は〈東京オリンピック・パラリンピックについて,人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として,完全な形で実施したいと述べ,G7の支持を得た。〉

 現時点では人類は未だに新型コロナウイルスに打ち勝っていない。当然、「打ち勝った」は過去完了形の事実提示ではなく、未来完了形の事実提示としなければならない。未来完了形の事実提示である以上、その「証」は今後のいずれかの時点で〈打ち勝った〉結果として手に入れることを予定していなければならないことになる。

 でなければ、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として」と発言することはできない。

 要するに新型コロナウイルスの終息宣言となる。東京オリンピックの日程は7月24日~8月9日(パラリンピックは2020年8月25日~ 2020年9月6日)だということだから、開催のための準備もあることから、最低限6月中の終息宣言でなければならない。しかもオリンピックもパラリンピックも世界的なスポーツの一大祭典だから、日本だけの終息宣言ではなく、世界的な終息宣言ということでなければならない。「打ち勝った」主語を「日本人」ではなく、「人類」に置いていることからも、世界的な終息宣言ということになる。

 安倍晋三の「人類」を主語に使った勇ましい宣言に反して日本だけが終息、日本以外の各国の感染が終息しないままに世界的規模で感染が引き続いていた場合の状況下でオリンピック開催ということなら、日本は外国人アスリートに対しても観戦目的で入国する外国人訪日客に対しても、入国後2週間の指定場所での隔離・観察期間を置くといった措置を取らざるを得なくなって、そうした場合、外国人アスリートから見ても、観戦目的の入国外国人観戦客から見ても、一定の制約を課せられることになる以上、4年毎通りの「完全な形」「実施」ということにはならないはずだ。

 観戦目的の入国外国人は2週間の隔離・観察期間後に陰性と確認されなければ、各競技場に入れないことになるし、特に外国人アスリートに対しては2週間隔離した状態でそれぞれに十分にトレーニングできる場所と機会を提供しなければならない。場所はともかく、個人競技ならまだしも、団体競技であるサッカーの11人、ラグビーの15人などが2週間の隔離・観察期間中、メンバー同士がお互いに接触せずに1メートルから2メートルの間隔を常に置いた状態でのトレーニングを強いられることになれば、十分なコンディショニング(スポーツパフォーマンスを最大限に高めるために、筋力やパワーを向上させつつ、柔軟性、全身持久力など競技パフォーマンスに関連するすべての要素をトレーニングし、身体的な準備を整えることと定義される。 NSCAジャパン)の機会を提供したことになるのだろうか。

 要するに安倍晋三の言う「完全な形で実施」は最低限6月中の世界的な終息の状況下でなければ、実現不可能となる。果たして安倍晋三が勇ましく掲げた6月中の世界的な終息は可能だろうか。

 この電話会議を伝えた2020年3月17日付「NHK NEWS WEB」記事では、外務省の「打ち勝った証として」となっているところが、「全力で準備を進めており、人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ証しとして完全な形での開催を目指したい」と述べたとなっている。

 未来完了形ではなく、明確な完了時期を示さない未来進行形となっていて、発言としてはある程度妥当性を持つことになる。当然、「完全な形での開催」にしても時期が不特定となり、安倍晋三のこの発言から延期を示唆ものだとか、延期の伏線だと伝えるマスコミも現れた。

 だが、発言が未来完了形であろうと、未来進行形であろうと、安倍晋三は人類が新型コロナウイルスに打ち勝つであろう根拠は何一つ示していない。ワクチンを開発したとも言っていないし、例え開発していたとしても、臨床試験開始から実用化までには1年以上かかるとされていて、今年夏のオリンピック開催にまでは間に合わない。

 あるいは既存の対感染症ワクチンが新型コロナウイルスにも有効であることが証明されたと発言しているわけでもない。打ち勝つであろう根拠は何一つ示さないままに発言が実質的にこの夏の開催であろうと、一定期間を置いた延期であろうと、「完全な形での開催」を宣言した。

 オリンピックそのものはIOCや国や自治体が運営する。だが、各競技そのものはアスリートたちのパフォーマンスによって成り立っている。アスリートたちは自分たちのパフォーマンスを最大限・最善の形で見せるためにオリンピックの場合は7月24日から8月9日にかけた期間に、パラリンピックの場合は8月25日から9月6日かけた期間に照準を合わせて精力的にコンディショニングに取り組んでいるはずである。

 要するに東京オリンピックとパラリンピックに関わるアスリートたちのコンディショニングは前回のリオオリンピックが終了した時点から開始されていたと見ても過言ではない。当然、このようなアスリートたちのコンディショニングがオリンピックという実際の舞台で形を取るパフォーマンスに応えるためには「完全な形での開催」は照準通りに期間をずらしてはならないことになる。少しでもずらせば、アスリートの立場からしたら、「完全な形での開催」は崩れる。

 要するに最低限、安倍晋三の6月中の世界的な終息宣言通りに終息しなければ、「完全な形での開催」は不可能となる。無理に開催可能とするなら、アスリートたちのコンディショニングやパフォーマンスを現在以上に犠牲にしなければならない。

 3月16日のG7首脳テレビ会議から3日目の3月19日の参議院総務委員会での東京五輪に関わる安倍晋三の発言を2020年3月19日付「NHK NEWS WEB」記事が取り上げている

 G7首脳テレビ会議で完全な形での開催を目指す考えを示し、各国首脳から賛同を得たことを説明してから。

 安倍晋三「『完全な形』と申し上げたが、まず、アスリートと観客にとって安全で安心できるものでなければならない。そして、規模は縮小せずに行う、かつ、観客にも一緒に感動を味わっていただきたいということだ」

 片山虎之助(維新の会共同代表)「東京オリンピックは、ことし7月24日に始まるが、『完全』の中に時期のことも入るのか」

 安倍晋三「延期や中止については、一切言及はしていない。大切なことは、完全な形で、オリンピック・パラリンピックを日本で開催をすることだ」

 中止ならなおさら、延期にしても、アスリートたちからしたら、「完全な形での開催」を崩すことになることを認識して発言しているのかどうか分からないが、安倍晋三自身の認識としては延期と中止は「完全な形」から外していることになる。

 だが、「完全な形での開催」「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として」実現することになるのだから、「完全な形での開催」自体が6月中の世界的な終息宣言でなければならない。

 だが、6月中に終息させるまでの期間中、新型コロナウイルスの世界的規模での感染の危険性にアスリートたちが曝されている危険性については触れていない。もし触れていたなら、記事は伝えるだろうし、安倍晋三自身も、「延期や中止については、一切言及はしていない」と言い切ることはできない。

 「完全な形での開催」が安倍晋三の発言どおりに実現したなら、結果的に安倍晋三の利害とこの夏に照準を合わせているアスリートたちの利害は一応は一致することになるが、ここにきて一部アスリートたちの利害に狂いが生じていることを伝える報道が目につくようになった。利害の狂いは照準の狂いに原因を発している。照準に狂いがなければ、五輪が延期も中止もなく、「完全な形での開催」が実行されさえすれば、利害の狂いにしても生じない。

 2020年3月18日付のNHK NEWS WEB記事が「東京オリンピック “予定どおり開催へ” 方針に疑問の声も」と題してIOC委員やアスリートの声を伝えている。

 ヘイリー・ウィッケンハイザー女史(女子アイスホッケーなどのカナダ代表としてオリンピックに出場したIOCの委員)「今回の危機はオリンピックよりも大きい。IOCが開催に向けて進もうとしていることは、人間性の観点から無神経で無責任だ。

 オリンピックを中止すべきかどうか、今の時点では誰も分からない。ただ、IOCが開催に向かって進むのは、練習している選手や世界中の多くの人たちにとって正しくないことは確かだ」

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響下にあるアスリートや観客の立場に立って、東京五輪の強行開催はアスリートや観客に対して人間性の観点から問題があると訴えている。

 エカテリニ・ステファニディ選手(2016年リオデジャネイロ大会陸上女子棒高跳び金メダル選手、ツイッターで)「IOCは大会に向けて練習しなければならない私たちや家族、公衆の健康を脅かしたいのか。あなたたちはまさに今、私たちを危険にさらしている」

 要するに東京五輪に向けて万全な練習を心がけるなら、国や自治体のコロナウイルス感染防止対策によって受けることになる様々な制約は練習の障害となる。その障害を無視して万全な練習を優先させれば、そうしたいが、感染の危険に曝されて、その心配だけではなく、万が一感染することになったなら、自身や家族、第三者の健康を脅かすことになると、思うようにならない練習と感染拡大の状況の間で気持ちが立ち往生している姿を覗かせている。

 2020年3月21日付「NHK NEWS WEB」記事が、〈イギリス陸上競技連盟のニック・カワード会長は、イギリスの新聞「デイリーテレグラフ」のインタビューに対し、東京オリンピックについて「政府が感染拡大を防ぐ策を講じる中、練習施設が閉鎖されたことで、選手たちはストレスを感じている。予定どおり開催できないと決めるべきだ」と述べ、延期するべきだという考えを示し〉、さらに、〈「選手たちの意見が表に出始めるようになれば、延期という決定が速やかに出されると信じている」と述べた。〉と伝えている。

 こういった声を受けてのことか、あれ程通常通りの開催を主張していたトーマス・バッハを会長に頂いていたIOC=国際オリンピック委員会は2020年3月22日に大会の延期を含めた具体的な検討を組織委員会などと共に始め、4週間以内に結論を出すと発表したと2020年3月23日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 通常通りの開催から方針転換を見せなければならなかった背景として記事は、〈新型コロナウイルスの世界規模での感染拡大を受けて東京オリンピック・パラリンピックの代表選考に関わる大会が相次いで中止や延期となるなど影響が広がり、選手や競技団体、それに複数の国のオリンピック委員会から延期を求める声があがっていた。〉ことを挙げている。

 但し、〈一方で、「大会の中止は何の問題解決にもならず、誰の助けにもならない」と強調し、大会の中止は検討しないことも理事会で決まった。〉と伝えている。

 今朝(2020年3月23日)のNHK中継の参院予算委員会で自民党の佐藤正久が最初の質問に立ち、冒頭、IOCのこの方針転換を取り上げて、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として,完全な形で実施したい」としていた安倍晋三の認識を尋ねた。

 この質疑に関しては「2020年3月23日 9時53分」の時点で「NHK NEWS WEB」が既に記事にしていたから、利用することにした。

 安倍晋三「私の考え方については、昨晩、組織委員会の森会長にも話をし、森会長からIOCのバッハ会長にも話をしたと承知している。IOCの判断は、私が申し上げた『完全な形での実施』という方針に沿うものであり、仮に、それが困難な場合には、アスリートのことを第一に考え、延期の判断も行わざるをえないと考えている。

 今後、IOCとも協議を行うことになるが、トランプ大統領をはじめG7各国の首脳も、私の判断を支持してくれるものと考えている。もちろん、判断を行うのはIOCだが、中止は選択肢にはないという点は、IOCも同様だと考えている」

 記事はG7テレビ会議で安倍晋三が〈東京オリンピック・パラリンピックについて,人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として,完全な形で実施したい」と述べ,G7の支持を得た。〉としている部分については触れていないが、テレビ中継の質疑では佐藤正久に対して「打ち勝った証として、完全な形で実施したいと述べて、G7の支持を得た」と発言している。

 要するに「打ち勝った証として」と、未来完了形で発言、「打ち勝つ証として」と未来進行形では述べてはいない。但し「打ち勝った証」が6月中の世界的な終息宣言となることについては3月16日のG7首脳テレビ会議から6日経過した翌日の3月23日朝になっても気づいていない。

 つまり6月中の世界的な終息宣言となることを前提としてこそ、通常通りの「完全な形で実施」を訴えることができるはずだが、その前提を考えることもできずに、「IOCの判断は、私が申し上げた『完全な形での実施』という方針に沿うものであり」と、さも新型コロナウイルスが6月中に世界的に終息するかのようなストーリーで「完全な形で実施」の方針を安倍晋三が求めたのに対して、その方針にIOCの判断が添っているかのように自身の「完全な形で実施」を正当化している。

 この正当化はあくまでも6月中の世界的な終息を視野に入れていたものでなければ、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として,完全な形で実施したい」は何の根拠もない口先だけの言葉となるが、結果として様々な事情によって6月中の終息が実現できたとしても、オリンピック期間に照準を合わせなければならない最大限・最善のパフォーマンスを見せるためのアスリートたちのコンディショニングの困難さは終息するまでの期間内は引き続くことになって、不満足なコンディショニングは最大限・最善のパフォーマンスを望むことができない要因となり、このような要因を強いられた場合、これも「完全な形で実施」から外れることになる。

 となると、「完全な形で実施」が「困難な場合には、アスリートのことを第一に考え、延期の判断も行わざるをえないと考えている」はアスリートたちのコロナウイルスの世界的な感染状況下でのコンディショニングの困難さを視野に入れていた発言に見えるが、最初から視野に入れていたなら、終息がいつとなるかは別問題として、通常通りの「完全な形で実施」は口にできるはずはなかった。

 この言葉を口にしたこと自体がアスリートが抱えることになる制約を何ら考えることもなく、決められたとおりに五輪を開催したいという、何の障害もないままに一つのレガシイとして記憶されることを望んだ自己都合優先の発言に過ぎないことになる。

 自己都合でなければ、期間どおりの「完全な形で実施」が6月中の世界的な終息宣言となることに気づくはずだし、「完全な形で実施」を言う前にアスリートたちのコロナウイルス感染状況下でのコンディショニングの困難さにも気づいて、「完全な形で実施」を言わずに、期限を設けて、〈フランスのオリンピック委員会の会長がロイター通信の取材に対し、東京オリンピックが予定どおり開催されるためには5月末までに感染拡大のピークを過ぎていることが目安になるという考えを示した。〉と「NHK NEWS WEB」が伝えているが、一定の期限を設けて、「アスリートのコンディショニングの問題もあるから、それまでの間に開催か延期かを判断することになるだろう」と発言していたはずである。

 どちらも気づかなかった。自己都合を優先させた東京五輪の期日通りの開催願望に過ぎなかったからだ。

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安倍晋三の新型コロナウイルス感染「多くは軽症」発言から見る危機感と現状認識の希薄さ マスク準備、検査体制遅れに現れている

2020-03-16 12:27:50 | 政治

 2020年3月9日参院予算委員会 

 自民党の武見敬三が新型コロナウイルス感染に関して質問に立ち、安倍晋三をお神輿のごとくにヨイショ、ヨイショと担いだ。担がれた安倍晋三は心地よかったはずだ。

武見敬三「今世界はまさに新型コロナウイルスの感染拡大で、これを如何にすべての国々がお互いに協力をしながら、この感染拡大を抑止して、一人でもその健康を害し、命を落とすことがないように今必死になって、多くの国々が国境を越えて協力をしようとしてるところであります。

 このようなときに今朝、北朝鮮が弾道ミサイルと思わしきものを発射したというニュースが入ってきて、おりまして、私は、びっくり致しました。こうした国際社会の困難な状況の中にこのような弾道ミサイルなどを発射する、というのは、これはもう言語道断であって、それを私は厳しく非難をしたいものがあります。是非、総理のご所見を伺っておきたいと思います」

 安倍晋三「本日7時34分から7時35分頃、北朝鮮の東岸から複数発の弾道ミサイルと見られるものが発射され、日本海海上に落下したものと推測されますが、詳細は分析中であります。なお、いずれも落下したのは我が国の排他的経済水域EEZ外と推定されます。また付近を航行する航空機や船舶への情報提供を行ったところ、現時点に於いてこれらへの被害報告等の情報は確認されていません。

 私からは本件について直ちに報告を受け、情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して迅速・的確な情報提供を行うこと、航空機・船舶等の安全確認を徹底すること、不測の事態に備え、万全の体制を取ることの3点について速やかに指示を行ったところであります。また政府に於いては北朝鮮情勢に関する官邸対策室に於いて情報を集約すると共に緊急参集チームを招集し、対応について協議を行いました。

 さらにこのあと、国家安全保障会議を開催し、情報の集約及び対応について協議を行う予定であります。今般の北朝鮮の行動は我が国と地域の平和と安全を脅かすものであり、これまでの弾道ミサイル等の度重なる発射も含め、我が国を含む国際社会全体にとっての深刻な課題であります。政府としては引き続き米国等とも緊密に連携しながら、必要な情報の収集・分析及び警戒・監視に全力を挙げ、我が国の平和と安全の確保に万全を期してまいります。

 武見敬三「それではこの新型コロナウイルスに関わる課題に入らせて頂きたいと思います。我が国はこの感染症と如何に戦うか。これはもうグローバルヘルスと言われる分野の中でも最も世界で大きく、優先度の高い課題として認識されております。

 この分野で我が国は実は、安倍総理、非常に大きな中心的役割を担ってきました。2014年に西アフリカでエボラ出血熱が発生をし、そしてこれを踏まえて、2015年に今度はユニバーサルヘルスカバレッジ(「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ことを意味し、すべての人が経済的な困難を伴うことなく保健医療サービスを享受することを目指すこと―ネット知識)がこの持続可能な開発目標の中に位置づけられました。そしてその後最初のG7のサミットというのが、実は我が国がホストしたG7伊勢志摩サミットでした。

 従ってその伊勢志摩サミットの中で総理ご自身の極めて強いイニシアチブで三つの重要な議題のうちの一つをこうした保健医療の分野に位置づけて、そして三つの大きな柱を基本とする、この伊勢志摩フレームワークというのをお出しになった。

 第一がこうしたエボラ出血熱のような危険な感染症に対して世界が協力して如何にそうした感染症に対して戦う、そうした体制を整えるか。二つ目は今度はユニバーサルヘルスカバレッジというものを如何に効果的に達成するか。3つ目は常にこのボディブローのように危険な感染症の中でも危険な感染症として湧き上がってきているAMRという多剤耐性菌にどう対処するかでありました。

 そして我が国はまさにこのユニバーサルヘルスカバレッジを達成するプロセスの一環としてこの危機管理というものに関わるこのプリベンション(事前予防や一時予防)とプリペアドネス(preparedness・準備)と言う、まさに準備と予防というものに焦点を当てて、そしてこの危機管理に於ける体制づくりの準備と予防の分野というのは平時に於いて行われるものであって、そしてそれはまさにユニバーサルヘルスカバレッジを達成する一部である。そしてこのユニバーサルヘルスカバレッジと危機管理の体制強化というのはまさにこの予防と準備というものを通じて結ばれていて、この2本柱をしっかりと世界で充実させていこうという、そういう大きな方針を世界に総理、示されました。

 これはまさにグローバルヘルスの分野では今もう金字塔になっている。そして、その中で日本は中心的役割を果たしました。今日に於いてもその重要な役割を果たしていることに何ら変わりはありません。加えて21世紀に入ると、様々な感染症が実は発生しました。アジアでもサーズが発生をし、それからマーズという中東呼吸器症候群というのようなものも発生をしました。

 そしてさらには5年程前ですか、H1N1という豚インフルエンザというのが新型インフルエンザとして発生しました。しかしこれらの状況を翻ってみたときに我が国に於ける罹患者の数、そして特に亡くなった方、死亡者数というのは極端に少なかった。世界の多くの国々がびっくり仰天しまして、何で日本だけ、こんな感染症が蔓延したときにこのように死亡者数を少なく抑えることができたのかいうことを調べた結果、これはまさに我が国の地域医療を中心とする医療制度というものが実に良く出来ていて、そしてアクセスがしやすくて、そしてまた同時に質が非常に高い、こういった強靭な保健システムというのが日本にしっかりあるから、こうした感染症が拡大したときにも、そこが底力を発揮して、しっかりとその死亡者数等を抑え込むことができるんだという点で非常に高い評価を我が国は得ています。これは基本、全く今日においても変わりがありません。

 その上で我が国に於いてさらに残された課題というのはそうした強靭な保健システムというものを踏まえて、さらに強固な、こうした危機管理体制を如何に構築していくかということが我が国の課題であるというふうに私は考えます。で、その途上でまさに今回の新型コロナウイルスの感染の拡大が始まったと思いますが、こうした状況認識についての総理のご初見を先ずは伺っておきたいと思います」

 安倍晋三(殆ど原稿読み)「武見委員に於かれましてはユニバーサルヘルスカバレッジについてまさにこの考え方は日本そして世界でリードしてこられますことにまさに敬意を評したいと思います。

