Kindle出版電子書籍「イジメ未然防止の抽象論ではない具体策4題」(手代木恕之著/2024年5月18日発行:500円) |
安倍派清和研の政治資金パーティ裏ガネ収支報告書不記載に関して、2024年4月1日に、《安倍派政治資金パーティキックバック裏金:22年4月と8月の会合を作り話とすると、全てがスッキリする - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》を、2024年5月31日に、《安倍晋三が設計首謀者の現金還付・収支報告書不記載の慣習・制度だっだと疑うに足る相当性ある状況証拠の提示 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》をブログに投稿した。
その内容の正確性についてだが、最近、AI文字起こしのスマホアプリ「音声文字変換&音検知通知」(フリー)の存在を知り、政倫審国会質疑が原則としては非公開であることから議事録が衆参共に非公開となっているために動画をダウンロード、安倍晋三出席のもと現金還付中止を決めた2022年4月と、2022年7月の安倍晋三の銃撃死後、中止と決めた現金還付再開を決めたのではないかと疑われている2022年8月の会合に共に出席していた安倍派清和研幹部西村康稔、塩谷立、下村博文、世耕弘成出席の政倫審動画から発言を文字起こししてみた。
文字起こしの精度は6~70%程度といったところか、動画を聞きながらの修正にかなり時間がかかり、聞き取れない箇所はNHKの国会中継録画を字幕付きで利用、完成させた質疑を全て読み返してみた結果、現金還付・収支報告書不記載裏ガネシステムの設計首謀者を安倍晋三とするのは間違いの可能性に気づいた。
第1次安倍政権では参院選で過半数割れの敗北を受けてねじれ国会を生じせしめ、閣僚のスキャンダル等もあったが、政権運営に苦労し、ほぼ一年しか持たなかった苦い経験からだろう、第2次安倍政権では選挙時期に合わせて消費税増税を二度延期したり、選挙の際、国民に不人気な政策は争点から隠したり、毎年4月の首相主催「桜を見る会」では招待客の選考基準を無視して選挙地元山口の安倍後援会会員を多数招待したりして、政権運営の第一義をなりふり構わずに選挙に勝つことに置いている様子がミエミエだったから、裏ガネシステムの設計首謀者ではなくても、システムの貪欲な推進者だった可能性は捨てきれない。
例えば、このノルマ超えのキックバックは参議院選挙のある年の安倍派改選参議院議員はノルマに関係なく、パーティ券売上の全額が派閥からキックバックされて、各議員の選挙事務所に裏ガネとして収められていたと言うが、これも政権運営の第一義を選挙に勝つことに置いているなりふり構わない例の一つに数えることができる。
参議院選挙が行われる年の「桜を見る会」では自民党改選議員は友人や知人、後援会関係者などを4組まで招待できるシステムとなっていて、愛人がいれば、愛人だって招待できただろう、いわば首相基準の招待ではなく、自民党改選参議院議員基準の招待という特別扱いとなっていたと言うから、選挙に勝つためにはなりふり構わないという点で見事通底している。
4月と8月の会合が安倍晋三の関わり、その罪を限りなく薄めるためにデッチ上げた作り話とする見立てに関しては狂いはなく、却って確信を深めた。上記4人の幹部の政倫審発言を適宜取り上げて、そのことを証拠立ててみる。
政倫審での追及側の議員は4月と8月の会合を現実に存在した事実と見ていて、4月の会合で安倍晋三が現金還付中止の指示を出したことも事実、8月の会合で幹部たちが話し合って、そのうちの誰かの決定によって中止をひっくり返したのも事実、その結果、現金還付と収支報告書不記載が継続されることになったと見立てて、追及する結果、ウソから事実が出てくるわけがなく、埒の明かないことになる。
逆に両会合をデッチ上げと見ることによって明らかになってくる事実がいくつかある。
では、最初に2022年4月の会合で安倍晋三の現金還付中止の指示がどのような様子で行われたのか、西村康稔の自民党武藤容治に対する答弁から見てみる。
「安倍会長がですね、令和4年、22年の4月に現金での還付を行ってる。これをやめるということを言われまして、私もこれはやめようということで、幹部でその方針を決めまして、そして若手議員何人かをリストアップして、電話も致しました。私自身も若手議員にかけ、電話をしてやめるという方針を伝えたところ、伝えたわけであります。
従って、会長はその時点で何らかのことを知っておられたんだろうというふうに思います。全体のこと、どこまでご理解、把握しておられたのか分かりません。けれども、兎に角、現金は不透明で疑念を生じかねないから、こうして現金の還付はやめると、まあ、還付そのものをやめるということで、我々方針を決めて対応したわけであります」――
