安倍晋三の政府としての主体性放棄のハンセン病家族訴訟控訴断念は明らかに参院選目当て 家族補償は別立てで行うべきだった

2019-07-15 09:56:21 | 政治
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 日本の首相安倍晋三センセイが加計学園獣医学部認可に首相としての権限を私的に行使し、私的に行政上の便宜を図る形で政治的に関与し、私的便宜を与えたとされている疑惑を国会答弁や記者会見から政治関与クロと見る理由を挙げていく。自信を持って一読をお勧め致します。読めば直ちに政治関与クロだなと納得できます。よろしくお願いします。

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 全国に住むハンセン病の元患者が国の誤った隔離政策によって患者の家族として差別される立場に置かれ、家族関係が壊れるなど深刻な被害を受けたとして国に賠償を求めたハンセン病家族国家賠償請求訴訟に対する熊本地方裁判所の西暦2019年6月28日の判決は原告側の訴えをほぼ認めて、国に対して総額3億7000万円余りを支払うよう命じた。

 判決は過去の隔離政策の過ちを指摘、「結婚や就職の機会が失われるなどの差別被害は、個人の尊厳に関わる『人生被害』であり、生涯にわたって継続する。家族が受けてきた不利益は重大で、憲法で保障された権利を侵害された」(「NHK NEWS WEB」)といった内容だということだが、要するに国の責任を厳しく問い質したということなのだろう。記事は、家族が受けた損害についても国の責任を認める判断は初めてだと解説している。

 対して安倍晋三は2019年7月9日午前、判決を受け入れ、控訴断念を表明した。6月28日から10日経過している。10日間、控訴するか、控訴断念とするか、協議を必要としたことになる。

 政府は3日後の2019年7月12日に熊本地裁判決に対する法律上の問題点を指摘する閣議決定の声明を出している。

 「政府声明」(首相官邸サイト/2019年7月12日)

  政府は、令和元年6月28日の熊本地方裁判所におけるハンセン病家族国家賠償請求訴訟判決(以下「本判決」という。)に対しては、控訴しないという異例の判断をしましたが、この際、本判決には、次のような国家賠償法、民法の解釈の根幹に関わる法律上の問題点があることを当事者である政府の立場として明らかにするものです。

1 厚生大臣(厚生労働大臣)、法務大臣及び文部大臣(文部科学大臣)の責任について

(1) 熊本地方裁判所平成13年5月11日判決は、厚生大臣の偏見差別を除去する措置を講じる等の義務違反の違法は、平成8年のらい予防法廃止時をもって終了すると判示しており、本判決の各大臣に偏見差別を除去する措置を講じる義務があるとした時期は、これと齟齬しているため、受け入れることができません。

(2) 偏見差別除去のためにいかなる方策を採るかについては、患者・元患者やその家族の実情に応じて柔軟に対応すべきものであることから、行政庁に政策的裁量が認められていますが、それを極端に狭く捉えており、適切な行政の執行に支障を来すことになります。また、人権啓発及び教育については、公益上の見地に立って行われるものであり、個々人との関係で国家賠償法の法的義務を負うものではありません。

2 国会議員の責任について

 国会議員の立法不作為が国家賠償法上違法となるのは、法律の規定又は立法不作為が、憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制限するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合などに限られます(最高裁判所平成27年12月16日大法廷判決等)。本判決は、前記判例に該当するとまではいえないにもかかわらず、らい予防法の隔離規定を廃止しなかった国会議員の立法不作為を違法としております。このような判断は、前記判例に反し、司法が法令の違憲審査権を超えて国会議員の活動を過度に制約することとなり、国家賠償法の解釈として認めることができません。

3 消滅時効について

 民法第724条前段は、損害賠償請求権の消滅時効の起算点を、被害者が損害及び加害者を知った時としていますが、本判決では、特定の判決があった後に弁護士から指摘を受けて初めて、消滅時効の進行が開始するとしております。かかる解釈は、民法の消滅時効制度の趣旨及び判例(最高裁判所昭和57年10月15日第二小法廷判決等)に反するものであり、国民の権利・義務関係への影響が余りに大きく、法律論としてはこれをゆるがせにすることができません。

