そこで鳩山新代表が小沢一郎を筆頭&選挙担当の代表代行に任命したのを利用して、「小沢院政」、「二重権力」、「操り人形」の批判を持ち出し、尚且つ「政権担当力なし」の貶めを口撃の新たな手口とした。
甘利明行政改革担当相「完全に小沢院政が敷かれたと思う。(鳩山氏に)その呪縛(じゅばく)から逃れるだけのパワーはない」(「時事ドットコム」)
余計なお世話ではないか。小沢代表時代は小沢氏のリーダシップという強い要素が絡んでいたとしても、政治はチームプレーである。各政策で小沢氏一人の意向が常に全面的に通用するわけではない。それぞれの政策に関わる他の議員との勢力図の影響を受けて決定していくはずである。
例えば官僚主導政治から内閣主導政治に改革するために内閣人事局を新設、幹部公務員の人事を一元管理する公務員改革の法案を政府が国会に提出したが、内閣人事局トップの人事局長を省庁の事務次官経験者を充(あ)てることが慣例となっている内閣官房副長官に兼務させて、元官僚が官僚人事を一元管理するという、輸入食品の農薬検査を輸入業者に任せるような、あるいは食品産地の検査を食品製造業者に任せるような、悪く言うと、同じ穴のムジナ同士が管理し合う相通じ合うトップ人事となっているという。
このトップ人事は与党内に反対意見があったものの、「官僚とは、私と私の内閣にとって、敵ではありません」の官僚の強い味方麻生太郎の意向で決定したというが、反対意見が頭数を占めず、一部にとどまった勢力図からの決定ではないのか。
全体としては自民党自体が「いい湯だな」と官僚政治にどっぷりと浸かり官僚主導政治となっていたことからの、だから官領主導から政治主導に向けた公務員改革を必要とするようになったのだが、官僚の意向を受けて改革に後ろ向き、不熱心なことから、麻生首相の「官僚とは、私と私の内閣にとって、敵ではありません」をいいことに歩調を合わせた勢力図の影響を受けた決定といったところではないかということである。
このことは逆の譬えでも証明できる。
公明党が定額給付金を持ち出したとき、地域振興券の二の舞と見て自民党内には反対意見が多かったが、勢力図としては連立与党内ではほんの一握りの頭数しかなく、少数意見として無視したなら、実現を見なかったに違いない。
だが、選挙で世話になるその力は自民党の頭数に多大に影響するものがあり、選挙を間近に控えていることからも、公明党の意向という点で頭数以上の勢力図を誇っていたために無視することもできず、自民党の同調を得ることができたといったところだろう。いわば頭数とは関係ないものの、選挙利害を考えた場合の勢力図が影響した決定と言える。
政治がチームプレーであり、チームプレーであるからこそ、政策決定が一人の人間の意向のみが決定要因となるわけではなく、頭数を基盤とした勢力図や頭数からだけではない勢力図を決定要因とするといった様々なケースを抱えるはずで、この点からすると、独裁国家でない以上、「院政」批判は当たらない。
鳩山邦夫総務大臣も甘利とは言葉は違うが、同じ趣旨の批判を民主党新代表にぶっつけている。
「兄弟の間で非常に言いにくいが、・・・・国民の誰から見ても小沢さんの操り人形に見える」
昨19日のNHK「ニュース9」によると――
鳩山邦夫「小沢さんの操り人形に見えるわけでしょう?小沢さんから、・・・こう、・・・こう、・・・何つうの?(両手を肩の上で盛んに上げ下げして、人形が操られている格好。)ぶら下がっている。操り人形の糸を一つずつ切っていったらいいと(指をハサミにして糸を切っていくマネ。)、こういうふうに、思いますね――」
もう少しテキパキと言えないものだろうか。人の心配するよりも、自分の言葉の出来具合を心配すべきである。
麻生の「国民的人気」という幻想の操り人形となって雪崩を打って自民党総裁に選出、総理大臣に押し上げたはいいが、その政策の一貫性のなさ、人間の軽さ・軽薄さに裏打ちされた言葉の軽さ・軽薄さが災いして支持率が危険水域で低迷している。
その麻生操り人形の「呪縛から逃れるだけのパワーはない」ばかりか、自分たちからその「呪縛」に取り入っていることを甘利も鳩山邦夫も問題とすべきである。「麻生では選挙は戦えない」と言っていた武部や中川秀直なども最近は音無しの構えで、「呪縛から逃れるだけのパワー」を発揮できずにいる。麻生内閣の支持率自体が内閣の「パワー」を示すバロメーターそのものであるにも関わらず、「呪縛」任せでいる。
現在政権を担当しているのは自民党であり、麻生内閣である。民主党ではない。自前内閣の「パワー」を問題とせずに、政権を担当しているわけではない野党民主党の「パワー」をあげつらうことに血眼となっている。そのなり振りの構わなさ。自分で自分が情けなくならないものなのだろうか。
自民党の古賀選挙対策委員長にしても、そのなり振りの構わなさは際立っている。19日夜の民放の衛星放送番組で話したらしい。