西村康稔は安倍晋三の現金還付中止について、「会長はその時点で何らかのことを知っておられたんだろうというふうに思います」と安倍晋三を違法行為から一定程度離れた位置に立たせているが、弁明では、「清和会主催の政治資金パーティー収入の還付にかかる処理は歴代会長と清和会の事務職である事務局長との間で長年慣行的に扱ってきたことであり、会長以外の私たち幹部が関与することはありませんでした。先程申し上げた通り、事務総長はこのことを含め、会計には関与しておりません」と安倍晋三を違法行為の主犯格そのものに仕立てていることと矛盾している。
勿論、後者はあとで知った事実と片付けることはできるが、この矛盾の正当性を順次見ていく。
西村康稔の中止指示に関わる具体的な状況説明はこれだけで、他の幹部は中止の指示があった程度の簡略した証言で終わらせている。一見、西村康稔が詳しく説明しているように見える。だが、隠している事実が少なからず存在している。
もし幹部たちが「現金は不透明で疑念を生じかねない」の意味するところを承知していたなら、いわば現金還付を自分達も受けていて、その現金の不記載処理に応じていることを知っていたなら、人間の自然な感情として何かバレそうなヤバいことが持ち上がったのだろうかとか、あるいは誰かからか注意を受けたのだろうかとか、共犯者意識からビックっとし、「何かあったんですか」と安倍晋三に問わずにはいられないだろう。
もし現金還付も不記載も幹部自身には関知しない事実であったなら、「どういうことですか」と安倍晋三に問うことになるだろう。あるいは中止指示を言い出す前に安倍晋三の方から、「派閥ではこういうことをしていた。議員側には巻き込むことがないよう、知らせていないが、秘書にのみ知らせていた。裏ガネに政治活動の便宜を求める時代ではもうない」などといった何らかの理由を説明しなければならないし、当然、することになるだろうから、知らずに加担させられていたことに驚き、安倍晋三に対して何も言い返せなかったとしても、顔を青ざめさせるぐらいの感情の変化は見せるのが人間の自然な姿だろう。
要するに中止を指示されたことに対して幹部たちの気持ちや感情が何も紹介されていない。であるなら、質問者の方で追及して、違法性を把握していたのか、していなかったかを知り得る材料とすべきだったが、綻びを前以って予防して行なっている説明を人間の自然な感情の点から突くことをしないから、相手の筋書きに乗せられてしまう。
例え関知していなかったが事実であたとしても、大枚のカネの支払いと受領を現金で遣り取りすること自体が記録や証拠の類いを残さない便宜からの利用であることは世間的な相場となっている以上、現金還付中止を切り出された時点で、そこに違法性を嗅ぎ取らないこと自体が奇麗事だけでは済まない政治の世界に長年身を置いている派閥の幹部としての姿に反する。
何の感情も湧かなかったとしたら、現金で遣り取りされることの裏の意味も、内心察することもなかったことになって、あまりにも不自然である。
要するに安倍晋三の現金還付中止の指示に対して4人の幹部がどのような認識で反応したのか、どのような印象を持ったのか、尋ね返したことはないのか、様々に問う過程で見えない事実が見えてくる可能性は決して否定できない。
だが、追及側は西村康稔が打ち立てたこの証言を事実とのみ掴まえ、その範囲内で不記載を知っていたのではないかどうかと質問しているから、知らなかったと答えられると、効果的な反論を見い出すことができず、極めて疑わしい感触を持ったまま否応もなしに事実の体裁を取らせてしまうことになる。
この4月の会合に説明にはもう一つ、大きな事実が隠されているが、その事実を明かすには8月の会合の各幹部の証言が必要になり、両会合共にデッチ上げであることを証明できるが、その前に追及する側が最も必要とする情報は何のために政治資金パーティ券の売上にノルマを課したのかであろう。
ノルマを課すことは課した相手の交渉力や人脈構築力の程度を確かめるだけではなく、忠誠心や功名心を競わせる効用がある。そこに何よりも価値を置いているから、ノルマを超えたカネを還付することで、苦労や努力の見返りとしての満足や感謝を与えて、忠誠心や功名心をなお誘い出す動機づけに利用することができる。
派閥所属議員側にしても、パーティ券のノルマを超える売上は自己能力の誇示のみならず、
政治の世界で将来的には閣僚の地位を、あるいはそれ以上を狙うだけの野心があったなら、ノルマ達成は派閥内での序列を上げるまたとないチャンスだったろうし、自己承認欲求を駆り立て、自身の能力を可視化できる価値あるシステムの一つとすることができる
