麻生の鴻池無罪放免と自民党兵庫県連の「除籍」有罪のねじれ

2009-05-22 06:54:13 | Weblog


 20日(09年5月)午後の参院予算委員会でお騒がせ鴻池前官房副長官問題に関して民主党の峰崎直樹委員対麻生首相、河村官房長官長で次のような遣り取りがあった。

 峰崎「総理大臣、鴻池大臣がですね、この期間(新型インフルエンザ患者発生期間)、というか、アー、実は、アー、今病気で入院されているということなんですが、えー、JRパスを利用されて、えー、まあ、温泉旅行行かれたとか、新型インフルエンザの問題で官邸が一致結束していかなきゃならないときに、こんな不祥事を出されました。

 この方は、まあ、病気で退職を容認されたのか、それとも罷免されたんですか、どちらなんです?」

 麻生「こー、鴻池長官の方から官房長官の方に対して、健康上の理由により副長官の職を辞したいとの申し出がありましたので、辞職を認めることにしたものであります」

 峰崎「官房長官、先日NHKのテレビジョン見ておりましたけども、これ、罷免に値するとか、おっしゃっていませんでしたか?」

 河村官房長官「罷免に値すると、おー、申した・・・・覚えはございませんけど、あのー、病気を理由で辞職を認めました」

 峰崎「あの、JRパスを利用され、実は、その、料金をお出し、お返しなさったということですが、総理大臣、こういうときに、これはやはり、罷免に値するということで、その罷免を、実は結論を下されるのが、当り前じゃないんですか。もう一度、どうですか?」

 麻生「私は基本的に、今ー、JRパスの話の目的外使用があったと、いう点につきましては、これは明らかに、明らかに、それは遺憾なことでありますから、そう、そう申し、申し上げて、本人にも、官房長官を通して、言ってあります。本人が弁済したと聞いております。

 また、今、この時期にというお話だと思いますが、鴻池副長官はインフルエンザ関係に関しましては直接の担当者ではありませんでしたので、連絡は取れるようになっていさえすれば、それは問題ではないと、私は基本的にそう、そう思っておりますので、罷免、ということに関しては、私は本人の健康上の理由で辞職、得たのを率直に、素直に受取ったと、ご理解いただければと存じます」――

 要するに鴻池女性スキャンダルにしても「JPパス」目的外使用に関しても制裁不問&無罪放免。

 制裁・処罰の類と言えるかどうか、管理・監督責任、任命責任を負う任命権者たる麻生総理大臣の「遺憾」の意を伝えたのみ。腹にこたえる程のタマかどうかが問題となるが、右から左で、こたえることはないだろう。「遺憾」を伝えた河村官房長官にしても、「まあ、暫くは音無しの構えで大人しくしていてください」ぐらいのことしか言わなかったのではないのか。

 実は5月17に首相官邸に意見投稿した。

 『鴻池氏は無料「JRパス」使用が今回限りなのか、説明する責任があるのではないのか』

 「辞任した鴻池祥肇官房副長官が熱海で行った女性同伴ゴルフが個人的レジャーであるにも関わらず、政治活動に限定して認められている公務用『JR無料パス』を熱海までの往復の移動に使用したことが週刊誌報道によって発覚、この使用分をJRに自費弁済したそうですが、私的流用がこの往復に限っているなら辻褄を合わせることができます。

 もし常習化させていた目的外使用なら、今回の熱海往復分のみの自費弁済は他の不正使用を隠したままにしておく誤魔化しとなります。目的外使用が今回に限ったことなのか、他にもしていたことなのか、鴻池氏には麻生内閣に対しても国民に対しても説明責任を負ったことになります。

 鴻池氏は自分から説明責任を果たすか、果たさないなら、麻生首相自身から要求すべきではないでしょうか」――

 2日後の5月19日に首相官邸からの返事――

 「ご意見等をお送りいただきましてありがとうございました。
         首相官邸ホームページ「ご意見募集」コーナー担当」――

 国民の声・意見には常に親切、思いやりを持って耳を傾ける国の姿勢を痛い程に感じ取ることができて、涙が出るほど嬉しくなった。述べた意見に対してどう受け止め、どう考えるかの次に進んだ意見がない。発展させる気持など、さらさら持ち合わせていない。

