安倍晋三のプーチンとトランプに寄せる国益よりも信頼関係第一主義の単細胞、その尖閣と北方領土への影響

2016-11-17 09:27:26 | 政治

 2016年11月15日のTPP協定に関する参議院の特別委員会での安倍晋三の発言を11月15日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。   

 石井章日本維新の会議員「アメリカのトランプ次期大統領は、以前からTPP=環太平洋パートナーシップ協定に悲観的であり、アメリカが批准しない可能性も高いが、どう交渉するのか」

 安倍晋三「普遍的価値を共有する日米が中心となって、多くの同志的な国々と、アジア太平洋地域に世界のGDP=国内総生産の4割の経済圏、自由で公正な経済圏を作っていくことは、地域の経済と発展、安全保障においても極めて有意義だ。

 日米同盟関係は日本の安全保障・外交の基軸であり、今週17日のトランプ氏との会談を、しっかりと信頼関係を築いていく第一歩としたい。TPPをどうするかは、アメリカの議会で判断され、次の政権ではトランプ氏が判断されることだが、日本、アメリカにとっても極めて有意義であり、理解が広がっていくことを期待したい」

 大統領選と同時に行われた米議会上下院選挙で共和党が両院とも過半数を占め、共和党上院トップのマコネル院内総務が「TPP法案の年内承認はない」と明言したことを受けてオバマ大統領は任期中のTPP承認を事実上断念している。

 こういった情勢に対して安倍晋三はトランプ政権成立後のアメリカ議会でTPP承認を促すためにはトランプとの信頼関係の構築が第一番と見た。

 いわば構築した信頼関係がトランプに対してTPP承認に向けて力になるとしていることからの発言であろう。

 このことは既にロシアのプーチンで例を見ている。

 北方領土返還のためにはプーチンとの信頼関係の構築が優先と考え、西欧各国首脳がロシアの人権状況に忌避反応を示して、その抗議の意思表示として2014年2月7日のソチ・オリンピック開会式をボイコットしたのに対してプーチンとの信頼関係の構築を優先させ、先進国では唯一出席したのを始め、5回だか6回、プーチンと会談している。

 安倍晋三としたら、プーチンと相当に信頼関係を構築できたと考えているはずだ。

 だが、プーチンの方は国後島と択捉島の軍事化と経済開発を着々と進め、しかも返還交渉の前提として掲げていた「第2次大戦の結果、北方四島はロシア領となったことを認めるべきだ」としている条件を一向に下げずに主張し続けている。

 日本側がロシア領と認めることは返還というプロセスを不必要化する危険性が伴う。ロシア領となれば、返す必要はなくなるからだ。

 当然、「第2次大戦の結果」という論理とその論理を返還交渉の前提とすること自体が矛盾することになる。

 安倍晋三は信頼関係が単なる精神的な繋がりだけでは相手に通じないと見て、何かしら実体性を備えたいと思ったのだろう、信頼関係の上に「新たな発想に基づくアプローチ」なる名称で、その具体的項目として「8項目の経済協力プラン」を提案した。

 この提案にプーチン以下ロシア側は飛びついたが、北方四島の主権を譲り渡さないという姿勢を変えていない。

 いわば安倍晋三がいくらプーチンとの信頼関係を優先させようと、プーチン以下のロシア側はそのような信頼関係以上に北方四島をロシアの領土とすることの国益を優先させている。

 安倍晋三がトランプに対して狙っている信頼関係構築がこの二の舞いにならなければ、結構毛だらけ猫灰だらけで、これ程結構なことはない。

 一方トランプは安倍晋三の参議院特別委員会上記答弁の前日(記事からでは時差の関係が分からない)の11月14日にプーチンと電話会談を行っている。

 11月15日付「NHK NEWS WEB」から見てみる。   

 記事はロシア大統領府が11月14日、プーチン大統領がアメリカのトランプ次期大統領と電話会談し、改めて祝意を示したうえで、「対等で互いに尊重し合い、内政問題に干渉しないという原則のもとで、パートナーとして対話を行う用意がある」と伝えたことと、両国関係について「正常化に向けて、幅広い問題で建設的な協力を進めていくことで一致した」ことを明らかにしたと書いている。

 一方のトランプの政権移行チームは、「トランプ氏は、ロシアとの間で強く、永続的な関係を築くことを非常に楽しみにしているとプーチン大統領に伝えた」と、電話会談の内容を伝えている。

 プーチンの「内政問題に干渉しないという原則」の主張とトランプの「強く、永続的な関係」を願う対ロ姿勢を考え併せると、トランプはウクライナの主権と国際法を踏みにじったウクライナからのクリミアのロシアへの併合を問題視しない姿勢を窺うことができる。

 つまり問題視しないことを自らの考える国益と目していることになる。

 問題視しなければ、力による現状変更を用いたその併合に対する欧米各国のロシアに対する金融・経済制裁のうち、アメリカの制裁は自ずと立ち消えていくことになる。

 国益のために制裁を取り下げることあり得る。

 このことは当然、オバマ政権が必ずしも賛成していなかった安倍政権の経済援助を力とした対ロ接近に対しても問題視しない姿勢となって現れるだろうから、トランプの姿勢に便乗して、誰に対しても気兼ねなく対ロ接近を図ることができる絶好のチャンスとなる。

 但しウクライナの主権と国際法を問題視しないトランプが優先する国益とは、アメリカ国家だけのことを考えた国家主義からの国益となる。

 この国家主義的な国益が安倍晋三が考えている国益に合致する。

 但しその国益が北方領土返還の国益に繋がる可能性は現在のところ非常に低いと言わざるを得ない。経済という餌だけ取られて、領土という大魚を逃がす結末も否定できない。

 中国の習近平主席も、「中国はアメリカの雇用を奪っている」と選挙中非難していたトランプと電話会談をしている。11月14日付「NHK NEWS WEB」から見てみる。    

 国営中国中央テレビの報道を引用して、トランプの大統領選挙での勝利に祝意を伝え、「協力は両国の唯一の正しい選択で、重要なチャンスと巨大な潜在力がある。私は両国関係を非常に重視しており、アメリカとともに関係を推し進めたい」と米中関係重視の姿勢を強調したのに対してトランプは、「私は習主席の米中関係に対する考え方に賛同する。中国は偉大で重要な国だ。両国は互いにウィンウィンの関係を実現できる」と伝えている。

 オバマ政権の米国と中国は中国の南シナ海に於ける海洋進出で対立していた。もしトランプがアメリカの経済を豊かにするために中国との経済関係を優先させて南シナ海問題を等閑に付すことを国益としたなら、その国益は海洋進出や領土問題で中国を刺激しないよう心掛けることを注意点とすることになるから、尖閣問題にも影響してくることになる。

 トランプの米国の国益からの対ロ姿勢が安倍晋三の対ロ接近の国益に役立ったとしても、トランプの対中姿勢に関しては安倍晋三の尖閣死守の国益に逆効果となる可能性は否定できない。
 
 所詮、国と国の関係、外交は国益と国益の駆引きである。北方四島返還交渉で安倍晋三とプーチンの信頼関係が役立っていないようにトランプといくら信頼関係を築こうと、日本の国益に適う保証はない。

 だが、安倍晋三は国益よりも信頼関係第一主義の立場を取っている。その単細胞は素晴らしい。

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