韓国艦艇レーダー照射事件での海自哨戒機対応に見る素朴な疑問 韓国を下に見る日本側の傲慢さからの事態ではないことを願う

2019-01-14 10:12:52 | 政治

 2018年12月20日午後3時頃、能登半島沖の日本の排他的経済水域内で海上自衛隊P-1哨戒機が韓国海軍駆逐艦から複数回の火器管制レーダーを数分間照射され、日本政府は「極めて危険な行為だ」として韓国側に再発防止を求めた。対して韓国側は当初、韓国海軍が「火器管制用レーダーを作動させたことは事実だが、日本の哨戒機を狙う意図は全くなかった」と弁明、その後、韓国政府が「哨戒機を追跡する目的でレーダーを運用した事実はない」と否定、かくして照射した、照射していないと双方の言い分が対立するに至った。

 日本政府は2018年12月28日、自衛隊哨戒機が現場を撮影した映像と隊員同士の遣り取りを公開、あくまでも照射を受けたのは事実とし、対して韓国側も同様の映像を翌年、2019年1月4日午後に公開して、「事実を歪曲するもの」と日本側を批判、対立はエスカレートの様相を呈している。

 韓国海軍が「日本の哨戒機を狙う意図は全くなかった」と言明していることについては、2018年12月22日付「時事ドットコム」記事が朝鮮日報の報道として具体的に伝えている。

〈駆逐艦が北朝鮮の遭難漁船を捜索するため、一般レーダーよりも精密な火器管制用レーダーを稼働させ、哨戒機がその半径に偶然入ってきたとする韓国軍関係者の話を伝え〉、付け加える形で、「火器管制用レーダーを作動させたのは事実だが、日本の哨戒機を狙う意図はなかった。(日本側が「日本の排他的経済水域(EEZ)内で照射を受けた」と発表したことに関して)「(駆逐艦が)遭難船救助のため、通常、作戦を行う海域よりも、東側に進んだのは事実だが、韓日のEEZの中間水域で起きたことで、日本の反応は多少、度を越している側面がある」と主張していると言う。

 2013年1月にも海上自衛隊護衛艦搭載ヘリコプターが飛行中、中国海軍艦艇から射撃管制レーダーの照射を受けたが、回避行動を取ってレーダーから逃れた。日本政府は中国政府に抗議したが、中国側が否定、ウヤムヤに至っている。

 中国も韓国も、"ウソも百回"(ドイツ・ナチス政権の宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルスの名言、「嘘も百回言えば真実となる」)を用いて、前者はウヤムヤにし、後者はウヤムヤを狙っているのかもしれない。

 この"ウソも百回"は安倍晋三も森友学園疑惑、加計学園獣医学部認可疑惑で得意としていた。

 例え日本側の言い分が正しくて、韓国側の否定が"ウソも百回"だったとしても、自衛隊の映像を文字起こしした、既に記事削除が行われている2018年12月28日付「NHK NEWS WEB」記事を読んだとき、韓国駆逐艦に対する海自哨戒機の対応に素朴な疑問を持った。ここに全文を引用して、何が疑問か、記してみたいと思う。青文字は遣り取り中の英記号の日本語訳を理解しやすくするために英記号が繰り返されるごとに丸かっこ付きで日本語訳を補うことにした。
 
 レーダー照射 そのとき哨戒機内では… 隊員やり取り詳細(NHK NEWS WEB/2018年12月28日 21時48分)

自衛隊の哨戒機が韓国軍の艦艇から射撃管制用レーダーの照射を受けた問題で、防衛省が公開した映像の、機内の隊員たちのやり取りは次のとおりです。一部音声が消されていますが、防衛省はそれ以外の加工はしていないとしています。用語の説明は映像の字幕をそのまま記載しています。

クルー「2隻ともに1000ヤード間隔の間にいる。」

機長「これより、WARS(韓国警備救難艦「サンボンギョ5001」)の撮影を実施する。」

機長「WARS」
「左側に小型ゴムボートと思われるもの視認」

クルー「クァンゲト・デワンは回頭中、240度まで回頭している。」
「画面中央WARSを撮影中」
「まもなくアビーム(正横通過)する」
「アビームスタンバイ」
「マーク(今)アビーム(正横通過)
「左舷にゴムボート2隻」
「その間に漁船のような1隻を確認した。」
「現在左舷艦艇をアビーム(正横通過)する。」
「アビーム(正横通過) スタンバイ」
「マーク アビーム(正横通過)
「ヘリデッキについてはヘリ等格納されていない。」
「格納庫にヘリ等はなかった。レーダー回転中」
「特異事象等はなし」
「Korea South WARS(韓国警備救難艦) ビジュアルコンタクト ポジション」★ピー音(位置)
「コース300度8ノット」★ピー音(確認作業中)