 そして今回の新型コロナウイルスへの対応に当たっては現在、私を本部長として全閣僚メンバーとする対策本部を設置をし、同本部とそのもとに置かれた専門家会議の元、政府一丸となって対応に当たっております。国立感染症研究所に於いて実地疫学専門家の養成を行うと共に今般の対応に当たっても、クルーズ船を含む複数の事例に於いて専門家の派遣を行っております。

 ご指摘の通り、今後ですね、さらにこの組織を強化をして、そういう努力をしていくことは大変重要であろうと、こう思っております。今般の事案対応も踏まえつつ、今後感染症の危機管理体制の不断の見直しを進め、危機管理への対応力をですね、高めていきたいと考えています」

 武見敬三「そして我が国のこの新型コロナウイルス関わる今までの対応というものについて私自身は非常に不当にさまざまな批判が、その内外でも起きていることを非常に残念に思います。その中で実際に我が国の中でこうした罹患されて入院治療をした方々といったものが実際、どのようにその後、その症状いうものが回復をされておられるのか、実はなかなか今までその情報の公開がありませんでしたが、それを実はちょっと調べさせて頂いて、先週金曜日の時点のこのデータ情報であります。これ厚労省などから聞いて作ったものでありますけれども、(パネル提示)これ見ますと、大体ですね、この国内事例で407のPCR検査の陽性者がいて、既にもうそのうち76名退院されておられました。

 またクルーズ船に関してみれば、656名、陽性者が出たうちに既に退院された方が245名。従って、この両者も合わせても、既に321名、まさに300名を超える方々がこうした我が国の治療を受けて、実際に元気に退院されて、日常生活に戻られております。

 こうした力こそが実は我が国が国際社会の中で評価しているところでございまして、こうしたまさに的確な情報というものを私は内外にしっかりと発信していくことが私は必要だと思っております。総理のご初見を伺っておきたいと思います」

 安倍晋三(殆ど原稿読み)「この新型コロナウイルスについてはですね、多くの国民のみなさんが様々な不安を感じておられるんだろうと思います。我が国に於いても、連日感染者が確認されている状況には、状況にあり、政府としては感染拡大の防止のために対策を徹底していく考えであります。

 なお、委員ご指摘の通り、クルーズ船を含めこれまで日本国内で陽性と判定された方々のうち、3月7日時点で325人となっている、あの、これ、ほんのちょっと違うのは、今日さらに、最新は325人の患者が既にですね、回復をして、そして退院をしておられることも事実でございます。

 あの、これはあまり報道されてないところもございますので、ま、こうしたこともですね、しっかりと発信をしていきたいとこう思っております。一時重症状態だった方が軽症・中程度に改善されている方も、まあ、20名程度おられるわけでございます。

 専門家によればですね、このウィルスに感染しても多くは軽症であると共に治癒する例も多いとのことであります。委員ご指摘のとおり、このような感染後の状況も国民の皆様に適切に情報発信していくことはこの感染症を正しく理解をして頂く上でも、大変重要ではないかと思っております。引き続き、私も含めて、国民の皆様への正しく分かりやすい情報発信に努めていく考えでございます」

 武見敬三が新型コロナウイルス関わる安倍政権の対応に対して内外で不当な批判が様々に起きている、先週金曜日の時点に於けるPCR検査407名の感染陽性者に対して既に76名も退院している、クルーズ船での集団感染でも656名の陽性者に対して既に退院者が245名、合計300名を超えて退院、日常生活戻に戻っている、「こうした力こそが実は我が国が国際社会の中で評価している」点だ、このような評価点は「内外にしっかりと発信していくことが必要だ」云々の文言で内外の不当な批判に反して安倍晋三陣頭指揮の政府対応の成果だとばかりにヨイショしている。

 対して安倍晋三は一時重症状態だった罹患者のうち20名程度が軽症・中程度に改善、専門家の話として新型コロナウィルス感染者の多くは軽症で、多くが治癒していると、武見敬三のヨイショに応じている。但し「多くは軽症」という状況は新型コロナウィルス自体が持つ特徴的傾向であって、安倍晋三陣頭指揮の政府対応の成果とは関係しないし、当然、武見敬三が指摘しているように安倍晋三陣頭指揮の政府対応に基づいた国際社会の中での日本の評価点とすることはできない。

 中国で感染確認の5万5924人のデータに基づいたWHO派遣の各国専門家と中国保健当局の専門家による2020年2月20日までの中国現地調査の分析結果を2020年2月29日付記事として伝えている「NHK NEWS WEB」は安倍晋三が言う「多くは軽症」を、〈感染者のおよそ80%は症状が比較的軽く、肺炎の症状がみられない場合もあったということです。〉と、特徴的傾向の一つとして示している。

 だが、安倍晋三は武見敬三が新型コロナウイルスの特徴的傾向を安倍晋三陣頭指揮の政府対応の評価点としていることに対して「これはあまり報道されてないところもございますので、ま、こうしたこともですね、しっかりと発信をしていきたいとこう思っております」の文言で、安倍晋三陣頭指揮による政府対応の成果に位置づけ、なおかつマスコミがこの点について報道に熱心でないことに暗に不満を示して、より発信されるべきだと訴えている。

 新型コロナウィルス感染者の80%程度が軽症者で、一定程度の入院で済み、程なくして日常生活に無事戻ることができるパターンが固定化されていて、新たな感染者が出た場合でも、そのパターンが繰り返されることを常識とすることができたとしても、一人でも重症者が存在し、死者が出ている以上、「多くは軽症」だと片付けることはできない。一度ブログに利用した、《医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド》(一般社団法人 日本環境感染学会/ 2020年2月13日)には次のような下りがある。文飾当方。

 〈発生状況

 国内の感染者数は増加していますが、軽症例や無症候病原体保有者が多くを占めています。〉

 〈臨床的特徴(病態、症状)

 新型コロナウイルスは呼吸器系の感染が主体です。 ウイルスの主な感染部位によって上気道炎、気管支炎、および肺炎を発症すると考えられます。本ウイルスに感染した方全員が発症するわけではなく、無症状で経過してウイルスが排除される例も存在すると考えられます。〉(一部抜粋)

 ブログに次のように書いた。

 〈本人が知らないままにウイルスを抱え込んだとしても、発症しないままに過ごして、知らないままにウイルスが消滅してしまう例があると言うことは、本人は無事であったとしても、ウイルスを抱え込んでいる間、そのウイルスに第三者が感染、発症する例もあることを意味することになる。

 特に体力が低下している高齢者や、高齢者ではなくても、何かの病気治療中で体力が万全ではない中高年層がコロナウイルス感染の症状が出ていない、いわば野放し状態となっている無症候病原体保有者と何らかの接触をした場合、ヒトからヒトへの感染が起こり得る可能性は否定できないばかりか、一人の発症から感染経路を辿る作業にしても、感染元が無症候病原体保有者で、既にウイルスを消滅させていた場合は事前の感染者が特定不可能となって、感染元を一人ひとり探し当てて、入院隔離するなりして感染拡大を阻止するローラー作戦にしても、全てがうまくいかないことになって、感染経路を辿る作業が往々にして迷路に迷い込むことになりかねない。〉・・・・・・

 このことは2020年2月23日付「asahi.com」記事も専門家の指摘として伝えている。

 国際医療福祉大の和田耕治教授(公衆衛生)は「無症状でもウイルスを排出している可能性を指摘する報告もある。心配な人は、2週間程度は家族と別の部屋で過ごしたり、食事は離れてとったりするなどの対策を念のためとってほしい。手洗いの徹底も大事だ」

 それゆえに新たな感染者が出るたびに住居地の自治体は新規感染者の感染経路を辿るべく、その行動歴を洗い、濃厚接触者の有無を探し歩いて、濃厚接触者と思しき人物に行き当たったなら、検査を指示しなければならない。検査の結果、陽性なら、入院を求めると同時に今度はその陽性者の感染経路を辿るために行動歴を洗い、濃厚接触者の有無を探し歩いて、濃厚接触者と思しき人物に行き当たったなら、検査を指示する繰り返しに出る。

 そしてこの繰り返しは新規感染者が複数人出たとしても、新型コロナウィルスの特徴的傾向として「多くは軽症」だと分かっていても、新たな感染が止まらない限り続けなければならない。

 そしてこの感染が止まらない状況は、断わるまでもなく、その状況に応じた自治体の繰り返しの作業にとどまらない。感染防止のための人の移動制限は経済の停滞・縮小に向かい、特に不特定多数の人間を相手に商売や業務を行う何らかの営業体内に小規模の集団感染でも発生した場合は、他への感染を防ぐ観点から一定期間の休業を迫られることになり、そういった休業が各地に続くと、経済の停滞・縮小にととどまらずに、国民生活の停滞・縮小を必然化することになる。

 そして日本の現状は、日本は日本としてそのとおりの事実を招いている。「多くは軽症」だなどと言っている場合ではないし、新型コロナウィルスの特徴的傾向に過ぎない「多くは軽症」を感染症対策の功績と位置づけて、そのような日本の「力こそが実は我が国が国際社会の中で評価している」といった誇りは経済と国民生活の停滞・縮小を余りにも蔑ろにしている。

 現状の新型コロナウイルス感染に関わる安倍晋三と武見敬三の以上の認識はコロナウイルスに対する危機感と現状認識の希薄さなくして招くことはない。勿論、日本経済が感染でダメージを受けていることへの発言はあるが、「多くは軽症」で片付けることができる理由は経済の状況については経済の話題のみとし、感染状況については感染の話題として別個に取り上げて、双方を総合的に関連付けて議論する発想がないからだろう。その結果として危機感と現状認識の希薄さが現れることになる。

 安倍晋三のこの危機感と現状認識の希薄さは改正新型インフルエンザ対策特別措置法成立2020年3月13日の翌日の3月14日の「記者会見」発言からも窺うことができる。

 安倍晋三は冒頭発言で感染の現状を「国家的な危機」と位置づけている。

 安倍晋三「現時点において感染者の数はなお増加傾向にあります。しかし、急激なペースで感染者が増加している諸外国と比べて、我が国では増加のスピードを抑えられている。これが、専門家の皆さんが今週発表した見解です。
 WHO(世界保健機関)が今週、パンデミックを宣言しましたが、人口1万人当たりの感染者数を比べると、我が国は0.06人にとどまっており、韓国、中国のほか、イタリアを始め、欧州では13か国、イランなど中東3か国よりも少ないレベルに抑えることができています。」

 安倍晋三「現時点において感染者の数はなお増加傾向にあります。しかし、急激なペースで感染者が増加している諸外国と比べて、我が国では増加のスピードを抑えられている。これが、専門家の皆さんが今週発表した見解です」

 安倍晋三「未知の部分が多い新型コロナウイルス感染症でしたが、皆さんの御協力を頂き、これまでの対策を進める中で、多くのことが分かってきました。
 これまでのデータでは感染が確認され、かつ、症状のある人の80パーセントが軽症です。重症化した人でも半数ほどの人は回復しています。クルーズ船も含めれば、感染者の4割以上、600人に及ぶ方々が既に回復し、退院しておられます。他方、お亡くなりになった方は、高齢者の皆さんや基礎疾患のある方に集中しています」
 
 安倍晋三「感染力に関しても、これまで感染が確認された方のうち、約8割の方は他の人に感染させていません。つまり、人から人へ、次から次に感染が広がるわけではありません。
 他方でスポーツジムやライブハウスなど、特定の場所では集団での感染が確認された事例が報告されています」――

 以上の冒頭発言からは「国家的な危機」は見えてこない。どこが「国家的な危機」だと言いたくなる。

 新型コロナウイルス感染の現状に原因を置いて、「国家的な危機」だと切迫的に捉えていながら、「国家的な危機」の二次的原因となっている経済と国民生活の停滞・縮小には触れないままに諸外国と「人口1万人当たりの感染者数を比べると、我が国は0.06人にとどまっている」、「症状のある人の80パーセントが軽症」、「重症化した人でも半数ほどの人は回復」、「クルーズ船も含めれば、感染者の4割以上、600人に及ぶ方々が既に回復」、「感染力に関しても、これまで感染が確認された方のうち、約8割の方は他の人に感染させていません。つまり、人から人へ、次から次に感染が広がるわけではありません」云々とまるで重症者も死者も一人も出ないような、危機感と現状認識の希薄さを曝け出すことができる。

 だが一方で、「新型コロナウイルス感染症が経済全般にわたって甚大な影響をもたらしています。とりわけ、中小・小規模事業者の皆さんにとっては、事業存続にも関わる重大な事態であると認識しています」と、密接に関連しているはずの感染の状況と経済及び国民生活の停滞・縮小を別個に捉えて、論じている。

 この認識も危機感と現状認識の希薄さから出ている。

 この希薄さは感染症に必需品となるマスクの充当にも現れている。日本国内で出回るマスクの7割は中国製で、中国からの出荷が滞っていることに対してマスク不足を予見しなければならなかったにも関わらず、新型コロナウイルス感染症対策本部がマスクメーカー及びマスク卸売販売業者の団体に対してマスクの増産等について要請したのは2020年2月13日の「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」によってであり、今年度予算の予備費103億円からマスク増産への補助として4億5000万円を充てている。

 この増産要請はいずれはマスクが品薄となることを見込んだものではなく、既に品薄状況を受けた要請だとマスコミは伝えている。

 この品不足状況に対して安倍晋三が月内に月6億枚以上のマスク供給を確保すると表明し、それに応えたのか、防衛相の河野太郎は2020年3月6日の記者会見で自衛隊保有のマスク155万枚のうち突発的な大規模災害に備えて3週間後に新規マスクを自衛隊に返納してもらう前提で100万枚を拠出する方針を表明、6日後の3月12日に35万枚を、残り65万枚は3月13日午前中に自衛隊のトラック2台で都内の倉庫に搬入、その後全国の医療関係者や介護関係者に配布されるとマスコミが伝えていた。

 そして河野太郎3月6日の表明4日後の2020年3月10日付の「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策第2弾について」(厚生労働省医政局地域医療計画課)で、マスクに関わる次の対策を打っている。

◆需給両面からの総合的なマスク対策
・ネット等での高額転売目的のマスク購入を防ぐため、マスクの転売行為を禁止
・布製マスク2,000万枚を国で一括購入し、 介護施設等に緊急配布
・ 医療機関向けマスク1,500万枚を国で一括購入し、 必要な医療機関に優先配布
・ マスクメーカーに対する更なる増産支援

 この要請の3日後の2020年3月14日付「NHK NEWS WEB」記事が、「京都や大阪の大規模病院でもマスク不足が深刻」と題して次のように伝えている。

 〈複数の病院関係者によりますと、京都市の京都大学医学部附属病院では、今月に入って医師や看護師に対し、病院から支給されるマスクが制限されるようになり、ほとんどの部署で毎日1人1枚から1週間に1枚程度になったということです。

 新型コロナウイルスの感染者を受け入れる病院には指定されていませんが、高度な医療を行う病院で多くの入院患者がいて、マスク不足の中で感染症対策が十分なのか、働く人たちから懸念の声が上がっているということです。〉・・・・・

 マスク不足だけではない、検査体制の不備・不足も予見しなければならなかったはずだが、その構築の遅れも国民の不安を掻き立てた。

 肝心な必要性を予見した前以っての対応ではなく、後手後手の対応のみからも、危機感と現状認識の希薄さしか浮かんでこない。

 この程度の危機感と現状認識の希薄さしか持ち合わせてないにも関わらず、安倍晋三は記者質問に対する答弁で、「国内の感染の状況については、様々な手を打った結果、現時点では爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、持ち応えているのではないかというのが専門家の皆様の評価であろうと思います。今後とも、依然として警戒を緩めることができない状況でありますが、国民の健康、命を守るために全力を尽くしていきたいと思っています」と、各自治体の努力の成果を自らの成果のように刷り込んで、「国民の健康、命を守るために全力を尽くしていきたいと思っています」と国民の健康と命を請け合っている。

 危機感と現状認識の希薄さの上に請け合っている国民の健康と命に過ぎない。要するに実の伴わない、上辺だけの言葉で成り立たせた「国民の健康と命」が実態だということである。

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安倍晋三は長期政権で獲ち取ることになる政治成果を金字塔としたいがために失敗・不都合な事実から目を逸らす裸の王様と化している

2020-03-09 12:09:40 | 政治
 安倍晋三は新型コロナウイルスの感染が徐々に拡大する中、2020年2月27日に唐突に全国全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の2020年3月2日から春休みまでの臨時休校を要請した2日後の2月29日に感染拡大防止策を巡っての「記者会見」を開いた。冒頭発言後の質疑を二つ取り上げてみる。

 NHK松本記者「チャーター機、クルーズ船対応と、これまで対応が続いてきました。しかしですね、国内では感染拡大の状況が見られます。これまでとは違うフェーズの状況だと言えると思いますが、対応は依然続くとは思いますが、ここに至るまでの政府の対応として反省すべき点についてどのようにお考えでしょうか。

 また、政治は結果だとよく言われます。この結果責任についてのお考えもお聞かせください」

 安倍晋三「今回のウイルスについては、いまだ未知の部分が多い中、専門家の皆様の御意見も踏まえながら、前例に捉われることなく、国民の健康と安全を守るために必要な対策を躊躇なく講じてきたところであります。

 現在、国内では、連日、感染者が確認され、そういう状況でありますが、今が正に感染の拡大のスピードを抑える、抑制するために重要な時期であります。国内の感染拡大を防止するため、あらゆる手段を尽くしてまいります。

 未知のウイルスとの闘いはとても厳しいものであります。その中で、現場の皆さんはベストを尽くしていただいているものと思います。同時に、それが常に正しい判断だったかということについて、教訓を学びながら自ら省みることも大切です。私自身も含めてですね。その上で、そうした教訓を学びながら、未来に向かっていかしていきたいと考えています。

 その上で、私はこれまでも、政治は結果責任であると、こう申し上げてきました。私自身、その責任から逃れるつもりは毛頭ありません。内閣総理大臣として、国民の命と暮らしを守る。その大きな責任を先頭に立って果たしていく。その決意に変わりはありません」

 NHKの松本記者は特にクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号内新型コロナウイルス集団感染に関わる政府対応を標的にしてのことなのだろう、「反省すべき点」についてどう考えるのかと尋ねた上に結果責任まで俎上に載せた。

 要するに政府対応は正当ではなかったとする否定的立場から結果責任を取るのかどうなのかと迫った。対して安倍晋三は政府対応が「常に正しい判断だったかということについて、教訓を学びながら自ら省みることも大切です」と言いながら、政府対応の正当性如何に関しては触れないまま、つまり「省みることも」せずに、そのような教訓は何一つ役に立たないはずだが、「教訓を学びながら、未来に向かっていかしていきたいと考えています」と尤もらしさだけを政府対応に装わせている。

 当然、「前例に捉われることなく、国民の健康と安全を守るために必要な対策を躊躇なく講じてきたところであります」云々も正当性如何の判断を依拠させていない「対策」ということになって、以後の政府の対応自体にしても信用できないことになる。

 政府対応の正当性如何について何一つ省みていないことは次の質問に対する答弁にも現れている。 

  AP通信山口記者(記者)「クルーズ船の『ダイヤモンド・プリンセス』では700人以上の乗客・乗員が感染するなど、検疫や船内での感染予防対策にも課題があると指摘されました。
 引き続き、国内でも感染が拡大する中、東京オリンピックを控え、特に日本としての危機管理能力が、今、試され、国際社会から注目されていると思うのですが、これまでのところで得られた教訓はどういうことであり、これを今後どのようにいかしていかれるかということを教えてください」

 安倍晋三「ダイヤモンド・プリンセス号については、多数かつ多様な国籍の方々が乗船する大型客船内でのウイルス集団感染という、初めて直面する事態への対応が求められたところであります。

 クルーズ船の乗客や乗員の皆様に対しては、船内で感染が初めて確認された2月5日から、順次、全員にPCR検査を行うとともに、14日間の健康観察期間を設定し、感染拡大防止に最大限の措置を講じてきました。

 こういった状況の中で、チャーター便対応で得られた知見や、そして船内での感染拡大防止が有効に行われていたという専門家の御指摘も踏まえて、発症がなく観察期間を終了した方々について下船をしていただくという判断をしたところであります。

 国内における感染拡大を受けて、政府においては今が正に感染の流行を早期に収束させるために重要な時期であると認識をしています。対策の基本方針を踏まえて、時々刻々と変化する状況を踏まえながら、地方自治体や医療関係者、事業者、そして国民の皆様と一丸となって、先手先手で必要な対策を総動員して、躊躇なく実施をしてまいる所存でございますが、オリンピック・パラリンピックを控えているところでございますが、バッハ会長がですね、IOCからは、日本の迅速な対応について評価を得ているところであります。

