2016年夏季オリンピック国内候補都市は2006年8月30日に福岡を押さえて東京に決定。2007年9月14日、シカゴ(アメリカ合衆国)、東京(日本)、リオデジャネイロ(ブラジル)、マドリード(スペイン)、プラハ(チェコ)、バクー(アゼルバイジャン)、ドーハ(カタール)の7都市が立候補し、その中からIOCによって2008年6月4日、シカゴ、東京、リオデジャネイロ、マドリードの4都市が一次選考で選ばれたと発表された。東京は書類選考での総合評価ポイントが他の3都市を押さえてトップのポイントを獲得したと言うことだが、このことが必ずしも開催地決定の絶対的な条件とはならないと言うことらしい。
世界5大陸で同じ大陸に所属する国が続けて開催された前例がないことから判断すると、北京に続いて同じアジア大陸に所属する東京は前例に該当することになる。しかし前例なるものがすべて常に絶対的条件の地位を獲得しているわけではない。開催地の決定権は国際オリンピック委員会の構成メンバーである世界各国の国内オリンピック委員会(National Olympic Committee)が握っている。
常識的に言えば、東京が前例を打ち破る最初の都市となれるかどうかは競技施設とその付属設備の充実を含めてオリンピック開催中の都市機能の滞りのなさと同時に東京で開催する意義を如何に訴え、如何により多くの支持を得るかどうかが重要なポイントとなるということだろうが、それぞれの国内オリンピック委員会が所属する国家権力の国益上の政治的判断が影響することはないだろうか。
例えば05年日本は国連安保理常任理事国入りを目指して様々に活動したが、足許のアジアの国中国と韓国から歴史認識を理由に反対され、特に中国にアジア・アフリカ各国に根回しした強硬な反対運動に遭い、目的を断念せざるを得なかった。いや、断念させられた。
「中国は各国大使館に現地政府関係者を招き、日本が戦争行為で残虐な行為をしたことを告発する映画を上映して日本への不支持を呼びかけたとの報告が外務省に入った」と06年5月3日の『朝日』朝刊(≪小泉時代 『強い男』)演じた外交≫)は中国の日本の常任理事入り反対キャンペーンを伝えている。
国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指す日本、ドイツ、ブラジル、インドの4カ国(G4)が協同して設けた安保理を15カ国から25カ国に拡大する「枠組み決議案」を国連総会に現地時間07年7月6日に提出したが、G4を除く共同提案国23カ国のうち日本のODA最大の供与地域であるアジアからの共同提案国は何とブータン、アフガニスタン、モルジブの3カ国のみでASEAN諸国、南アジア諸国からもことごとくそっぽを向かれてしまった状況も中国の影響力がつくり出した状況だと言われている。
当時我が日本の町村外務大臣はアフリカ連合(AU)の支持を取り付けるべく彼らの案との決議案一本化を謀り、「合意」に漕ぎ付けることができたと早トチリし、合意文書を作成したわけでもないのに「合意」を表明、それが幻の「合意」と判明して中国と格段の差がある日本の優秀な政治力・外交術を世界に見せ付けることとなった。
その程度の政治力・外交術の町村が現在内閣官房長官として記者会見で何様顔を曝しているから滑稽である。
08年5月の胡錦涛来日、福田首相との首脳会談で安保理常任入りを望んでいる日本の立場に一定の理解を表明したものの共同声明に「支持」という表現を盛り込むことはできなかったという。このことは依然として日本の常任理事国入りの決定権を中国が握っていることを示している。
<【国連改革】
福田首相 (国連安保理常任理事国入りを目指す)日本の立場に理解と支持を求める。
胡主席 現時点で一致案はない。当面は各方面の利益に配慮した具体的な改革案を探すべきだ。中国は
、日本が国連で積極的な貢献をしていることを評価している。日本が国際社会でさらに大きな
建設的役割を果たすことを望む。(≪日中首脳会談:要旨≫毎日jp/08.5.8.東京朝刊
から)
アジアやアフリカ諸国の国内オリンピック委員会に対する東京オリンピック開催支持の決定権も中国が暗々裏に握っていると言えるのではないだろうか。少なくともアジア・アフリカの国々の多くが中国の動向を窺いつつ態度決定に走る可能性は言えると思う。
だが、幸いなことにと言うべきか、<中国共産党の王家瑞対外連絡部長は18日、自民党の山崎拓前副総裁と北京市内で会談し、2016年夏季五輪の東京招致について「東京で再び五輪が開催されるのであれば大歓迎だ」と述べ、支持する考えを明らかにした。>(≪「東京五輪は大歓迎 中国共産党部長が支持≫)という。
これが単に中日友好を謳う表向きのポーズでなければの話である。と言うのも東京オリンピック主催者の東京都の知事石原慎太郎に対する中国の印象は決してよくはないはずだからだ。
石原慎太郎は2000年前後に日本国内で横行した不法入国者も混じった在日中国人の犯罪の手口を「『民族的DNA』を表示する」ものだとし、その悪質性が『民族的DNA』に起因しているが如き主張を持論として産経新聞(2001年5月8日朝刊≪日本よ【内なる防衛を】≫)に展開、「手入れして一網打尽は不可能ではないがその後彼等を収容する場所がない。なんとか拘留してもそれを送り返すための費用を担当の国の役所が出し渋る。ある警察の高官が、中国に限らず強制送還する相手国には必ずODAが及んでいるのだから、その分を差し引きしたらといっていたが妙案だと思う。しかし腰の引けた外務省の反対は目に見えている。」(同記事)と、自らは対中ODAの削減、削減で浮いた費用の中国人国外送還費用への充填を主張している。