機長「ネクスト(次)」
「クァンゲト・デワンの回頭針路240度から」
「このまま回り込んで」
「ネクスト クァンゲト・デワンの右舷を撮影していく。」

クルー「漁船まもなく左側」
「さきほど撮影した、艦番号5001」
「サンボンギョであることを確認した。」
「情報ありましたよね。」
「情報は」「ありますね。」「サンボンギョ」★ピー音(確認作業中)
「WARS?」「違いますね。」
「WARSの目標情報はないですよね?」「なし」
「クァンゲト・デワン(の情報)もなし?」「なし」
「機長、この、やつは撮ったんですか?」

機長「まだ撮ってない。結局全景、今、失敗しちゃったので」
「これ撮ったあと、上昇して全景撮っていこうか。」
「ネクスト クァンゲト・デワン船尾から」
「右舷の撮影に入っていく。」
「目標は11時(の方向)3マイル」
「今のところ呼びかけ等なし」

クルー「U(UHF)/V(VHF)1,2,3,4」
「国V(国際VHF)Vガード(VHF緊急周波数(121.5MHz))、Uガード(緊急周波数(243.0MHz))モニター中」
「現在、画面では左側 WARS(韓国警備救難艦)
「右側 韓国艦艇クァンゲト・デワン」
「現在、画面でズームアップ艦尾撮影中」

機長「本機、ターゲットの右舷アビーム(正横通過)する。」
「艦番号、後で確認する。」

クルー「レーダーアンテナは回転中」
「ヘリの格納庫内、見える限りヘリの格納されているのを確認できない。」
「まもなく」
「スタンバイ マーク アビーム(正横通過)
「971 971」
「その他特異事象なし」
「艦番号571ではないかと」

機長「了解 571」

クルー「ビジュアルコンタクト」★ピー音(位置)
「190度 8ノット」★ピー音(確認作業中)
「艦番号971、971」
「左上昇旋回、ネクスト全景の方、映していく。」
「韓国の5はあんまり見ないですね」
「現場の天候、風は050度15ノット」
「視程20キロ」
「雲は2CU(積雲 雲量2) 030(雲高3000ft)」
「波1(さざ波がある程度) うねり1(弱いうねり)」
「うねりの方向 ノースtoサウス」
「現在飛行高度1000フィートまで上昇中」

機長「1500まで上昇し全景をおさえていく。」

クルー「1500ftレベルオフし全景撮影を実施する。」
「現在画面で2隻」
「WARS(韓国警備救難艦)5001 クァンゲト・デワン」
「971,撮影している。」★ピー音(確認作業中)

機長「はい 了解」
★「FC(火器管制レーダー)探知」と左上に大きく赤い字幕
自機の10時方向 約5000メートル

クルー「出しています。」
「FC(火器管制レーダー)系出してる」

機長「はい 了解」

クルー「FC(火器管制レーダー)コンタクト」★ピー音(確認作業中)
「避けた方が良いですね。」
「砲の指向等を確認(する)」

機長「確認せよ。」

クルー「了解」「コンテニューホールド(継続探知)」

機長「隔離する。一旦隔離する。」

クルー「コンテニューホールド(継続探知)

機長「はい 了解」

クルー「めちゃくちゃすごい音(電波強度強い)だ」★赤い字幕
「オグジュアリー(探知した電波などの音を聴くことができる装置)確認中」
「この音覚えておいて下さい。」
「砲はこちらを向いていない。」
「砲の向首は確認していない。」★ピー音(確認作業中)

機長「はい」「はい 引き続きVTR撮影中」★ピー音(確認作業中)
「了解」

クルー「はい コンテニューホールド(継続探知)」★ピー音(確認作業中)
「FCレーダー(火器管制レーダー)らしき電波探知」

機長「一応 呼びかけてみようか」★ピー音(確認作業中)

クルー「そちらの方から出てくるのは間違いなし」
「うちら電波 えー」
「今止まりましたね。」

機長「今止まった」

クルー「まだ あっ 今 ダメです。」
「今遠い。★ピー音○○○(確認作業中)」

機長「はい ★ピー音○○○(確認作業中)」

クルー「★ピー音○○○(確認作業中)チャレンジした。」

機長「はい」

クルー「了解、ちょっと確認しておいて下さい。」
「IFT、できれば」
「★ピー音(確認作業中)見れたらお願いします。」★ピー音(確認作業中)