 バッハ会長も、2020年東京大会が成功するよう全力を注ぐと発言をしておられます。我々は、この状況をなるべく早期に克服をし、アスリートの皆さん、観客の皆さんが安心して臨める、安全な大会、そのための準備をしっかりと進めていきたいと、こう考えています」

 AP通信の山口記者にしても、「700人以上の乗客・乗員が感染するなど、検疫や船内での感染予防対策にも課題があると指摘されました」との発言で「ダイヤモンド・プリンセス」号の集団感染に関わる政府対応の正当性如何を否定的立場から俎上に載せた。

 その上で東京オリンピックを控えている現在、「日本としての危機管理能力」が試されているが、これまでの政府対応から学んだ教訓は何かということと、その教訓の危機管理への活かし方を尋ねた。要するに安倍晋三がNHKの松本記者に講釈を垂れた教訓話に信を置いていなかったことになる。

 ところが安倍晋三はNHKの松本記者に対してと同じように政府対応の正当性如何に自ら自身がまともに向き合う謙虚な姿勢を見せることなく、「船内での感染拡大防止が有効に行われていたという専門家の御指摘」を根拠に政府対応の正当性のみを主張、さらに「バッハ会長がですね、IOCからは、日本の迅速な対応について評価を得ているところであります」と、その評価を基に政府対応の正当性を二重に保証、東京オリンピックに向けた自らの危機管理能力に太鼓判を押している。

 政府は「ダイヤモンド・プリンセス」号感染対応では安倍晋三を陣頭指揮に「船内で感染が初めて確認された2月5日から」「14日間の健康観察期間を設定」、その期間内に検査で陽性が出た乗客・乗員は順次病院等に搬送、14日目の2月19日から検査で陰性の乗客を順次下船させていったが、この「14日間の健康観察期間」後の陰性を下船の絶対条件とするためには14日間内に感染ゼロと見ていなければならないし、事実、感染ゼロと見ていた。

 当たり前のことがだ、14日間内の感染の可能性を疑っていたなら、例え下船させたとしても、一定の場所に隔離した上で陰性判定からさらに「14日間の健康観察期間」を設けて、感染の有無を再確認しなければならなかった。

 だが、安倍晋三陣頭指揮の日本政府はそのような措置は取らずに下船後、新幹線やタクシー、その他の思い思いの交通手段を使った帰宅を許可した。その中から、2020年3月6日現在、〈健康観察終了後に下船した乗客・乗員(下船時PCR検査陰性)で、その後PCR検査陽性が判明した6名(但し、外国のチャーター機で帰国後に陽性が判明した者は含まない)。〉と、「厚労省」は下船後の陽性化を伝えている。

 つまり2月5日からの「14日間の健康観察期間」の初期にではなく、中盤から終盤にかけて感染した乗客・乗員が存在していて、14日終了後に陽性反応が出る量のウイルスに成長、各症状が出て、病院の診察を受け、陽性と確認されるに至った。

 この状況は安倍晋三の「感染拡大防止に最大限の措置を講じてきました」の言葉をウソにする。

 「ダイヤモンド・プリンセス」号から自国の乗客を引き取った外国政府は下船後に「14日間の健康観察期間」を設けて、その期間内に陰性から陽性に転じた乗客も出ている。

 厚労相の加藤勝信は陰性の乗客を公共交通機関等を用いて帰宅させた理由を2020年2月15日の「記者会見」で述べている。

 加藤勝信「国立感染研究所は、武漢からのチャーター便1便から3便までのPCR検査の結果、565人が陰性、また陽性の1名についてもウイルス排出量は陰性に近いレベルであったことを踏まえ、14日間の健康観察期間中に発熱その他の呼吸器症状が無く、かつ、当該期間中に受けたPCR検査の結果が陰性であれば、14日間経過後に公共交通機関等を用いて移動しても差し支えないとの見解を示したところであります」

 要するに武漢からの帰国者の例に習って、「ダイヤモンド・プリンセス」号の陰性乗客に関しても同じ方法を取るに至った。集団で隔離させておきながら、「14日間の健康観察期間」中の感染の危険性を些かも疑っていなかった。
 このようなノー天気な危機管理であったにも関わらず、安倍晋三は「船内での感染拡大防止が有効に行われていたという専門家の御指摘」を錦の御旗に自己の危機管理能力を正当化し、さらに「バッハ会長がですね、IOCからは、日本の迅速な対応について評価を得ているところであります」云々とバッハ会長の評価まで取り込んで、自らの正当化の傍証とする。

 何事も自分の目と頭で批判と向き合って、自身の対応の正当性如何を冷静に検証、改めるべき問題点と改めなくてもいい問題点を仕分けして、改めるべき問題点に至った原因を明らかにし、その原因を次の一手の教訓とするのではなく、教訓は口ばかりで、全てを正当化する。自身にも至らない点があるということを素直に認めることができなくて、欠点のない政治家、総理・総裁であることの自己顕示一辺倒に偏った姿勢を貫く。

 このような自己顕示一辺倒の姿勢は自己愛性パーソナリティ障害真っ只中に自己を存在させていることに起因している。自己愛性パーソナリティ障害の自分は優れていて間違いのない偉大な存在だとする思い込みが強いる余裕のない姿勢が国会質疑で批判を受けると、総理大臣でありながら、自席から総理大臣にあるまじきヤジを自らに誘発させることになる。

 また、自己愛性パーソナリティ障害者は常に性善説に立って自己を評価する。自分を自分で性善説で捉えるから、始末に悪い。

 立憲民主党の参議院議員牧山ひろえが船内で乗員が提供した飲食物や乗客の散歩が集団感染の要因の一つとなったのではないかと質した質問主意書に対して3月6日、安倍晋三議長の閣議が、「今回のクルーズ船に関する政府の対応については、今後しっかりと検証していく」としていながらも、乗員は国立感染症研究所などが作成した感染予防策に基づき、飲食物の調理から乗客への提供に至るまで、常にマスクを着けるなどの適切な措置を取っていたとし、乗客に対しては専門家の了解を得て厚生労働省が作成した「船内行動における注意事項」を示し、定期的に散歩などの軽い運動を勧めるとともに乗客同士は2メートルの間隔を取るよう周知していたとする政府答弁書を閣議決定したと、2020年3月6日付
「NHK NEWS WEB」
記事が伝えているが、政府答弁書のこの内容も、下船後の陽性反応の続出から容易に判断できる「14日間の健康観察期間」内の船内集団感染をなかった話にして、安倍晋三率いる政府対応の瑕疵を無視する性善説で成り立たせている。

 安倍晋三が自己愛性パーソナリティ障害を患っていて、自分自身を性善説で立たせている以上、どのような検証であろうと、同根の性善説に立たせた検証しか期待できないはずだ。

 政府答弁書は「ダイヤモンド・プリンセス」号の乗員は「飲食物の調理から乗客への提供に至るまで、常にマスクを着けるなどの適切な措置を取っていた」として船内感染を否定しているが、乗員はマスクだけではなく、手袋までして客室に待機させた乗客に対してルームサービスを行っている。

 ところが、クルーズ船内で船内業務に当たっていた検疫官1人と災害派遣医療チーム(DMAT)の30代男性看護師1人を感染せいている。《クルーズ船内で医療救護活動に従事されている皆様へ》(厚労省/2020年2月14日)と題した記事には検疫官が感染に至った原因を挙げている。

・マスクと手袋を着用していたものの、交換頻度が十分でなかったこと
・手袋を着用したまま目や鼻、口などの粘膜を触れた可能性があること
・検体採取時に使用し汚染物質が付着した可能性のある防護服に必要な感染防護をしないまま接触した可能性があること

 そして結論として、〈厳しい業務スケジュールの中、基本的な感染防護策が徹底されていなかったことが、その後の疫学調査により判明しております。〉としている。

 この検疫官だけではなく、災害派遣医療チーム(DMAT)の30代男性看護師にしても、ウイルス感染に関わるそれなりの専門性を身に着け、その専門性に従って行動していたはずである。いくら忙しくても、この行動基準から離れてはならない。にも関わらず、基本的な感染防護策を徹底することができずに感染させてしまった。

 乗員は常にマスクを着けて適切な措置を取っていた。「厚労省」サイトには、〈乗員については、ほぼすべてに対して講習を行い、症状がない状態で勤務中の乗員に対しても、業務中は必ずマスクと手袋を着用する、手指をアルコール消毒する手指衛生を行う、食事を離れてとる、船内の乗員の各居室への消毒用アルコールの設置など衛生環境の整備を行うことなどを徹底してきました。〉と、講習まで行ってマスクだけではなく、手袋の着用、その他の徹底を謀ったとしているが、感染に対する専門家であるにも関わらず、基本的な感染防護策を徹底できなかった検疫官と看護師が存在することを考えると、乗員たちが果たして俄仕込みの講習だけで、どれ程の専門性を身に着け、どれ程の専門性に従って行動できたとすることができたのか、甚だ疑わしい。

 クルーズ船内ではオープンデッキのある客室乗客のみオープンデッキへの外出が許され、窓やバルコニーのない部屋に滞在する乗客はグループ分けをして時間限定の散歩を許されていて、外出時はゴム手袋とマスクの着用が義務付けられていたというが、乗員が客室にムールサービスに訪れる際も、乗客はゴム手袋とマスクを着用していたのだろうか。手袋をしたまま皿に触れたり、ナイフとフォークを手に取って食事をしたのだろうか。

 乗員が客室から出ていくとき、ドアノブに触れる。乗員が去ってから、そのドアノブを手袋を着用したままアルコールで消毒するよう指導したのだろうか。そしてその手袋の交換頻度を決めて、決められたとおりに交換するように指示していたのだろうか。手袋の着用中はその手袋を着けたまま、目や鼻、口などに触れないように厳しく注意していたのだろうか。

 そうしていたという報道は目に触れないから、そうしていたとは思えないが、いずれにしても陰性で下船後に陽性反応が出た乗客・乗員が存在していたということは「14日間の健康観察期間」中に集団感染が発生していたことは否定できない。

 だが、安倍晋三は常に性善説に立って自己を評価する自己愛性パーソナリティ障害にも災いされて、「船内での感染拡大防止が有効に行われていたという専門家の御指摘」を百万の味方につけて、集団感染から目を背けている。

 自己愛性パーソナリティ障害という姿自体が周囲からの批判や反対を受け入れることができず、事実を見る目を持たない「裸の王様」の姿を取っていることを示しているが、批判に曝される程に自己性善説を失いたくない防御本能から「裸の王様」の度合いを深めていく。

 このことは長期政権にも関係しているはずだ。誰にも真似ができないような任期期間中の政治成果と共に長い任期を記録付けるためにも、いつの日かは任期の終わりを告げる事情についても、誰にも批判されない、惜しまれる終わりを望む関係から、批判を恐れ、批判から退陣に追い込まれることを恐れて、ますます自分自身を性善説に立たせた自己愛性パーソナリティ障害にはまり込んでいく。

 このことは4月に予定していた中国の習近平主席の国賓訪日の延期を3月5日に正式に決定してから、中国と韓国からの日本人を含めた入国者の航空便を成田と関西の2空港到着に限定、中韓発給済みビザ効力の停止を翌日の3月6日に閣議決定と続けざまに発表した水際対策からも読み取ることができる。

 コロナウイルスの感染拡大阻止を優先させていたなら、もっと早い時期に決定すべきをこれらの水際対策だが、習近平訪日延期を境に矢継ぎ早に決定していることはコロナウイルス対策よりも習近平訪日を優先させていたことの何よりの証明であろう。

 いわば習近平国賓訪日を安倍晋三の政治史に残すべき政治的成果として何よりも優先させていた。だが、延期が決まって、批判が高まっているコロナウイルス感染防止の不手際をマイナスの政治成果としない用心から堰が切れたように次々と海外向け水際対策を打ち出すことになった。

 このように国民の生命や生活に影響するコロナウイルスの感染防止よりも習近平訪日を優先させたということは記者会見で「専門家の皆様の御意見も踏まえながら、前例に捉われることなく、国民の健康と安全を守るために必要な対策を躊躇なく講じてきたところであります」と発言していることとは裏腹に習近平訪日が自身の政治史に刻むことになる政治的金字塔に目が奪われていたことを示す。

 安倍晋三が自身の自己愛性パーソナリティ障害が深く関わっていることになる「裸の王様」でなければ、国民の生命・生活よりも自らの政治的金字塔に目が奪わることはない。

 2020年3月1日のNHK「日曜討論」で新型ウイルスに関する「政治の対応」を議論していたが、冒頭、自民党参議院幹事長の世耕弘成が「批判とか糾弾をしている段階ではなくて、行政政府がその能力を存分に発揮できるよう、サポートするべき時期だというふうに思っています」と、安倍晋三に対する批判封じに出たが、間違いは間違いで受け止め、批判は批判として受け止めて、受け止めたマイナスの情報を教訓として活かさなければ、裸の王様が下着姿で街を歩いていることに気づかない振りをした臣下たちのように安倍晋三の取り巻きたちの方からタダでさえ「裸の王様」である安倍晋三の「裸の王様」であることの存在性を一層高めることになる。

 結果、批判には目を向けない「裸の王様」として跋扈させることになる。自己愛性パーソナリティ障害の重症にも繋がり、国民の迷惑となる。
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安倍晋三の小中高特別支援臨時休校策はコロナウイルス対策初動対応の不手際から目を逸らさせるビックリ箱 子どもは親から引き離すのが得策

2020-03-02 12:37:33 | 政治
 安倍晋三が新型コロナウイルス感染拡大防止策の一つとして全国全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の2020年3月2日から春休みまでの臨時休校を要請した。

  「第15回新型コロナウイルス感染症対策本部」(首相官邸サイト/2020年2月27日)

 安倍晋三「一昨日、決定した対策の基本方針でお示ししたとおり、感染の流行を早期に終息させるためには、患者クラスターが次のクラスターを生み出すことを防止することが極めて重要であり、徹底した対策を講じるべきと考えております。

 北海道では、明日から道内全ての公立小・中学校が休校に、また、千葉県市川市でも、市内全ての公立学校が休校に入ります。このように、各地域において、子どもたちへの感染拡大を防止する努力がなされていますが、ここ1、2週間が極めて重要な時期であります。このため、政府といたしましては、何よりも、子どもたちの健康・安全を第一に考え、多くの子どもたちや教職員が、日常的に長時間集まることによる感染リスクにあらかじめ備える観点から、全国全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、来週3月2日から春休みまで、臨時休業を行うよう要請します。なお、入試や卒業式などを終えていない学校もあろうかと思いますので、これらを実施する場合には、感染防止のための措置を講じたり、必要最小限の人数に限って開催したりするなど、万全の対応をとっていただくよう、お願いします。

 そして2日後の2月29日に午後6時から物々しく記者会見を開いて、学校休校を含めた政府の今後の感染拡大防止対策についての説明を行った。今週発表の専門家の見解は感染拡大のスピード抑制は可能な現状にあるというもので、それゆえにこの一、二週間が終息に持っていけるかどうかの、いわばタイムリミットで(安倍晋三は「瀬戸際」という言葉を使った。)、この2週間程度を国内の感染拡大防止ためにあらゆる手を尽くす機会であると判断、その手の一つとして休校を挙げた。

 安倍晋三の独りよがりな休校に関する発言だけを取り上げてみる。

 「2020年2月29日安倍晋三記者会見」(首相官邸サイト/2020年2月29日)

 安倍晋三「集団による感染を如何に防ぐかが極めて重要です。大規模感染のリスクを回避するため、多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベントについては、中止、延期又は規模縮小などの対応を要請いたします。スポーツジムやビュッフェスタイルの会食で感染の拡大が見られる事例がありました。換気が悪く、密集した場所や不特定多数の人が接触するおそれが高い場所、形態での活動も当面控えていただくとともに、事業者の方々には、感染防止のための十分な措置を求めたいと思います。

 そして、全国すべての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、来週月曜日から春休みに入るまで、臨時休業を行うよう要請いたしました。子供たちにとって3月は学年の最後、卒業前、進学前の大切な時期です。学年を共に過ごした友達との思い出をつくるこの時期に、学校を休みとする措置を講じるのは断腸の思いです。卒業式については、感染防止のための措置を講じ、必要最小限の人数に限って開催するなど、万全の対応の下、実施していただきたいと考えています。

 学校が休みとなることで、親御さんには御負担をおかけいたします。とりわけ、小さなお子さんをお持ちの御家庭の皆さんには、本当に大変な御負担をおかけすることとなります。それでもなお、何よりも子供たちの健康、安全を第一に、多くの子供たちや教職員が日常的に長時間集まる、そして、同じ空間を共にすることによる感染リスクに備えなければならない。どうか御理解をいただきますようにお願いいたします。

 万が一にも、学校において子供たちへの集団感染のような事態を起こしてはならない。そうした思いの下に、今回の急な対応に全力を尽くしてくださっている自治体や教育現場の皆さんにも感謝申し上げます」
      ・・・・・・・・・・・・・・・
 【質疑応答】

 朝日新聞東岡記者「全国の小学校、中学校、高校などへの臨時休校の要請についてお伺いいたします。

 総理は27日に突然、発表しましたけれども、その日のうちに政府からの詳しい説明はありませんでした。学校や家庭などに大きな混乱を招きました。まず、説明が遅れたことについて、どうお考えになるかについてお伺いします。

 それから、今回の要請については与党内からも批判が出ています。国民生活や経済への影響、そして感染をどこまで抑えることができるかなどについて、どのような見通しを持っているのか、教えてください」

 安倍晋三「今回の要請に伴い、子供たちにとって学年の最後、卒業前、進学前の大切な時期に学校を休みとする、その決断を行わなければならないというのは、本当に断腸の思いであります。また、親御さんにも、地方自治体にも、あるいはまた教育関係者の皆様にも、大変な御負担をおかけすることとなります。

 それでもなお、これからの一、二週間が急速な拡大に進むのか、あるいは終息できるのかの瀬戸際との状況の中で、何よりも子供たちの健康、安全が第一である。学校において子供たちへの集団感染という事態は、何としても防がなければならない。そうした思いで決断をしたところであります。

 いわば、専門家の皆様も、あと一、二週間という判断をされた。いわば、判断に時間をかけているいとまはなかったわけでございます。十分な説明がなかった。与党も含めてですね、それは確かにそのとおりなのでありますが、しかし、それは責任ある立場として判断をしなければならなかったということで、どうか御理解を頂きたいと思います。

 その上で、これに伴う様々な課題に対しては、私の責任において、万全の対応を行ってまいります。今が正に感染拡大のスピードを抑制するために極めて重要な時期であります。国内の感染拡大を防止するためのあらゆる手を尽くしたい。尽くしていく考えであります。

 国民の皆様には、本当に大変な御苦労をおかけをいたすところでございますが、改めて、お一人お一人の御協力を深く深くお願い申し上げたいと思います」

 安倍晋三は「集団による感染を如何に防ぐかが極めて重要です」と強調している。だが、「ダイアモンド・プリンセス」号では集団感染を防ぐことができず、野放し状態に放置しておいて、よく言うよと言いたい。この失敗を成功に転ずることができるかどうか、その成否が、「今が正に感染拡大のスピードを抑制するために極めて重要な時期」と言っている発言の実効性を占うことになる。

 一方で安倍晋三は休校に関する十分な説明がなかったことを認めてはいるものの、この説明の中に第一番に入っていなければならない全国一律の休校が何が何でも必要とすることの合理的根拠の提示は完全に抜け落ちていて、どこを探しても見当たらない。記者会見の中で「危機にあっては、常に最悪の事態を想定し、あらかじめ備えることが重要です」と発言しているが、学校内の最悪の事態として集団感染を想定したことの合理的根拠についても触れずじまいとなっている。

 合理的根拠の提示を抜け落としたまま、あるいは触れずじまいのまま、学校での集団感染のリスクを言い、リスク回避を理由として休校に持っていくこの非合理性は
直視できる者は存在するだろうか。

 集団感染に関わる合理的根拠の提示があって初めて、全国一律の休校を必要とする、続いての合理的根拠の正当性が自ずと証明される。

 集団感染を最悪の事態として想定したことの合理的根拠を何ら提示しないままの冒頭発言の「万が一にも、学校において子供たちへの集団感染のような事態を起こしてはならない」の発言は、質疑応答での「学校において子供たちへの集団感染という事態は、何としても防がなければならない。そうした思いで(休校を)決断をしたところであります」の発言にしても、単に言葉だけで言っていることになる。