「わが党にとっては、やはり投票率はあまり高くないほうがいいのではないか。投票率が高いと自民党にプラスということもあったが、ここ最近は高いのは怖い」(「NHK」インターネット記事)
番組が終わったあと、記者団に対して「自民党の支持層をしっかりと広げていく努力が必要だ。ちょっと表現が悪かったのかもわからない」(同「NHK」)と釈明したそうだ。
「毎日jp」記事は「有権者の棄権を期待したかのような発言は、今後批判を招きそうだ」と批判しているが、確かに「投票率はあまり高くない」は「棄権」によって期待できる状況だが、その前提として、国民が政治に関心を持たない、無関心であるという政治意識を条件としなければならない。
古賀誠はその名のとおり「誠」の気持を持って政治に無関心な国民であることを期待した。国民が政治に無関心であることによって政治に対する批判を無効状態に置くことができる。
このことは選挙での投票が誰を選ぶかだけではなく、誰を選ばないかの批判を表裏としていることからも証明できる。有権者が政権交代を選択するということは、現政権に対する批判の裏返しであろう。
いわば古賀は国民が政治に関心を持たないことを通して自民党及び麻生内閣に対する批判を封じ込めることを期待したのである。あまりにも国民をバカにした言葉ではないか。
なり振り構わなくなると、ここまでくる。
政権党・内閣がなり振り構わなくなったら、政権の末期症状を示す兆候以外の何ものでもあるまい。なり振り構わなくなるとは、品性も矜持も投げ捨てた状態を言う。投げ捨ててこそ、なり振り構わなくなれる。往生際悪くも、麻生内閣・自民党とも、そういった末期症状の品性・矜持の投げ捨て状態に陥っている。
日本が誇る麻生総理大臣の場合は「説明責任」の薬効が切れると、今までも使用していた旧型兵器を持ち出して「政権担当能力」を爆撃機に装着して落とし始めた。
「民主党は政権交代を主張しているが、どなたが代表であっても、問題は政権担当能力があるかどうかだ」(「時事ドットコム」)
では、自民党及び歴代自民党内閣は「政権担当能力」を所持していたと言うのだろうか。
内閣に所属する各大臣が人事管理・監督の責任を有しながら、各省庁の官僚を満足に管理・監督できず、天下りの好き勝手な私腹肥やし、省庁取引の随意契約からのキックバック、天下り所管法人への天下りの立場をよくするための過大・不当な利益のツケまわし等々の不利益行使、ムダの発生を許してきた。政策も官僚任せで、その戦後以来の時代的な積み重ねが所得格差・都市と地方の格差、少子高齢化社会、地方の過疎問題、貧困問題、自殺問題等々の日本社会の現在の各種矛盾を生み出したのであって、誰が見ても「政権担当能力」を有していたことからの国民利益、社会的成果ではあるまい。
麻生は支持率の低さが証明しているように自らの「政権担当無能力」を先ずは問題とすべきであろう。
自民党歴代内閣及び自らの「政権担当無能力」を棚に上げて、まだ未知数の民主党の「政権担当能力」をあげつらう。自らの「政権担当無能力」を、俺ら、そんなの関係ねえ、そんなの関係ねえ、と言っているようだ。
民主党にとって幸運なのは「政権担当能力なき」自民党を反面教師として政権を担当できることにある。
それが鳩山新代表の「政権交代を果たし、官僚主導の政治を打破するため、先頭を切って走ることを誓う」の言葉であろう。
「政権交代」があって初めて「官僚主導政治打破」が可能となる。「政権交代」がなければ、不可能ということになる。いわば「政権交代」を日本の政治世界に必要事項としたこと自体が「政権担当能力なき」自民党政治を反面教師とすることを意味する。
歴代自民党内閣及び自前内閣の「政権担当能力なき」を棚に上げて、民主党の政権担当能力を云々するとは、おこがましいばかりに自省能力を欠いている我が日本の麻生太郎と言わざるを得ない。
「小沢は説明責任を果たしていない」と言うなら、自分たち内閣にも「説明責任を果たしていない」に当たる閣僚・二階がいるのを無視して、「小沢代表は説明責任を果たしていない」口撃が小沢辞任で効果を減ずると、民主党新代表選出選という段階で鳩山有利の情勢に水を差すべく国民支持の大きい岡田よりも鳩山の方が総選挙を戦いやすいとちょっかいを出したが、水差しがたいした効果を上げずに鳩山が新代表決定となると、水を差したことなどご都合主義にも棚に上げてさも最初から望んでいた結果であるかのように装い、「岡田よりは鳩山の方が戦いやすい」の声を一段と大合唱することになったが、代表選直後の民主有利・鳩山有利の世論調査が自民党の程度の低い安っぽい邪魔立てをことごとく砕いてしまった。
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