クルー「FC(火器管制レーダー)らしき 信号をコンタクト(探知)」
「えーと機長★ピー音○○○(確認作業中)」
「現在進行形ではないですが『確認した』まで」

機長「一応(司令部に)言っておこうか。」

クルー「確認します。」

機長「はい」「TACO2(ツー)はSAT(通信衛星)HOT(通信中)ね」

クルー「はい 了解」

クルー「3(スリー)サイドで確認する。」

機長「はい」

クルー「ではTACO1(ワン)でやりますね。国V121.5」

機長「はい 了解」
★「FC(火器管制レーダー)探知」と左上に大きく赤い字幕
自機の12時方向 約8000メートル

クルー「また(FC(火器管制レーダー))探知」
「★ピー音○○○(確認作業中)でコンタクトした旨及び」
「今コンタクトした旨SAT(衛星通信)で一報しておく。」

機長「はい 了解」
★「FC(火器管制レーダー)探知」と左上に大きく赤い字幕
自機の12時方向 約8000メートル
「『現在離隔中』も言っておいてね。」

クルー「はい 了解」
★以下、英語で呼びかけ★
「韓国海軍 艦艇,韓国海軍 艦艇」「艦番号971,艦番号971」
「こちらは日本国海上自衛隊,こちらは日本国海上自衛隊」
「貴艦のFC(火器管制レーダー)アンテナが我々を指向したことを確認した。」
「貴艦の行動の目的は何ですか。」
「韓国海軍 艦艇,韓国海軍 艦艇」「艦番号971,971」
「こちらは日本国海上自衛隊」
「貴艦のFC(火器管制レーダー)アンテナが我々を指向したことを確認した。」
「貴艦の行動の目的は何ですか。」
★「韓国海軍艦艇からの応答なし」の字幕★

クルー「現在後尾5マイル」
「ネクスト国Vは156.8でいきます。」

機長「はい」
★以下、英語で呼びかけ★
「韓国海軍 艦艇,韓国海軍 艦艇」
「こちらは日本国海上自衛隊,こちらは日本国海上自衛隊」
「韓国海軍 艦艇」「艦番号971」
「こちらは日本国海上自衛隊」
「貴艦のFC(火器管制レーダー)アンテナが我々を指向したことを確認した。」
「貴艦の行動の目的は何ですか。」
「韓国海軍 艦艇,韓国海軍 艦艇」
「艦番号971,971」
「こちらは日本国海上自衛隊」
「貴艦のFC(火器管制レーダー)アンテナが我々を指向したことを確認した。」
「貴艦の行動の目的は何ですか。」
★「韓国海軍艦艇からの応答なし」の字幕★

クルー「はい★ピー音○○○(確認作業中)」

機長「はい 了解」★ピー音(確認作業中)

機長「はい 了解」★ピー音(確認作業中)

クルー「間違いなく向こう(韓国艦艇)のFC(火器管制レーダー)系です。」★ピー音(確認作業中)

クルー「はい」★ピー音(確認作業中)

機長「えーと記録がとれているか確認して下さい。」

クルー「はい一応★ピー音○○○(確認作業中)は終了」
「あと、★ピー音○○○(確認作業中)」
「★ピー音○○○(確認作業中)データはとれています。」

機長「はい 了解」
「U/V2をUガードに換えてくれる。」

クルー「はい 了解」
「機長Uガードでまだ交話やってないのでやります。」
「機長 IFT」

機長「はい 送話」★ピー音(確認作業中)

クルー「とれています。」

機長「了解」★ピー音(確認作業中)

機長「はい 了解 ありがとうございます。」★ピー音(確認作業中)

クルー「TACO1(ワン)再度呼びかける。」「U/V2セット」
★以下、英語で呼びかけ★
「韓国海軍 艦艇,韓国海軍 艦艇」
「こちらは日本国海上自衛隊」
「韓国海軍 艦艇」「艦番号971」
「こちらは日本国海上自衛隊」
「貴艦のFC(火器管制レーダー)アンテナが我々を指向したことを確認した。」
「貴艦の行動の目的は何ですか。」
★「韓国海軍艦艇からの応答なし」の字幕★
「韓国海軍 艦艇」「艦番号971,971」
「こちらは日本国海上自衛隊」
「貴艦のFC(火器管制レーダー)アンテナが我々を指向したことを確認した。」
「貴艦の行動の目的は何ですか。」

 映像の長さ:13分7秒 終

 WARSとはW+ARS(救難艦)で「沿岸警備隊の救難艦」を意味する艦種記号だとネットで紹介されていた。

 あくまでも日本の排他的経済水域内で発生した韓国側からの火器管制レーダー照射であることを前提とする。

 先ず海自哨戒機は韓国警備救難艦を視認した。視認後、韓国警備救難艦の撮影実施に入るために「正横通過」の旋回に入り、「漁船のような1隻を確認」している。このことは韓国側が北朝鮮の遭難漁船を捜索していたとしていることと符合する。