この新聞記事に関しては政治問題化しなかったようだが、2003年7月17日の自民党本部での講演の東京で発生する犯罪のうち「圧倒的に割合が多いのはシナ人だ」との発言。中国人による日本の要人子弟の誘拐事件が「必ず起こる」と競馬の予想もどきのご託宣を述べ、、その場合捕まえて送還する費用は「(対中国)政府開発援助(ODA)なんかを削ればいい」、「シナという言葉は決して悪い言葉ではない。堂々とシナという言葉を使ってもらって結構だ」等々の発言(2003年7月20日(日)「しんぶん赤旗」(≪石原都知事の「シナ」発言 中国外務省が抗議≫は中国側の反発を受ける政治問題化を引き起こしている。
<外交部の孔泉スポークスマンは18日、石原慎太郎・東京都知事が中国人を「支那人」と呼び、対中ODAを削減、削減で浮いた費用を中国人の国外送還費用に充てると発言したことに対し、「公然と中国を攻撃し、中国人民の感情を傷つける言論」だとしたうえで、「強烈な憤慨と非難」を表明した。
孔泉スポークスマンは「中日善隣友好は中日両国人民の根本的利益であり、共通の願いであって、歴史の潮流に逆らうことはできない。中日友好を破壊する画策は人心を得ることはできず、画策が実現することはない」と述べた。(編集IN)>(≪石原都知事の「支那人」発言に「憤慨」表明 外交部≫「人民網日本語版」2003年7月19日)
中国のホンネが口にしたとおりの「東京で再び五輪が開催されるのであれば大歓迎だ」であるなら、多くのアジア・アフリカ諸国が中国の支持に倣うだろうが、それが石原憎しも手伝った友好を装うタテマエであったなら、「前例」を破って東京都開催ということにはならない可能性が生じる。
東京都は中国のホンネが「大歓迎だ」にあるかどうかを確かめ、あると確かめることができたなら、途中変心することなくホンネがホンネどおりに維持されて一票に具体化させるべくデンマークのコペンハーゲンで開催の第121次IOC総会で開催都市が決定する2009年10月2日の前日まで中国に対する働きかけを行わなければならないに違いない。
「大歓迎だ」をホンネとさせる重要な要件は中国にとっての問題は石原慎太郎自身の態度だから、石原慎太郎がどう出るかであろう。東京開催に漕ぎ付けるために石原都知事はこれまでの態度を改めてなり振りかまわずに「支那」に対していい子になり「支那」の支持を取り付けようとするのだろうか。
いや、今年5月の胡錦涛来日の歓迎夕食会で胡錦涛が福田首相に約束した死んだばかりの上野動物公園のリンリンに代わるパンダ2頭の貸与申し出に対する石原慎太郎の「パンダ発言」から見ると、「支那」姿勢を変えるつもりはサラサラないようにも見える。
≪【石原都知事会見詳報(3完)】≫ (MSN産経/2008.5.16 21:13 )
<--先週、ジャイアントパンダの件で中国側からレンタルの打診がされたが
「そんなことやると、また針小棒大に言われるからね、あんまり言いたくないね。でもやっぱり都民の意識調査したらね、金払うならいらんなという人が97%いたよ。金払うのは、上野の動物園が払う、払うってのは都の税金だよな。都の財政ですよ。まあそれまでして見たいかね、パンダね? ずいぶん写真で見たらわかると思うし、他の日本の動物園もたくさん持ってるみたいだから、よほど見たいならそっちに行けばいいんじゃないの。まあ私はどうでもいい、それは。だけど、好好(ハオハオ)、友好友好言うけれど、友情の証で金を取るっていうのはどんなもんなのかな、やっぱり」
--パンダのぬいぐるみやグッズが上野動物園には山積みになっている。やはりパンダあっての上野、という感じがするが
「パンダパンダと言うけどね、グッズが余ったらね、パンダのいる他の動物園に分けてったらいいと思うね」
--(レンタル料)1億円といわれているが
「ずいぶん法外な値段だと私は思います」>・・・・・・
東京開催決定に於ける「支那」の重要性に気づいていたのかいなかったのか、大胆な発言となっている。それとも裏で既に「支那」にワビを入れているのだろうか。
石原慎太郎の取るべき態度は三様ある。
1.ワビを入れず、「支那」の支持はいらない、パンダもいらないを貫く。
2.パンダはいてもいなくてもいいが、「支那」の支持はあってもなくてもいいというわけにはいかないか
ら、裏で頭を下げて支持をお願いする。いわばこれまでの発言のワビを入れて手打ち式を行う。当然
石原慎太郎の口から「支那人」、「支那」の言葉は消える。
3.ホンネは支持がほしいがワビを入れるのは癪だから、我慢の子を決めて今後発言には気をつけるだけ
のことをする。東京が選考に洩れても止むを得ずとする。
最も可能性の低い態度は3.であろう。どう決定するか、今後が見ものである。
私自身の気持は「東京五輪だって?そんなの関係ねえ、そんなの関係ねえ、オッパッピー」
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