ミャンマーと北朝鮮/国民の生命・人間性を無視した自己権力維持のための国家権力

2008-05-10 09:16:40 | Weblog

 <国連の世界気象機関の委任でサイクロン監視と警告を行っているインド気象局の担当者は6日、「我々はサイクロンが上陸する48時間前に、ルートや規模などすべてのデータをミャンマー側に連絡していた」と述べ、ミャンマー当局が住民への適切な警告や避難勧告を行わなかったとの見方を示唆した。>(≪ミャンマー:サイクロン被害 「軍政、適切な警告せず」――高まる批判≫毎日jp/08.5.8)

 同じことを時事通信社≪48時間前にサイクロン警報=インド気象当局、ミャンマーに伝える≫)は次のように伝えている。<「サイクロンが直撃する48時間前にミャンマーの関係機関に対し、上陸地点、勢力など関連情報を伝えた」と述べるとともに、「われわれの職務は前もって警報を出すことだ。われわれは事前に何度も警報を出しており、避難などの予防措置を講じる時間は十分にあった」>・・・・

 インド気象当局が前以て出した警告情報(=「警報」)をどう処理し、どう活用するかは――いわば政府が国民に対してインド気象当局から受け取った情報をどのように提供し共有させるか、それを避難活動へとどのように活用させるかは偏にミャンマー軍政当局の責任行為にかかっている。

 その成果が2万人を超える死者の数であり、行方不明者4万人強という数字となって現れた。最終的には10万人を超える可能性を伝える報道もある。

 上記「毎日jp」記事は<被災地で当局が、どこまでサイクロンの情報を住民に伝え、また避難させる施設を整備していたかは不明>としているが、9日夕方のNHKニュースでは、市民が善意で持ち寄ったコメの配給の順番を待つ被害男性が「サイクロンが接近しているなんて政府は何も警告しなかった。早く来てわたしたちを助けてほしい。食料と薬、それに寝る場所が必要なんだ」と訴えている様子を伝えている。

 当局が指定した避難場所で避難中に被害に遭ったという意味で「寝る場所」がないと言っているのではない。インド気象局の警告にも関わらず、何よりも優先させなければならない国民の生命の安全を図るための危険が迫った場合の避難方法・避難場所の準備・確保を経過していない中での「寝る場所」の喪失は「何も警告しなかった」(=何も対策を取らなかった)に等しい何よりの証拠であろう。

 5月10日の早朝の「日テレ24」は「インド気象局」だけではなく、「アジア災害予防センター」もミャンマー当局に対して警告を発していたが、それにも関わらずミャンマー当局が十分な対策を取らなかった疑いがあることを伝えている(内容はインターネット記事から)。

 ≪軍政、直撃6日前に危険情報受け取る≫<日テレ24/08/5/9 19:21>

 <ミャンマーを襲った大型サイクロンによる死者と行方不明者は、6万人を超えている。こうした中、ミャンマー軍事政権が周辺国から事前にサイクロンの情報を受け取っていたにもかかわらず、十分な対策を取らなかったことがわかった。
 タイ・バンコクにあるアジア災害予防センターは、サイクロンがミャンマーを直撃する6日前の先月26日、軍事政権に対して、正確な進路図とともに強風、大雨になるとの予測を伝えていた。その後、ミャンマー側からも情報提供を求めてきたという。インド気象庁も、直撃3日前には危険情報を提供していたことがわかった。
 ミャンマー軍事政府がサイクロンの危険性を事前に把握していながら国民に知らせるなどの十分な対策を取らず、被害が拡大した可能性が高くなっている。


 このような国民生活に直接影響する情報の国家権力と国民との間の共有とその活用の度合いによってミャンマー軍政が国民をどう価値づけ、どう位置づけているか、国家権力の国民に対する姿勢を窺うことができる手立ての一つとなり得る。

 サイクロン被害への外国の支援に示しているミャンマー軍政の態度も国家権力による国民の位置づけが反映したものであろう。中国やタイ、インドといった、軍政に批判的態度を示さないいわゆる友好国の支援は受け入れていることに反して、その他の国の援助物質は受け取るが、人的支援は受け入れられないと救助隊やメディアの入国を拒否する態度は救助隊やメディアによって被害の惨状と被害をそのような状態に増幅させたミャンマー軍政の無為無策が国外に洩れ、それが軍政批判の国際世論となって国内の批判に撥ね返り相乗的に反軍政で共鳴し合うことへの恐れが決定づけている態度に違いない。