 かくこのように熊本地裁判決に対して政府として法律論上認め難いとする問題点を列挙している。特に如何なる訴訟であっても、「時効」は判決の要点となる。2004年に25年に延長された殺人罪の公訴時効は2010年に廃止されたが、2010年以降の刑事裁判で時効を25年と計算して、殺人罪成立の要件とすることはあり得ないことをあり得るとするような無視できないはずの事柄と同様、政府が考える消滅時効の起算点と熊本地裁が考えたそれとの違いは無視できない大きな問題点となる。

 だが、政府は控訴を断念した。いわば熊本地裁判決を受け入れた。

 「政府声明」発出と同じ7月12日に安倍晋三は判決に関する首相としての談話を出している。

 「ハンセン病家族国家賠償請求訴訟の判決受入れに当たっての安倍晋三談話」(首相官邸サイト/2019年7月12日)

 閣議決定

 本年6月28日の熊本地方裁判所におけるハンセン病家族国家賠償請求訴訟判決について、私は、ハンセン病対策の歴史と筆舌に尽くしがたい経験をされた患者・元患者の家族の皆様の御労苦に思いを致し、極めて異例の判断ではありますが、敢えて控訴を行わない旨の決定をいたしました。

 この問題について、私は、内閣総理大臣として、どのように責任を果たしていくべきか、どのような対応をとっていくべきか、真剣に検討を進めてまいりました。ハンセン病対策については、かつて採られた施設入所政策の下で、患者・元患者の皆様のみならず、家族の方々に対しても、社会において極めて厳しい偏見、差別が存在したことは厳然たる事実であります。この事実を深刻に受け止め、患者・元患者とその家族の方々が強いられてきた苦痛と苦難に対し、政府として改めて深く反省し、心からお詫び申し上げます。私も、家族の皆様と直接お会いしてこの気持ちをお伝えしたいと考えています。

 今回の判決では、いくつかの重大な法律上の問題点がありますが、これまで幾多の苦痛と苦難を経験された家族の方々の御労苦をこれ以上長引かせるわけにはいきません。できる限り早期に解決を図るため、政府としては、本判決の法律上の問題点について政府の立場を明らかにする政府声明を発表し、本判決についての控訴は行わないこととしました。その上で、確定判決に基づく賠償を速やかに履行するとともに、訴訟への参加・不参加を問わず、家族を対象とした新たな補償の措置を講ずることとし、このための検討を早急に開始します。さらに、関係省庁が連携・協力し、患者・元患者やその家族がおかれていた境遇を踏まえた人権啓発、人権教育などの普及啓発活動の強化に取り組みます。

 家族の皆様の声に耳を傾けながら、寄り添った支援を進め、この問題の解決に全力で取り組んでまいります。そして、家族の方々が地域で安心して暮らすことができる社会を実現してまいります。

 要するに判決には「いくつかの重大な法律上の問題点」が存在するものの、「ハンセン病対策の歴史と筆舌に尽くしがたい経験をされた患者・元患者の家族の皆様の御労苦」への心情と「確定判決に基づく賠償」の履行を優先させるために控訴断念を決定したと述べている。

 この心情と「賠償」優先の措置に対して参院選さ中であることから、野党から「選挙目当て」ではないかと批判が上がった。勿論、政府側は否定する。「時事ドットコム」

 自民党幹事長代行萩生田光一(記者団から参院選が首相の判断に影響したのかと問われて)「選挙に合わせて裁判の結果が出たわけではない。そこは直接の影響はない」

 アホだね、こいつ。忖度が流行っているのは政治の世界だけであるはずだから、判決は選挙に合わせはしないだろう。記者団が問い質したのは控訴断念は参院選を照準とした決定なのか、どうかなのだから、それに対するイエスかノーを言わなければならないのに方向違いなことを口にして、参院選の影響を否定している。

 公明党代表山口那津男「(控訴断念を)高く評価したい。選挙と故意に結び付けることはすべきではない」 

 山口那津男の見解が正しいかどうかが問題となる。

 政府は「政府声明」で判決に対して重大な法律上の問題点を指摘した。国会議員の責任に関しては判決は「司法が法令の違憲審査権を超えて国会議員の活動を過度に制約することとなり、国家賠償法の解釈として認めることはできない」と断じ、消滅時効に関する判決に対しては「国民の権利・義務関係への影響が余りに大きく、法律論としてはこれをゆるがせにすることができない」と激しく拒絶反応を示している。

