現実直視からの格差二極拡大化社会を国の形とする(2)

2012-01-04 09:20:06 | Weblog

 先ずは上層に対する政策としては、大企業とそれに準ずる企業が大いに利益を上げることができる税体系や賃金体系を提供すべきであろうる。それは法人税の思い切った減税であり、安価な人件費で人材を獲得可能な労働者派遣法の提供が必要となる。

 最初に法人税だが、現在の不況に対処するために政府は実効税率5%の減税を策していたが、大震災の復興を受け、12年4月から3年間、減税の範囲内で増税、企業側にとってはプラスマイナスゼロとなった。

 だが、企業にとっては今が大切なときである。現行40%の実効税率を経済界が望むようにアジア諸国並みの25%に思い切って下げて15%分の税収減を企業側からしたら15%減税分を各種投資に振り向けて回収した利益からの税収でプラスマイナスを図るべきではないだろうか。

 一見、実効税率現行40%の法人税はアジア諸国と比較して高率に見えるが、日本の法人税は大企業を中心として優遇税制を敷いていて、実質的には経常利益上位100社平均で30.7%の法人税で収まっているということだが、25%にすることで限りなく低くなったとしても、その分、アジアの人件費の低さを補う投資とすることで対外競争力維持にも繋がるし、あるいはその他の代償とさせることで中・低所得層の利害とのバランスとすることもできる。

 その他の代償とは法人税を下げて得る上層の利益がトリクルダウンの原理が「戦後最長景気」時と同様に機能せずに中・低所得層に再配分されないだろうことを予定調和として、それに対する中・低所得層の利益として民主党がマニフェストで掲げていた最低賃金1000円の実現を先ずは代償とするということである。

 経済界は最低賃金時給1000円は中小企業の経営に打撃を与えると反対しているが、民主党が派遣労働者の雇用安定を目的として「労働者派遣法改正案」に一旦は盛り込んだ「登録型派遣」や「製造業派遣」の原則禁止を「雇用縮小への懸念」等の理由で自公の反対で削除することになったが、安価で景気に応じて雇用調整できる人材としての非正規社員は企業にとって国際競争力維持の條件の一つである以上、「登録型派遣」や「製造業派遣」は認めるべきであるし、それに代わる中・低所得層の最低賃金1000円を基準とした人件費でもあるのだから、法人税減税、「登録型派遣」や「製造業派遣」維持の代償として、中小企業の負担は元請の関係にある大企業が負担して帳消しとすべきであろう。

 また、景気が良くなって企業活動が拡大した場合、自ずとより多くの人材を必要とすることになって雇用拡大を招き、需要と供給の関係で人件費が上昇する。常に基本は景気回復、あるいは景気維持に軸足を置くべきで、景気拡大・維持が例え身分は非正規であっても雇用をより長期に保障し、その基準の人件費が現時点に於いて時給1000円をスタートラインとするということである。

 現在、最低賃金の全国平均は737円(2011年10月12日現在)ということだが、それを全国一律1000円とすることで労働に対する意欲を持たせると同時に僅かながらであっても、中・低所得層に対する可処分所得の増加、さらに個人消費につながり、経済に好影響を与える誘因とすることで、最終的には中小企業、さらに大企業の利益となって跳ね返ってくるはずである。

 平成22年10~12月期の労働力調査によると、役員を除く全雇用者5153万人のうち,正規労働者は3354万人、前年同期11万人の増加で、非正規労働者は1798万人、前年同期38万人の増加で、このうちパート・アルバイトが52万人増加、労働者派遣事業所の派遣社員が19万人の減少だそうだが、全労働者の内、約35%が非正規となる。

 国内企業の海外移転を阻止し、なおかつ中・低所得層により多く占めるだろう非正規雇用者の賃金=生活を保証するためには企業活動を有利に展開させる各種政策を受けた景気拡大と景気維持を條件として雇用の確保を図る格差二極拡大化以外にどのような有効な手立てがあるのだろうか。

 常に企業が利益を上げることが可能な政策を優先させることによって、最低でもそこそこの景気を維持でき、企業の利益確保がほぼ常に保証されるようになった場合、経営者や経営者に連なる企業上層部の報酬は高額な状態で保証されることになり、また株価も上がって、株を持っている重役や投資家も連動して高額な利益が保証されることになる。

 いわば企業の利益確保が常に前提条件となって保証する経営者以下の重役の高額利益であり、投資家の高額利益という構造を取る。トリクルダウンの忠実な利益循環、あるいはトリクルダウンの忠実な利益再配分がこのレベルまでで、正社員である限りに於いてはその“忠実さ”から離れて一定程度は有効であり、非正規社員はトリクルダウンが機能しないまま、雇用の需給関係で人件費にプラスα上昇の利益を受けるが、政府が企業が利益を上げることができる各種政策を取り、企業が利益を上げている間は余程のことがない限り、それをカネのなる木として経営者や経営者に連なる企業上層部の報酬は切れ目なく保証される。あるいは投資家は株価が上がって高額配当を手に入れることが保証される。

