漢字検定協会問題/同じことの繰返しが続いているのか

2009-01-25 09:45:57 | Weblog

 財団法人の公益事業は指導監督基準健全な運営に必要な額以上の利益を生じないように定めているにも関わらず、文科省所管の漢字検定を行っている漢字検定協会が文科省調査によると、「04~07年度の4年間に毎年7億~8億円の利益が上がり、資産が約50億円から、73億5千万円」に上っていると1月23日(09年)の「asahi.com」が伝えていた。

 公益法人でありながら、儲け過ぎではないかというわけである。

 記事によると、文科省は04年以降、3度立ち入り検査をして受検料を下げるか、公益事業に回すように指導してきたということだが、「73億5千万円」という金額の大きさから見るとせっせと貯め込んだように見えるが、それはカモフラージュ、偽装で、どうせお手盛りで特別手当だ、飲み食いのカネだで自分たちの甘い汁のために散々便宜を図った後の「73億5千万円」に違いないと思っていたら、同じ日付けの「YOMIURI ONLINE」が、<協会の大久保昇理事長が代表を務める広告会社「メディアボックス」(同市西京区)に、広報費など年2億~3億円の業務委託費を払いながら、文部科学省の調査に対し、報告していなかったことがわかった。>と報じていた。

 漢字検定協会は広告会社「メディアボックス」に対して2006~08年度で合計約8億円を支払ったそうだ。トヨタや日産、あるいはパナソニックとかサントリーといった大企業が競合会社との熾烈な販売合戦に勝ち抜くために巨額の宣伝費を投じるとのと違って、一公益法人が広報企画や機関誌作成などの業務委託に年2億~3億円、3年間の合計で8億円も支払っていた。しかも委託先が大久保昇理事長が代表を務める広告会社だというから、見事なまでに出来過ぎた取引きとなっている。

 「YOMIURI ONLINE」記事は、<公益法人が法人関係者の有利になる取引を結ぶことを禁じた指導基準に違反する恐れがあるとして、近く行う緊急の立ち入り検査で、業務実態や、代価が適正だったかを調べる。>と文科省の今後の対応を伝えると同時に、<協会は読売新聞の取材に、「(報告しなかったのは)失念していたのかもしれない」としている。>と報じている。

 これは「失念」有無の問題ではない。先ず一番に報告の「失念」は組織の管理・運営上、あってはならないこと、当然許されないことだからであり、何よりも「業務実態や、代価が適正だったか」と記事が指摘しているように実際に行った広報企画や機関誌作成等が世間相場から言って年に2億~3億円、3年間の合計で8億円という支払額に見合う内容だったのかどうかを先ず問わなければならない問題であろう。見合わない内容なら、必然的結果として意図的に報告事項から外すか、偽装した報告へと姿を変える。

 実際にはどのような報告もなかった。「失念」が許されない以上、報告を回避していたと解釈するのは止むを得まい。

 このように書くのも、関連会社や関連法人に対して高額な業務委託をしていたケースは何も今回の漢字検定協会が初めての出来事ではなく、そこに繰返しの構図を見るからである。かつてのケースでは高額である理由がそこに不正な利益を前以てはめ込んでおく必要からの措置であった。

 多分氷山の一角に過ぎないに違いない。多くは社会からの暴露を受けずに、安息・平穏を保っているに違いない。狡猾・巧妙と言う点では政治家・官僚は一筋縄でいかないからだ。04年10月23日『朝日』朝刊記事≪厚労省関連団体 「監修」仲介し5900万円 委託事業の受注先から補助金が還流≫が同じ構図の高額業務委託を伝えている。

 厚生労働省所管の社団法人「国民健康保険中央会」の関連団体「厚生問題研究会」(代表者は厚生省から天下って国民健康保険中央会の代表を務めている者)が厚労省から00年と02年に合計約11億円の補助金を受けて医療保険制度などに関する広報冊子の製作を企画、製作は「国民健康保険中央会」の関連団体「コクホ中央研究所」に委託、「コクホ中央研究所」は実際の製作を都内の出版社に外注。

 これは関連団体を迂回させることで、各組織に利益を少しずつバラ撒いていく構図であろう。かつて建設会社がよくやっていた手口だが(現在はどうか知らない)、100億で入札した工事を2割から3割の利益をピンハネした上で80億から70億の金額で下請に工事を請負わす。下請はあまり削ってはまずいから、2割前後のピンハネに抑えて60億前後で孫請に請負わせ、孫請は自社の利益をやはり2割程度前以て差引いた金額内で工事を納めるという儲けの構図である。