 これはオオカミ少年が「オオカミが来た、オオカミが来た」と言葉だけで脅して、村人を右往左往させたのと同類と化す。

 この記者会見から11日を遡る2020年2月18日付「BBCニュース」、《新型ウイルスで中国が初の大規模調査 「80%以上は軽度」》と題する記事は、〈中国の衛生当局は17日、新型コロナウイルスによる「COVID-19」に関する、初の大規模調査の結果を公表した。症例7万件以上について調べた〉としていて、うち〈中国全土の感染者4万4672人について細かく分類した〉発症例を分析別に纏めている。

◾感染者の80.9%は軽度に分類され、13.8%が重度、4.7%が致命的
◾致死率が最も高かったのは80歳以上で14.8%
◾9歳までの子どもに死者はいない。39歳までの致死率は0.2%と低い
◾致死率は40代が0.4%、50代が1.3%、60代が3.6%、70代が8%と、年齢層が上がるにつれ徐々に上昇
◾男女別では、男性(致死率2.8%)が女性(同1.7%)よりも死亡する確率が高い
◾既往症別の危険度では、心臓病が1位で、糖尿病、慢性呼吸疾患、高血圧が続く――

 「BBCニュース」記事は、〈9歳までの子どもに死者はいない。〉としているが、同じ内容を伝えている2020年2月19日付〈AFP〉記事は画像で10歳~19歳は死者1名と伝えている。
 当然、日本政府は中国の衛生当局に対して報道発表ではない、より詳しい分析内容の報告を求めたはずである。あるいは報道発表前に日本政府に対して報告があったのかもしれない。

 前者・後者いずれであっても、10歳~19歳の死者1名の死亡時の詳しい健康状態を問い合わせたはずである。「BBCニュース」が、〈既往症別の危険度では、心臓病が1位で、糖尿病、慢性呼吸疾患、高血圧が続く〉と分析内容を伝えている関係からも、既往症(今は直っているが、以前かかったことのある病気)、あるいは基礎疾患(ある病気や症状の原因となる病気。例えば、高血圧症・高脂血症・糖尿病は虚血性心疾患の基礎疾患とされる。)の有無について詳しく問い合わせたはずであるし、詳しい説明を受けたはずである。

 例え10歳~19歳死者1名の健康状態が良好、あるいは頑強の部類に入ったとしても、9歳以下の感染者数416人は全感染者数感染者数44672人に対して感染率は0.9%。10~19歳の感染者数549人は全感染者数感染者数44672人に対して感染率は1.2%で、この感染者数・感染率からは安倍晋三が言う学校での集団感染という状況は到底、見えてこない。

 致死率は高齢者程高くなっているが、19歳以下の感染者数・感染率が低いということ自体、感染が19歳以下には波及しにくいことを示していて、30歳以上から69歳までの感染者数が非常に多いということは19歳以下とは逆に感染が波及しやすいことを物語っているはずだ。

 この原因は年代別感染者数の多い少ないを見ると、思い当たることになる。感染者数のピークは50~59歳で、両隣の40~49歳と60~69歳がほぼ肩を並べていて、30~39歳が40~49歳と60~69歳に迫っている。この傾向からはこの年代が外出の機会と大人同士が群れる機会の多さとの比例を窺うことができる。

 つまり外出の機会と大人同士が群れる機会の多い大人同士は感染しやすいことの一つの証明となる。

 一方、19歳以下にしても、19歳以下同士で学校や幼稚園・保育園、あるいは託児所で群れる機会は多いものの、外出範囲は大人よりも狭くて、感染者数・感染率が低いということは19歳以下同士の感染、子どもから子どもへの感染が低いことを物語っていることになる。

 このことは子どもが家で父親や母親から感染することになる現実からも説明がつく。親が新型コロナウイルスを外から家に持ち帰って、子どもにうつすという例が少なからず生じているからである。インフルエンザの場合は逆で、幼児や子供が罹ると、母親や父親、あるいは兄弟・姉妹にうつって、家中が患者化するという事例が現実化している。

 子どもが新型コロナウイルスへの感染率の低いことは専門家が既に指摘していることだが、2020年2月29日付《WHO調査報告書 症状の特徴・致死率など詳しい分析明らかに》と題したと「NHK NEWS WEB」記事は感染者の各症状と共に、〈子どもの感染について報告書では多くが家庭内での濃厚接触者を調べる過程で見つかったとしたうえで、調査チームが聞き取りを行った範囲では、子どもから大人に感染したと話す人はいなかったと指摘しています。〉と伝えていて、子どもから大人への感染例をゼロとしているが、あくまでも「調査チームが聞き取りを行った範囲」の限定付きだから、ゼロを絶対とすることができないが、少なくとも子どもから子どもへの感染と共に子どもから大人への感染が少ない、それも非常に少ないということは指摘できる。

 但し大人から子どもへの感染が現実に存在する以上、学校教室での教師から生徒である子どもへの感染は決してゼロだとは断言できない。だからと言って、こういった予想のもとに安倍晋三が2月29日の記者会見で次の発言をしたのかどうかは疑わしい。

 安倍晋三「学校が休みとなることで、親御さんには御負担をおかけいたします。とりわけ、小さなお子さんをお持ちの御家庭の皆さんには、本当に大変な御負担をおかけすることとなります。それでもなお、何よりも子供たちの健康、安全を第一に、多くの子供たちや教職員が日常的に長時間集まる、そして、同じ空間を共にすることによる感染リスクに備えなければならない。どうか御理解をいただきますようにお願いいたします」

 要するに「多くの子供たちや教職員」が日常的に長い時間に亘って時空を共にすることが学校での集団感染リスクとなる。その備えが臨時休校だということになるが、子どもから子どもへの感染例の少なさを考慮に入れた場合、教師から子どもへの感染のリスクを家庭での大人から子どもへの感染リスクよりも低く抑えることは不可能ではない。

 新型コロナウイルスの感染予防は接触感染を防ぐために手と日常的に手が触れる場所の消毒と飛沫感染を防ぐためのマスク着用、さらに2 メートル程度の対人距離の確保が求められているが、消毒実施やマスク着用は勿論、対人距離確保は教員室では確保が難しければ、空いている教室を第2教員室、あるいはさらに増やして第3教員室として、教師を2箇所、3箇所に分散することで2メールの対人距離確保の用に供すれば、感染リスク抑制の一つの手となる。

 そのほかにマスクを付けたままの教師同士の会話はマスクの中に唾が付着することになり、その唾が物に触れたり他者に触れることを防ぐために禁止して、パソコンやスマホのメールで会話をすれば、感染リスク抑制の一手となる。

 教室での教師から生徒への感染リスクの低減は頻繁な消毒実施やマスク着用は当然のこととして、最後尾の生徒の席を背後の壁につけて、それより前の席を順次下げていき、最前列の生徒と教師との距離を2メートルに向けて可能な限り取ること、教師は授業中、通路を巡回することを禁止して、教卓から離れずにいること、生徒との会話は頭に固定して、口元でフリーハンズで使うのことができる小型マイクと、マイクとつながっていて、首から下げることのできる手のひらサイズの小型スピーカーを用いれば、小声で話しても全生徒に伝わり、唾がマスク内に貯まることを防ぎ、当然、マスクから溢れる恐れを少なくできるといったことを実行することで可能となる。

 さらに政府は公立小中高の熱中症対策として2018年度補正予算に822億円を計上、2019年年9月1日現在で設置率は78.4%。2019年度末には9割に達する見込みだとしていたが、未設置の教室は早急に全て設置して、30℃以上の環境ではウイルスの生存期間はより短くなるということだが、30℃も温度を上げることができないものの、今の時期の教室を暖房し、一定時間ごとに全ての窓を全開にして、空気を入れ替えるようにすれば、密閉空間でウイルス量が多い場合は高まるとされている感染リスクを抑えることができる。

 窓を開ける際には温度を少し高めにすれば、窓を開け放す時間を長めに取ることもできる。

 この空気の入れ替えは生徒同士が対人距離を2メートル以上に保つことができなくても、生徒から生徒への感染の確率が低いことと併せて、感染リスクを低減する十分な要件となり得る。

 様々なことを工夫すれば、学校での感染は防ぐことができる。にも関わらず、安倍晋三は合理的根拠の提示もなしに学校での集団感染の危険性を言い立てて、突然の学校休校に持っていって、さも新型コロナウイルス対策に有効・有能に取り組んでいるかのようなポーズを取った。

 オオカミ少年が「オオカミが来た、オオカミが来た」と言葉だけで脅して、村人を右往左往させたように突然の休校で保護者や学校関係者を右往左往させただけではなく、学校を管轄する自治体までをも右往左往させた。

 この強制的右往左往は新型コロナウイルス対策に有効・有能に取り組んでいるかのようなポーズを見せようとしたことの結果ではあるが、「ダイアモンド・プリンセス」号の感染対応でヒトからヒトへの感染を軽く見て、結果的に集団感染を招いた初動対応の不手際から目を逸らさせるために必要としたポーズであり、そのポーズを有効たらしめるために用意した休校という名のビックリ箱の提供なのだろう。

 でなければ、休校とすることの合理的根拠を提示できるはずである。

 人々の目はすっかり休校とその影響を受けて右往左往する関係者に向けられることになって、「ダイアモンド・プリンセス」号の集団感染からはすっかり目が背けられることになっている。

 「ダイアモンド・プリンセス」号の感染対応で集団感染を招く原因となったヒトからヒトへの感染への軽視の例を一つだけ挙げてみる。

 2020年2月5日に船内で感染が初めて確認された。既に中国でヒトからヒトへの感染が始まっている感染状況を鑑みて、クルーズ船の寄港地であった鹿児島県や沖縄県に対してヒトからヒトへの感染の危険性を重視、乗客・乗員との接触者の健康状況を把握するよう要請、、確認しなければならなかった。

 ところが沖縄県で最初の感染者となった60代のタクシー運転手の女性の場合は2月1日に那覇に寄港した際に4人の乗客を乗せ、2月5日から咳がひどくなるなどの症状が出て、2月13日から感染症の指定医療機関に入院。沖縄県が検査を行った結果、2月14日に陽性が判明した。

 もし厚労省が船内で感染が初めて確認された2020年2月5日の時点で早急に沖縄県に対して確認を要請していたなら、2月5日に既に咳がひどくなっていたのだから、直ちに感染有無の検体採取、検査へと進まなければならなかったはずだが、2月5日の咳の発症から13日の感染症指定医療機関への入院までに8日もかかっている。このように8日も日を置かなければならかったということはヒトからヒトへの感染を軽視していたことの結果としか証明できない。

 例え結果的に陽性であったとしても、危機管理として感染の危険性が高い濃厚接触対象者としての扱いだけはしなければならなかったにも関わらず、そのような扱いは何もしていなかった。

 「ダイアモンド・プリンセス」号の感染対応でヒトからヒトへの感染の危険性に敏感であったなら、船の寄港地に対してもこの危険性のアンテナを張り巡らしていたはずであるが、張り巡らしてはいなかった。

 寄港地でのこの軽視はクルーズ船での軽視と対応しているはずで、この軽視が既に触れたように集団感染の原因となった。

 安倍晋三としたら、消去してしまいたい事実であり、ビックリ箱に替えることで、消去紛いを強行したということなのだろう。

 子供の感染を防ぐためには学校を休校にして子どもを親と密着させるよりも、逆に親や大人からひ離す方が得策であるはずである。

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「桜を見る会」私物化:安倍晋三は自分から首を差し出すような答弁はしない覚悟で野党は追及すべし/全日空ホテルはパーティー運営規則を「一般論」で扱うことはできない

2020-02-24 13:02:38 | 政治
 2020年2月17日衆議院予算委員会での立憲民主党の辻元清美質疑全文を「活動ブログ 辻元清美WEB」(2020.2.17)に自身の手で紹介している。

 辻元清美はそこで「桜を見る会」前夜祭パーティーの領収書と明細書を出して貰いたいと要求した。対して安倍晋三からはいつもどおりの答弁が帰ってきた。

 安倍晋三「夕食会の主催者は安倍晋三後援会であり、同夕食会の各段取りについては、私の事務所の職員が会場であるホテル側と相談を行っております。事務所に確認を行った結果、その過程において、ホテル側から見積書等の発行はなかったとのことであります。

 そして、参加者一人当たり5000円という価格については、800人規模を前提にその大多数が当該ホテルの宿泊者であるという事実等を踏まえ、ホテル側が設定した価格であり、価格以上のサービスが提供されたというわけでは決してなく、ホテル側において当該価格設定どおりのサービスが提供されたものと承知をしております。

 なお、ホテル側との合意に基づき、夕食会の入り口において、安倍事務所の職員が一人5千円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受け付け終了後に、集金した全ての現金をその場でホテル側に渡すという形で参加者からホテル側への支払いがなされたものとしておりまして、安倍事務所には一切収支は発生していないということでございます。

 また、既に御報告をさせていただいておりますが、明細書につきましては、ホテル側が、これは営業秘密にもかかわることであり、お示しをすることはできない、こう述べている、こういうことでございます。

 そして、領収書につきましては、これは一部新聞等にそのときの領収書が写真つきで出されているということを承知をしておりますが、これはまさに、出席者とホテル側との間で現金の支払いとそして領収書の発行がなされたものであり、私の事務所からこれは指図できるものではない、こういうことでございます」

  辻元清貴は手もなく同じ答弁を引き出したわけではなかった。隠し玉を用意していて、その効果を高めるために仕掛けたワナであった。但しその効果の有無は別問題である。文飾は当方。

 辻元清美「私、どうしても納得いかないので、ホテルに問合せをいたしました。ANAインターコンチネンタルホテル東京、全日空ホテルから文書で回答が参りました。ちょっと読ませていただきます。2013年以降の七年間に貴ホテルで開かれたパーティー、宴席についてお伺いします。この7年間の間に、これですけれども(全日空ホテルからの回答用紙を示す)、7年間の間に3回総理は前夜祭を開いております。貴ホテルが見積書や請求明細書を主催者側に発行しないケースがあったでしょうか、この7年間に。回答、ございません。主催者に対して見積書や請求明細書を発行いたします。

 総理の答弁と違うじゃないですか。いかがですか」

 安倍晋三それは、安倍事務所にということですか

 辻元清美「2013年から7年間に開かれた全日空ホテルでのパーティー、宴席全てについてでございます」

 安倍晋三それは、安倍事務所との間でどうなっていたかということについてお問合せをいただきたい、こう思うわけでございまして、その場においては、事務所から、それはいわば人数が多いものでありますから取りまとめを行ったということでございますが、明細書はいただいていない、こういうことでございます」

 辻元清美「次に、領収書の話です。個人、団体を問わず、貴ホテルの担当者が金額などを手書きし、宛名は空欄のまま領収書を発行したケースはあったでしょうか。回答、ございません。弊ホテルが発行する領収書において宛名を空欄のまま発行することはございません。文書で回答が来ております。

 これも総理の答弁と真っ向から違います。虚偽の答弁だとは断定はいたしません。しかし、全日空ホテルからは宛名が空欄の領収書は発行されていないんじゃないですか」

 安倍晋三それは、私の事務所で開いたものということでおっしゃっているんでしょうか。恐らくそうではないんだろう、こう思うわけでございまして……」(発言する者あり)

 棚橋委員長「御静粛にお願いいたします」

 安倍晋三ニューオータニ側においては、安倍事務所との関係においてはそうした領収書を発行していると述べている、こういうことでございます」(発言する者あり)

 棚橋委員長「お願いですから、御静粛に」

 安倍晋三「ということで、述べているわけでございます。

 そして、ニューオータニ側は、私の事務所においては、今申し上げた形でこれは領収書を出している。つまり、宴会場においては全て手書きで出していて、金額を入れ、担当者の名前を入れ、出しているということでございます。

 また、全日空ホテルについても、我々、全日空ホテル側と事務所が話をしているわけ、いわばこの件についても問合せをしているわけでございますが、その点を事務所の方としては問い合わせて確認をしているということでございました」

 辻元清美「全日空ホテルでは、7回のうちに3回、2013年、14年、16年、行っております。全日空ホテルに問合せをしたら、明細書も発行していない、そして、宛名のない領収書を全日空ホテルが一人一人に手渡しをした、そのように職員が確認をしたということでよろしいですか」

 安倍晋三「全日空側は宛名なしの領収書を発行したということで間違いはございません」(発言する者あり)

 棚橋委員長「御静粛に。辻元君の声が聞こえません」

 辻元清美「これは、私が問い合わせましたのは、もう一度申し上げます、2013年以降の7年間に、貴ホテル、全日空ホテルで開かれたパーティー、宴席全てについて問い合わせておりますので、この中に総理の3回の前夜祭も入っているんです。請求明細書、これは請求書のことですよ、発行している。領収書、宛名のないのなんか出しませんとおっしゃっているわけですよ。

 そしてこれも聞きました。ホテル主催ではない数百人規模のパーティー、宴会で、代金を主催者ではなく参加者個人一人一人から会費形式で貴ホテルが受け取ることはありましたか。回答、ございません。ホテル主催の宴席を除いて、代金は主催者からまとめてお支払いいただきます。

 総理が、一人一人と契約をして、会費を、参加費をホテルが、があっと集めたものをごっそり持っていって、支払いだと。一人一人からということは、ホテル主催の宴席、自分のところがやっている宴席以外は一切やっていないと言っているんですよ。この答弁も、総理の答弁が事実と違うんじゃないですか。いかがですか」

 安倍晋三「今、主催者とおっしゃいましたよね。ですから、私が従来から答弁をさせていただいておりますように、主催者は安倍事務所ではないわけでございます。そして、安倍事務所が……」(発言する者あり)

 安倍晋三「いや、主催者は安倍事務所ではないわけでございます。(発言する者あり)そしていわば契約主体は個々の参加者であるということでございまして、この件におきましても、事務所側は、ニューオータニ側とも、また全日空側とも話をしているところでございまして、繰り返しになりますが、宛名のない領収書で書いている、いわば支払いを行っているということにおいては間違いがないということは申し上げておきたい、このように考えます。

 辻元清美それは、全日空側と職員が打合せをして、そして、普通とは違う特別なやり方を安倍事務所側がお願いしたということでよろしいですか

 安倍晋三「これは繰り返しになるわけでございますが、これは、そうした参加者一人当たり5千円という価格につきましては、8百人規模を前提に、その大多数が当該ホテルの宿泊者であるという事情を踏まえましてホテル側が設定したわけでございまして、そうした形式につきましてもホテル側が了解をしているところでございます。価格分以上のサービスが提供されたというわけでは決してなくて、ホテル側において当該価格設定どおりのサービスが提供されたものと承知をしております。

 そして、ホテル側との合意に基づいて、夕食会場入り口の受付において、安倍事務所の職員が一人五千円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受け付け終了後に、集金した全ての現金をその場でホテル側に渡すという形で参加者からホテル側への支払いがなされた。これは、ニューオータニにおきましても全日空におきましても同じであるというふうに承知をしております」

 辻元清美「そうしますと、全日空ホテルからの回答、主催者、これは安倍晋三後援会です、この場合は、安倍総理の場合は。見積書や請求明細書を発行いたします、これ、言ってみれば、安倍総理が全日空ホテルを使った期間全部にやっていると言っている。そして、宛名のない領収書は発行いたしませんと言っている。そしてさらに、ホテル主催の宴席を除いて、代金は主催者からまとめて支払う。私は、参加者個人一人一人から会費方式で受け取ることはあるかと。ございませんと回答しているんです。これ、総理の前夜祭も入っていますよ、この7年間に。

 では、一般はこうだけれども、安倍事務所は全日空ホテルと特別に、この間も特別の関係みたいな話がありましたから、一般とは違うやり方でやった、全日空ホテルはこう言っているけれども、安倍事務所は特別に御配慮をいただいたという理解でいいですか

 安倍晋三「それは、辻元さんの事務所と全日空ホテルがどういう前提でどういうやりとりをされたかということを、私、承知をしておりませんから、お答えのしようがないのでございます。

 例えばニューオータニとのやりとりにおきましても……」( 辻元委員「いや、全日空の話だからニューオータニは要らない」と呼ぶ)(発言する者あり)

 棚橋泰文「頼むから、静かにお願いします」

 安倍晋三「いやいや、御党におきまして、5千円で可能か、こういう形で5千円で可能かといえば、可能ではないという回答があったということは承知をしております。でも、そのときにさまざまな前提条件もつけられたと伺っております。

 そういう中においてはそういうことになるわけでございますが、今、しかし、ニューオータニは、その後、いわば条件によってはそういうことも可能だということを述べているところでございまして、いわば辻元委員がこの私の事務所を含めてということを先方に聞いたのかどうかということでございますが、そういうことではないのではないかと思うわけでございまして……」(発言する者あり)

 棚橋泰文「お願いですから、お静かに。傍聴席の方には特に申し上げます」

 安倍晋三「まさにこれは、今、辻元委員から御質問をいただきましたから、全日空側にも我々も確かめさせていただきたい、このように思います。

 辻元清美「私は条件はつけておりません。2013年以降の7年間に、貴ホテルで開かれたパーティー、宴席、全てについてどうだったかということしか聞いておりません。

 そして、もう一問聞きました。主催者が政治家及び政治家関連の団体であることから対応は変えたことはありますかという質問をいたしました、この七年間。回答、ございません。
 総理、ごらんになりますか、これ。どうぞ(全日空ホテルからの回答用紙を差し出す)、ごらんになったらどうですか。どうぞ、いかがですか」

(以下略)

> 上記「(活動ブログ 辻元清美WEB」に、 《ANAインターコンチネンタルホテル東京からの回答文書》が載せてあるから、参考までに。

 辻元清美は最後に全日空ホテルが辻元清美の問い合わせに対してこのような回答を文書で出したのかどうか、「午後の委員会までに確認をして頂きたい」と要求、安倍晋三が「事務所に当たらせる」と約束、質疑は終わる。

 安倍晋三側の確認によって展開は変わる可能性はあるが、この質疑に関しては辻元清美の隠し玉は不発に終わった。安倍晋三の自分の首を差し出すような答弁は、なかなかドッコイ、するはずはなく、口を滑らさない強かさは野党議員の比ではなく、強弁を用いてまで言い抜ける名人となっている。野党議員はこのことを覚悟して質問に立っているのだろうか。

 全日空の回答で重要な点は、「主催者が政治家及び政治家関連の団体であることから、対応を変えたことはありますか、この七年間に」との辻元清美の問いに「ございません」となっていることである。

 辻元清美は質疑終了間際に再度、「もう一度申し上げますけれども、主催者が政治家及び政治家関連の団体であることから、対応を変えたことはありますか、この七年間に。文書で私は問合せをいたしました。ございませんが全日空ホテルの回答でございます」と繰り返している。

 辻元清美のこの問いと全日空側の回答に対して安倍晋三は直接的には何も答えていないが、全日空側回答のそれぞれに対して文飾を施した発言で反応を示しているところが重要になる。ここに並べてみる。

 全日空が、〈この7年間に見積書や請求明細書を主催者側に発行しないケースがはございません。発行致します。〉としていることに対して、安倍晋三は「それは、安倍事務所にということですか」と尋ねている。

 この答弁の裏を返すと、安倍事務所に対しては発行しないケースになっていたとの言い立てとなる。

 安倍晋三のこの言い立てに対して辻元清美が「2013年から7年間に開かれた全日空ホテルでのパーティー、宴席全てについての問い合わせで、この中に3回の安倍後援会事務所の前夜祭も入っている」といった趣旨でなお追及すると、「それは、安倍事務所との間でどうなっていたかということについてお問合せをいただきたい」と答弁。

 要するに安倍事務所は特別扱いとなっていた、あるいは特別待遇を受けていたとの意味を取ることになる。

 全日空ホテル側の領収書の宛名を空欄のまま発行することはないとする回答に対しては、「それは、私の事務所で開いたものということでおっしゃっているんでしょうか。恐らくそうではないんだろう、こう思うわけでございまして……

 この答弁も特別扱い、特別待遇の主張、それも正々堂々の主張となっている。

 その上で安倍晋三はホテルニューオータニの例を出して、自己正当性の補強をしている。

 「ニューオータニ側においては、安倍事務所との関係においてはそうした領収書を発行していると述べている、こういうことでございます

 つまり安倍事務所は全日空ホテルからだけではなく、ホテルニューオータニからも特別扱い、特別待遇を受けていた。

 要するに安倍晋三は辻元清美との質疑で全日空ホテル側は一般的なパーティー運営規則を回答で示しただけで、全日空ホテルと安倍事務所との関係を前提とした回答ではないとして、全日空ホテルの回答を安倍晋三後援会事務所「桜を見る会」前夜祭パーティーへの適用無効を言い立て、自身の全ての国会答弁の正当性に替えた。

 辻元清美の折角の隠し玉は不発に終わったが、引っ込めるわけにもいかず、安倍晋三の正当性と線路はどこまでも続く体の平行線を辿ることになった。但し辻元清美は全日空ホテル回答の前夜祭パーティーへの適用無効の安倍晋三の言い立ての如何わしさには気づいていた。

 「それは、全日空側と職員が打合せをして、そして、普通とは違う特別なやり方を安倍事務所側がお願いしたということでよろしいですか

 「一般はこうだけれども、安倍事務所は全日空ホテルと特別に、この間も特別の関係みたいな話がありましたから、一般とは違うやり方でやった、全日空ホテルはこう言っているけれども、安倍事務所は特別に御配慮をいただいたという理解でいいですか」

 辻元清美はこのようにホテル側の安倍後援会事務所への特別扱い、特別待遇に気づきはしたが、深追いはせず、あくまでも全日空側の回答と安倍晋三の答弁との矛盾に拘った。

 辻元清美の前者の追及に対して安倍晋三はいつもの答弁を用いて、パーテイ会費の妥当性、領収書発行と集金方法の経緯を述べ、後者の追及に対しては「辻元さんの事務所と全日空ホテルがどういう前提でどういうやりとりをされたかということを、私、承知をしておりませんから、お答えのしようがない」でかわしている。

 ホテル側の安倍事務所に対する、あるいは安倍晋三という存在にに対する特別扱い、特別待遇とは辻元清美の問い合わせに対する全日空ホテルの回答にある事柄の免除と言うことになる。

 「2013年以降の7年間に貴ホテルで開かれたパーティー、宴席に関して貴ホテルが見積書や請求明細書を主催者側に発行しないケースがあったでしょうか」の問い合わせに対する「回答、ございません。主催者に対して見積書や請求明細書を発行いたします」としている規則の免除であり、 「個人、団体を問わず、貴ホテルの担当者が金額などを手書きし、宛名は空欄のまま領収書を発行したケースはあったでしょうか」の問い合わせに対する「回答、ございません。弊ホテルが発行する領収書において宛名を空欄のまま発行することはございません」としている規則の免除であり、「ホテル主催ではない数百人規模のパーティー、宴会で、代金を主催者ではなく参加者個人一人一人から会費形式で貴ホテルが受け取ることはありましたか」の問い合わせに対する「回答、ございません。ホテル主催の宴席を除いて、代金は主催者からまとめてお支払いいただきます」としている規則の免除であり、「主催者が政治家及び政治家関連の団体であることから対応は変えたことはありますか」の問い合わせに対する「回答、この7年間、ございません」としている規則の免除ということになる。

 但しこのような規則の免除が全日空側が承知して許可していることなのか、安倍晋三側が全日空側の承知していないところで勝手につくり上げ、実行している規則の免除のどちらかなのかが問題となる。

 辻元清美が質疑の最後に全日空ホテルが辻元清美の問い合わせに対してこのような回答を文書で出したのかどうか、「午後の委員会までに確認をして頂きたい」と要求したのに対して安倍晋三が「事務所に当たらせる」と約束したことから、この件に関して立憲民主党の小川淳也が午後の質疑で取り上げた。安倍蘇晋三がどう答弁するか、その箇所のみを取り上げてみる。

 2020年2月17日午後 衆院予算委員会 小川淳也

 小川淳也「今日は公文書等についてお尋ねするつもりでございましたが、午前中の辻本議員の指摘、そして総理はがこのお昼の休憩時間ないで事実関係を確認して貰えるということでございましたので、先ずその点からお聞きをしていきたいと思います。ちょっと確認ですが、総理、午前中のご答弁の中でいわゆる前夜祭、主催は安倍事務所でないというご発言をなさいました。これ恐らく事実誤認だと思いますので、主催は安倍後援会だったということを確認させてください。

 安倍晋三「安倍事務所ではないとうことであります。安倍後援会であるということは今までも答弁している通りであります」

 小川淳也「それではお昼の時間、急遽総理にはご確認を頂いたと思いますので、一つ一つお尋ねしたいと思います。今日は委員長のお許しを頂いて、辻本議員が午前中をお示しになられたANAインターコンチネンタルホテル東京とのメールの遣り取りを資料配布させて頂きました。まず一つ目の質問です。通りです。ご確認頂きたいんですが、2013年以降の7年間、貴ホテル、ANAホテルですね、で開かれたパーティー等についてお伺いをしますということで、例外のある書き方はしておりません。

 これについて貴ホテルが見積書や請求明細書を主催者側に発行しないケースがあったでしょうかという問いです。ホテル側の回答は『ございません。主催者に対して見積書や請求明細書を発行いたします』。例外はないという答弁であります。

 事務所にご確認頂いた結果として如何だったでしょうか」

 安倍晋三「私の事務所の方からANAホテルに連絡を致しまして確認を致しました。それをお答えさせて、纏めてお答えをさせて頂きたいと思います。

 私の事務所が全日空ホテルに確認したところ、辻本議員にはあくまで一般論でお答えしてものであり、個別の案件については営業の秘密に関わるため、回答には含まれていないとのことであります。桜を見る会前日の夕食会は、平成25年、26年及び、28年の3回は全日空ホテルで実施。私の事務所の職員がホテル側と事前に段取りの調整を行ったのみであり、明細書等の発行は受けてないとのことでした。

 また、領収書については一般的に宛名は上様として発行する場合があり、夕食会では上様としていた可能性があるとのことであります。

 いずれにしてもこれまで私が繰り返し答弁してきたとおり、夕食会の費用についてはホテル側との合意に基づき、私の事務所の職員が会費を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受付終了後に集金した全ての現金をその場でホテル側に渡すという形で参加者からホテル側への支払いがなされたとのことであります」

 小川淳也「個別に安倍今回の案件についてどうだったかということは聞いてもいませんし、答えてないことはそのとおりなんです(?)。しかし辻本議員のこの問いの立て方、そしてその答え方に例外がないということがこの際重要なんです。従ってもし総理が、これ、ホテル側がメディアに聞かれようと、野党に聞かれようと、全く同じことを答えてるんですね。

 それなりにホテル側の信用にかけて、覚悟を持って答えてるんですよ、ホテル側は。従って、総理、先ずホテル側はこうした文書で辻元議員に対して回答してきたということは先ず重く受け止めて頂きたい。

 原則だ、例外だ、安倍案件はどうかってという議論はあるでしょう。しかし少なくともここでは例外のある書き方にはなっていないわけです。だが、総理はこれに対してですよ、きちんと立証して、説明する責任が生じてます。今口頭で色々と仰った。

 総理の(に)先ず求めたいのは、これ、先だって来、指摘してますが、総理がホテル側に対して見積書や請求の明細書を要求をして、そしてそれを開示すれば済むことなんですよ。先ずそれお願いしたいと思います」

 安倍晋三「私が今述べているとおり事務所側から全日空ホテルに問い合わせをし、そしてホテル側から回答を得たわけでございます。私の事務所が全日空ホテルに確認したところ、辻本議員にはあくまで一般論でお答えしてものであり、個別の案件については営業の秘密に関わるため、回答には含まれていないとのことであります。

 それを私がここでこのように答弁するということについては全日空側が当然了解をしていることでございます。私、『桜を見る会』前日の夕食会は平成25年、26年及び28年の3回は全日空ホテルで実施をし、私の事務所の職員はホテル側と事前に段取りの調整を行ったのみであり、明細書等の発行は受けてないとのことであります。また領収書については一般的に宛名は『上様』として発行する場合があり、夕食会でも『上様』としていた可能性はあるとのことであります。

 いずれにしてもこれまで私が繰り返し答弁していたとおり、夕食会の費用についてはホテル側との合意に基づき、私の事務所の職員が会費を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受付終了後に集金した全ての現金をその場でホテル側に渡すという形で参加者からホテル側への支払いがなされたとのことであります」

 小川淳也「それは事務所の方がホテルの方と電話でやり取りをしたということでよろしいですか」

 安倍晋三「これは電話での遣り取りでございますが、相手方の氏名等も確認をしておりますし、当然、この、今申し上げた中身についてですね、その中身で申し上げるということについて了解を取っているわけでございます。この了解の取り方についてはどのような形で取ったかということついては私は定かではございませんが、この今申し上げた形でですね、これで答弁させて頂くということを了解を取った上、こうやって、今私が述べているということでございます」

 小川淳也「これ辻本議員も、それなりに決意を持って問い合わせをしています。そしてホテル側も、それこそホテル側もプライドにかけて、信用にかけてきちんと、総理ご覧の通り書面で回答してきてます。

 では、今の遣り取り、きちんとホテル側に対して総理の事務所から書面で照会をし、そして書面で返答を受けるという形でその説得力をさらに増して頂きたいと思いますが、お願いできますか」

 安倍晋三「これはですね、既に私の答弁を信用しないということかもしれませんが、私は、ホテル側に既にここで答弁をするということでですね。全日空側に申し挙げ、今答弁をしているということでございます」

 小川淳也「総理が様々な状況説明なりに弁が立つことはよく分かってますから。人を介して、人を介してでしょ。事務所を介して、ホテル側とも、間接話法はじゃないですか。

 端的にお尋ねすればいいんじゃないですか。一般論として辻本議員にこう回答してるのは了解してる。では、個別に私の行事はかくかくしかじかで一人参加方式だし、支払いは個別にホテルに直接して貰ったし、後援会としては明細書は受け取っていないし、後援会として領収書を受け取ってもいない、支払いもしていない、ということでいいですねと、いうことを書面で聞いて、書面で回答を受け取るようにに要請したいと思います」

 安倍晋三「午前中にですね、え、私は要請されたのはですね、まさに全日空側に確認せよということでございました。そこで全日空側に確認をした。かくこの確認の上に於いて私がこの予算委員会に於いてその確認をここで答弁をさせて頂くということでいいですね、ということを言った。全日空側に確認をしたしたわけでございます。

 その中で私は今お答えをさせて頂いているわけでございまして、申し上げましたように辻元議員にはあくまで一般論でお答えしたものであり、個別の案件については営業の秘密に関わるため、回答には含まれていないとのことであります。

 この遣り取りにつきまして事務所側がですね、え、全日空側とどのような形で電話で行ったのか、メールで行ったのか私は承知をしておりませんが、その上に於いて私はこうやってお答えをさせて頂いているところでございます。これ以上、私からですね、ホテル側に要望するということは今の時点では考えてはおりません」

 小川淳也「総理の疑念を晴らすためにケアしてます。一般論ですが、例えばもう一軒のホテル、敢えてちょっと名前は出しませんけれども、もう一軒のホテルに我々野党側が情報提供依頼した場合、例えば基本的にと、稀ではあるがと、例えば一概には言えないだと、全て留保がついているのですよ。

 それを私たちは私たちなりに受け止めていたんです。しかし今回、このANAインターコンチネンタルホテル東京さんですね、一切留保をつけていない、ご覧頂ければ分かると。ここには私は、これは聞き取ったものではありませんから、ホテル側の然るべき担当者が然るべき責任を持って書いた文章ですよ。毅然と書いてるでしょ?

 『ございません』と。これはね、ホテルとしては、きちんとやってるんですよ。そんな中途半端に誰がお客さんだか分からない、誰からお金を貰えばいいか分からない。領収書を誰に発行していいかわからない。そんな遣り方は私達はやっておりませんという、プライドがある回答なんですよ。

 それに対して総理の答弁は全く以ってこの信憑性に欠ける。そもそもね、そもそも総理の答弁、敢えて私は珍答弁と申し上げましたが、契約形態にせよ、参加者の参加方式にせよ、支払い方式せよ、みんなおかしいとそもそも思ってるんですよ。そんなの聞いたことがない。

 何だか不都合なことを言い逃れするため、隠すための隠蔽工作なんじゃないかとみんな思ってるわけですよ。ここへきてホテルの毅然たる回答ですよ。だから改めて求めます。では、午前中は午後の答弁で確認を求めたとしましょう。それの要請について今お答えになったとします。

 では、改めて要請します。ホテルに対して一般論で私たちは例外なく答えて頂いたと思っています。それを覆すために、いやいや個別に安倍後援会の案件では明細書を発行せず、そして参加者一人ひとりが一契約者として参加をし、そして領収書は上様なのか、空欄なのか。一人一人に、参加者一人ひとりに渡しましたね、いうことをホテル側に改めて要請します。確認をして、書面で答えてください」

 安倍晋三「今、小川委員の言い振りではですね、まるで全日空ホテルが誇りを持って、プライドを持って答えていて、他のホテルはそうではないかの(ヤジで聞こえない)、これはですね、それはそういうことではなくて、まさに今、私が申し上げたとおり、これはですね、先程答弁したとおりでございます。

 これは全日空ホテル側に私の事務所が問い合わせをし、そしてこの予算委員会で私が答弁する旨のことをですね、先方に伝え、その上に於いて確認したことを答弁をしているところでございます。当然ですね。みな様が今私との遣り取りについて本当か、ということを全日空側にですね、これは質して頂ければそれは宜しいのではないか、そういうことでございます。

 私はここで話していることがまさに全日空側との真実でございます。それを信じて頂けないということになればですね、そもそもこの予算委員会が成立をしないことになってしまう、一々ですね、それに答えていたのでは成立をしないことになってしまうのですから、それは、今一々という言葉使いについてどうかということがございましたので、一つ一つですね、答えていたら、まさにこの予算委員会の質疑は成立しなくなってしまうわけですから、私は総理大臣として全日空側と事務所を通じてお答えを、お問い合わせをさせて頂き、そしてここで私がそうお答えをさせて頂くということを確認して、今、お答えをさせて頂いてるということでございますので、私の言ってることが間違っているのかと言うことについてはそれは、お問い合わせ頂きたいと思います」

 安倍晋三が「私の事務所が全日空ホテルに確認したところ、辻本議員にはあくまで一般論でお答えしてものであり、個別の案件については営業の秘密に関わるため、回答には含まれていないとのことであります」と答弁した以上、最後の最後までこの論理で押し通すつもりなんだなということを理解しなければならない。当然、この論理自体を破る努力をしなければならない。

 にも関わらず、小川淳也は「辻本議員のこの問いの立て方、そしてその答え方に例外がないということがこの際重要なんです」とか、全日空ホテルは「それなりにホテル側の信用にかけて、覚悟を持って答えてるんですよ」、「ホテル側はこうした文書で辻元議員に対して回答してきたということは先ず重く受け止めて頂きたい」、「総理はこれに対してですよ、きちんと立証して、説明する責任が生じてます」とか、安倍晋三にとって痛くも痒くもないことを尤もらしく言い立てている。

 痛くも痒くもない理由は野党側は全日空の回答に正義を置いているが、安倍晋三の方はその正義を簡単に認めて自分の首を差し出すようなことは決してできないことと、首を差し出さないためには野党側の正義を従来から、そして今後共徹底的に無視する態度を貫くつもりでいるだろうからである。

 安倍晋三が文書での回答を拒否する理由は二つ考えられる。一つは全日空側の事実と安倍晋三側の事実が異なる場合であり、二つ目は全日空側が安倍晋三側の事実に合わせたとしても、それが真正な事実に反する場合は言葉の証言よりも言い逃れを難しくする物的証拠となり得る万が一の危険性を孕むことになるからである。警察が事件で物的証拠を動かない事実として最重要視するのはこの理由からであろう。

 にも関わらず、小川淳也は文書での回答に最後まで拘った。対して安倍晋三は、「私の口をついて総理大臣としてこういうことを聞いたということを述べるわけでございます。まさにそうやって努力を重ねて、今ここで述べているにも関わらずですね、それが信用できないということであればですね、そもそも予算委員会は成立しないわけでけでございます。いわばまさにこれに疑問があるのであれば、お問い合わせを頂ければとこう思うところでございます」と、却って野党の方から全日空に問い合わせろとばかりに開き直られている。