 いわば国民の安全よりも国家権力の安全、国民生活の福祉とその維持よりも国家権力の福祉とその維持を優先させたミャンマー軍政の国民に対する態度の顕現となっている。国民を国家権力維持の道具と位置づけ、そのことを目的に国民を支配しているのである。

 そのような国民の生命・人間性を考慮しないミャンマー軍事政権をかつては日本が最大の援助国として擁護し、結果的に国家権力のそのような非人間性の守護者を任じていた。そしてそのような日本の跡を継ぎ、現在は中国が最大の援助国として国家権力の擁護者、その非人間性の守護者を任じている。

 このことは日本の歴史にとどめておかなければならない偉大な外交政策である。尤も日本の自民党政府は国家予算を「国民生活者財源」とはせずに、「政治家財源」、「官僚財源」とする歴史を担ってきた。そのような国民を国家権力よりも下に置く政治家優先・官僚優先の政治性が同じ構造のミャンマー軍政と響き合い、反映することとなった援助結果なのだろう。

 北朝鮮は現在食糧不足で餓死者が出ているということだが、北朝鮮国民がそのように困窮している状況下で北朝鮮政府が一部の地域で軍の家族と一部の幹部だけに、「2号米(軍糧米)」を供給していると「Daily NK」が5月1日の記事で伝えている。北朝鮮が「先軍政治」をタテマエとしている以上、当然の措置なのだが、このこともミャンマー軍政と同様に国民よりも国家権力を優先させていることの何よりの証明となる。国民は「先軍政治」を維持するための道具として金正日政権に支配された存在となっている。

 日本政府はミャンマーに1000万ドル(11億3000万円)の緊急支援を決めたそうだが、昨年9月の民主化デモの武力弾圧、日本人ジャーナリストの長井健司さん殺害等を理由にODAの減額を行っているが、国民よりも国家権力優先のミャンマー軍政である、減額の些細な埋め合わせとならない保証があるのだろうか。
 
 次のようにも疑うことができる。外国からサイクロン情報を伝えられながら適切な警戒態勢も避難措置も取らなかったのは被害に対する外国からの支援によって現在行われているミャンマー政府に対する国際的な経済制裁を埋め合わせる陰謀があったことからの国家権力維持のための、その代償としての国民の安全無視・犠牲ではなかったのではないだろうか。

 そのぐらいのことはしかねない死者2万人超、行方不明者4万人超が示しているミャンマー軍政の非人間性である。

 だからこそ、国民の窮状を他処に新憲法の賛否を問うという国家優先となる国民投票を、例え被災地以外の場所ではあっても、行為予定通りのスケジュールで決行することができるのだろう。

 大体からして新憲法草案自体が(1)国家運営に於ける軍の主導的役割の保証(2)両院の議席の25%を軍が任命(3)正副大統領3人のうち少なくとも1人を軍が選出(4)アウンサンスーチーさんを排除するための「外国の影響や恩恵を受けた者」は総選挙に立候補できない規定(「毎日jp」から)等々が示すように軍政一次(=国家権力維持)優先、その当然の反対給付としての国民の存在無視となっている。民主化デモに対する武力弾圧や官憲による日本人ジャーナリスト長井健司さん殺害、さらに今回のサイクロン対応に見せたその非人間性はミャンマー軍政の性格自体の自然な反映、その暴露と把えなければならない。 
 ≪ミャンマー:サイクロン被害 「軍政、適切な警告せず」――高まる批判≫(毎日jp/08年5月8日 東京朝刊)
 ◇記者の入国も拒否
 【バンコク藤田悟、ニューデリー栗田慎一、ワシントン小松健一】ミャンマーを直撃し2万2500人の死亡が確認されたサイクロン「ナルギス」について、被害が予想されたのに、ミャンマー軍事政権が国民に警戒や避難を呼びかける措置を取らなかったとの疑念が出ている。軍事政権は外国からの援助受け入れに迅速に対応せず報道関係者の入国も拒んでおり、国内外からの批判が高まっている。
 国連の世界気象機関の委任でサイクロン監視と警告を行っているインド気象局の担当者は6日、「我々はサイクロンが上陸する48時間前に、ルートや規模などすべてのデータをミャンマー側に連絡していた」と述べ、ミャンマー当局が住民への適切な警告や避難勧告を行わなかったとの見方を示唆した。
 被災地で当局が、どこまでサイクロンの情報を住民に伝え、また避難させる施設を整備していたかは不明。だが軍事政権を批判する欧米からは、当局の対応の不備を政権の体制と絡めて批判する声が出ている。米国のローラ大統領夫人は5日、記者会見を開き「脅威を認識しながら、警告を発しなかった。軍事政権は国民の基本的ニーズを満たすことができない一例だ」と指摘した。
 軍事政権のチョーサン情報相は6日、「国内外からの援助を歓迎する」と表明。しかし被災地で救援や医療活動に当たるため多数の援助団体関係者が入国を申請しているものの、ビザが発給されず、入国できない状態が続いている。
 また国際メディアの取材のための入国を許さず、5日には観光ビザで最大都市ヤンゴンに到着した英BBCテレビの記者を空港から国外追放処分とした。
 軍事政権は従来、国内の窮状が外国人の目に触れるのを防ぐため、国際機関職員らの入国を厳しく規制、ヤンゴン以外での活動も制限してきた。 
 ≪人的支援あらためて拒否 ミャンマー軍政≫
(東京新聞/2008年5月9日 13時32分)

 【バンコク9日共同】ミャンマー外務省は、9日付の国営紙に発表した声明で、サイクロン被災地支援に関し、ヤンゴンに到着した外国からの航空機に救助隊やメディア関係者が搭乗していたと説明、「援助物資の受け取りが優先で、外国の救助隊やメディアの受け入れ用意はできていない」とし、物資は受け取るが人的支援は拒否する姿勢をあらためて強調した。

 声明は、救助隊らが入国許可を得ていなかったとし、援助物資を積んだ航空機を引き返させたとしている。また「物資を遅れずに被災地に届けるため、多大な努力をしている」とアピールした。

 軍事政権は食料などの受け入れを徐々に進める一方で、入国査証(ビザ)発給を遅らせて援助関係者の活動を妨害。結果的に支援が立ち遅れ、軍政による「2次被害」を懸念する声が高まっている。
 ≪48時間前にサイクロン警報=インド気象当局、ミャンマーに伝える≫ (時事通信/2008年5月7日(水)19:30 )

 【ニューデリー7日AFP=時事】インド気象当局はミャンマーを襲った大型サイクロンについて、同サイクロンがミャンマーに上陸する48時間前に同国に警報を出していた。インド気象局のヤダブ広報担当が6日、AFP通信に明らかにした。ミャンマーではサイクロンによる死者数が2万2000人を超え、行方不明者は4万人を上回っている。≪写真はニューデリーで7日、ミャンマー向け救援物資を積み込むインド空軍の担当者≫

 同氏は「サイクロンが直撃する48時間前にミャンマーの関係機関に対し、上陸地点、勢力など関連情報を伝えた」と述べるとともに、「われわれの職務は前もって警報を出すことだ。われわれは事前に何度も警報を出しており、避難などの予防措置を講じる時間は十分にあった」と付け加えた。インド気象局は、世界気象機関(WMO)から、この地域のサイクロンを観測する権限を与えられている。

 同氏はさらに、「気象局は4月末から、ミャンマーや南アジアおよび東南アジア諸国に対して、ベンガル湾でサイクロンが発達しつつあるとの警報を繰り返し出していた」と指摘した後、「サイクロンの状況について最終回となる41回目の警報は、サイクロンがミャンマーを襲った直後の5月3日に出した」と述べた。
 ローラ・ブッシュ米大統領夫人は5日の記者会見で、ミャンマーを襲ったサイクロンについて、同国軍事政権がサイクロンの接近に関してタイミングよく市民に危険を知らせなかったと非難した。 〔AFP=時事〕

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