 いわば彼らのような高額所得者・富裕層を対象として高額の所得税を課したとしても、余程の突発的な不況が見舞わない限りに於いて、高額な所得税でふんだくられたとしても、次の報酬が保証されるゆえに余裕ある生活を送ることができるはずである。

 このことを証明する記事がある。《「我々富裕層に増税を」、米富豪グループが議会に直訴》CNN/2011.11.17 Thu)

 〈米国の富豪数十人で構成する一団が11月16日、米国議会を訪れ、富裕層に対する増税を財政赤字削減策に盛り込むよう要請した。〉とのっけから伝えている。

 この数十人は富豪のみではなく、〈米グーグルの社員や元社員らで構成。〉と、高額報酬者であることに変わりはないだろうが、富豪には当たらない地位の人間も混じっているように思える。

 ブッシュ前大統領の時代に成立した富裕層に対する減税措置の打ち切りを求め、財政削減策について協議している超党派の特別委員会に対して富裕層への増税を伴わない措置は一切退けるよう訴えたという。

 エリック・シェーンバーグ コロンビア大学ビジネススクール教授「特別委員会の法案に我々の増税が盛り込まれない場合、法案を廃止に追い込むよう国民に働きかける」

 ダグ・エドワーズ グーグル元マーケティング責任者「我々はもっと税金を払いたいと思っている。幸運にも年間100万ドル以上の収入を手にした者は、もっと税金を払うべきだ」

 ギャレット・グルーナー ネット企業アスク・ドット・コム創業者「私の個人的投資において、限界税率(納税者が課税所得に対して支払う税率区分のうち、最高となる税率区分)が判断材料になったことは一度もない。我々はそんなことは考えない」

 「年間100万ドル」は現在のレートで換算すると、約7700万円である。日本の厚労省の「国民生活基礎調査」では日本の高額所得者は2000万円以上の所得世帯としてしか表されていない。全世帯数の1.2%。2010年(平成22年)の全世帯数は約 5092万だそうだから、その1.2%、約61万世帯となる。

 日本政府も所得格差是正の観点から高額所得者の所得税の最高税率を現在の40%から45%に引き上げる方針だというが、その所得を生み出す企業利益や株価を政策的に固定的に保証できる限りに於いて、その代償としての意味合いも含めて、さらに企業利益保証の他の要素を付け加えることによって50%でも構わないはずだ。
 
 企業利益保証の他の要素とは財界、企業側が求めている国内の自動車市場を活性化するための自動車取得税と自動車重量税の廃止である。

 来年度の税制改正大綱では自動車重量税は軽減されることになったが、廃止の決定とはならなかったし、自動車取得税にしても廃止とはならなかった。

 廃止することによって国税、地方税の税収減となるが、廃止による可処分所得の増加が中・低所得層のみなし収入となり、そのことが消費活発化の誘因となり、ひいては税収増につながっていくはずである。

 差引き計算すると不足と出るとしても、景気を刺激しないことには何も始まらない。

 以上、主として上層の利益供与に利する格差二極拡大化の主張を展開してきた。以下、中・低所得層の利益供与に役立つ格差二極拡大化の主張を少々加えないことにはバランスに欠くことになる。

 先ず農畜産物の輸入自由化を図って、安い農畜産物を中・低所得層に提供すべきであろう。安価な農畜産物を日常的に購入できるようになって、中・低所得層はその分、可処分所得を増やすことができる。いわば見かけ上、収入を増やすことができる。

 上層の企業に安価な人件費で済む人材の提供、あるいは雇用調整可能な有期雇用身分の人材提供によって得る上層の利益に対する代償としての中・低所得層の利益とする格差二極拡大化策である。

 コメにしても農畜産物輸入自由化の例外としてはならない。

 日本人口の3%に満たない約300万人の農業従事者、総農家数(2010年)253万戸を守るためにコメに778%もの高関税をかけ、日本人口1億2569万人、約5092万世帯のうち、年収100万円未満の生活を強いられている、総農家数253万戸を上まわる336万世帯(2009年)に高い米を食わせて、苦しい生活をなおさらに苦しくさせてきた。

 年収100万~200万の生活者、例え最高の200万を得ていたとしても、月収17万程度の生活を送る647万世帯(2009年)に対して安い米を手に入れることができない分、生活が圧迫され、可処分所得を狭められてきた。

 勿論、高関税ゆえに高額の農産品を食わせられてきたのはコメだけではない。牛・豚・鶏等の畜産農家、約11万戸(2011年)を保護するために、総農家数253万戸を合わせても263万戸(兼業もあるに違いない)を保護するために牛肉に38.5%もの関税をかけ、輸入豚肉に関しては基準輸入価格を下回る分を関税として徴収して国内養豚農家を保護するために一般国民の生活費に上乗せさせ、可処分所得を収奪、生活そのものを圧迫してきた。

 自民党政治が食糧安保の美名のもと、実態は農村を確固とした票田とするために農家を過剰に保護する必要上の高関税、高価格であり、そうすることで都市生活者を迫害してきた。

 農畜産品の品質及びその価格も格差二極拡大化に持っていき、中・低所得層に対しては安価な輸入品を、上層に対しては高額・高品質の国産品を利用対象とすべきであろう。

 あるいは高額・高品質の農畜産品は海外への輸入に供する。

 高額・高品質の農畜産品の生産に対処できない農畜産家は政府支援で転業を進めるか、政府支援の転業に対応できない農畜産家は廃業するか、いずれかに政策的な淘汰を受けるべきである。

 食糧安保の美名のもと、国内農畜産業を保護してきたが、旱魃や大雨等の自然災害で国際価格が高騰した場合に備えて輸入先の多角化や備蓄で対応すれば、食糧安保を守ることができることはは殆ど海外からの輸入に頼っている石油が証明していることである。

 輸入農畜産品の関税を限りなくゼロに持っていくことで、中下層の可処分所得を増やして見かけ上の収入を多くすれば、その分個人消費にまわすことができ、個人消費は経済を活発化させ、最終的には政府税収を増やすことになる。

 また2011年12月9月末現在で全国の生活保護受給者が過去最多の206万5896人(速報値)にのぼったと厚労省が発表しているが、関税ゼロ相当の輸入品で中・低所得層の生活を保護した場合、生活保護受給世帯そのものは減らすことができなくても、受給額をかなり減らすことができるのではないだろうか。

 最後に上下に二極化している格差に対して上下それぞれに対策を拡大化することによって、逆に格差のバランスを取る格差二極拡大化の観点からの消費税増税のあり方を考えてみる。

 政府は増税した場合の低所得者対策として給付付き税額控除制度採用の方針だということだが、これでは厳密に消費した分の税支払いとならず、余分に給付を受けたり、少ない給付でマイナスが出たり、不公平が生じるはずである。

 食料品等の生活必需品に関しては税率を下げる軽減税率は「対象品目の線引きが難しい」という理由で導入に否定的だというが、欧州などでは広く採用している方式である。

 日本ではできないということなら、日本人は劣る人種と見做されても仕方はあるまい。

 要するに食料品等に軽減税率を設けた場合、高額所得者をも含めて全員から税収が期待できなくなることからの拒絶反応ということなのだろう。給付付き税額控除制度の方が軽減税率方式よりも税収を多くすることができるというわけである。

 しかし上層への政策的な利益供与に対応する格差二極拡大化の中・低所得層に対する政策的利益供与のバランスを考えた場合、現在の消費税5%の税率も食品に限ってゼロとして、中・低所得層の可処分所得を増大せしめ、個人消費の誘因とすべきで、高額所得者も食品の所得税がゼロとなる税収のマイナス分は、消費税率は何も一律である必要はなく、現在同率の5%となっている住宅取得に対して1億円以上の住宅取得に関しては最終的には10%以上の15%等にするとかの、高額商品は税率を高くすることで軽減税率導入による税収の減額分を補ってもいいはずである。

 億単位の豪邸を手に入れる高額所得者は自らのステータスの証明書として購入するのであって、消費税が15%であろうと、それ以上であろうと、一時的な負担であって、後々の生活の快適さも考えて証明書を自ら手に入れないということはあるまい。

 既に触れたように個人消費が低迷している不況下にありながら、高級乗用車や高級宝石類の消費が盛んとなっている。

 上層に位置する大企業とそれに準ずる企業に対して法人税軽減や安価な人件費と有期雇用等を保証する政策的恩恵によって国内空洞化・海外移転を阻止し、利益の上がる状況を提供する。一方で企業に対するそのよう利益供与の見返りに中・低所得層に対しても食品の消費税をゼロとする軽減税率導入や最低賃金全国一律1000円、あるいは輸入品の関税セロ状況の政策的恩恵によって見なし収入の増加を図って経済を活性化し、より住みやすい社会とする。

 このような格差二極拡大化策を考えてみた。

 実際に経済が活性化したなら、自ずと国の税収は増える。税収ばかりか、経済の活性化は国民に健康を与え、いわば生活苦による自殺を減らすだろうし、健康維持にも役立って、医療給付費や生活保護費を減らすことにもつながっていくはずである。

 勿論、プロの経済学者でないために以上の政策によって総合的に税収がどれ程減り、個人消費がどれ程その税収減を補った上に増加させることができるか、企業からの税収がどれほど増えるか計算はできないから、この方法が正解なのかどうか分からない。

 だとしても、企業の国際競争力確保の條件として安価な人件費と安価な原材料は欠かすことができない状況が続く限り、社会の上下格差はなくならない。

 企業は安価な人件費と安価な原材料を手に入らなくなれば、海外移転に走り、産業の国内空洞化は加速される。

 従来の格差是正策でこれらの現象を阻止できるのだろうか。



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