 いわば100億で入札した工事が50億前後の約半値の工事に化ける。それも談合とかを行って高値入札を当たり前としていたから可能となる半額工事であろう。

 但し上記『朝日』記事の厚労省の方は水の流れみたいに利益を上から下へと流すだけではなく、水で言えば自然の法則に反することだが、都内の出版社は冊子監修や原稿作成業務を厚労省国保課職員に斡旋して貰った仲介料名目で厚生問題研究会に02年12月から03年8月までの約9カ月間の間に5900万円が支払われたという。

 ちょっとややこしい構図だが、冊子の原稿そのものは厚労省国保課職員が書き、その職員を紹介したのが厚生問題研究会だと言うわけである。

 いずれにしても冊子監修と著者の仲介だけで5900万円も支払った。

 さらに奇怪なことに冊子監修に関わる支払いは上記支払いで終わったわけではなく、出版社は00~02年の間に厚労省国保課職員十数人に監修料名目で1千万円以上を直接支払っていたという。勿論5900万円とは別である。

 役所の冊子の内容ということなら、常識的には分かりやすく書いてあるものだが、著名な大学教授でもあるまいし、1人頭100万円以上と5900万円の二本立ての監修料とは、さぞかし高度な文章で難解、監修に時間がかかるものだったに違いない。

 上記『朝日』記事は「たかりの構図、鮮明に」と副題をつけて、<監修業務をしていない職員が、監修料の受け取りや税無申告の際に名義だけを貸していたケースなど監修業務に実態がない疑いも出ていたが、同省は「確認できない」とするにとどまった。>とその実態を伝えた上で、監修料はそれぞれの個人に渡ったわけではなく、課内でプールしてタクシー代や夜食代、懇親会、税金等に使われたと書いている。

 随意契約等を好都合な手段として委託にかかる実質的な必要経費を遥かに上回るカネを回すから、還流も千万単位といった大金とすることができる。ギリギリの適正価格なら、誰も還流などに応じることはできない。

 但しいくらうまいことをやろうとしても、業務として組織を介して行うことだから、いつかは周囲に洩れて、組織内の特権階級のみのうまい汁の独占と言うわけにはいかない。うまい汁を周囲におすそ分けすることで口止めの意味合いを持たせる必要からの「プール」であり、“全員参加”か、ほぼ“全員参加”の共同消費というわけなのだろう。

 また全員だからこそ、「赤信号、みんなで渡れば恐くない」と同じく責任の分散が可能となり、罪の意識を簡単に麻痺させることができる。

 似た構図は一つにとどまらない。04年7月26日の『朝日』朝刊には社保庁が社長が元職員である会社と6年間で計38億円の随意契約を結んでいたとする記事が載っている。記事には随意契約の種類と契約金額が書いてあるが、その一つを紹介すると、市販の約7倍の価格で金融機関のデータを購入していたというから、他の契約も推して知るべしであろう。

 勿論7倍には根拠がある。日本の官僚・政治家は特に根拠のない大盤振舞いはしない。11品目の印刷物を発注して、社会保険庁や地方社会保険事務局が監修料やコンサルタント料名目で合わせて1億近いカネを還流させているし、印刷機器を発注して、担当者が200万円のワイロを受領、その他に社保庁職員100名が件の会社から餞別や接待の施しを受けている。

 すべてに亘って「7倍」といった過剰・高額な契約金額が可能とした社保庁側の大盤振舞いに対する元社保庁職員経営会社の監修料やコンサルタント料に姿を変えた還流形式の大盤振舞いなのである。

 漢字検定協会は大久保昇理事長が代表を務める広告会社へと広報企画や機関誌作成などの業務委託に年2億~3億円、3年間の合計で8億円を支払っていた。自分で自分に対してうまい汁を振り分けるようなものである。そのうちの利益をすべて自分の懐に入れたのだろうか。

 厚生労働省所管の社団法人「国民健康保険中央会」やその関連団体「厚生問題研究会」、さらに「国民健康保険中央会」の関連団体「コクホ中央研究所」の還流の場合は補助金合計11億円を受けて冊子製作を企画、都内の出版社に外注に出して約7千万円(5900万円+1千万以上)を厚労省と関連団体に還流させていた。11億に対して7千万円なら、単純計算ながら、8億に対して5千万の還流は可能となる。

 業務を個人的なうまい汁に利用して独り占めにしたら、周囲が誰にどんな噂を流すか分からない。当然露見を恐れることになる。上記二つの例と同様に外部にまで洩れないための口止めが必要となる。部下や周囲の人間を仲間に巻き込んで責任の分散を図り、罪の意識を麻痺させる。漢字検定協会の理事長社長の会社への8億の業務委託が世間相場に見合う金額でないとしたら、口止めの構図に進んでいる可能性を十分に疑うことができる。

 疑いが事実で同じことの繰返しとなるのか、私一人の下司の勘繰りで終わるのか。

 確か漢字検定協会が「世相を現す漢字一字」を公募し、発表した2007年の「今年の漢字」は「偽」であった。偽装の「偽」。


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