 あるいは、「それは私共事務所がですね、皆様から要望があったから、それを全日空側にお尋ねして、お答えを頂いて、ここで私が責任を持って述べているわけではございます。それをですね、それを信用できないと言って、さらにまた全日空側にですね、書面で出せということまで、私はやるというのはですね、些か欲求が強すぎると私は思うわけでございます」云々と、「些か欲求が強すぎる」とまで逆非難までされる始末で、小川淳也の文書での回答の要求と対する安倍晋三の応じまいとする答弁とが最後まで平行線を辿ることになった。

 小川淳也次の次に登場した、国民民主党から無所属となった山井和則も策もなく文書提出に拘リ続けた。

 山井和則「今朝からの辻本議員のこの全日空ホテルの回答が重要かと言いますと、安倍総理は今までこの『前夜祭』で政治資金収支報告書に記載しなくてもいいという理由については『明細書も貰っていない。一人ひとりに領収書を出した。宛名も空欄』。そういう安倍方式だから、記載しなくていいんだということをこの3ヶ月間、言い続けてこられたんです。

 それがもし全日空の回答のように安倍総理の今までから3ヶ月間仰ってこられたことがもし虚偽であったなら、政治資金収支報告書に記載しなければならない。そういうことは今不記載であることは政治資金規正法違反ですから、私これ大問題になるわけです。ですから私達は法を作る者、法を犯すべからず。最も法律を守るべき総理大臣が違法行為をしてるんではないかということで、これは看過できないと考えてるんです」――

 虚偽であることを突き止めたわけでもないのに、「もし虚偽であったなら」と言い、政治資金規正法不記載の証拠を握ったわけでもないのに「不記載であることは政治資金規正法違反ですから、私これ大問題になるわけです」と、仮定の追及を益もなく進めている。

 そして全日空ホテルに回答を求めた辻元清美の質問に関係する追及に入ると、安倍晋三は待ち構えていたかのように答弁を原稿を読みながら、小川淳也に対するのと同じ内容で済ませたのみである。要するに同じ答弁を引き出したに過ぎない。

 だが、この答弁は前以って予測していなければならない。これまでも繰り返しそうされてきたように同じ論理でかわすこだろうぐらいのことは頭に置いていただろうからである。頭に置いていなかったとしたら、散々許してきた同じ繰り返しの答弁から何も学ばなかったことになるだけではなく、またもや許すことになる。

 「私の事務所が全日空ホテルに確認したところ、辻本議員にはあくまで一般論でお答えしたものであり、個別の案件については営業の秘密にかかわるため、回答には含まれていない。分かりますか」――

 以下も小川淳也に対する答弁と同文である。原稿を読み上げるのだから、同文となるのは当然である。

 山井和則が辻元清美は「安倍総理のことに限って聞いているんじゃないんですよ」との物言いで、安倍事務所のパーティーを含めた全日空ホテルで開催され全てのパーティーについての辻元清美の問いであり、全日空の例外はないとする趣旨の回答だとしている言葉を掴まえて、「今いみじくもですね、委員がこれは安倍事務所のパーティーのことではありませんよ、と仰ったよね。ですから、一般論ですよ。安倍事務所の方ですよねって言って聞いたら、これは一般論ではない。しかしそうではないと仰った」と、全日空の回答が例外のない趣旨となっていることを無視して、安倍事務所のパーティーを勝手に例外だとして、例外のない方を「一般論」、例外がある方を「一般論ではない」とする捻じ曲げを行っている。

 この捻じ曲げは辻元清美に対する答弁と同様に安倍事務所は特別扱いであり、特別待遇だとしたい気持が仕向けているものであろう。自分の中で特別扱い、あるいは特別待遇を許しているとしたら、不遜な気持に相当に侵されていることになる。

 山井和則は全日空の書面の回答は重い、安倍晋三の全日空に対する確認は口頭で行ったもので、説得力がない、書面で出せの一点張りで議論を進めた。勿論、安倍晋三は理屈にならない理屈で追及をかわしている。それもこれも簡単には首を差し出すような答弁はできないからなのは断るまでもない。理屈になろうとならなかろうと、その場を凌ぐことだけを考えた答弁だから、理屈を捻じ曲げた答弁となる。

 安倍晋三「今まさに山井委員が言われたようにですね、今後色んなことで書面が出てこないんだったら、審議に応じない、こういう、これはまさに前例になるわけですか。今後、様々な議論がなされますよね。そこですぐに書面を出すと言っても、それはすぐに出せませんよ。

 当たり前じゃありませんか。すぐに書面を出せない。書面を出さなければ、議論ができないということでですね、一々、これはまさに一々ですね、一々審議が止まっていたのであればですね、これはまさに委員会としてこれは議論がなかなか進んでいかないということになりかねない、わけでもあります。

 つまりこれはまさに先程申し上げましたように、今、だって、山井委員がそこへ(自席へ)座ってしまってですね、委員が委員会のこの進行をどうするかということだったんだろうとこう思いますが、そうであればですね、今後もですね、そういうわけにはいきません。まさに最初午前中言われたのはですね、全日空ホテルに確かめてくれということでありましたから、短い時間でありましたが、確かめて、全日空側からこのように回答を得て、その回答に於いて私もですね、私が総理大臣が総理大臣として委員会でお答えをする、と言っているということを先方に伝えですね、先方はその上に於いて答えているわけでございます。

 そしてそれが全く価値がないということであればですね、なぜ、じゃあそれを最初からですね、私にそれを要求しなかったのかということでもあるわけでありまして、全く価値がないと看做されるのであればですね、我々の努力、あるいは全日空がしっかりと検討した上での答が何だったのかと言うことにもなるわけでもあります。

 それは誠実に全日空側も対応しておりますし、私も勿論、私の事務所もですね、誠実に対応して頂いているところでございます。その努力を全く認めていないと、認めないと、要望しておいて、そう答えているにも関わらず、努力を全く認めないと言うことであればですね、さらにこれから全日空側にそういう要求を出していくということはこれは如何なものかと。それはむしろみなさんが全日空側に確認されれば、されたらよろしいのではないかと、こういうことでございます」

 「すぐに書面を出すと言っても、それはすぐに出せない」ということなら、実行する意志を前提に「早急に出します」と約束すれば済むことを、理路整然とは程遠い、クドクドとした意味もない自己正当化に替えた言い立てに終始している。

 山井和則は安倍晋三の理屈にならない言い逃れに業を煮やしたのか、「説明責任は安倍総理、あなたにあるんです。あまりにも不誠実です。これ以上質問はできません」と言って席を立ち、山井和則に従って野党議員の多くが退席することになったが、退席野党と自民党が話し合って、予算委員会終了後に理事会で対応を協議することになり、約30分後に審議に戻ったという。

 安倍晋三は山井和則が全日空からの書面での回答をそんなに求めるなら、「それはむしろみなさんが全日空側に確認されれば、されたらよろしいのではないかと、こういうことでございます」と答弁した手前、早速動いた。

 但しマスコミのほうが一歩先んじていた。2020年2月17日 23時18分の発信で、2月17日の夜、朝日新聞の質問に対して「asahi.com」記事が、〈「桜を見る会」の前日に開かれた夕食会をめぐる安倍晋三首相の答弁に関して、「ANAインターコンチネンタルホテル東京」の広報担当者が17日夜、朝日新聞の質問に回答した。野党が示したANAホテルの見解について、首相は同日の衆院予算委員会でホテルへの照会結果として「個別の案件については営業の秘密にかかわるため、回答に含まれない」と答弁し、夕食会が見解の対象外とする見方を示したが、ANAホテルはこの部分を「申し上げた事実はございません」と否定した。〉という内容で配信している。

 このような記事が首を差し出すことになる事実となることを恐れて、逆に首を差し出さないで済む事実を作り上げる執念に駆られたのかもしれない、全日空ホテルは一旦は安倍晋三答弁を否定していながら、「asahi.com」報道の翌日の2月18日に自民党党関係者と全日空ホテル側が会談、〈その後、ホテル側は首相答弁について報道機関が質問しても説明しなくなった。〉と、2020年2月19日 19時59分発信の「毎日新聞」が伝えている。

 そこで思い出した。2014年11月18日、安倍晋三がTBSテレビ「NEWS23」に出演した際、番組が「アベノミクスに実感は感じない」趣旨の街の声を紹介したところ、テレビ局がさも情報操作紛いのことをしているような発言をしただけではなく、2日後の11月20日に「自由民主党 筆頭副幹事長 萩生田光一/報道局長 福井照」の差出し人名で在京テレビキー局の編成局長、報道局長宛てに〈選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い〉と題して、「報道の公平中立ならびに公正の確保について」の体裁を取っている文書ではあるが、要するにアベノミクス批判の意見・主張を集中をさせるなの報道圧力が趣旨となっている文書を配布した。

 今回は萩生田光一は文科相となっているから、顔を出すことはできないが、萩生田光一辺りが忠実な自民党関係者に命じて全日空ホテルに圧力をかけた可能性は否定できない。

 忠義面の面々が安倍晋三に首を差し出さなければならない事態に追い込ませないの一点で団結したとしても不思議はない。

 翌2月20日付け20時36分発信の「産経ニュース」が産経新聞の取材に応じたANAインターコンチネンタルホテル東京の発言を伝えている。記事が載せている画像を転載する。

 --夕食会に関する明細書、領収書、会費の支払い方の公表の是非について、それぞれ首相発言とホテルの見解が違うと指摘されている
 
「われわれはすべての問い合わせに対し、あくまで一般論としてお答えしている。宴席にはさまざまなケースがあり、一概にこうです、とは申し上げられない」

 --主催者に明細書を発行しないのか。首相発言と異なるが

 「明細書に関してもあくまで一般論だ。個別の案件に関しては回答できない」

 --領収書を空欄で出すことは

 「空欄のまま発行することはない。お客さまに教えていただいた宛名を記入することが基本だ。主催者さまとの打ち合わせで要望に応じて用意する。宛名を『上様で』と言われれば『上様』で発行することはこれまでにあった」

 --会費の支払い方法は

 「一般論として、主催者さまとホテルの間でやりとりさせていただいている」

 --首相側に「営業の秘密に関わる」と回答したのか

 「お客さまの情報に関しては個人情報であり、われわれには守秘義務がある。ホテルとして誰に対しても一切開示することはないとお伝えしている」

 --野党は首相に書面で回答するよう求めている

 「お客さまの情報はあくまでそのお客さまとだけ共有するものだ。外部に出すことは一切ない」(以上転載終わり)

 ANAホテルの産経新聞の取材に対する回答は概ね安倍晋三の「一般論」に合わせている。いわば安倍晋三の「一般論」に加担した。だが、どのように巧妙に下端しようとも、全日空ホテルの辻元清美の問い合わせに対する回答にある領収書や請求明細書等の発行方法は基本的原則であり、原則論の括りで扱うべき事柄であって、「一般論」の括りとして扱うことはできない。

 もし「一般論」の括りで扱うとしたら、基本的原則から外した例外を設けている場合のみである。但しあくまでも主体は基本的原則であり、例外は従に位置する。例外が主体であった場合、「例外」という言葉の意味自体に反することになる。

 と言うことは、全日空ホテルが安倍後援会事務所に請求明細書を発行しなかったこと、領収書を主催者である安倍後援会事務所が参加者一人一人に発行するのではなく、ホテル側が参加者一人一人宛に書いたということはあくまでも例外中の例外だったことになる。

 いわば既に触れたように安倍後援会は特別扱い、あるいは特別待遇を受けていた。「桜を見る会」前夜祭パーティーの主催者である安倍後援事務所が参加者一人ひとり宛に領収書の必要事項を書き、発行するのではなく、主催者でもないホテル側がこれらの領収書の扱いをする、さらに基本的原則となっている請求明細書の発行を行わなかった特別扱い、特別待遇とはどのような理由のどのような必要性があってのことなのだろうか。

 世間に顔向けができる理由と必要性であったなら、ごくごく常識的に考えて、このような例外――特別扱い、あるいは特別待遇は必要としない。基本的原則のみの扱いで事足りる。安倍後援会事務所がホテルから受けた請求明細書に従った金額を設定した領収書を参加費と引き換えに参加者一人一人宛に発行し、集金したカネを纏めてホテルに支払い、纏めた金額の領収書をホテルから受け取る、世間一般の基本的原則とおりで全てが片付く。

 基本的原則とおりではなく、例外としたのはパーティで飲み食いさせることで選挙や支持集めの便宜供与を謀った以外に理由を考えることはできない。

 それにしても産経ニュースに載っている領収書の但し書きは「夕食懇談会として」と8文字、「懇談会の「懇」の字も「談」の字も画数が多くて、2019年の参加者は約800人、全日空の3回が各500人ずつと少なく見積もったとしても、但し書きだけの字数が4千文字、金額と「上」様を加えると、3千文字増えて、7千文字となる。手書きだと相当な労力となる。ゴム判を作れば簡単に済むのに大のホテルが手書きとはとても信じられない。

 (当該記事投稿後、2020年2月24日 12:58の時点で上記産経ニュース記事を覗いたところ、領収書の画像が消去されている。なぜなのだろう。)

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安晋三2019年「桜を見る会」前夜祭パーティ:安い金額で飲食させた利益供与か、タダで飲み食いさせた利益供与か

2020-02-10 11:59:22 | 政治
  政治家が支持者に対してポケットマネーで飲食をさせる。あるいは政治資金を使って飲食させる。あるいは支持者
 が支払うべき飲食代の一部分をポケットマネー、あるいは政治資金で補填する。これらの行為は公職選挙法で当選を
 得、もしくは得しめ、または得しめない目的をもって選挙人(選挙権を有する者)または選挙運動者に対し金銭、物
 品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み、もしくは約束をし、または供応接待、その
 申込み、もしくは約束することを禁じる「買収及び利害誘導罪」に当たるだけではなく、政治資金を使った場合、当
 然、そこに収支の実態が生じるものの、公職選挙法に抵触することから、政治資金規正法によって作成・提出の義務
 付けがある政治資金収支報告書に載せるわけにはいかず、政治資金規正法自体に抵触することになる。

  第2次安倍政権成立翌年の2013年から2019年までの7年間の毎年4月、総理大臣主催の公的行事「桜を見る
 会」が新 宿御苑で開かれている。この毎年の「桜を見る会」に合わせて、その前日夜に安倍晋三後援会主催の支持
 者を集めた 懇親パーティが前夜祭として大手一流ホテルで開催する慣わしになっていた。パーティの会費としての
 飲食代はいずれも5000円となっていて、一流ホテルとしては相場よりも低いと見られていることから、相場との差
 額はホテル側から後援会側への財産上の利益の供与か、その差額が安倍晋三がポケットマネーで埋めるはずはないか
 ら、自らの政治資金の中から補填した場合は買収及び利害誘導罪に当たる疑いが浮上、野党が国会で追及することに
 なった。

  安倍晋三は様々な国会質疑で前夜祭が公職選挙法の点でも、政治資金規正法の点でも何ら疚しいことはないと、そ
 の正当性を主張しているが、その前夜祭がどのような仕組みで開催されているのか、飲食代5000円の領収書をとのように発行したのかを安倍晋三が立憲民主党の大串博志を相手に答弁している次の国会質疑から、その正当性を探ってみることにする。大串博志は東大法学部卒の54歳。文飾は当方。

 2020年2月5日衆議院予算委員会 

 大串博志「次に『桜を見る会』の今までの審議に関してですけども、昨日、『桜を見る会』に関する質問がありました。総理、かなりヒートアップ(同じ立憲民主党の黒岩宇洋―東京大学文科一類、法学部進学後中退。53歳―に対する答弁を指す)されていらっしゃいましたですね。やや焦っていらっしゃるような印象すら、私は受けました。焦っていらっしゃっとは言えですね、ように見えましたけども、人をこう、間違った事実に基づいて嘘つき呼ばわりすることはあってはならないと私は思いますが。

 きのうの黒岩委員が総理が『桜を見る会』の前夜祭に関して安倍事務所が契約したのじゃなくて、参加者個人が契約したんだということの論点に関して黒岩委員がキャンセルとか、あるいは人数が変わるとか、こういったリスクがある、リスク負担をホテルニューオータニの規約に基づいて、どういうふうにしてるのか、こういうことを問うたときに安倍総理は、『今根拠のないことを仰ったということが明らかになりましたね。別にこれはニューオータニの規約にあるわけではないですよ。そんなことを言ったところで。だから、それは根拠がないことをおっしゃってる。嘘をついてるということと同じですよ、はっきりと申し上げて』というふうなところまで。

 しかし規約を黒岩委員が手に持ちながら、規約にはちゃんと人数が減じたとき、キャンセルしたときには、こうこうしますよということが書かれてる規約があるわけですよ。あるにも関わらず、総理がどう認識したのか分かりませんが、規約があるわけじゃないですよと勝手に決めつけて、で、『嘘をついたことと同じことですよ。はっきり申し上げて』。こういうふうに申し上げてた。、これに関して私たち理事会で総理の(発言の)撤回と謝罪を求めております。しかもテレビ中継が入ってる場で、国民の皆さんが見てらっしゃる場での発言でありますので、なお一層看過できません。

 ですから、同じ環境下、テレビの中継が入ってる審議の場に於いてこの件に関して嘘ではなかったわけですから、安倍総理にちゃんと撤回と謝罪を求めるということを理事会に求めております。改めて委員長にこの件に関して総理の謝罪と撤回求める理事会協議をお願いします」

 委員長「後刻、理事会で協議を致します」

 大串博志「なぜこういった議論で切り出したかと言うと、前夜祭に関してなぜそれを政治資金収支報告書に上げて出さなかったのかということが一点。安倍総理の説明の道具は只一つこれは個々人の参加者の方々が契約をニューオータニと直接されたからだと、この一点に拠っているんですね。

 このほそーい1点に拠っているということです。誰も800人の皆さんがニューオータニと5000円の直接的な契約を一人一人、結べるとはちょっと考えづらいですね。考えてづらい。だもんだから、これはおかしいなーと、やはり安倍事務所主催であり、実質的に安倍事務所の事業なんだから、収支報告書に収支を載せるべきなんじゃないかという声が上がるわけですよ。

 この契約は直接、安倍事務所がじゃなくて、個々人がやったということは、これまでの答弁を見ても、合点がいかないことなんですね。先週月曜日(1月27日)、黒岩委員が質問されたことに対して安倍総理こうも仰っていますね。この前夜祭に関して。

 『多少のキャンセルが出てもよいということとして契約をした』、それから『子供さん方に関しては料金を取らないという了解のもとに行った』

 先週月曜日の黒岩委員の質疑に対する安倍総理が使った『契約』とか『了解』とか、これは誰がホテル側と結んだんですか。安倍総理の事務所の皆さんでは、なかったんですか」

 安倍晋三「ちょっとですね、誤解をされておられるんだろうと、こう思うわけでございますが、先ずですね、契約主体は参加者であるということ。それとですね、収支が一切発生していないということ。収支は一切発生していないわけでありますから、当然、それは政治資金収支報告書には載せないということでございます。

 そして参加者一人当たり5000円という価格については800人規模を前提にその大多数が当該ホテルの宿泊者であるという事情等を踏まえ、ホテル側が設定した価格であり、価格分以上のサービスが提供されたと言うわけではありません。ホテル側に於いて問い合わせると、価格設定通りのサービスが提供されたものと承知をしております。ホテル側とのですね、合意に基づきまして、夕食会場入り口の受付に於いて安倍事務所の職員が一人5000円を集金をし、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受付終了後に集金した全ての現金をその場でホテル側に渡すという形で参加者からホテル側への支払いがなされたものと承知をしているわけでありまして、安倍事務所には一切収支はないというわけであります」

 大串博志「聞いたことだけに答えてください。先週月曜日、黒岩委員に対して総理が答弁した、多少のキャンセル出てもよいということで契約した、子供の料金は取らないという了解のもとだった。この契約や了解をしたのは安倍総理の事務所の皆さんじゃないですかってことなんです。その一点だけを答えてください」

 安倍晋三「契約について先ず説明させていただきます。契約の主体はですね、これは参加者である。これは今でもずっとも申し上げていることでありまして、そん中の遣り取りを一つ一つ取り上げてですね、そのような指摘をされたのでございますが、それは契約の主体はですね、参加者であるということが一点。それとですね、子供から取らない。18歳以下は取らないということは、いわばホテル側がそれを言い渡しをされたということで、それを事務所側がですね、参加者に伝えたということでございます」

 大串博志「多少のキャンセル出てもよいということで契約したということ、この契約は『契約』という言葉はなかったと。何だったんですか」

 安倍晋三「それは合意をしていると、事務所側と合意をし、それを事務所側は仲介をしておりますから、この参加者側との関係に於いてもですね、それは我々の事務所として仲介をしている以上ですね、それを合意して、それをしっかりと把握していなければならないということでございます」

 大串博志「安倍事務所の皆さんが多少のキャンセルが出てもいいということで合意をしたと。その合意って、一体何ですか」

 安倍晋三「何回もこれはお答えをさせて頂いておりますが、夕食会の費用についてはですね、ホテル側との合意に基づき私の事務所の職員が一人5000円を集金し、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受付終了後に集金した全ての現金をその場でホテル側に渡すという形で参加者側からホテル側への支払いがなされたものであるということでありまして、ホテルとの契約主体は参加者個人になるものと認識をしているところでございます」

 大串博志「もう一点聞きます。法律的な性格は何なんですか」

 安倍晋三「これまさに合意でございまして、夕食会のホテル費用についてですね、ホテル側との合意、契約主体は参加者でございますが、ホテル側との合意につきですね、いわば、例えばですね、例えば20人、30人に於いてですね、この集会、この会をやろうというときにですね、『一人5000円ですか』、「5000円で結構ですよ』、『あ、そうですか』ということで参加者に伝え、参加者がですね、個々の費用を払った場合は当然、これは後援会の親睦会であったとしても、この収支報告書には載せないというのは当然のことであろうと。

 そしてそこで合意がなければですね、合意がなければ、参加者に5000円であるというところを伝えることができないのではないでしょうか。まさにそういう意味で合意ということを申し上げているわけでございます」

 大串博志「国会の中で答弁されていることは非常に重要な言葉があるんで、答えられる言葉がコロコロ変わるんでね、言葉の定義がしっかりしなきゃいけないんですね。

 そして安倍総理、個々の参加者が契約をしたと仰いましたが、この契約というのは民法上の契約ですか」

 安倍晋三「これは契約主体が参加者ということでございます。ですから、ですから、ホテル側はですね、領収書を、ニューオータニの領収書を出して、そしてそれをですね、参加者にお渡しをしているということでございまして、手書きでですね、金額をニューオータニ側が書き、そして摘要を書き、日付を書き、担当者の名前も手書きで書き、そしてそれをいわば参加者に、宛には出した。いわば後援会宛に出したわけではないというわけでございます」

 大串博志「質問だけに答えてください。参加者が個々に契約したというのは民法上の契約ですか。総理に聞いてます。総理が言ったことですから、総理に聞きます」

 安倍晋三「今、法律上はどうなのかということでございましたから、その法律上について確認を致しました。そういう確認ぐらいさせてくださいよ。何か私が、つい何かですね、正確性を欠く言葉を言ってですね、揚げ足取りをしようという意図があるのではないかと言う人もいるわけですが、私はそう考えているわけではありませんから。大串さんはそういう方ではございませんから。そういう方がおられないから、(ヤジで聞こえない)私も許してるところでございます(揚げ足取りをされても、許しているということか)。

 いわばこれはですね、ホテル側が対価に見合うサービスを行ったということに於いてですね、みなさんに領収書を、その対価に見合うサービスを行い、そしてそのサービスを受けた側がですね、対価を、対価、サービス対する対価をお支払いをしたということであります。であるからこそ、ホテル側は領収書を発行し、そしてそれをですね、参加者が受け取ったということであります。

 これはまさに対価を払う相手はですね、参加者であり、その、いや、対価、サービスを提供する相手は参加者であり、その対価に対して支払った参加者であると、そういうことであります」

 大串博志「委員長、私の質疑時間は限られています。3回目の質問になります。これで答えて頂かなかったら、質疑を続行することは到底できません。民法上の契約ですか。それだけをお答えください」

 安倍晋三「民法上でかということであればですね、予めご質問を頂かなければですね、この六法全書を見て、確認をしなければいけないわけでございます(笑いながら)。まさに総理大臣として答弁をしておりますから、今この答弁をしなければいけないわけでございますが、それはですね、いちいち質問通告をしないいものをどんどん出せばですね、そのたびごとに国会が止まるということになってしまうということでございます。

 ですから、先程、私が申し上げたのはまさにそのとおりでありまして、契約者ということに於いてはまさにサービスが提供された側、対価を払った側ということに於いてですね、対価を払った側は参加者であると。(ヤジで聞こえない。「サービスを」と言うことか)提供した側はホテル側であると言うことは、これは明確でございます」 

 大串博志「契約という言葉が合意という言葉に今日いきなり訂正されたりね、言葉の定義がコロコロ変わるもんですから、しっかりしなきゃいかんなというふうに思って、確認しているわけです。

 しかも、安倍総理自身が契約という言葉は何度とこの国会の中でも自ら使われている言葉ですよ。ほかの人がそうじゃないんじゃないですかと言いながらも、安倍総理がわざわざ自分で、『いやいや、これはここの人たちが契約してるんです』と。

 繰り返し、繰り返し、強調に強調を重ねて答えられてる言葉ですよ。使われている言葉ですよ。だから、当然、その意味するところは、十分熟知した上で答えられていらっしゃるんだなと思うもんだから聞いているわけです。それを昨日の流れて聞いてるわけであって、質問通告している、してないという問題では私はまったくないと思いますよ。

 あの、それでは同僚議員からも確認させて頂きたいと思いますので、きちんと民法上の契約かどうか確認してください。午後の質疑で聞く議員がいるかもしれなませんから。午後の質疑でいつでも答えられるような形で準備をしておいて頂きたいというふうに思います」

 (以下は「前夜祭」に関係しない質疑だが、参考のために記載することにする。)

 大串博志「次に参ります。あの参加者ですね、ちょっと聞いてください。質問しますからね。参加者ですね、『桜見る会』の参加者。夫人からの推薦がどうだったかっていう問題がありました。これに関して総理は夫人からの推薦を『私自身』、総理が参考にして、それを事務所に伝えたと。こういうふうに答えております。

 ご夫人の推薦でこの『桜見る会』に出られたという方、一杯いらっしゃるということがこの委員会でも取り上げられましたね。百何十人、あるいは20人のグループ、何年も続けて、名刺だけ交換したら何回も、招待状が来たみたいな話が続きました。ところが安倍総理の答弁を聞くと、夫人が安倍総理に推薦をしたものを安倍総理が参考にされて、事務所に伝えられたっていうことを言われたので、これ確認したいのですけど、夫人がこの人呼びたいなというふうに推薦されてきた方々を安倍総理がちょっとこの人やめた方がいいということではねられたケースあるんですか」

 安倍晋三「従来から答弁をさせて頂いておりますが、私の事務所に於いてですね、幅広く希望、参加希望者を募る過程で、何度も答弁させて頂いていることですが、私自身も事務所からの相談を受ければ、推薦者について私の意見も言うことがありましたが、その際、各界で活躍されている人を幅広く把握する観点から、妻の意見を聞くこともありました。妻の意見を参考として事務所の担当者に私の意見を伝えたところでございまして、私は妻から、こういった方を呼んだ方がいいですねって言われたら、そうだなって言うときもあれば、それはどうなんだろうと言うことも当然あるわけでございます。

 その上で私から事務所の担当者に伝えて、事務所から内閣府に伝えているということでございます」

 大串博志「ご夫人からも推薦があって、総理自身が聞かれて、参考にして、『うん、これはいいな。この方はいいな。この方は避けた方がいいな』って。どういう方々を避けられてんですか」

 安倍晋三「あの、これはまさに個人のプライバシーに関わることでありますから、答弁はですね、差し替えさせて頂きたい。そこまで答弁することは差し替えさせて頂きたい、ま、このように思います」

 大串博志「個人のことは聞いてないです。個人のこと聞いてなくて、どういう観点からこの人はふさわしくないなという方はよけられたんですか」

 安倍晋三「例えばですね、私自身が既にこれは招待をしていたことがあるということの記憶がある人物もいるわけでございます。そういう方々等もあるわけでございますが、それ以外についてですね。こういう人ということについてはですね、非常に個人的なことにもなるので、答弁は差し控えさせて頂きたいと思います」

 大串博志「そうすると個人的な理由でこの人はよくないなーっていうことで跳ねられた方がいらっしゃるということですか」

 安倍晋三「これはそもそも私がですね、それはふさわしいかどうかという取り纏めを行うのは内閣府に於いてこれは行うわけでございまして、私の基準というのはですね、まさにこの私はこの事務所にこういう人はどうかということを伝えた方がいいかどうかということでございます。そん中でこの伝えさせて頂いている、こういうことでございます」

 大串博志「ちょっと不思議なんですけど、この人がいいな、この人よくないなという基準は各界で功績のある人かどうかっていう基準じゃないですか」

 安倍晋三「あの、これはそうですね、地域で様々な活躍をしておられる方がおられます。その、ですから、一定の基準が曖昧であったことからですね、今回は中止させて頂いたところでございます。それも今でも申し上げていた通りでございます。

 その中に於いてこの、私が事務所に伝える上に於いてですね。あの、私の観点からまさに私から伝えるわけでございすから、ここは私が伝えた方がいいかという中に於いてですね、伝えていたと、こういうことございます。これが全てでございます」

 大串博志「前から(?)聞いたときにですね、どういう人が呼ばれたかっていうことは国民の関心事でもあるし、まず隠すべきことはないと私は思うですね。にも変わらずリストがないということで、全部今検証できない状況になってるわけですよ。中止したこと自体が適切かどうかということを確認する術すらなくなっているわけですね。リストはない、消去した、ログもない。こういう状況になってるもんだから、あまりにおかしいことでお尋ねしてるわけですよ。何かね、ログは確認すらしない。確認する必要すらない。切って捨てたように言っている。

 これも本当によく分からないことなんですけども、何か私、この状況を見てるとね、10年ほど前に中国で高速鉄道の事故があったときにですね。高速鉄道が橋梁から下に落ちました。その直後に政府はそれを埋めた。その場で埋めた。その後の事故の検証も何もできないようになっちゃうという批判があるにも関わらず全部埋めちゃった。何とかのものには蓋をするように全部埋めちゃった。そんな雰囲気すら感じるんですよ。ヤバいから蓋をしたみたいな感じに思える。

 当時ね、10年前、中国で起こった高速鉄道の事故、そして落下した車体をその場で即時に埋めた。当時ね、現代の焚書坑儒って言われたんですよ。現代の焚書坑儒。即ち思想と考えがヤバいなと思ったことに対しては蓋をするという意味で歴史的なね、現代の焚書坑儒って言われた。大変中国政府、非難されたんですよ。私は似たような雰囲気すら覚えますよ。そういう意味から聞かせて頂いてるわけです。いずれにしても、先程の前夜祭に関する総理の契約という言葉、この一点だけで今総理は、これが政治資金収支報告書に載るかどうかというところで(説明を?)拒否してらっしゃる。

 それが民法上の契約かどうかも、明らかに、これだけ答弁されて、今できない。、ここにきちんと確認させて頂きたい。その上でその性格に応じてさらに議論を深めさせて頂きたいと思います。よろしくお願いします。さらに問題に関して、明日行きます」

 カジノ問題に移る。

 一般的には、常識的にも、この手のパーティはホテル側と後援会事務所側が会費、集金方法等の契約を結んで行うものだが、一般的を離れて、あるいは常識的を離れて、ホテル側と参加者一人ひとりと契約を結んだパーテイだとするのは、事務所との契約とした場合、何らかの不都合が生じることになり、その不都合が露見することを避ける必要性が立ちはだかっているからであろう。

 何の不都合もなければ、公職選挙法にも、政治資金規正法にも違反していないことを前提とすることになり、ホテル側と契約を結んだのは安倍事務所だとしても、その一般的であることと常識的であることから、野党に疑惑を嗅ぎ取る隙きを与えることはなかったはずだ。

 つまり普通に構えていれば、普通に事は進む。

 ところが逆で、結果的に野党は国会質疑で疑惑追及の時間を多大にかけることになった。安倍晋三は自分に関係している事柄なのだから、疑惑追及の時間を最小限に留める責任を首相として負っていながら、それができないでいる。その理由は、当然、一般的であることと常識的であることから離れて、前夜祭パーティをホテル側と参加者個人個人の契約としている点にあるはずである。

 安倍晋三は「参加者一人当たり5000円という価格については800人規模を前提にその大多数が当該ホテルの宿泊者であるという事情等を踏まえ、ホテル側が設定した価格であり、価格分以上のサービスが提供されたと言うわけではない」ゆえに「収支が一切発生していない」」、だから、「政治資金収支報告書には載せなくてもいい」と答弁している。

 「価格分以上のサービスが提供」されていない以上、いわばホテル側が設定した5000円という価格が実際に出した飲食物の価値相当であり、掛け値なしということなら、公職選挙法で禁じている利益の供与にも、買収にも、利害誘導にも抵触しないことになるが、であるなら、なぜホテル側と参加者一人ひとりの契約とする理由がどこにあったのだろう。

 安倍晋三は1月27日(2020年)の月曜日に立憲民主党の黒磐宇洋に対して「多少のキャンセルが出てもよいということとして契約をした」と答弁しているが、当然、その契約はホテル側と前夜祭パーティに出席した参加者個人個人の間の契約ということになり、出席の予定が欠席したとしても、参加者はキャンセル料を支払わない、ホテル側もキャンセル料を取らないという契約となっていることを示すが、その金銭的便宜は安倍後援会事務所主催の前夜祭パーティへの出席者であることを前提とした便宜であるはずだから、それが僅かな金額であっても、間接的には安倍後援会事務所への便宜ということにならないのだろうか。

 いわばキャンセル料分、公職選挙法が禁じている「財産上の利益の収受(受け取って収めること)」に当たることになって、安倍後援会事務所はホテル側から利益の供与を受けたことにならないのだろうか。

 安倍晋三は領収書の発行について二通りの答弁をしている。

 最初は「ホテル側とのですね、合意に基づきまして、夕食会場入り口の受付に於いて安倍事務所の職員が一人5000円を集金をし、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受付終了後に集金した全ての現金をその場でホテル側に渡すという形で参加者からホテル側への支払いがなされたものと承知をしている」と答弁、安倍事務所の職員が集金して、領収書を参加者に「手交」、「受付終了後に集金した全ての現金をその場でホテル側に渡」したとしている。

 現金の管理と領収書の「手交」だけを受け持ち、領収書は安倍事務所の職員が書いたのか、ホテル従業員が書いたのかはこの答弁から窺うことはできないが、安倍事務所の職員を受付の主役に置いた口振りとなっている。

 もう一つは「これは契約主体が参加者ということでございます。ですから、ホテル側はですね、領収書を、ニューオータニの領収書を出して、そしてそれをですね、参加者にお渡しをしているということでございまして、手書きでですね、金額をニューオータニ側が書き、そして摘要を書き、日付を書き、担当者の名前も手書きで書き、そしてそれをいわば参加者に、宛には出した。いわば後援会宛に出したわけではないというわけでございます」と答弁、受付の主役をホテル従業員に置いた口振りとなっている。

 ホテル従業員が領収書の全ての記入を行い、その領収書を「参加者にお渡しをしている」、あるいは「参加者に、宛には出した」と、領収書の「手交」は最初の答弁のように安倍事務所の職員ではなく、ホテル従業員が行ったことにしていて、最初の答弁と矛盾している。

 「参加者に、宛には出した」が、宛名書きの欄にホテル従業員が宛名を書いただけだと主張することもできるが、となると、「手交」はあくまでも安倍事務所の職員だとすることができるが、この方法だと、安倍事務所の職員でもいいが、参加者から5000円を受け取ってから、ホテル従業員が手書きで領収書に金額を書き、摘要を書き、日付を書き、担当者の名前を書き、そのようにして仕上がった領収書を、領収書が手渡されるのを待っている目の前の参加者に直接渡すのではなく、一旦安倍事務所の職員に手渡してから、安倍事務所の職員が参加者に「手交」したことになる。

 僅かな時間差ではあるが、こういった不自然なことをするだろうか。この不自然さを解消するとしたら、ホテル従業員が金額も、摘要も、日付も、担当者の名前も同じだからと前以って領収書を量産する形で順次記入して仕上げていき、安倍事務所の職員が参加者が受付に現れ次第、仕上がった領収書の一枚を5000円と引き換えに「手交」していく流れ作業を行ったとしなければならない。

 このような方法を用いたとするなら、安倍晋三の答弁の矛盾は一切解消する。但しホテル従業員は受付に現れる参加者をなるべく待たさない時間内に約800枚の領収書を順次、せっせと量産していかなければならない。

 だとしたら、金額も、摘要も、日付も、担当者の名前も同じなのだから、受付開始よりも早い時間にホテル側は、例え手書きであっても、領収書を約800枚+アルファ枚分を前以って、なぜ用意しておかなかったのだろうか。あるいは大手ホテルの領収書なのだから、それなりの体裁を見せるために手書きではなく、約800枚+アルファ枚の手書きという煩わしい手間を省くためにも、今ではパソコンで、形式を整えるのに少し時間はかかるが、形式さえ整えれば、何枚でも量産できるソフトも存在するし、電子タイムスタンプを使えば、複写で控えまで取ることができて、一流ホテルらしい見栄えのいい領収書を簡単に効率よく作成できる。

 しかも毎年のことだから、一度の準備で効率よく片付けることができる。

 だが、こういった簡便で見栄えのいい、効率もよい作成方法を採用せずに手書きで、しかもパーティが始まる前に用意しておくのではなく、パーテイ会場が開いてから、約800枚の領収書を受付で来客に合わせるようにして手書きで仕上げていった。果たして一流ホテルがすることだろうか。このような場面を自然と目に浮かべることができるだろうか。

 ネット上に2015年と2018年と2019年の領収書が流布している。画像にして載せておいたが、2015年は毎日新聞、2018年は「asahi.com」が記事で紹介していて、2015年は金額が手書きで「5000-」と入っているのみで、宛名の欄には「上様」の文字すらなくて空白、摘要も空白となっていて、2018年は5000円の金額と摘要が「お食事代」と入っているものの、宛名は2015年と同様、「上様」の文字すらない空白で、一流ホテルが発行する領収書には見えない。

 誰かが提供したものであったとしても、単に領収書が発行されたことを証拠立てて、安倍晋三が政治資金規正法にも公職選挙法にも抵触していないことを合わせて証拠立てる意図からの提供ではない証拠は画像からは窺うことはできない。

 2019年の領収書は「KSL-Live!」なる団体がネット記事の中で、〈2019年のものは宛名が入っている。〉と紹介しているが、その宛名は黒塗りにされている上に記事は親安倍で彩られていることから、この領収書が2019年4月12日の前夜祭パーティの際に実際に発行されたものかどうかを窺うことはできない。

 このような疑いを払拭するためにも、プライバシーだ何だと言わずに本人に断って名前を出すべきだったろう。パーティに出席したことが何の不名誉でもないのだから。

 このほかに7年もの間前夜祭パーテイを開いていながら、この3枚の以外の年の領収書がネットに流布していないことも、実際に領収書が発行されたのか、疑わしい点となっている。

 上記「KSL-Live!」が別記事で「領収書を誰も見ていない」と証言している下関市議について書き、その下関市議が反安倍勢力であることを一つの理由としてその証言の信憑性に疑義を呈しているが、このことをそのまま裏返すと、親安倍勢力の証言の信憑性にしても疑義を呈さなければならなくなる。

 もし5000円以上の飲食物が提供されていたなら、その差額をホテル側が補填していたとしても、安倍事務所側の要求に従ったことになるし、安倍事務所側が政治資金から補填していたならなおさら、買収及び利害誘導相応の罪に相当する。

 もし会費を徴収せず、領収書の発行は事実でなく、タダで飲食をさせていたとしたなら、とんでもなく公職選挙法のみならず、政治資金規正法にも違反することになる。

 一流のホテルでありながら、なぜ約800枚もの領収書をパーティ会場の受付の場で手書きで記入し、発行することになったのかが鍵を握っている。

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レイプジャーナリスト山口敬之著作『総理』という不名誉なキャッチフレーズ回避の官邸介入不起訴処分 民事一審が断罪

2020-01-13 11:23:52 | 政治
 山口敬之(のりゆき-慶應義塾大学経済学部卒53歳)のレイプ事件の最近までの経緯についてよく纏まっているから、「Wikipedia」の記事を借りて紹介する。昔風に言うと、"毒牙(邪悪な企み)にかかった"相手の女性は実名で紹介されていて、その名前は既に広く知られているが、彼女の勇気に敬意を評して、「女性」という一般名詞に置き換えた。ネット上には31歳と出ている。

