≪警察庁キャリアを書類送検 暴行容疑で、停職3カ月≫(47NEWS/2009/01/22 12:00 【共同通信】)
<成田空港で昨年末、手荷物検査担当の女性に検査用トレーを投げ付けたとして、千葉県警は22日、暴行容疑で警察庁キャリアの人事課課長補佐、増田貴行警視(36)を書類送検した。警察庁は同日、停職3カ月の懲戒処分にし、増田警視は辞職した。
警察庁は、テロやハイジャック対策で打ち立てたルールに対し、警察官が協力せずチェックを免れようとした点を重視。人事課は「自らの職務に反する言動で、警察に対する信頼、信用を大きく失わせた」としている。
警察庁によると、増田警視は昨年12月24日正午すぎ、成田空港の手荷物検査場で、150ミリリットル容器に入った男性化粧品を持ち込もうとして女性検査員に止められた。その際「警察庁の警視だ」と名乗って持ち込みを認めるよう迫り、トレーを投げ付ける暴行を加えた疑い。検査員にけがはなかった。>・・・・・・・・・
国際線への液体の持込みは100mℓ制限で、それを超えていたために注意を受けたのに対して、日本の警察の増田貴行警視はいたく感情を害して腹を立てた。これまで注意を受けたのは親と警察の上司と学校の先生ぐらいからで、自分よりも地位が低いと見ている下々の人間の注意など受けたことがなかったに違いない。何しろ今や「警察庁の警視」様なのだから。
本人は「200mℓまでと勘違いしていた。反省している」(YOMIURI ONLINE)と言っているらしいが、手荷物検査担当の女性は理由も告げずに単に「持ち込みはできません」と注意したわけではあるまい。「国際線への液体持込はテロ対策上100mℓまでの制限と決められておりますから」と丁寧に注意したはずである。もし理由を述べずに注意しただけなら、頭ごなしの注意となって、その態度の悪さから手荷物検査担当から外されるか、あるいは最悪、社員の地位からお引取りを願われたに違いない。
例え理由を述べずに注意しただけだとしても、「警察庁の警視」様の方から持込めないことの理由を尋ねさえすれば、手荷物検査担当の女性から規則違反の理由が直ちに返ってきたに違いない。乗客の質問にまさか「いけないものはいけないです」とあくまでも理由を述べなかったということはあるまい。
注意を受けた時点か、理由が納得できなかった場合はその理由を問い返した時点で、「200mℓまで」という「勘違い」は氷解していたはずだ。だが、検査用トレーまで投げ付けた。注意を受けたこと自体が面白くなかったからだろう。何しろ「警察庁の警視」様なのだから。
投げつけられたトレイは身体に当たったものの「検査員にけがはなかった」ということだから、結果オーライで犯罪とまで言えず、一般人ならこれといった前科さえなければ、単に大人気なく感情的に「キレた行為」と看做されて説諭で済んだ可能性大である。
だから、「テロやハイジャック対策で打ち立てたルールに対し、警察官が協力せずチェックを免れようとした点を重視」とか、「自らの職務に反する言動で、警察に対する信頼、信用を大きく失わせた」とかの理由をつけているものの、警察庁の警視である分ほんの少し色をつけただけのことで、警察庁が下した処分が「停職3カ月の懲戒処分」、千葉県警は暴行の疑いで書類送検といった軽い処分ということなのだろうか。
では、その処分に対して本人が上層部が下した処分よりも重い退職(=辞職)で応じたのはなぜなのだろう。責任を強く感じだからだとするのは注意を受けただけで「警察庁の警視だ」だと権力を笠に着た上、トレイを投げつけてまでして横車を押そうとした元々倫理観と責任意識を欠いていた態度の説明がつかなくなる。後で気がついた寝小便とするわけにはいかない地位と職務にあったのである。
まさか馴れ合いがあったとは思いたくない。後から警察庁の警視だと知れるのは仕方がないが、あの場で自分から名乗ったのはまずかった、単なる乗客の権力を笠に着た行為と警視庁の警視の権力に笠を着た行為とでは問題のされ方が大きく違ってくる、本来なら懲戒退職だが、穏便に事を済ますために停職3カ月の懲戒にするから、辞職で応じてくれと。
もしそういうことなら、身内庇いということだけではなく、下級職員に対してなら構わないが、キャリアである警視という地位ある者に対する「懲戒退職」という不名誉な記録が警察庁に残ることを避ける目的の前以て筋書きを書いた“穏便に事を済ます”になる。
これが下司の勘繰りに過ぎず、百歩譲って妥当な決着だと認めたとしても、何しろ警察庁キャリアの人事課課長補佐、増田貴行警視(36)様が仕出かした品行に関わる出来事である。
自分自身に関しては偉そうなことは言えないが、相手は警察庁キャリアの人事課課長補佐、増田貴行警視(36)様だから、偉そうなことを言うのを許してもらうが、人間の行為には善悪の判断(=倫理観)と責任がついて回る。この二つの道徳的要素が深く品行に関わってくる。
社会的地位、あるいは組織上の地位が高い程、高い倫理性・高い責任意識が求められるはずだ。また、年齢が長じる程、同じく高い社会性と高い倫理性が求められる。社会の一員としての常識を多く学んでいなければならないからだ。当然、年齢も高く地位も上の人間は社会的責任も大きくなる。倫理及び責任の意識を高く保持していなければならない。
もしも社会的地位や集団地位の高い者に高い倫理性・高い責任意識を求めることができないとしたら、一体誰に求めたらいいのだろうか。彼らには期待できず、社会的地位の高くない一般人のみに期待するとしたら、見事な倒錯現象としか言いようがなくなる。
「警視の階級は警察法第62条において、警視総監、警視監、警視長、警視正に次ぐ第5位の階級として規定されている」、「警視正とこの階級が、よく、キャリアとノンキャリアの大きな壁と比喩される。現に、キャリアは29歳で一斉に警視に昇任するのに対し、ノンキャリアはどんなに早く昇任してもこの階級に辿り着くのが45歳程度であり、差は大きい。」(Wikipedia)という高い地位とその地位の得難さからして、キャリアという国家資格と警視という地位に対する期待と責任の大きさを窺うことができる。このような社会的要求に応じて、当然、善悪の判断(=倫理性)も責任感も一般人以上に高い期待値が求められるはずである。
だとすると、国際線への持込み禁止を注意されたことに対して、「警察庁」という権力、なお且つ「警視」という地位が備えている権力を「警察庁の警視だ」と名乗ることで振りかざした上に注意した女性に対して検査用のトレイを投げつけて規則を自分の思い通りに曲げようとした何様の権威主義性に彩られた威嚇行為は例え刑法上の犯罪の観点からしたら軽微な犯罪に過ぎなくても、自らが占めている社会的地位、・集団地位そのものを裏切る行為というだけではなく、地位に要求される高い善悪の判断(=倫理性)と責任意識を損ね、自ら貶める“犯罪”そのものと言えないだろうか。
そのような倫理性と責任意識に関わる犯罪要素を厳しく問わないままに、ただ単に暴行容疑で書類送検で済ましていい、あるいは「停職3カ月の懲戒処分」に処し、それに対して「辞職」という形で平穏裡に幕を降ろそうとしている。事勿れと馴れ合いによる筋書き芝居ではないかと勘繰られても仕方のない決着ではないだろうか。
警察庁上層部が部下に向けた訓辞等で口先で言うだけではなく、自分たち自身が厳しいまでに備えている高い倫理性と責任意識であったなら、それは警視の欠如に対して鋭く反応して、「停職3カ月の懲戒処分」で済ますことはできず、懲戒免職が相当と厳しく問うことになったように思えるが、どうだろうか。
その反対の状況にあったから、厳しく問うまでに鋭く反応しなかった。高い倫理性と高い責任意識を相互に欠如させていて、お互いの欠如が単に響き合ったということではないのか。
厳しく罰することによって、罰を加える側も責任と倫理観に関して自分を厳しい場所に置くことになる。他人に厳しく、自分に甘くできないからだ。厳しく罰せない人間程、自分を責任問題で甘い場所に置く。
「警察庁の警視だ」は権力を振りかざす行為そのものだが、相手が女性だからできた行為だとしたら、警視の権威主義的態度は倫理的観点から如何ともし難いまでに犯罪性を帯びることにならないだろうか。
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