 勿論、その必要はありませんよという否定意見もある。例え否定意見であっても、否定の具体的な理由を述べることによって、最初の意見が発展することもある。

 まあ、この機械的、杓子定規、紋切り型の返事は最初から分かっていたことだし、当方も厭味で送ったに過ぎない投稿だから、あまり文句も言えない。

 要するに麻生内閣は「JRパス」目的外使用の余罪なしと調査もなしに認めたことになる。熱海の往復のみに限っての使用のみだとした。

 鴻池センセイ、大助かりだったのではないのか。余罪を突つかないことによって、麻生センセイも任命責任を口で言うだけで済ますことができて大助かりをする。臭い物には蓋である。

 病気を理由に辞表を提出した。それを「率直に、素直に受取った」。純粋な心の持主でなければできない芸当だ。

 「JRパス」目的外使用は自費弁済した。後は何が残る。鴻池にしても麻生にしても、本人たちは大きな声では言えないが、“大助かり”が残ったといったところだろう。

 こちら側からしたら、三つ問題が残っている。

 先ず第一に、やはり余罪の問題である。私的流用を常習化させていなかったか。回数に応じて、国会議員としての姿勢に問題が生じる。一度や二度ならまだしも、年がら年中私的用件に使っていた常習犯ということなら、人格的な適格性の問題まで取り上げなければならなくなる。

 第二に、「JRパス」目的外使用は熱海不倫旅行とセットだと言うことである。同じ目的外使用であっても、使途によって、その悪質さに違いが生じる。地元後援会の関係者の葬儀に出席するために使ったといったことと問題の程度・質共に異なる。

 例えばサラリーマンが出張で新幹線の往復の座席指定券を渡されていながら、それを金券ショップで売って自由席券に代え、その浮いた分を自分の小遣いにするのと、出張に不倫旅行を抱き合わせて、往復の運賃もホテル代も会社のカネで済ますのとでは、悪質さの点で大きな違いが生じるのと同じである。

 犯罪に於いて、犯した種類・凶悪性の程度・計画性等に応じて、罪に違いが生じる。コソ泥と殺人の罪が同じであるわけがない。同じ殺人でも、凶悪性や計画性を無視して一括りで扱うわけではない。あくまでも今回発覚した鴻池副官房長官の「JRパス」目的外使用は不倫旅行に用立てるために使ったのである。不倫は職務に支障をきたしたわけではない個人の問題であっても、「JRパス」目的外使用を使途を問わずに他の「目的外使用」と一緒くたに「目的外使用」の名目のみで一括りして片付けてしまっていいのだろうか。

 麻生は一切合財を不問に処して、辞任は「健康上の理由」、「JRパス」目的外使用は「遺憾」で幕降しを謀っている。

 第三の問題は、自民党兵庫県連が鴻池前長官を除籍処分に処していることである。その主たる理由を5月21日付の「スポニチ」は兵庫県連が「首相官邸で新型インフルエンザの対策本部幹事会が開かれていた4月30日に、問題の旅行をしていた」ことに置いて、それを不謹慎行為だと看做していることを伝えているが、他の殆どのインターネット記事にしても県連に対する取材を通して得た情報なのだから、当然と言えば当然なことだが、同じ文脈となっている。

 <役員会では、鴻池氏が政府の新型インフルエンザ対策本部が発足した4月28日に熱海旅行に出かけたことに対し、「緊張感が足りない」などの批判が噴出した。五島壮幹事長(県議)は「県連の自浄能力を発揮しなければ次期衆院選は戦えない」と話した>(「asahi.com」

 <同県連は19日に緊急役員会を開き、4月30日に官邸で新型インフルエンザの対策が話し合われていたことなどを重視。鴻池氏の除籍を決め、党本部に報告した。五島壮幹事長は「危機管理に取り組まなくてはならない時期なのに、非常識だった」と話している。>(「47NEWS」

 <女性との旅行が、新型インフルエンザ発生で政府が対策に追われていた時期と重なっていたため、役員会では「職務放棄だ」と批判が上がったという。

 五島壮幹事長は20日、「重要な時に緊張感を欠く行動で、恥ずかしい限りだ。しかも県連に対して何の事情説明もない」と話した。>(「時事ドットコム」

 <県連によると、19日に緊急役員会を開き鴻池氏の処分を検討。政府が新型インフルエンザ対策本部を設置した日に旅行に出発していたことに批判が集中し、最も重い除籍処分を決定した。今後、県連として鴻池氏の政治活動を支援することはないという。