だとすると、世耕弘成の自民党佐藤正久に対する、「安倍会長からは5月に、2022年の5月のパーティでしたけども、4月上旬に幹部が集められて、ノルマどおりの販売にしたいってことは即ち還付金はやめるというご指示が出ました」の証言からすると、派閥側は所属議員に対して引き続いてノルマに応じた売上を目標とした貢献を求めるが、所属議員に対してこれまで行なっていた見返りの貢献は省くことになり、彼らのモチベーションを一定程度下げることになる。
当然、派閥のボスという立場にある安倍晋三は所属議員のモチベーションを維持する、現金還付に代わる方策を自分で考案するか、幹部たちに相談して構築するかして、組織の変わらぬ結束を意図する責任を有していたはずだが、そのような責任主体として扱われていない。
安倍晋三のこのような非現実的な存在性からも、4月の会合が事実あったことと認めることはできない。
また西村康稔は自身の事務所に対して清和会のパーティーはノルマ分だけ売ればいい、自身の政治活動費は自身の政治資金集めパーティで確保していくからといった趣旨で立憲民主党の枝野幸男に対して答弁しているが、ノルマ達成が自身の出世の階段を一歩一歩登っていくのに役立つという性格を無視した、この奇異な発言は自民党下野後の2009年自民党総裁選に総裁の谷垣禎一、河野太郎と共に出馬、最下位となっているものの、政治の世界で頂点を目指す野心を抱えていることと明らかに矛盾する。
確かに西村康稔は弁明で述べているが、2018年から4年間で不記載金額は100万円と少なく、ノルマ分だけ売ればいいの証言が正しく聞こえるが、実家は時計店を経営していたものの、夫人の父親である吹田愰は、wikipediaによると、衆議院議員となる前から岸信介と付き合いがあり、A級戦犯だった岸の政界復帰に尽力し、岸の首相就任に奮闘し、岸の政界引退に際しては後継指名を受けて、衆議院議員選挙に出馬、当選後は岸の娘婿であると同時に安倍晋三の父親である安倍晋太郎の首相就任に執念を燃やし、自治大臣も努めた政治家であるから、そのコネを受けて、西村康稔自身が政のみならず、財・官まで含めてパーティ券を売るコネに事欠かない状況にあることは容易に想像できる。
西村康稔の安倍派清和研のパーティ券はノルマ分だけ売ればいいとした出世の意欲を欠いた発言と政治の世界で頂点を目指す野心を抱えていることと、結果、周囲から将来の首相候補と目されていることと、パーティ券を売るコネに事欠かない政財官の人脈を抱えているだろうこととに整合性を与えるとしたら、西村康稔は自分の方から与えられたノルマ以上のノルマを申し出て、パーティ開催のたびに達成、結果として還付分が少なかったものの、安倍晋三から人物としての高い評価を受け、自らは自己承認欲求を満たしていたとも考えることができる。
このことはあくまでも推測に過ぎないが、限りなく疑わしいノルマ分だけ売ればいいの淡白さであり、4月と8月の会合をデッチ上げと見る要素とはなりうる。
安倍晋三から現金還付中止を指示されて、各幹部が手分けして所属議員に電話で伝えたとしているが、事務局長が出席していたのだから、会合の日が平日なら、その場から事務局に電話を入れて、休日・祝日なら、日を置いて事務局職員に指示して一つの文面で複数のメールアドレスに送信できるカーボン・コピー(CC)形式で送信すれば、遥かに手っ取り早く、効率よく連絡することができる。わざわざ幹部の手を煩わす電話を用いたとしていることも、4月の会合の存在を怪しくさせる。
もし現金還付が「不透明で疑念を生じかねない」という性格上、メールでは証拠が残ることが懸念されたとしたなら、幹部たちも現金還付の違法性に気づいていたことになって、電話での伝言は都合が悪い関係上の演出となり、やはり4月の会合はデッチ上げの可能性が高くなる。
追及側は現実には現金還付と収支報告書不記載が続いていたことから、安倍派幹部4人が4月の安倍晋三の中止の指示を安倍晋三が亡くなったことの影響もあって徹底できず、8月の会合で4人のうち誰かが中止撤回を決めたと見て、質問が8月の会合に集中することになった。
では、8月の会合についてそれぞれの証言を見てみる。
西村康稔の自民党武藤容治に対する証言。
「その後安倍総理、安倍会長が亡くなられて、その後、ノルマよりも多く売った議員がいたようでありまして、返してほしいという声が出てきました。それを受けて8月の上旬に幹部で議論をし、そしてどうするかと、還付は行わないという方針を維持するという中で、しかしこう返して欲しいという人をどう対応するか、色んな意見がありましたけれども、結局結論は出ずにですね、私は8月10日に経済産業大臣になりましたので、事務総長を離れることにもなります。
その後どういった経緯で現金での還付が続けられる、継続されることになったのか、その経緯は承知をしておりません。その後、幹部の中で私が入った幹部の中で、そして議論は行っておりませんので、その経緯は承知しておりませんが、今思えばですね、安倍会長がもう還付をやめるということを言われたわけですので、事務総長としてしっかりとそうした方針を徹底してですね、少なくとも令和4年の還付はもうやめるということをしておけばよかったなと思っています」
他の幹部も同様な答弁なのは整合性の点で不思議はない。8月の会合に出席していたとする安部派幹部の一人塩谷立は日本維新の会の岩谷良平に対して次のような発言をしている。
「パーティーは1月から2月頃から売り始めていますので、多くの人がもう売ってしまったという状況の中で、8月に売った分を是非お願いしたいという声が出てきたというふうに私は理解をしております」
4月と8月の会合に出席はしていなかったものの、還付現金不記載の違法行為を行なっていた、同じ安部派幹部高木毅は同じ日、2024年3月1日の衆院政倫審の弁明の中で次のように述べている。
「私の事務所では、清和研のパーティー券代金専用の銀行口座を開設し、基本的に購入者の方にはその口座に振り込み入金して頂くという形で売上金を管理しており、パーティーが終わった段階で口座から引き出した現金を清和研事務局に持参して全額を収めるという運用をしていました」
清和研の事務局側に対するパーティー券の売上入金が5月のパーティー終了後であるとし、パーティー券の販売開始を2月からと遅く設定したとしても、4月と8月の両会合に出席している安倍派の会計責任者である松本淳一郎事務局長はパーティ開催が1ヶ月余と迫る4月の会合の段階で既に売り上げている議員の存在を想定していなければ、事務局長としての事務処理担当の意味を失う。
要するに安倍晋三が現金還付中止の指示に併せて2022年の5月のパーティに関わるノルマを超えた売り上げの発生を想定して、その分に対してどう対応するか、その対応策も同時に所属議員に伝える責任を有していて、各幹部は所属議員に手分けをして中止を伝えるだけではなく、対応策も伝えなければならなかった。だが、中止を伝えただけで終えている。
特に7月に参院選挙があり、改選議員にとって選挙に自由に使えるカネだからと、返し貰えないかどうかを8月の段階で幹部に訴えていたとしたら、遅過ぎて、奇妙な不一致を生む。
新聞報道によると、実際には参議院選挙があった2019年だけではなく、会合のあった2022年の安倍派改選参議院議員に対してパーティ券売り上げ全額がキックバックされていたと伝えていて、この報道が政倫審以後に知り得た情報に基づいていたとしても、そのキックバックは7月の参院選前でなければ、改選議員限定の意味を成さないから、8月の会合で返金を求めた議員の中には改選参議院議員は存在していなかった計算になるし、4月の会合で出席していた世耕弘成が安倍派参議院議員グループ清風会の会長を務めている立場上、参議院議員中心に電話で中止の伝達を行なっていただろうから、改選参議院議員に対しては現実とは異なる電話伝達をしていたことになって、4月の会合の現実性を失わせると同時に8月の会合の現実性も失わせることになる。
4月と8月の会合を現実にあった話だと仮定したとしても、安倍晋三が4月の会合で指示した現金還付中止を全員で決めたというのが事実なら、中止の徹底を図るのが安倍派幹部としての義務と責任だが、4ヶ月も経った8月の時点で還付を望む声が上がり、そのことを8月の会合で話し合わなければならなかったとしていること自体が各人の義務と責任を果す能力を幹部という地位に反して有していなかった矛盾を曝け出すだけではなく、還付に代わる合法的な手段での資金手当ての方策を講じるのが安倍晋三亡きあとの派閥の結束を図るための義務と責任であるはずだが、話のどこにも義務と責任を果たそうとする努力の影すら見えないのは4月、8月の会合が実体を備えていなかった、いわば作り話であることの何よりの証拠となるだろう。
極めつけは違法性の話がなかったから、還付現金の不記載に気づかなかったとしている点である。
共産党塩川鉄也に対しての西村康稔の答弁。
「あの収支報告書についても、事務局長に於いてこれ恐らく会長と相談されてたと思いますし、会計については会長と事務局長の間で行われてきたということでありまして、事務総長としてもまた他の幹部も関わってなかったと思いますので、そのときに収支報告書の話はしておりませんし、還付が適法か違法かといった議論も行っておりません」
共産党の山下芳生の違法性を前提に現金還付中止の指示があったのではないのかという問いに対する世耕弘成の答弁。
「8月に何かが決まったというようなこと、あるいは違法性について議論をしたということは全くないと。これが検察の調査の結果として示されてるというふうに思います」
共産党の塩川哲也の塩谷立に対する追及。
「下村議員はその合法的な形で出すということがあるのではないかという案があったと言ってるわけで、この合法的な形で出すということが、そこには違法性の認識があったということになるんですが、こういう違法的な認識について、会合の場で表明をされていたということでありませんか?
「その点については、あの私は認識しておりません。違法性のお話があったということも、具体的にはそういった話は出てないと思います」
同じく塩川哲也対塩谷立。塩川哲也が8月の会合で下村博文がノルマを超えた分を個人の資金集めパーティに上乗せをして収支報告書で合法的な形で出すということもあるのではないかという案があったと2023年1月の記者会見で述べていたことに関して、不記載という違法性の認識があったから合法的な形で出すといった物言いになったのではないかといった趣旨の問いかけをすると、「それは現金をやめようという中で、それらが出たと私は理解しております。あくまであの不記載のことについては一切話が出ておりません」
日本維新の会の音喜多駿「令和4年4月に安倍元首相はキックバックをやめると言った時、安倍元首長は違法性の認識を持っていたかどうかお分かりでしょうか」
世耕弘成「そのミーティングではですね、違法性についての議論は一切行われなかったと思います」
同じく音喜多駿が世耕に対して安倍晋三がキックバック中止を指示した際、世耕自身が「違法性があるやり方であると思いましたか?思いませんでしたか」と問いかけたのに対して、「ここは(4月の会合は)もう話し合いとか違法性を議論する場ではなくて、ノルマ通りの販売とするという指示が伝達された。そういう場だったというふうに思っています」
要するに4月の会合で安倍晋三から「現金は不透明で疑念を生じかねないから、こうした現金の還付はやめる」と指示された際に違法性の話があったわけでも、違法性の議論があったわけでもないから、理由も何も察することなく、右から左へ電話で以って所属議員に幹部が手分けして中止の伝達を伝える仲介役をただ単に果たしただけということになる。
ここからは自民党最大派閥、天下の安倍派の幹部という、それなりに矜持を備えた姿は見えてこないし、良識ある大人の姿さえも彷彿不可能で、単にガキの使いを果たしただけにしか見えない。
義務感と責任感を含めて、このように幹部が幹部なりの実質性を備えていない姿を描き出す結果となっているのは、4月と8月の会合が実際にあった話ではなく、架空の話であることに伴った連鎖的な現象だからだろう。
実際にあった会合なら、4月の時点で現金還付と還付した現金の収支報告書不記載に終止符を打つために幹部としての義務と責任を果たし得ていただろうし、幹部でいる以上、果たし得なければならなかっただろう。
だが、何もし得ずに放置した結果、政治的大スキャンダルとなって、国民に対して大きな政治不信を招き、2024年10月の総選挙で自公与党割れという懲罰を受けることになった。
想像するに、連続在任日数で歴代1位であることと、銃撃死後、首相経験者では1967年の吉田茂元首相以来、戦後2例目となる国葬を2022年9月27日に受けた安倍晋三の輝かしい経歴のメッキが剥がれて、汚れたカネの力に頼って政治を動かしてきた政治家としての評価を受けることを恐れ、政治資金規正法違反の罪となる現金還付・収支報告書不記載の強力な推進者とされることから少しでも遠ざけるために、2023年11月頃からマスコミに騒がれ出して急遽打つことになった芝居が4月、8月の会合ということなのだろう。
安倍晋三が現金還付を中止したという事実が欲しかった。現金還付中止は収支報告書不記載の中止を伴うから、そのような事実を以って安倍晋三を政治資金規正法違反から距離を置き、その罪薄めを謀った。
現実世界では5月の安倍派政治資金集めのパーティでも引き続いて現金還付と収支報告書不記載の違法行為が続けられていたのだから、このことと照らし合わせると、安倍晋三に向けた幹部たち自身による罪薄めの自作自演の猿芝居という結末しか見えてこないのは当然のことだろう。
また、罪薄めの自作自演に迫られたということは安倍派幹部たち全員が現金還付の事実と収支報告書不記載の事実を前以って知っていたことを証拠立てることになる。違法性を承知していたからこそ、芝居を打つ必要に迫られた。