 このように判決の問題点を承服し難い重大なことだと指摘していながら、控訴断念の理由として元患者家族の労苦と損害賠償の優先をいくら掲げようとも、地裁判決を受け入れたということは法律論上認め難いと政府が考えている重大な問題点を放置し、看過することを意味するだけではなく、放置と看過は政府としての主体性放棄を自ら率先して行うことをも意味することになる。

 勿論、この放置と看過を回避し、政府としての主体性を維持する唯一の方法はあくまでも裁判で戦う控訴以外にないはずである。そして例え控訴したとしても、元患者家族の労苦に報いる損害賠償は控訴とは別に議員立法による法律制定でも、あるいは内閣立法による法律制定でも可能なのだから、別立てで行うことにして、そのような法律の制定時か施行時に国家代表としての安倍晋三の謝罪を添えることによって家族の労苦を曲がりなりにも慰謝する方法とし得るはずである。

 だが、そういう方法は採用しなかったし、大体が家族訴訟は2016年2月15日に九州・関西在住の59名が国に対して損害賠償と全国紙への謝罪広告を求めて熊本地裁に起こしたものだという。それから3年と5カ月、「ハンセン病対策の歴史と筆舌に尽くしがたい経験をされた患者・元患者の家族の皆様の御労苦」を言い、それが心の底からの心情であるなら、裁判所の判決や控訴有無の判断を経ずとも実現させることができた家族側の要求であるはずである。

 そのような要求に応えないままに国は裁判で争う姿勢を示して、3年と5ヶ月を経た。いや、1931年(昭和6年)に「癩予防法」を成立させ、強制隔離を手段としたハンセン病絶滅政策を行い、1950年代には感染力が弱い上に有効な治療薬が開発されて完治する病気とされ、在宅治療が主流となりつつあった世界標準に反して1996年4月1日施行の「らい予防法廃止に関する法律」の成立まで65年も、在宅治療が世界標準となってからは40年近くも強制隔離を続けてきて、家族にまで背負わせることになった偏見と差別の精神的苦痛を今日にまで無視しておきながら、政府としての主体性を放棄してまで法律論上認め難いと政府が考えている重大な問題点を放置し、看過する理由に「元患者家族の労苦」に報いることと「補償」の優先を掲げる。

 この矛盾は安倍晋三の「ハンセン病対策の歴史と筆舌に尽くしがたい経験をされた患者・元患者の家族の皆様の御労苦」云々が心の底からの心情ではないことを如実に物語っている。

 心の底からの心情であるなら、地裁判決を待たずに、判決は判決として政府として救済に動くことができたはずであるし、心の底からの心情ではないことは判決を受けたあとの2019年7月9日の安倍晋三の記者会見で謝罪の一言を入っていなかったことに反映されている。

 「安倍晋三記者会見」(首相官邸サイト/2019年7月9日)

 安倍晋三「今回の判決内容については、一部には受け入れ難い点があることも事実であります。しかし、筆舌に尽くし難い経験をされた御家族の皆様の御苦労を、これ以上長引かせるわけにはいきません。その思いのもと、異例のことではありますが、控訴しないことといたしました。この方針に沿って検討を進めるよう関係大臣に先ほど指示いたしました」

 「筆舌に尽くし難い経験をされた御家族の皆様の御苦労」を言うなら、それが政府の政策が原因している以上、国家を代表し、継承している地位にある者として謝罪を最初に持ってこなければならなかったはずだが、持ってこなかった。

 謝罪がなかったことにも現れている、「患者・元患者の家族の皆様の御労苦」云々が心の底からの心情ではない以上、法律論上認め難いと政府が考えている重大な問題点の放置と看過を侵してまでした政府としての主体性を放棄する理由は控訴断念で内閣支持率を上げて、参院選で利する考えの選挙目当て以外に残されていない。

 言葉の巧みさで人気を取ろうとすることに長けている安倍晋三である。選挙目当てであっても、驚くに当たらない。


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