 〈2015年4月3日、女性が自身の就職やアメリカの就労ビザについての相談のため、東京都内で当時TBSの政治部記者でワシントン支局長であった山口敬之と会食。同日深夜から4日早朝にかけて飲酒後に記憶をなくし、ホテルで乱暴されたとして準強姦容疑で警視庁に被害届を提出。

 東京地裁が2016年7月に嫌疑不十分で不起訴としたため、伊藤は2017年5月、検察審査会に審査を申し立てた。東京第6検察審査会は2017年9月、不起訴を覆すだけの理由がないとして「不起訴相当」と議決した。

民事訴訟

 2017年9月28日、「望まない性行為で精神的苦痛を受けた」として、女性が山口を相手に1100万円の損害賠償を求める民事訴訟を起こした。その直後の10月18日、女性が自らの訴えを綴った手記「Black Box」を出版し、24日には日本外国特派員協会で会見を行った。一方で山口は同月26日発売の月刊『Hanada』に、「私を訴えた女性へ」と題する手記を掲載し、女性の主張を全面的に否定した。

 2019年2月、山口が「女性の記者会見での発言などで社会的信用を奪われた」として女性を相手に慰謝料1億3000万円と謝罪広告の掲載を求めて反訴した。裁判は山口、女性の双方の訴えを同時に審理し、12月18日、女性側の請求を認め、330万円を支払うよう山口側に命じた。山口の反訴は棄却。〉――

 山口敬之は民事で敗訴した翌日の2019年12月19日に都内の日本外国特派員協会で自らの正当性を訴える、いわば不同意の上の性行為ではなく、合意の上の性行為であるとする会見(Yahoo!ニュース/2019/12/19(木) 17:06)を開いた。

 最初に山口敬之の代理人弁護士である北口雅章が発言、民事での女性の証言と女性の著作『Black Box』の内容との食い違い等を引き合いに出して、さも女性がウソつきであるかのような物言いをしたあと、英語で話す司会に対して通訳が簡単に日本語訳をし、記者が同じ英語で話して、通訳が日本語訳する遣り取りが少し続いてから、山口敬之が英語で話した。記事は英会話のところはすべて割愛している。

 山口敬之と記者との英語での質疑応答が5問ほど続いてから、通訳が次のように訳す。

 通訳「簡単に言いますと、逮捕状が出たのを聞いていません。逮捕状が出てるのは知りませんでした。なので、警察がいつどこで私を取り調べてるかっていうのを私は知りませんでした。本当は裏で総理大臣などの力を借りてるんじゃないですかっていうことで、いいえ、私、一切そんなことやってません」

 通訳の日本語訳を補足する形で山口敬之が日本語で発言。

 山口敬之「ちょっと訳、日本の方に言わせていただくと、私は6月8日に成田に着いて、そこで逮捕状が執行されなかったという報道が出ていることについての質問だと思うんですが、私のところに警視庁の方が任意の聴取にいらっしゃったのは6月中旬で、それまで私は捜査対象であるってことを一切知らないんですね。当然、警察の方が私を逮捕しようと思ってるのであれば、私にそれ、事前に伝えるはずがないですよね。ですから、出てるかどうか知らない逮捕状のことを、私は誰にも頼むことができないっていうことを申し上げた。ちょっと訳を補足させていただきました」

 山口敬之は英語で「逮捕状が出たのを聞いていません。逮捕状が出てるのは知りませんでした」といった趣旨の発言をしたことになる。但しその通訳内容に対して「2015年6月中旬に警視庁の任意聴取を受けるまで捜査対象であるってことを一切知らなかった」こと、知らなかった理由は「警察の方が私を逮捕しようと思ってるのであれば、私にそれ、事前に伝えるはずがないから」であり、「出てるかどうか知らない逮捕状のことを、私は誰にも頼むことができない」との物言いで、検察の取り調べて不起訴処分となったのは「裏で総理大臣などの力を借りてるんじゃないですか」との記者の問いに対してなのか、安倍晋三への依頼の疑いに関わる身の潔白を強く主張した。

 このような疑いが出てくるのは逮捕直前の逮捕状執行停止の経緯と山口敬之が安倍晋三に近いジャーナリストとして2016年6月9日に『総理』なる題名の著作を出版していることなどによるらしい。

 山口敬之が安倍晋三に対して逮捕逃れの依頼、あるいは不起訴処分扱いへの依頼をしていなければ、逮捕状が出ているのを知らなくて当然である。レイプ事件から警視庁が山口敬之を事件に関わる任意聴取をするまでをネットから拾った時系列で見てみる。

2015年4月3日 女性が山口敬之が食事と飲酒を共にしたあと高輪にあるホテルに連れ込まれる。
2015年4月9日 女性が原宿署へ相談。
2015年4月15日 女性、高輪署の捜査員とホテルの監視カメラ映像を確認。
2015年4月18日 山口敬之が女性に「合意の上だった」との文面でメールを送信。
2015年4月30日 高輪署に被害届を提出。準強姦容疑(当時)で女性の告訴状受理。
2016年6月8日 高輪署の逮捕状請求に対して東京地裁が逮捕状を発行。
  同日     逮捕状を取った高輪署員が成田空港で帰国の山口敬之氏を待ち構えて、逮捕状執行を図る。直前、逮捕状執行停止。担当警察官「警視庁幹部
         の指示で逮捕を取りやめた」
2015年6月中旬 警視庁、任意聴取。

 何度でも断るが、安倍晋三に対して逮捕逃れの依頼、あるいは不起訴処分扱いへの依頼をしていなければの条件下で山口敬之が逮捕状が出ていることを知るのは成田空港で山口敬之に対して逮捕状が執行される瞬間である。だが、逮捕状は執行されずに逮捕取調ではなく、任意聴取に変わった。

 逮捕状を検察に請求して降りれば、即逮捕に向かうのは刑事物のテレビドラマで常識となっている。世間的にも即逮捕が常識であろう。逮捕に足る最有力の容疑者ということになれば、逃亡や証拠隠滅阻止のためにも逮捕は緊急性を要することになる。

 だが、2016年6月8日に東京地裁が逮捕状を発行し、即逮捕に向かったものの、執行停止の指示が警視庁幹部から降りた。

 いわば逮捕状は反故にされた。高輪署の任意聴取の際も、逮捕状執行停止が警視庁幹部の指示と言うことなら、取調担当官は逮捕状執行停止のイキサツどころか、逮捕状の「タ」の字も口にすることはできなかったろう。下手に口にしたら、山口敬之から警視庁幹部にどう伝わるか分かったものではないからだ。

 当然、逮捕状に関しては、あくまでも安倍晋三に対しても誰に対しても逮捕逃れの依頼と不起訴処分扱いへの依頼をしていなければの話だが、出ていることは知らなくても当然である。その代わり、逮捕状が出ていることを知らなかったからと言って、安倍晋三に対しても誰に対しても逮捕逃れの依頼や不起訴処分扱いへの依頼をしていない証明とはならない。例えば山口敬之自身がその当時置かれていた状況から逮捕の可能性を予測していた場合は、「もし逮捕状が発行されるようなら、執行を止めることはできないだろうか。検察の取調に進んだとしても、不起訴処分に持っていけないだろうか」と依頼することはできる。

 山口敬之の代理人弁護士である北口雅章が外国特派員協会での記者会見で山口敬之に先立って行った発言の中に女性がレイプに関わるイキサツを書いた『Black Box』の内容を引用した次のような下りがある。

 北口雅章「伊藤さんは事件の当日、避妊のためピルを飲んでいます。彼女はピルを飲んだ5日後に月経があったと医師に申告しています。そのため医師は、伊藤さんは妊娠の可能性がないと、殆どなくなったと診察しています。それにも関わらず、伊藤さんはそのあと山口さんに何度もメールをして、妊娠の不安を訴えています。性犯罪の被害者は正直に話すのが普通ではないでしょうか。カルテとの矛盾はほかにもいっぱいありますけれど、この辺にとどめます」

 要するに女性の訴えの信用のなさを主張している。但し女性と山口敬之との間にメールの遣り取りがあったことが明らかになる。女性がホテル所在地の高輪署の捜査員とホテルの監視カメラ映像を確認した2015年4月15日と高輪署に被害届を提出した2015年4月30日の間の2015年4月18日に山口敬之が女性に「合意の上だった」との文面でメールを送っている。

 このような文面となっているのは女性側からの「不同意」の訴えに対する山口敬之側からの「同意」の主張であって、女性側の「不同意」の言い分に対して山口敬之側が「同意」の言い分を戦わせていたからであろう。

 戦わせていなければ、山口敬之は「合意の上だった」などといった文面のメールを送る必要性は生じない。生理があって、もはや妊娠の心配がなくなったのに山口敬之に妊娠の不安を訴えるメールを送っていたのは、事実との違いは歓迎できないが、「不同意」(望んだ性交ではなかったこと)を相手に証明させる窮余の策だったと見ることもできる。

 「不同意」か「合意」かのメールの遣り取りがあった以上、女性が山口敬之にホテルに連れ込まれたあと、原宿署に相談したり、高輪署の捜査員とホテルの監視カメラ映像を確認していることは、「不同意」の強い後ろ盾とするためにも女性から知らされていただろうし、山口敬之は少なくとも2015年4月18日の時点までには女性が強姦罪か、準強姦罪で警察に相談、その相談に対して警察が取調に動いていることを知っていたことになる。
 
 当然、「捕状が出てるのは知らなかった」とすることはできるが、山口敬之が2015年4月18日に女性に「合意の上だった」との文面でメールを送った際には既に警察が動いていることからも、女性側の「不同意」に対する山口敬之側の「同意」の立証の困難性を、「同意」に対する「不同意」の立証の困難性も相互対応することになるが、ジャーナリストとして承知していたはずで、立証の困難性に伴って職業的立場や職業的立場に応じた世間体に与える知名度への悪影響(社会的地位上のダメージ、イメージダウン等々)が小さくないことが予想されるという点から、自分が厄介な難しい場所に立たされている、あるいは立たされかねないことは認識したはずである。

 その認識は警察で取調を受ける万が一の危惧、逮捕状が出るかもしれない万が一の危惧、裁判で被告席に立たされる万が一の危惧を伴うことになる。伴わなかったしたら、社会的地位を築いたジャーナリストとは言えない。万が一の危惧どころか、実現可能性の確率が高い危惧として目の前に迫ったいたということもあり得る。

 このような認識が安倍晋三にか、厄介事の処理を依頼する根拠となり得るはずだが、誰に対しても逮捕逃れの依頼や不起訴処分扱いへの依頼をしていなければ当然とすることができる「逮捕状が出てるのは知らなかった」という事実のみを何事も依頼しなかったことの証明とするのは事件の経緯や事件の性質と矛盾するだけではなく、この種の犯罪の立証の困難性に対してジャーナリストとして弁えていなければならないする認識とも明らかに矛盾する。

 だが、山口敬之は、その実質性に於いて果たしてジャーナリストなのか、他の事情は一切排除して、「逮捕状が出てるのは知らなかった」という事実一つのみを以って安倍晋三に対しても、誰に対しても逮捕逃れの依頼や不起訴処分扱いへの依頼をしていないことの証明としている。

 この手の証明は自分の立場を良くする情報操作なくして成り立たない。「逮捕状が出てるのは知らなかった」こと以外の事実は一切排除する、あるいは見えなくするという情報操作である。当然、安倍晋三か、誰かに対して逮捕逃れの依頼や不起訴処分扱いへの依頼をしていなかったなら、「逮捕状が出てるのは知らなかった」は当然とすることができる事実なだから、そのことの利用は必要としない情報操作となる。

 この情報操作は次の遣り取りからも窺うことができる。

 神保哲生「すみません、前からで。重要なポイントなので。山口さん、じゃあ、すみません。こちらから質問させていただきます。ビデオニュースの神保です。山口さんご自身は、政治家にも官僚にも誰にもこの事件で頼んだことはないと、きのうもおっしゃって、今日もおっしゃっていますけど、政治家や官僚には頼んでないけれども、そのとき、もしくは事後に、どなたかが山口さんのことで官邸なり、あるいは菅さんなり、あるいは中村さんなり、北村さんなりに働き掛けをしたということはまったく、山口さんはお聞きにもなっていないのか。

 それはTBSの方でも結構ですし、どなたか、山口さんの知っている方で、そのような働き掛けがあったということを事後にもお聞きになっていないのか。山口さんがまったくうかがい知らないところで、そういうことがもしあったとすればあったということなのか、それをもし、今この時点でご存じのことがあれば教えてください」

 通訳が英語の質問に変えたあとに山口敬之が日本語で答弁。

 山口敬之「先ず私がはっきりと申し上げられるのは、このケースのこと、この事件、事案について、私はどの政治家にも、警察の方にも、官僚の方にも、要するに誰にも、何もお願いしていない。それ以上のことは、私は何も聞いていませんので、何か、私の知らないところで何かが起きていたかという質問は、私がお答えするのは適切ではないです。それで、それについて何かが動いたというような話を間接的にも聞いたことは一切ありません」

 神保哲生「ではあれだけ、あのようなことが動いたというような報道があっても、その真偽のほどを、しかも、ご自分のことであるにもかかわらず、それは、じゃあ確認もされていないということなんですね」

 山口敬之「先ず私は自分で犯罪を犯していません。ですから、捜査が行われているということを知る由もないから、誰にも頼めなかったという物理的なことをご理解いただいた上で、そのあと、この報道が出たあとは、特に、私が例えば誰かに電話をかけたり、それからメールを送ったりすること自体が誤解を招くということで、一切の連絡は断ちました、私は。ですから、私が通常の連絡すらしておりませんので、このケースをどの政治家にも、どの官僚にも一切頼んでいない。私からはっきり申し上げられるのはそれだけです」

 山口敬之は、「私は自分で犯罪を犯していません」と、自己の正当性、正義は自己にありを言い切っているが、女性と山口敬之との間で「不同意」か「合意」かで争う、自身の評判を落としかねない厄介事となる性行為を犯していて、その件で警察が動いていることを両者のメールの遣り取りで気づいているはずで、「不同意」か「合意」かの決着は最終的には裁判に委ねられる可能性が色濃くなっていたのだから、自己の正当性、正義は自己にありを言い切ること自体が情報操作に当たる。

 当然、「捜査が行われているということを知る由もない」も情報操作でなければ、文脈上の整合性を図ることができないし、「知る由もない」の情報操作は、「誰にも頼めなかったという物理的なことをご理解」の発言も、情報操作を自ずと引き継ぐことになる。

 要するに山口敬之のこの記者会見の以下の発言の中で自己の正当性を訴えるどのような発言も、情報操作に基づいていなければならない。他から与えられた自己正当性は検察の取り調べで2016年7月に嫌疑不十分で不起訴となったこと、女性がこの不起訴処分を不服として審査を申し立てた検察審査会が2017年9月に不起訴を覆すだけの理由がないとして「不起訴相当」を議決したことぐらいだろう。

 但し安倍晋三なりに依頼して獲ち取った自己正当性に過ぎない。

 2016年6月8日に山口敬之に対する逮捕状執行の停止を逮捕した「警視庁幹部」とは2017年5月31日付「ディリー新潮」(2017年5月25日号)には当時の警視庁刑事部長だった中村格(いたる)として紹介されている。

 〈中村氏が「(逮捕は必要ないと)私が判断した」と本誌(「週刊新潮」の取材に答えたものだから、新聞・テレビの記者はその真偽のほどを本誌発売後、探りに行っている。そのあらましについて、事情を知る記者に語ってもらうと、

 「“記事の件は、あまりまともだと思わない方がいい。なんで2年前の話が今ごろ出てくるのか、不自然でしょ。女も就職の世話をしてほしいという思惑があったから飲みに行ったのであって所詮男女の揉め事。彼女は2軒目にも同行しているんだしさ。その就職の話が結局うまくいかなかったこととか、最近、山口さんがテレビによく出ているからという、そういうことも(告白の)背景にあるんじゃないの”と、中村さんはこんな感じの話しぶりだったそうです」・・・・

 ネットで調べたところ、中村格が取材に答えた「週刊新潮」は、2017年5月18日発売で、《官邸お抱え記者「山口敬之」、直前で“準強姦”逮捕取りやめに 警視庁刑事部長が指示》と題してネット上に紹介されている。

 要するに中村格は「週刊新潮」の取材に対して「なんで2年前の話が今ごろ出てくるのか、不自然でしょ」、「女も就職の世話をしてほしいという思惑があったから飲みに行ったのであって所詮男女の揉め事」といったことを伝えた。

 週刊誌は発売日よりも1週間程度か、前に発売される。2017年5月10日見当までの事件の経緯を改めて振り返ってみる。

 女性が望まない不同意の性行為を力づくで受けたのが2015年4月3日。原宿署への相談等を経て、高輪署が女性の準強姦容疑での告訴状を受理し、逮捕取調の予定が逮捕状執行停止を中村格から指示されて、任意聴取に切り替えたのが2015年6月中旬。そして東京地検が嫌疑不十分で不起訴決定を下したのは2016年7月22日で、中村格の逮捕状執行停止指示を伝えた「週刊新潮」の取材の時点頃までに1年と約4ヶ月も過ぎている。

 そして女性が東京地検の不起訴決定に対する不服申立を検察審査会に行ったのは2017年5月29日、検察審査会が「不起訴を覆すだけの理由がない」として「不起訴相当」と議決したのは2017年9月22日と続くのだが、中村格が「なんで2年前の話」がと言った「2年」は自己の立場を正当化するために少々色を付けた「2年」だとしても、女性からしたら1年と約4ヶ月はいつ決着がつくかも分からない、精神的に宙ぶらりんの状態をいたずらに招くだけの途中経過に過ぎず、このことを含めて、女性からしたら自身の人格とその尊厳に深く関わる忌まわしい出来事の一つの決着を図っている真摯な事実に対して警察にしても真摯に向き合わなければならないところを、「なんで2年前の話が今ごろ出てくるのか、不自然でしょ」と言い、「所詮男女の揉め事」と断罪することで女性の人格とその尊厳を貶めている自身の酷薄な感性に気づかない。

 中村格の経歴をネットで調べてみた。東京大学法学、1986年警察庁入庁、2012年12月に内閣官房長官菅義偉の秘書官。2015年3月から2016年8月まで警視庁刑事部長、2018年9月14日より警察庁長官官房長を歴任している。年齢は出ていないが、東大卒の年から計算して、55歳見当か。

 これだけの学歴と経歴を以ってして、この酷薄な感性である。

 中村格は内閣官房長官菅義偉の秘書官として2012年12月から2015年3月頃まで首相官邸に出入りしていた。一方の山口敬之は安倍晋三対する積み重ねた取材と出版に当たって新しく取材した情報も付け加えているかもしれないが、それを纏めた本を『総理』と題して2016年6月9日に出版した。

 その前日の2016年6月8日、山口敬之に対する準強姦罪の容疑で取った逮捕状を高輪署の捜査員が携えて、帰国してくる成田空港に出向いたが、逮捕直前に当時警視庁刑事部長だった中村格が所轄署である高輪署の権限を超えて逮捕状執行停止を指示した。

 中村格は菅義偉の秘書官をしていた。山口敬之は安倍晋三と親しい関係にあった。しかも安倍晋三という政治家を題材とした出版を間近に控えていた。山口敬之を不起訴処分にする人材は揃っていた。不起訴処分にしなければならないお膳立ても揃っていた。山口敬之がレイプジャーナリストといった不名誉なキャッチフレーズで呼ばれることと、そのようなレイプジャーナリストがモノにした『総理』なる著作物といった不名誉なキャッチフレーズがつくことは安倍晋三にとっても不名誉なことで、それを回避するためのお膳立てであり、持てる人材を駆使した。

 だが、民事裁判に於ける地裁の一審判決が断罪を下すことになった。山口敬之は控訴した。一審判決を覆すにはさらに強力な安倍晋三等の裁判介入が必要となるはずだ。

 (加筆 2020年1月13日11:58)

 もし山口敬之が言っている「合意」が事実なら、冷静な状況下の性行為ということになって、大人の態度として「妊娠は大丈夫か」ぐらいは聞いたはずだ。「大丈夫」と答えれば、膣内射精で行くし、「大丈夫ではない。何の用意もしていない」と答えたなら、膣外射精で行っただろうし、その際の遣り取りが「合意」の有力な証拠となり得る。

 そういった遣り取りがなかったなら、逆に「不同意」の強力な状況証拠となる。
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