 県連の五島壮幹事長は「女性問題というより職務放棄に当たり、内閣支持率にも影響しかねないとの意見が大半だった。重い決定だが、反対や慎重論はなかった」と話している。>(「msn産経」

 <緊急役員会では、政府が新型インフルエンザ発生を宣言し、対策本部を設置した日に鴻池氏が旅行に出発していたことに批判が集中。「単なるスキャンダルではなく、政権要職にありながら職務放棄だ」などの声が相次ぎ、最も厳しいとされる除籍処分にも異論は出なかったという。県連として今後、鴻池氏の政治活動にはかかわらない。>(「神戸新聞」

 上記「スポニチ」は次のことも書いている。

 <党としての処分はなく自民党籍はそのままだが、今後は県連所属議員としての活動ができなくなる。国政選挙での公認決定は、地方組織からの推薦などを受けてなされることが多いことから、県連への“復権”がなければ、鴻池氏は改選を迎える2013年参院選で無所属出馬を余儀なくされる可能性もありそうだ。>――。

 除籍処分は「県連としては最も重い処分で、国会議員に対しては前例がない」と上記「asahi.com」が伝えている。

 県連が「最も重い処分」を下したのが5月19日。麻生首相が参議院で答弁したのが次の日の5月20日。1日のずれがある。

 政府が新型インフルエンザ発生を宣言し、対策本部を設置した最中(さなか)の旅行を「職務放棄だ」と問題視した県連の処分に対して、我が日本の麻生太郎はそれを覆して、「鴻池副長官はインフルエンザ関係に関しましては直接の担当者ではありませんでしたので、連絡は取れるようになっていさえすれば、それは問題ではないと、私は基本的にそう、そう思っております」と問題視しない処分とし、完全無罪を宣言している。

 同じ行為に対して、こうも懸け離れた処分が下された。この“判断のねじれ”は単なる見解の相違、あるいは危機感の濃い薄いで済ますことができるだろうか。

 内閣は無罪、自民党兵庫県連は有罪としたのである。高裁が一審有罪判決を破棄して上告が行われなかった場合、もしくは最高裁が二審有罪判決を破棄して無罪判決を下したなら、本人の無罪は確定するが、兵庫県連の「除籍」処分はいくら総理大臣がそれを破棄、覆して無罪判決を下そうと、その無罪に同調して「除籍」が解かれるわけではないし、また簡単に解くことはできないだろう。

 麻生の判断が正しいということなら、県連の「最も重い」除籍判断は冤罪そのものとなる。県連の「最も重い処分」こそが正しい判断ということなら、麻生の判断は間違った無罪判決と言うことになる。どう説明づけたなら、この“判断のねじれ”を解消し、処罰の整合性を与えることができるのだろうか。

 鴻池からしたら、この“判断のねじれ”は大きいに違いない。「今後は県連所属議員としての活動ができな」いばかりか、公認を得るにもままならないとなったなら、県連も麻生と同じく無罪放免としてくれないことには、地元政治活動は村八分状態となりかねない。

 いわば鴻池が望む処罰の整合性とは麻生太郎の処罰に合わせた県連の処罰ということだろう。

 麻生は鴻池の迷惑など考えずに、このあまりにもかけ離れた判断を「それは地元がそうお決めになったことですから、地元としての判断なのだから、地元は地元としてお決めになられたらいいと思います。地元としての判断を『率直に、素直に受取』ります」と、“判断のねじれ”を無視するのだろうか。

 勿論、ねじれの無視は処罰の整合性の無視に通じる。処罰を与える側は無視できても、処罰を受ける側は人情として軽い方の処罰との整合性を望むだろうが、同じ行為に対して異なった判断を受ける謂れはない。総理大臣の方が力関係は上なのだから、総理大臣が無罪だと言っているのに、県連が有罪だとは何たることだと反論できないことはない。

 いくら総理大臣だからといって、処罰の整合性を無視できるだろうか。麻生太郎は県連と自身の判断の違いを国民に説明すべきだろう。

 以下は余談だが、鴻池問題に関する遣り取りの前に峰崎議員は鳩山民主党新代表に対する世論調査の支持率を取り上げて麻生に質問している。

 峰崎「実は私共は、あの、鳩山代表を新代表に選出したわけでございます。その新代表を設立、選出してですね、昨日は執行部が発足いたしました。で、それについて世論をやった結果はですね、お手元の資料に配布しているとおりでございます。政党支持率もかなり一挙に上がってまいりました。これはあの、私たちにとって、大変、ある意味、嬉しい数字でございます。

 次の首相にふさわしいというところはですね、鳩山――、あの、総理大臣じゃないですよ、鳩山由紀夫さんと麻生総理大臣、較べてみるとですね、凄い、やはり、鳩山新首相候補に、予定者に対する、有権者に対すると言うか、今度の選挙に向けて、私たち、大変高い数字が出てきております。この結果についてですね、総理大臣、どのように判断されていますか」

 麻生あのー、世論調査の結果って、詳しく承知してませんので、今、これ、初めて、よく拝見しました。正直な、正直なところでございます。

 (声を小さくして脇に顔を向けて、「質問しなくて、答えなくていい?静かにしていなくて」と言ってから、正面を向いて「そちらの方から言っていただかなければ、聞かないみたいだから」――何なのか意味不明。首相をしていることも意味不明。)

 あの、民主党代表選挙についての、一定の評価があったんだと、私どもそう思っておりますが、ただ私共の話では、小沢前代表の政治資金の問題について、国民の説明が求めていることに関する民意とのねじれの問題についての結果に、どうなったのかというのは、我々にとっては凄く関心があります」

 峰崎「小沢代表のですね、そういうご指摘はマスコミ等を通じてお話なさっているのは、よく存じております。小沢代表は自分で記者会見等発表されてですね、今日こられたと思います。そして、民主党の調査もやっております。調査委員会を。

 調査委員会の報告も出てまいります。それらを是非見ていただきたいし、色々な見方があることを、勿論、私はご存知ですけども、知っておりますけども、しかし、これは元法務省の、検事さんのOBの方から見ても、ちょっと、これは行き過ぎじゃないかと、いうようなご指摘を実は受けているところです。

 そういった実はですね、今の総理の指摘については、私どもは、それはー、為(ため)にする意見だなと、いうふうに思えてなりません。・・・・・」(次の質問に移る。)

 鳩山新代表を「新首相候補」、あるいは新首相「予定者」と名づけたところまで面白かったが、「小沢前代表は説明責任を果たしていない」とする60~70%の有権者の意識と鳩山新代表に対する有権者の高い支持意識との「ねじれ」に関する麻生の指摘を受けて、あれこれ反論しているが、「民主党のあり方として小沢辞任、鳩山新代表でよしとした有権者の意識が次の選挙でどの党に投票するか、どの党に政権を握って欲しいか、次の首相に誰がなって欲しいかの支持率の高さとなって現れたのではないのですか。現在の麻生太郎を総理大臣とした自民党政権のあり方ではダメだと言ったんですよ」と答えるべきで、それを最初に持ってきて、必要とするなら、次に小沢擁護と行くべきだったのではないだろうか。

 世論調査は自身に対する国民意識の動向を示す一つの指標であり、選挙に影響を与える重要情報に入るはずだから、「あのー、世論調査の結果って、詳しく承知してませんので」などと言うのは、自分を裸の王様に置いて憚らない愚かしさの提示以外の何ものでもないということになる。

 大体が峰崎議員が配布した「お手元の資料」が新聞記事をコピーしたものだろうから、虚偽情報であるはずはなく(新聞記事のコピーではなくても、虚偽情報を渡したら大問題となる)、一瞥しただけで「詳しく承知」できたはずで、それを「詳しく承知してませんので」とするは自己の不利を不利と思わせたくない取り繕いからの弁解言葉でしかないだろう。

 その場で聞けば質問の内容を理解できるはずだが、「事実関係を知りませんので」や「詳細を知りませんので」、あるいは「新聞の言っていることで、直接聞いておりませんので」などを常套句として明確な答を示さないのは、やはり日本の総理大臣麻生太郎が質問内容が自分に都合が悪くて答に窮したり、あるいは答えたくないときに用いる、不誠実であることからできる弁解言葉の一覧としてあるものに違いない。


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