 このあとも旋回して撮影を続け、同時に韓国警備救難艦の艦上を、「レーダーアンテナは回転中」だとか、「ヘリの格納庫内、見える限りヘリの格納されているのを確認できない」などと偵察活動を行っている。

 このあと、海自哨戒機は「約5000メートル」の位置にいる韓国警備救難艦から火器管制レーダー(FC)の照射を受ける。クルーが「めちゃくちゃすごい音(電波強度強い)だ」と言っていることは電波の強度を言っているのだろう。

 照射を受けてから初めて、韓国警備救難艦に向けて「こちらは日本国海上自衛隊,こちらは日本国海上自衛隊」と呼びかけて、照射を受けたことに対して「貴艦の行動の目的は何ですか。」と照会している。韓国側の応答がないために「貴艦の行動の目的は何ですか。」をあと5回、合計で6回繰り返している。

 日本の排他的経済水域で韓国警備救難艦を発見したとき、なぜ直ちに「貴艦の行動の目的は何ですか。」と問い合わせしなかったのだろう。問い合わせをせずに韓国警備救難艦の上空を旋回して、撮影したり、艦上の偵察を行っている。

 最近日韓関係がギクシャクしていると言っても、少なくとも韓国は友好国に位置する。にも関わらず、このような対応をした。このことが素朴な疑問である。

 1982年にジャマイカで開催の第3次国連海洋法会議最終議定書及び条約の署名会議で採択され、日本が1983年2月に署名、1996年6月批准、同1996年7月20日の(国民の祝日「海の日」に発効した「海洋法に関する国際連合条約」は排他的経済水域に於ける活動を次のように定めている。

第58条 排他的経済水域における他の国の権利及び義務

1 すベての国は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、排他的経済水域において、この条約の関連する規定に定めるところにより、第87条に定める航行及び上空飛行の自由並びに海底電線及び海底パイプラインの敷設の自由並びにこれらの自由に関連し及びこの条約のその他の規定と両立するその他の国際的に適法な海洋の利用(船舶及び航空機の運航並びに海底電線及び海底パイプラインの運用に係る海洋の利用等)の自由を享有する。

 「沿岸国」とは、海洋及び(海洋に出ることができる)河川や湖に接している国のことであり、「内陸国」とは、無沿岸国とも言って、陸に囲まれて海岸を持たない国だと言う。

 第87条は、「公海の自由」を謳った条文で、〈公海は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、すべての国に開放される。〉と規定している。

 つまり排他的経済水域に於いて少なくとも「船舶及び航空機の運航」は公海と同様に認められていることになる。

 そして第39条は「通過通航中の船舶及び航空機の義務」を規定、〈1 船舶及び航空機は、通過通航権を行使している間、次のことを遵守する。〉として、〈(a)海峡又はその上空を遅滞なく通過すること。〉と義務付けているが、 〈(c)不可抗力又は遭難により必要とされる場合を除く〉と例外を設けている。

 要するに韓国警備救難艦が日本の排他的経済水域で北朝鮮の遭難漁船を捜索活動中であったことは何の問題もないことになる。問題は海自哨戒機が韓国警備救難艦を視認後、直ちに「貴艦の行動の目的は何ですか。」と照会しなかったことであろう。照会していたなら、レーダーを照射した、しないで事実のこじれが起こりようがなかったはずである。

 ネットで、韓国警備救難艦側から「『ただいま北朝鮮漁船から遭難の通報があり、捜索のために日本の排他的経済水域内を航行することになる』と連絡しなかったことはおかしい」といった指摘を見受けたが、であるなら、なおさらに当初からの照会は必要だった。

 韓国を下に見る日本側の傲慢な態度が招いたとは思いたくないが、照会せずに、いきなり韓国警備救難艦の上空を旋回、偵察を開始している。

 救難艦側からしたら、日本の排他的経済水域に停留していることに何の問題もないのに上空を旋回し始めたから、そのことにカチンときて、レーダーを照射したということもあり得る。

 疑えばキリがないことで、北朝鮮漁船遭難は偽装で、日本に対する偵察活動中だったと疑うこともできるが、排他的経済水域でどれ程の軍事的、あるいはその他の情報収集を可能とすることができるだろうか。

 勿論、照会に関わる当方の素朴な疑問が的外れということもあるが、的外れであろうとなかろうと、結果だけを問題とするのではなく、結果を招いた自衛隊側の対応を原因に置いた検証を省くと、同じ結果を招くことになりかねない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする